ハリポタのインテリアを、英国専門アンティーク店のバイヤーとゲームさんぽ。バイヤー視点から見る家具の買い付けとゲームならではのデザインのウソ
J.K.ローリングの大人気小説「ハリー・ポッター」シリーズをベースに、1890年代の魔法界を冒険・探索できるアクションRPG『ホグワーツ・レガシー』。
原作より100年前を舞台にオリジナルストーリーが展開される同作ではホグワーツ魔法魔術学校を中心に、禁じられた森やホグズミード村といった原作でもお馴染みとなる魔法界を高解像度で再現。
現在も根強い人気を誇る名作の世界を体験できるということで、「ハリー・ポッター」シリーズのファンを中心に高い評価を得ている。
さて、今回紹介するのはさまざまな分野の専門家と共にゲームの世界を「さんぽ」して、世界の見え方の違いを共有するゲーム実況企画“ゲームさんぽ”を投稿するニコニコチャンネル「ゲームさんぽ/よそ見」にて公開された『バイヤーと魔法界でインテリアの買い付けしてきた#01|ホグズミード村編|ゲームさんぽ』という動画。
本動画ではいいださんとワタナベさんが案内人、そして目黒通り沿いでは最大規模の店舗を構える英国専門のアンティークショップ“GEOGRAPHICA (ジェオグラフィカ)”のディレクター 岡田明美さん、バイヤー 遠藤富士夫さんが出演し、アンティーク家具の専門家の視点から『ホグワーツ・レガシー』の世界をさんぽする様子が収められている。
本稿ではニコニコ動画『バイヤーと魔法界でインテリアの買い付けしてきた#01|ホグズミード村編|ゲームさんぽ』より魔法使いが住むホグズミード村での一場面をピックアップ。専門家の目を通してみる『ホグワーツ・レガシー』の世界をご紹介する。
―あわせて読みたい―
・『DEATH STRANDING』の世界を山歩きのプロと“さんぽ”してみた。「この背負子すごいですね!! どこで売ってるんですか?」専門家ならではのコメントの数々が実感込もっていてアツい
・『Detroit: Become Human』ハンクが抱えている内面の闇を、初登場時の表情・姿勢から精神科医がカウンセリングの手法で明らかにしていく
ワタナベ:
ここはホグワーツのすぐ近くにあるホグズミード村という、イギリスで唯一魔法使いだけが住んでいる村になります。
いいだ:
アンティークの家具の買い付けに行くと、結構田舎のほうにも買いに行かれますか?
遠藤:
田舎が多いですね。アンティークショップとかもあるんですけど、田舎だとウェアハウスという大きな倉庫にアンティーク家具を集積しているところあるので、そういったところで選んで買ってくるのが多いです。
いいだ:
古い館とかに行って「これいい感じですね、譲ってください」みたいな交渉はしないんですか?
遠藤:
それはないですね。いきなり日本人が行って交渉というのは不審者になる(笑)。
オークションハウスとかそういうところで、オークションをやっていたりすると寄ってみたりすることはありますね。
いいだ:
オークションハウス?
遠藤:
イギリスとかヨーロッパの国だと普通に街にオークションハウスっていうのがあって、それこそアンティークの家具からちょっとした生活雑貨、家電みたいなものまでオークションに出していたりするので。
いいだ:
(日本でも見る)フリーマーケットのオークション版みたいな?
遠藤:
そうですね。ちゃんとオークションの会場があって、売り手の希望金額(estimation)もあって。そこで自分がいくらで欲しいのかって入札します。
いいだ:
オークションっていうと何千万とか何億とかのすごく高いものばかりやっているイメージだったんですけど。
遠藤:
いやいや、全然そんなじゃなくて「(1つで)何ポンド」みたいな話だったりとか、「一山いくら」みたいなものもある。
いいだ:
今日はこのゲームの中をぶらぶらしながら、「買い付けるとしたらどうか」とか、仕入れ目線で伺えればと思うんですが、この部屋の中に仕入れられそうなもの、売れそうなものはありますか?
岡田:
ブランケットボックス。チェストとか。
いいだ:
あ、このベッドの足元の? “宝箱”ではないんですね。
岡田:
宝箱ではないですね。ベッドの足元において、ベッド周りのリネンとかブランケットとかを収納しておくボックスです。
ワタナベ:
ブランケットボックス……。
いいだ:
聞いたことないね……。
岡田:
ベッド周りのシーツとか入れる箱なので、ベッドのサイズに合わせて作られていることが多いです。
だから、大きいものはクイーンサイズのベッド前に置かれていたもので、小さいものならシングルサイズとか。いまでも、うちでは買い付けはしていて、販売もしています。
いいだ:
今日の案内人が2人とも(ブランケットボックスを)知らなかった。
ワタナベ:
これって逆にイギリス人に「押し入れ知ってる?」って言っているものですかね?我々は押し入れに敷布団・掛け布団を入れるのと同様に、向こうの人はブランケットボックスに入れるっていう。
いいだ:
急に呼び方がおしゃれになっちゃったからびっくりしちゃったけど要は押し入れですね(笑)。
ブランケットボックスは買付け可能と。
遠藤:
(ほかに買い付けるとしたら)部屋の角にあるコーナーキャビネットとか。
こういうのも人気がありますねうちでも。
いいだ:
角って家の中でも使いづらい場所ですけど、これがあれば上手く使えますね。
遠藤:
そうですね。ディスプレイをしたい人とか。(コーナーキャビネット)にはオープンなものと、ガラスの扉がついているものとあるんですけど。
オープンなものはコーナーシェルブスっていう言い方をしたりする。
いいだ:
ドアが付いたらキャビネット?
