「マンガも本人も面白い漫画家ランキング」1位は『水木しげる』「妖怪って本当にいるんですか?」質問への返答がステキ
第2位 だろめおん――「頭の中は“狂気シアター”がずっと上映中」
山田:
うちにやってきたアシスタントの中で相当ぶっ壊れているのが……。
乙君:
ぶっ壊れている?
山田:
だろめおんだよね。俺は、だろめおんの「静かなる狂気」は大好きなんだよ。普通の人々に染まってるけれど、普通じゃないところがある。だから、だろめおんを、ちょっと振ってみると、あいつの中で狂気が爆発するんだよ。あいつはずーっと内面の中で“狂気シアター”をずーっとやっているから。
あいつの頭の中は『ロッキー・ホラー・ショー』【※】がずっと絶賛上映中。だからちょっと振ると、それがパーンって爆発するんだけど、まあ、それが面白い(笑)。あいつと7年間一緒に仕事しているんだけど「こいつはすごいな」ということがいっぱいある、だろめおんはすごいよ。要チェックですよ!
※ロッキー・ホラー・ショー
ホラー・ミュージカル舞台劇『ロッキー・ホラー・ショー』を映画化した作品。公開当初の評価は最悪で、試写会ではプロデューサーの目の前で客が次々に中途退席していったといわれる。しかし、当時のほかの映画では見られない奇怪なキャラクター、刺激的なロック音楽と衣装・舞台のデザイン、ホモセクシュアルやバイセクシャルや乱交も含めたエロティックな内容は、少数ずつながら確実に支持者を増やし。現代ではカルトムービーの代表格となった。
乙君:
だろくんに関しては、意外だったな。なんか……距離が近いから。
山田:
だから、だろめおんは「静かなる狂気」なんだよ。最初から狂ってた。
乙君:
俺も結構いろいろな人に会いましたけど……ただ、だろくんはそれでも、普通にしているんですよ、そこがすごいんですよね。
山田:
あいつは品があるんだよ。そういうところも好きなの。クレイジーなのを下品にやるのはあんまり好きじゃないんだけど、クレイジーなのを上品にやるからいいんだよ、こいつは。
山田玲司氏が面白いと思う漫画家第1位は……?
乙君:
ひとりしかいないもんね。あの人しかいない(笑)。宝塚の、おさ……おさ……。
山田:
あー、そっちか! そっちじゃない!
乙君:
手塚治虫ちゃんじゃない?
山田:
治虫ちゃんはね、本人もすごく面白いけど。この中に入る面白さとは、ちょっと違うんだよなあ。
しみちゃん:
俺も手塚先生だと思っていたから……。全く思い浮かばない。
山田:
でも、知ってる人だよ。誰だと思う?
乙君:
ひっぱるね!
久世:
当てちゃっていいんですか? 水木しげる先生じゃないですか?
山田:
誰だと思う?
乙君:
いや違うでしょう。永井豪さん? いや、待て待て……漫画家でしょう……。あ、わかった! わかったかも! ちばてつや先生だ!
山田:
それでは……。
乙君:
長いよ、長い! 発表して下さい。1位はこの人です!
第1位 水木しげる――「怠け者になりなさい」
久世:
当たった。しまった(笑)。
山田:
やっぱり、会っているから、そのすごさの余韻がまだ残ってるんだよ。
乙君:
まだ、残っているの?
山田:
水木さんが饅頭を食っている姿が忘れられないんだよ、やっぱり。面白い人だったな。だから、漫画も面白いけど、本人も面白いじゃん? 水木さん本人が一番面白いんじゃないの? というくらい、田舎でこの世ならぬ雰囲気を持っているんだよ。あとは……悟った人間は、やっぱり、あまり見たことないじゃん?
山田:
悟っちゃっているから、ねずみ男が描けるんだよ。あれは、本当に底辺の暮らしを知っている人だからこその明るさなんだよね。底抜けの明るさ。本当に、そこも全部ひっくるめて、水木さんは一番面白いね。本当に会えてよかったな。
乙君:
水木さんみたいになりたいですか。
山田:
なりたいなりたい(笑)! 洒脱だし、悟っているし、明るいし、真面目に仕事もずーっとするし……あとは、フィールドワークをするんだよ。興味のあるところに行っちゃうんだよね。俺が「妖怪っているんですか?」と聞いた時に水木さんは「会いに行きますか?」みたいな感じになるわけよ(笑)。
乙君:
え?
山田:
「妖怪はいますよ。こっちが興味を持っていると、妖怪も興味を持ってくるんです。ニューギニアのラバウルでは……」というふうに「そこに行ったらいるから」みたいな話を俺にしてくれるの。真面目に、そこに行ったらいたんだよという話をしてくれるんだよね。
だから、そういうところもひっくるめて、人間として、すごいと思うんだよね。で、水木さんは「怠け者になりなさい」というわけよ。怠け者になろう! と思ったね。
乙君:
全然なれていないですけど。めちゃくちゃ仕事のことを企んでいるじゃないですか(笑)?
山田:
本当に、遠い道のりだよね(笑)。