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トランプ相場で大儲け!? 為替・株の行方を徹底分析――注目株は機械・自動車・精密《niconico×大和証券》

トランプ大統領に公約実行力はあるのか?

飯田:
 なるほど。細井さん、こういった影響の中で、トランプ大統領が選挙前に言っていた経済観、特に貿易に関する理解というのが、なにか日米貿易摩擦が取りざたされていた頃の30年前ぐらいの経済認識を聞いているように感じてしまったんですけれども、これはどうなんでしょう?
 まさに、日本時間で言う明日、安倍首相とトランプ次期大統領の会談が行われるんですけど、この中でたとえば日米間の貿易についてなんらかのコミュニケーションやなんらかの発言がある可能性はあるんでしょうか?

細井:
 はい。可能性としてはあるんじゃないかなと思います。ただ、それが公になるかどうかは、正直わかりません。
 安倍さんの方からはTPP法案を通すつもりでいると。それに対してアメリカの方はやっぱり、通すようにしてくれないかという要望を出すんじゃないかと思うんですね。
 それにトランプさんはどう答えるか? ということについては、公約通りに「やらない」と言う可能性もありますし、もしかしたら、どこか変えて継続すると言うかもしれないし、そのへんは出てみないと分かりませんが。

飯田:
 そもそも現時点ではトランプ氏は、何でもない人なんですよね。

細井:
 ただ、オバマ大統領が、「TPPに関しては私の任期中には締結することは難しい。次期大統領に任せる」と、すでにコメントを出しているので、そういう点では、今後トランプさんが直に言う言葉が重視されていることは間違いないかと。

飯田:
 その一方で、トランプ氏は当選一週間にして、だいぶトーンダウンしたり、言うことを変えたり、そもそも選挙戦中から言うことをコロコロ変えてきたわけですけど。
 たとえばTPPについても、「前言撤回! やっぱりやる」というのは無理筋かなぁ。

今泉:
 とりあえず、政策に関わっていないところでの前言撤回っていうのは、選挙直後から出ておりまして、この項目僕もびっくりしたんですけど、「ヒラリー・クリントンに対して非常に感謝すると心から言っている」と。討論会では「ナスティ」とか言って、「嫌な女だ」って言い方をしたんですね。

 こんな簡単に仲直りできるんだなって、びっくりしたんですが、しかも、オバマさんとの会談のあとには「とてもよい男だ」と。「オバマ大統領は、本当はアメリカ生まれじゃないんだ」とか言っていたのに、「一緒にいることは光栄だ。助言を含め将来も付き合うことを楽しみにしている」ですね。

 あと、イエレン議長には、任期延長は認めない。あるいは、辞任を求めるとか言ってたんですけども、辞任は求めないということで、なんとなく過激な人間からまっとうな人間に戻ってるんじゃないかなという感覚を与えてくれてる感じがします。

飯田:
 ですから、結構”ビジネス過激派”だったかもしれないということですよね。

今泉:
 もうひとつ、日本の方もよく知っていると思いますけれども、不法移民を入れさせないために「メキシコとの国境に壁を作る」と言っています。
 でも、「一部地域は壁でなくてフェンスになる可能性もある」と。

飯田:
 まさに、「トランプ人形映る度にトランプ揺れてる」ってコメントが流れてるんですけど。

今泉:
 そうですね。しかも、「不法移民を全員強制送還させる」んだと。あと、「イスラム教の方を入国させない」とか言ってましたけど、まず、不法移民に関しても1100万人いると言われてるんですが、とりあえず対象者、犯罪者とか犯罪歴のあるものにするということで、政策が変わってきていると。
 一部ではトランプさんが現実的な人間になっていることが、好感視されているという方もいますね。

トランプノミクスで注目される「本国投資法」とは?

飯田:
 前回今泉さんに登場いただいた際の注目点として、トランプの政策の中で本国投資法があります。で、これが通ると為替にとっては大幅な円安の……ひいては日本経済と言いますか、日本株にとっては為替に応じた海外利益の円建て価格が上がる。

 だからもちろん、円建てで評価されている日経平均が上がるということになるかと思うのですが、このホームインベストメントアクト、どういったものなんでしょうか?
 ちょっと復習がてら、今回初めてご覧になる方に向けてご教示ください。これは、選挙前からの今泉さん注目のトランプの政策提言です。

