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『アイドルマスター シンデレラガールズ』声優陣はプロデューサーの期待とどう向き合ったのか? 辻野あかり・久川颯・ナターリア役声優が明かす収録秘話

 いまの時代、「登場するキャラクターに声がついている」ゲームタイトルはさほど珍しくない。ゲームをプレイするユーザーとしても「そのキャラクターの声を誰が演じるのか」を楽しみにしている人も少なくないだろう。

 『アイドルマスター シンデレラガールズ』(『デレマス』)、及び『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(『デレステ』)においても、「アイドルに声がつく」ことへのユーザー(プロデューサー)の注目度は高い

※『デレマス』は、バンダイナムコエンターテインメントとCygamesが共同開発し、2011年にMobage上でリリースされたソーシャルゲーム。『デレステ』は、そんな『デレマス』の世界観を受け継ぐ形で2015年にリリースされた音楽ゲームアプリ。

 というのも、現在、本作に登場するアイドルは総勢190人(コラボを除く)。このうちボイスが実装されているアイドルは94人。

 ボイスが実装されるきっかけとして代表的なのが、1年に1回実施されている投票イベント「シンデレラガール総選挙」と同時に開催されている「ボイスアイドルオーディション」。このイベントで上位にランクインしたアイドルはボイス実装と楽曲制作(CD発売)が行われる。

 そんなわけで、この投票イベントを毎年の楽しみにしているプロデューサーは、恐らく少なくない。約10年間にわたり楊菲菲に声を獲得させるための活動を続けるプロデューサー【※1】もいれば、票を集めるためにVTuberになった人【※2】もいるくらいだ。

 さて、2022年4月20日、3人のアイドルたちのソロ曲が収録されたCD「CINDERELLA MASTER」(シリーズ第15弾)が発売された。ソロ曲を歌うのは 辻野あかり、久川颯、ナターリアの3人。

 CD発売が発表されると、多くのファンから「ありがとう!」「待ってた!」「楽しみ!」などの反応が。「自分の応援しているアイドルの歌を、輝く姿をもっと見たい」。そんなプロデューサーの想いが、楽曲リリースへの反響に繋がっているのだろう。

 ここでひとつの疑問が思い浮かぶ。

 これだけ大きな期待を寄せられるなか、アイドルを演じる声優陣はどのように演技に、歌に臨んでいるのだろうか?

 今回、ニコニコニュースオリジナルでは、CD発売に合わせて、辻野あかり役の梅澤めぐさん、久川颯役の長江里加さん、ナターリア役の生田輝さんの3人にインタビューを実施。

 リリースされる楽曲の魅力や制作の裏話をお聞きする……のが目的であったのだが、取材のなかで『デレマス』に登場するアイドルを演じるにあたっての想いや、スタッフ含めて「ボイスを実装する」ことへのこだわりなどのお話についてもお聞きすることができた。

 声の担当を発表する瞬間の心境、そして声や歌の収録……。演じる声優たちの視点から、『デレマス』における「アイドルに声がつく」ことについて迫っていく。

 もちろん、ソロ新曲の収録秘話や楽曲の魅力についてもガッツリ語っていただいているので、合わせて楽しんでほしい。

左から、辻野あかり役の梅澤めぐさん、久川颯役の長江里加さん、ナターリア役の生田輝さん。

文/レットイット山本
編集/竹中プレジデント
撮影/かちゃ

「〇〇ちゃんの声を担当させていただきます」と発表するときの心境って?

──『デレマス』では、「総選挙」や「ボイスオーディション」などの結果を受けて、アイドルにボイスが実装されることが、毎年盛り上がっていると思います。

 とくに、どなたが声を担当するのか発表のタイミングは、まるでお祭り騒ぎのような盛り上がりで。あの「〇〇ちゃんの声を担当させていただきます」と発表する瞬間、演じる声優さんってどんなお気持ちで迎えるんでしょうか?

