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ボカロ投稿祭で初投稿者が脚光! 「無色透名祭」に参加した匿名ユニットrinri×GESO「異種/歌愛ユキ・GUMI・鳴花ヒメ」インタビュー

 2022年夏に開催された投稿祭「無色透名祭」。
 これは有名Pも無名の新人も全員が完全匿名で曲投稿を行うという、異色の取り組みが大きな話題を呼んだイベントだ。

 誰もが知る有名Pかと思いきやまったくの無名Pであったり、超人気Pの曲に大半のリスナーが気づけなかったりと、様々な波乱と予想外の展開を巻き起こした本イベント。純粋な音楽のみで曲を評価するユニークな発想とシステムが好評を博し、今年11月の第2回開催も、数か月前の現時点ですでに多くの注目を集める人気イベントとなっている。

 そんな無色透名祭の第2回開催に向け、今回は前回開催時に大きな話題を集めた作品を制作したボカロPにインタビューを敢行。話を聞かせてくれたのは、壮大かつ幻想的なサウンドで注目を集めた「異種/歌愛ユキ・GUMI・鳴花ヒメ」を手掛けたrinriGESOの二人だ。

 非常にハイクオリティな楽曲でありつつも、蓋を開ければ驚きの共作。しかも両名共に無名と呼んで差し支えないボカロPであることに加え、rinriに関しては今作が結果としてボカロ曲初投稿作となったという。
 まさに無色透名祭の真髄とも呼べる形で、今回スポットの当たる事となった二人。
彼らはどのような思いで楽曲を制作し、投稿祭へと参加したのか。様々なエピソードを、今回は語ってもらった。


息の合った共作のもと生まれた「異種」、匿名性もハードルを下げる要因に

──お二人は昨年の無色透名祭で「異種」という楽曲を共作されていましたよね。

rinri:
 はい。実は自分、この「異種」がボカロ曲初投稿になるんです。無色透名祭のことは、当時まだリスナーだった状態で知りました。

──なんと、そうなんですか? どのような経緯で今回の共作に至ったんでしょう。

rinri:
 そもそもGESOさんとは直接面識があって、かれこれ4、5年の付き合いになるんです。以前から各々で曲作りはしてたんですが、先にGESOさんがボカロPとして活動を始めていたので、自分はその曲制作を手伝うくらいの感覚で。

GESO:
 曲を作り始めたのは「Zeits.」という曲の投稿後なので、2021年夏頃だったと思います。曲作りの際に「FL Studio」を使ってるんですけど、そのソフトがメモ帳みたいにデータをいろいろ作れるんですよ。「異種」はその頃からストックしていた音のデータを組み合わせて原型を作りました。

rinri:
 11月頃にGESOさん家で原型のオケを聴かせてもらって、自分がその場でメロディと歌詞を主導で作りました。結局その時はラスサビ前ぐらいまで作って、また別の機会で続きを作ろう、となったんですけど、その後GESOさんのパソコンが壊れちゃって(笑)

GESO:
 (笑)そのせいで曲データを一回紛失してしまったんですけど、2022年の4月頃にたまたま別の場所に保存してたデータが奇跡的に見つかったんです。そこからそれをダウンロードして、今度はrinriさん家でラスサビを作って曲を完成させました。

──かなり大きなトラブル、さぞ大変だったかと思います。そこからはどのような流れで無色透名祭への参加になったんですか。

rinri:
 それこそ去年の6月頃、ラスサビ含めて曲が完成した頃に無色透名祭が話題になり始めていて。元々自分は一人で曲作りをするだけで、ネットへ投稿して誰かに曲を聴いてもらうことに単純に自信がなかったんです。「聴いてもらえなかったらどうしよう」っていう思いもありましたし。でも匿名参加のイベントなら、普通の投稿よりハードルが低いと思って。自分一人の作品でなく、GESOさんとの共作という点も一歩を踏み出せた理由でしたね。

GESO:
 投稿祭への参加は自分の提案だったんですが、rinriさんの曲は昔から直接聴かせてもらっていて、せっかくいい曲を作るんだから表に出せばいいのに、ってずっと思ってはいたんですよ。今回イベントと共作ということも相まってrinriさんをネットの世界に投げ出せたのは、「異種」の一つの貢献だと自分的に思っています(笑)

ストーリー担当rinri&サウンド担当GESO、両者の曲に対するこだわりとは

──楽曲制作の中で、コンセプトや方向性の擦り合わせはどのように行ったのですか?

rinri:
 自分の場合、曲を書くときは大体登場人物が二人いて、両者の間に生まれる関係性や感情なんかを考えるのが好きなんです。あとは、所謂普通から逸脱してしまったが故の息苦しさとか…。「異種」の場合はGESOさんの原曲を聴いた時に、同じ種族だったり、男女という異性間での話じゃなくて、もっと大きいスケールの物語がしっくりくるな、という発想が出てきたんですよね。

GESO:
 自分の中のコンセプトは後に公開したMの方でしっかり可視化して頂いたし、rinriさんも歌詞で上手く表現してくれたんですけど。大きなイメージとしては退廃的かつ儚げで…醜悪でありつつも、どこか美しさが核にある世界をどうにか表現しようとしたんです。オケでの世界観に合った音の選定も試行錯誤しながら、結果として「異種」ではそれができたんじゃないかな、と感じます。