今泉:
 トランプさんが(大統領に)なった場合、これは自分で言っているんですけれども。今、アメリカの多国籍企業が海外で儲けた利益、これは海外にそのまま置きっぱなしにしていると税金がかからないようになっている。

 これをアメリカ国内に戻すと35%の税金がかかるんですが、「戻してくれたら10%でいいよ」という税制改正なんですけど、これは実は、2005年だけに適応されて時限立法でかつてありまして、このときは「35%アメリカにお金を戻して来たら、本当は35%取るんだけど、2005年だけは5.25%でいいよ」と。

飯田:
 つまり、「今年だけ税金をまけてやるから、儲けた金はちゃんとアメリカに還流させろよ」っていうふうに言ったわけですよね。

今泉:
 そうですね。それを要は設備投資等に使えという法律なんです。これもすぐ決まる問題ではないんでしょうけど、先ほど言ったように、トランプさんは減税をやろうとしています。歳入は減ります。大規模インフラ投資をやります。歳出は増えます。
 ということは、どこかで税金を取りたいわけですね。そうすると、本国投資法はやらざるを得ないんではないかと。ただこれは2018年の時限立法になるのか、2017年の途中から決まるかによって為替の動き方が変わってくるとは思います。

飯田:
 たとえば時限立法だった場合はその1年だけ、いわゆる米系企業の資金の流れがまるでいつもと違うものになるわけですよね。

今泉:
 そうです。これも前回とほぼ同じグラフになっているんですが、こちらを見たいただきたいんですけども。

 こちら、ドル円と2005年、緑で囲っているところですね、2005年のドル円の動き、ドル円が赤、ユーロドルが青になっています。これ、101円台からドル円は121円台まで円安ドル高が進んでいます。かなりの資金がアメリカに戻ってきたと。
 ただ値幅としてはですね、おそらくこのユーロの落ち方の方が大きいです。なぜかというと、やはりユーロ圏で儲かっている部分がいちばん大きいと思いますので。
 そうするとユーロの下落の方が多分大きくなるので、たとえばクロス円と言われるユーロ円でいきますと、ドル円は円安なんだけど、ユーロ円は円高になるという動きになる可能性はあると思います。

飯田:
 なるほど。その中で、これ、ドル円の方が影響が小さいとは言え、105円から120円まで円安が進んだということなので、本国投資法が実施されると、かなり為替相場は大幅な動きになる可能性があるということかと思うんですが。
 そういったインフラ投資であったり、また為替レートも円安化の可能性を秘めている中で、今後注目していくべき日本株のセクター、産業といったものは、どういったところになるのでしょうか。

細井:
 はい、基本的には、やはり外需セクターという話になります。特に加工組み立て、いちばんウェイトが大きいのが当然自動車という話になりますね。電機に期待する方も多いんですけれど、電機というのは過去15年の間に貿易黒字の幅がセクター全体で相当縮まってしまっているということもあるので。
 電機が拡大するということになると、何か引っ張るものがないと再拡大するのは難しい。そうするとやはり、機械・自動車・精密、この3セクターが引っ張っていくという形にはなると思います。

飯田:
 これまでの、いわゆる為替主導の外需相場の典型的なものというのが、再生される可能性があるということですね。

細井:
 当然、為替の水準もしくはスピードによります。今泉の方からも申し上げましたが、ホームインベストメントアクトが時限立法になるといった場合には、ものすごい勢いでおそらく為替が動く。ただこれを恒久化するとか、10年渡ってやるとか、そういう形になると、動きは相当緩くなると思います。

中国の為替操作国認定の影響と今後の米中関係は?

飯田:
 では、ここで少しいただいている質問にお答えします。

スタッフ:
 「先ほどトランプノミクスの解説をいただきましたが、中国への為替操作国への認定が具体的に為替などにどのような影響があるのかをお教えください」。
 おそらくドル円だとか、オーストラリアドルだとか、そのへんにどのような影響があるのか? ということだと思います。「また現在の米中関係を考えたときに、本当にそのようなことが実現可能なんでしょうか」という質問をいただいております。

 あともう一問、「本国投資法の解説をいただきましたが、共和党の中でもトランプさん、非主流派という意見もありますが、それも本当に共産党・共和党の勢力を考えたときに、実現可能なんでしょうか」という、ご質問です。

飯田:
 はい、ではまず今泉さんからお願いします。中国の為替操作国認定、これが仮に実行された場合、いちばん大きな影響を受けるのは、どういった国になるとお考えでしょうか。