梅澤:
 あかりちゃんは「第1回ボイスアイドルオーディション」で1位になって声がついた女の子なので、プロデューサーさんからの期待をすごく感じていました

 収録が終わって帰るときや、それこそボイスが実装される日まで「(この演技で)本当にいいのかな」と不安な気持ちでいっぱいでした。

──アイドルに声がつくことってプロデューサーだけでなく演じる声優さんにとっても大きな出来事なんですね。

梅澤:
 もちろんです! あと、ゲームにボイスが実装される前、『デレステ』5周年記念CMの中でサプライズ的にあかりちゃんのボイスが披露されていたんです。「えいっ!」ってひと言だけなのですが。

──プロデューサー界隈でも、「いまの声は幻聴じゃないよな!?」と話題になっていた記憶があります。

梅澤:
 私もそうしたざわつきをリアルタイムに見ていたので、なおさら「じつは私なんです……」と恐縮してしまって。なので、ボイス実装当日は、手足が震えるくらい緊張していました。

 でも、「辻野あかりちゃんのお声を担当させていただくことになりました」ってTwitterで発表したら、みなさん温かい反応で迎えていただけて。すごく嬉しかったです! なかにはお手紙で「あかりちゃんを演じてくださって、ありがとうございます」とお声を届けてくださる方もいて、励まされました。

生田:
 そう!プロデューサーのみなさんって「声を担当してくださって、ありがとう」と言ってくださるんですよね。

──生田さんの演じるナターリアも「シンデレラガール総選挙」【※】で上位にランクインしたことでボイスが実装されました。梅澤さん同様、不安な気持ちはあったんでしょうか?

※2019年の「第8回シンデレラガール総選挙」にてタイプ別3位に輝き、ボイス実装が決定したナターリア。

生田:
 はい。ナターリアは最初期から登場しているアイドルで、およそ8年越しにボイス実装が決まったという経緯があります。当然、ボイス実装を長いあいだ待ち続けていたプロデューサーさんがいらっしゃるわけじゃないですか。

 そんななかで、もし「こんなのナターリアじゃない!」と言われてしまったらと思うと、不安で眠れなくなるくらいには緊張していました

──確かに。ずっと応援してきたプロデューサーにとっては、待ち望んでいた瞬間ですもんね。

生田:
 これは後から聞いたお話なのですが、じつはナターリアにボイスが実装されるにあたって、スタッフさんの間でもかなり慎重に議論が交わされたそうなんです

 長い期間ボイスがついてなかったナターリアにいざ声がつくとなって、「どういう声がナターリアなんだろう」「どういう話しかたがナターリアらしいのか」などなど。

──なんと。長い付き合いになるナターリアだからこそ、スタッフサイドでも並々ならぬ思いがあったんですね。

生田:
 一番最初のボイス収録は、スタッフさんとたくさん話し合いを重ねながらの収録だったので、実はいろんなパターンのナターリアがいたんです。

 そこから今のナターリアができあがっていったので、ボイス実装直後はプロデューサーさんの反応が気になりました。

──そこで「ありがとう」というメッセージが届いた、と。

生田:
 そうなんです! ナターリアにボイスがついたのはプロデューサーのみなさんのがんばりじゃないですか。だから本当は「こちらこそナターリアを演じさせてくれてありがとう!」なんです。それでも「ナターリアの声を担当してくれてありがとう」と声を届けてくれて、本当に嬉しかったです。

 そうした反響をいただいてからは、これが私の演じるナターリアです! という気持ちで自信を持って収録に臨めるようになりました。

──あかりちゃん、ナターリアとは異なり、長江さんの演じる久川颯は新アイドルとしてボイスも実装済みで登場となります。『デレマス』全体としては珍しいケースですよね。

長江:
 そうですね。はーちゃん(颯)は、初登場アイドルということで、プロデューサーさんたちが持たれているイメージからかけ離れてしまうのではないか、みたいな不安はなかったと思います

 オーディションを受けるときも、新アイドルだからある程度自由に演じられるんだろうなと楽しみな気持ちが強かったです!

──オーディションも楽しかったんですか?