──具体的にどのような部分へそれぞれこだわりをこめたんでしょう。

GESO:
 元々の自分の手癖もあるんですけど…空間の広い音を使うのが好きなので、今回は当初のイメージに沿った空間系の音を多用する事を意識しましたね。綺麗で煌びやかなものと、あるいは少し生々しい立体感のある音というか。

rinri:
 作詞面で言うと、この曲はトラブルの関係で、ラスサビの前後で歌詞を作った期間がかなり空いたんです。データ復旧もしたものの、以前作った部分の詞は結局変更できない状態で。普段曲作りの時8~9割が作詞の時間になるぐらい歌詞には気を遣うので、本当は昔の詞も修正したかったんですが、それが効かない点も少し葛藤がありましたね。
 とはいえどうしようもないし、当然作った当時はベストを尽くしたので。その上で終盤の歌詞で曲全体の文脈が物語として着地できるように、内容を回収していく作り方を心がけました。ラスサビはオケも自分が主導で作ったので、その盛り上がりも含めて作り込んだ形です。

有名Pに間違われる畏れ多さ、それもまたイベントの醍醐味のひとつ

──そんな「異種」ですが、結果として前回の無色透名祭ではかなり注目を集めた作品になりました。当時、率直にどう思いましたか?

GESO:
 思った以上にたくさんの方に聴いて頂いたんですが、それ以上に投稿祭期間中はrinriさんと電話しながら「お互いの良い部分が出せてよかったね」みたいな話をしていました(笑)

rinri:
 互いに褒め合って気持ちを落ち着かせていた部分はあります(笑)一方で誰かに聴いてもらう事や、自分の曲に反応が来る事自体が初めての経験で…なんというか今までにない感覚でしたね。
 同時に、イベントの特性上動画コメントに「これ○○さんじゃない?」みたいな作者の予想が多いじゃないですか。それを踏まえて結果発表の時に「いや本当に誰だよ」ってリスナーを困惑させないかな、という不安も大きかったです(笑)この頃やっとSNSアカウントを作ったレベルの無名Pだったので…。

──有名な方に間違われることに、嬉しさ以上に心配が勝ったというか。

rinri:
 そうですね。「いや、違います…」みたいな(笑)畏れ多いかぎりでした。

──とはいえ、それも無色透名祭の大きな醍醐味のひとつですね。クオリティの高さで注目を集めた曲が、本当に完全無名な新人のデビュー作品というのは非常に面白い展開かと。結果発表を経た後、周囲の反応などはいかがでしたか?

rinri:
 普段一ファンとして知るボカロPさんやイラストレーターさんから、「異種」を聴いたという声や曲への反応を頂けたのは畏れ多くも嬉しかったですね。新鮮な気持ちでした。

GESO:
自分も元々無名だったので、普段知っている方から曲への反応を頂けたのはなんだか不思議な感覚でしたね。自分も活動者だったんだな、曲を投稿したんだな…という自覚がじんわり湧いたというか。

──無色透名祭と他の投稿祭への参加の際、心情的に異なる部分もやはりありましたか。

rinri:
 自分は無色透名祭を経てのボカコレ参加でしたが、名前が出た状態で他の方の作品と並んだことで、「自分はこういう曲を作るボカロP」という認識をより広められた気がしています。あと「異種」は共作だったので、その後当然初めて自分名義の曲を出したんですけど、そのタイミングが他の投稿祭と被って全然聴かれなくて(笑)「異種」の結果で変に浮足立っていた分、それで逆に「また一から頑張ろう」となれたので結果良かったですね。

GESO:
 同じく無色透名祭の後にボカコレへ参加したんですが、日々の活動の積み重ねだったり、人に聴いてもらう努力も欠かせないと改めて感じました。無色透名祭を経てのボカコレはある意味、その大事さを感じる場にもなりましたよ。

──純粋に音楽だけで勝負する場と、音楽含めた魅せ方すべてで勝負する場。どちらが良い悪いではなく、どちらの価値観もあっていい、ということですね。ちなみに次回の無色透名祭も、お二人は再度参加される予定ですか?

rinri:
 したい、という気持ちはあります(笑)

GESO:
 同じくです(笑)

──ふふふ、お二人の曲がとても楽しみです。最後に、無色透名祭についての魅力や見どころを教えて頂けますか。

rinri:
 前回の無色透名祭は、再生数の高い曲がややマイナーなジャンルだったり、こういう機会だからこそ聴かれた作品も多かった気がしています。そういう意味で知名度や流行に囚われない曲に触れる貴重な機会だと感じたので、投稿者としての参加以上に、一リスナーとしても自分が好きだな、と思う曲を見つけたいですね。

GESO:
 自分が知らなかった曲、かつ知りたかった曲に出会えるのがいろんな投稿祭のいいところで、無色透名祭は特にそれが顕著だと思います。自分も投稿して誰かに見つけてもらうこと以上に、好きな曲を集めた自分専用のプレイリストを作ったりしてイベントを満喫したいですね。次回開催もとても楽しみです。

■Infomation

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