今泉:
 これはもう中国がいちばん影響を受けますので、おそらく、もし認定を受けた場合は、関税がかなりかかってくる、大幅に引き上げられるという形になると思います。
 実を言うと、関税対応するということは、為替相場はもうどうなってもいいよということになりますので。本当は、為替には大きく影響は出てこない可能性が、ドル円とかには影響は出てこないと思うんですけれども。

 結局、為替操作国に認定されるということ、要は自国の製造業をアメリカが助けようとするということは、自分の国の通貨が安い方がいいか高い方がいいかといったら、日本の輸出企業なら円安がいいように、アメリカの輸出企業はドル安がいい。

 ということは、アメリカはドル安政策をとると、マーケットが勝手に思い込むと思います。ですので、相場は為替操作国に認定されていないドル円に関しても、ドル安圧力がかからざるを得ないと思います。

飯田:
 しかし、それにしても不思議なのは、トランプ政権が主張している国内政策は、保護貿易でアメリカの製造業を守るんだと言いながら、インフラ投資ですから金利高を通じてドル高政策をやるっていう、非常にわけのわからない部分を秘めているかと思うんですが、いかがでしょう?
 そういった中で、為替操作国認定であったり、もうひとつは本国投資法のような法律というのが、トランプ大統領、そして共和党主流派が支配する議会の中で政治的に実現する可能性というのをお二方に伺いたいのですが。どうでしょう、実現の可能性はあるのでしょうか?

今泉:
 僕はないと思います。
 トランプさんもだんだんと現実的になっていて、実はトランプさんの選挙活動中、為替操作国って日本とかにも言っていましたけれども、言っていた州というのは、五大湖に近いところの昔製造業に強かったデトロイトとか、オハイオとかですね。
ああいう製造業が撤退して解雇になったような人が多いところでは、声を大にして言うんですよ。
 ですので、あれは選挙のためだけに言っていたことであって、実際には中国に対しては、僕は為替操作国認定というのはやらないと思っています。

トランプ大統領が最初に手を付ける政策は?

飯田:
 なるほど。おそらくそういったデトロイトなんかは典型ですけど、いまや自動車産業の街といってよいか微妙でしょう。もはや産業の街じゃない。 
 もっと言うと、もはや都市圏として自立していない状態なんですけれども、むしろ、そういった地区に住んでいて引退されている高齢者の方をターゲットにしているのかな?
 と思うと、トランプ次期大統領が選挙期間中に80年代みたいな話ばかりをするのは、そういうご高齢の引退した元GMの工場で働いていたような人が、昔の知識で十分ついていけるような話をしたような気もしてきたりもします。

 もうひとつ、細井さんは、いちばん最初にと言いますか、基調になるトランプ発の政策というのは、どんなものになると思いますか?

細井:
 そうですね。やはり、減税に対してのものが、相当強いインパクトを与えると思うんですね。
 GDPに占める比率が7割で個人消費があるわけですから、そこに対してインパクトを与えるということが、いちばん大きいと思います。その上で、今は雇用が伸びてきている状態なので、正直アメリカに無理矢理製造業を戻しても、雇用がなかなか、という状況ですから、それを考えると減税の方が、「100日以内にやる」というかなり早い政策として注目される。

 その際に、どうしても財源が足りないという話になるので、いったん金利が上昇するというようなことが起きるのかな? というふうには、思っています。それが、全世界的に株高を誘発するんじゃないかな? と。

飯田:
 トランプ氏は、ある意味非エスタブリッシュメント層の支持で、当選しているわけですけれども。それで結局出てくる政策が減税というふうになると、失望感もあると思います。
 これは、今朝新聞でエマニュエル・トッドっていう人が言ったことなんですが、僕はあの人の経済観は間違えてると思うところが多いんですけどうまいこと言うなと思ったのは、「トランプは、国民を騙して当選したんだとみんな言うけれども、これまでの各政権、特にリベラル系と言われる民主党政権であっても、国民のためにと言って金持ちに減税してきたじゃないか、騙しているのはお互い様だ」という趣旨の発言をしていて、ちょっと面白いなと思いました。

 実際に、トランプ政権ももしかしたらその手口で行って、結果として貧困層、失われた階層と言われる中間層の支持で当選しても、高所得者の減税をして終わってしまうとなると、よくある共和党政権になってしまう。
 それは、相場にとってはもしかしたらプラスかもしれないんですが、かなりアメリカの政治的な失望は広がるのかなと思うんですが。

 

 

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