長江:
 ですです!  私、オーディション受けるの好きなんです! はーちゃんのときのオーディションも最初から最後まで楽しかったですし、受かったときの第一声も「やったぁ!」でした。

 ボイス担当の発表のときも待ち遠しい気持ちでいっぱいでした。発表されてからもすごく反響をいただいて、「やったぁ! まるで有名人みたい」なんて思っていた気がします。

生田:
 はーちゃんと里加ちゃん、なんか似てるよね。かわいい(笑)。

歓迎してくれる「シンデレラガールズ」の先輩たち

──『アイドルマスター』シリーズは歴史も長く、「シンデレラガールズ」も大所帯となっていますが、その一門に仲間入りするときってどんな感じなんですか? 例えば先輩からの反応とか。

長江:
 みなさん共通して「何か困ったことがあったら、遠慮なく私に言ってね!」と言ってくださるんです

生田:
 みなさん、すごくお優しいよね。

長江:
 うん。すごくウェルカムな感じで。本当に素敵な先輩方だなと思いました。

梅澤:
 私の場合、「9th Anniversary Memorial Party」(2020年11月28日に配信)に出演するまでは『デレマス』の現場自体が少なく、あまり先輩方にお会いする機会がなかったんです。

 そんななか、別の現場で先輩方と偶然お会いできたときには「やっと会えたね!」って言ってくださって。ああ、みなさん新入りの私のことを知っていてくださったんだな、って感じて嬉しかったですね。あと、……。

──あと……?

梅澤:
 不思議なことに、初めてお会いする先輩は必ず「(辻野)あかりちゃんだよね?」ではなくて、「りんごちゃんだよね?」って声をかけてくださるんです。理由についてはわからないのですが。

生田:
 そういえば私も、めぐちゃんと初対面のときに「あかりんごちゃんだよね!」って声をかけたかも。なんかりんごのインパクトがすごくって…(笑)。

梅澤:
 そうそう(笑)。

──新しい仲間が入ったときの儀式というか、定番の歓迎みたいなのってないんですか?

生田:
 そういうのは多分ないと思うんですが。強いて言うなら、初めて山本希望さん(城ヶ崎莉嘉役)とお会いした時のことはとてもよく覚えています。

 じつは事前に「希望さんは大のナターリアPらしい」ということを伺っていて。それで、リハーサル日にご挨拶に行った際、私を見るなり「本当にありがとうねぇ~」と泣きながら喜んでくださって、 しかも、お稽古着としてナターリアのTシャツまで着てくださっていたんです

長江:
 ナターリアのゲスト出演が発表されたのは、「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!」(2019年9月3日・4日に開催)のときだったよね。

 私はそのライブでご一緒していたんですが、そのときのことはよく覚えています。開演前に、その日のライブ中に公開される告知映像を出演者メンバー全員で見ていたんですが、映像で「ナターリア、“Funky Dancing!”両日ゲスト出演決定!」と出て。

 その瞬間に希望さんが「えぇーっ! めっちゃ嬉しいんだけどーー!!」って絶叫されていて。あれは忘れられない(笑)。

生田:
 そうだったんだ! 愛に溢れてるなぁ~。素敵。

長江:
 全体としてそういう空気があって。だから私も、後から入ってくる後輩ちゃんたちには、みなさんのような先輩でいようと心がけています

一同:
 うんうん。

辻野あかりに受かったのは「田舎娘感」が決め手だった? 

──まずはどういう経緯で演じられているアイドルの声を担当することになったのかお聞きできればと思うのですが、みなさんとアイドルたちとの出会いってどういう形だったんでしょう?

長江:
 私はさきほどお話した通りオーディションでしたね。ふたりは?

生田:
 私もオーディションです。

梅澤:
 私もそうです。私のときは辻野あかりちゃん、砂塚あきらちゃん、桐生つかささんの3人の募集でした。

──「ボイスアイドルオーディション」上位3名の同時オーディションだったわけですね。その中であかりちゃんの役を受けたのには何か理由が?

梅澤:
 私の場合は、事務所からお話がきたときにあかりちゃんを受けることが決まっていたんです。

 そこからオーディションに向けて、どんな女の子なのかめちゃくちゃ調べたんですが、調べているうちに「んご」っていうのを知って。えっ「んご」ってなに? って驚きました。

生田:
 オーディションで「んご」ってどういう風に演じたの?