遠藤:
そうですね。箱状に完結しているものはキャビネットになりますね。
いいだ:
じゃあこれも値段によっては全然買い付けられる?
遠藤:
そうですね。現地で相場を見て、高くなければ買える。
いいだ:
買うか買わないかって、現地の相場で選ぶ?
遠藤:
いわゆる現地の価格を日本に持ってきたときにいろいろな費用がかかって、うちの場合は修復をするので修復の費用とか輸送費とかを見て。
それで「じゃあいくらで売れる?」っていう感じですね。
いいだ:
これは修復いりますか?
遠藤:
これはまぁ、この感じだと多少扉の調整とかは必要になるのと。あとは全体的に色が抜けちゃっているところがあるので、そういうのをちょっとリタッチするとか、磨き直すという感じですかね。
いいだ:
デザイン的にはどうですか?
遠藤:
ありそうでないデザイン(笑)。
こういうのって大体そうなんですけど、いかにもな感じで作っているけど「実際にはこういう家具ってあんまりないよね」っていうのが多かったりする。
いいだ:
そうなんですね。これは全然あってもよさそうに見えるんですけど。どの辺に違和感がありますか?
遠藤:
例えば下の段の開き戸。このパネル自体はレイズドパネル(鏡板)というちょっと盛り上がった形になっていて、真ん中に引き手が付いている。
この感じだと真鍮製のものかなと思うんですけど、実はあまりこういう形でここに引き手が付くデザインはなくて、扉のちょうど合わせ目のところに、2つ付いているのが普通。
遠藤:
ここに引き手があると開けにくい(笑)。なので、真ん中に寄せて引き手がついていたほうが開けやすい。
遠藤:
あと、下の引き出しもコーナーキャビネットで引き出しということは、引き出しが三角になっちゃうわけですよ。
いいだ:
確かに。奥行きが全然上手く使えないですね(笑)。
遠藤:
だから、そは飾りかもしくは引き出しの片方に蝶番が付いている片開っていう形じゃないと。
ワタナベ:
引き出してもすぐぼろんって落ちちゃう。
遠藤:
もしくはダミーとして引き出しに見せている。ありそうでないっていうのはそういう感じですね。
いいだ:
あと「これお店にあったら売れそうだな」とか「いいかも」みたいなものってありますか?
遠藤:
ベッドの下のトランクとか。そういう革張りのトランクっていうのは人気がありますね。
いいだ:
これはだいぶ大きいサイズですけど、相場としてはおいくらくらいで?
遠藤:
どうかな。
岡田:
状態にもよりますよね。
遠藤:
革の状態にもよりますけど、ディスプレイ用で店頭価格7~8万するんじゃないですかね。
ワタナベ:
これ買われる方は実用するというよりかは?
遠藤:
ほぼディスプレイですね。洋服屋さんだとかですかね。
いいだ:
“売りやすいものの法則”とか、一般的な条件ってありますか?
遠藤:
日本ではやっぱり小ぶりなもの。同じアイテムでも小ぶりなもののほうが売りやすいですね。
あとは木の質感ですね。触ってしっとりするような仕上げのもの。
いいだ:
艶がある?
遠藤:
艶も含めてちゃんと修復ができていないと、手触りがよくない。ザラザラしていたりとかするので、木の風合いを生かして修復するとしっとりする感じですね。それは結構重要ですかね。
いいだ:
じゃあ、そこの椅子の風合いを見てみましょう。
岡田:
これはスタンダードなキッチンチェア。
いいだ:
よく見るタイプですか?
岡田:
イギリスのアンティークではたくさんあります。
遠藤:
材質は「エルム」とか「オークが」が使われるんですけど、エルムっていうのはニレの木のことですね。
オークは日本で言うとナラ材になるんですけど、それが座面と足で材が違ってたりする。
いいだ:
それはどっちが硬いとか柔らかいとかがあるんですか?
遠藤:
エルムのほうがわりと粘り気がある感じで、硬いんですけど加工はしやすい。だから、座面をお尻の形に近い感じでくり抜くときに、すごくいい収まりになる。
岡田:
一見、木だけだから硬そうかなって思うんですけど、意外と座りやすいんですよ。背中のアーチのところと、お尻がちょうど少し削ってあるので。
いいだ:
ありますよね、木だけど座ったら意外と包んでくるやんみたいな椅子。じゃあ、これは相場と照らし合わせて高くなければ買い付ける?
遠藤:
全然買いだと思います。
アンティーク専門店のディレクター&バイヤーといく『ホグワーツ・レガシー』のゲームさんぽでは、本稿で取り上げたホグズミード村偏のほかに、ホグワーツ魔法魔術学校偏、ジェオグラフィカB1F編を公開。
専門家の目線から見るゲームや魔法界ならではの家具の特徴や、アンティークショップという職業への知見が深まる本動画をぜひチェックしてみてほしい。
文/富士脇 水面
バイヤーと魔法界でインテリアの買い付けしてきた#01|ホグズミード村編|ゲームさんぽ
https://www.nicovideo.jp/watch/so42634463
―あわせて読みたい―
・『DEATH STRANDING』の世界を山歩きのプロと“さんぽ”してみた。「この背負子すごいですね!! どこで売ってるんですか?」専門家ならではのコメントの数々が実感込もっていてアツい
・『Detroit: Become Human』ハンクが抱えている内面の闇を、初登場時の表情・姿勢から精神科医がカウンセリングの手法で明らかにしていく