梅澤:
 今とほぼ変わらないですね。都会で流行ってるからという単純で純粋な理由で「んご」を使っているので、変に目立たせないよう意識しました。

生田:
 じゃあきっと、めぐちゃんの「んご」が合格の決め手になったんだね。

梅澤:
 そうだとうれしいんですが……じつは事務所のマネージャーさんから合格のお電話をいただいたときに、「田舎娘感が決め手だったみたいです」とも言われました(笑)

一同:
 (笑)。

梅澤:
 そのお電話で「その田舎娘感を一生なくさないでください!」と念押しされていたみたいで、そこも込みの合格だったみたいです。

生田:
 じゃあ、めぐちゃん東京に詳しくなっちゃダメだね!

長江:
 めぐちゃん、今日は真っ直ぐ家に帰ろうね!

生田:
 そういえば、私とめぐちゃんで初めて一緒に帰ったのも、めぐちゃんが新宿駅で迷っていたのがきっかけだったよね。「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Broadcast & LIVE Happy New Yell !!!」(2021年1月9日・10日に開催)のとき。

梅澤:
 はい。私にとって初めての大型ライブ参加だったので、終わった後に緊張と楽しさですごく疲れてしまって……。帰りの会場の幕張メッセから新宿駅までの送迎バスで酔ってしまったんです。

生田:
 新宿駅でバスから降りてきためぐちゃんが、あまりにも顔色が悪くて、しかも「ここはどこ……?」みたいな顔をしていたので、これはちょっと放っておけないなって一緒に帰ったんだよね。

梅澤:
 本当に救われました……! 田舎から出てきたばかりで東京に慣れていないころだったので、新宿駅の中を颯爽と案内してくれる生田さんがすごく格好良かったです!

長江:
 あのころは……というか、いまも慣れてないよね(笑)。この前も私が「(渋谷)ヒカリエ行くんだ」って言ったら、めぐちゃんに「ヒカリエって何ですか……?」って返されて。もう、かわいくてしかたないです。

梅澤:
 いまだに東京のことは全然わからないです……。

生田:
 ずっと東京に染まらないめぐちゃんでいてほしいな~。

雑談でめちゃくちゃ盛り上がった久川颯のオーディション

──長江さんの場合、オーディションはどのような形式で行われたのでしょう。颯と凪との合同でしたか?

長江:
 いえ、私のときは颯の単独オーディションでした。届いた資料には「双子アイドル」という情報はあったのですが、はーちゃんのセリフとビジュアルがあるだけで。新アイドルということもあって、凪ちゃんの見た目や性格はわかりませんでした

生田:
 凪の個性に変に引っ張られないようにって配慮だったのかな。

長江:
 そうかも。だから最初は「双子の妹」っていうふわっとした理解でした。演じかたも、クールタイプということで最初は少し大人びた感じで演じていたんです。

──今とはだいぶ雰囲気が違うような?

長江:
 セリフが増えていくうちに「この子クールタイプなだけじゃないかもしれない」ってどんどんかわいくなっていって……いまではおてんば娘みたいになっています(笑)。

 あ、あと、印象に残っていることといえば、オーディションの前にスタッフさんとの雑談の時間があったんですよね

──雑談、ですか。

長江:
 はい。突然ブースにスタッフの方が入っていて、私にめちゃくちゃお話を振ってくださって。いま思えばその雑談で私の人となりを見られていたんだと思うんですが……。

 当時の私はそれに全然気付かなくて「なんでこのタイミングでこの話をするんだろう?」「準備に時間がかかっているのかな?」と思って、ふだん通りの感じで楽しくおしゃべりしてしまいました。本当に、このままオーディションやらずに終わるのかな? と思うくらい盛り上がっちゃって

──そういう雑談ってみなさんあったんですか?

生田:
 私も雑談はありました。

梅澤:
 私もあったので、多分みんなあるんだと思います。

──なるほど。さきほど長江さんがおっしゃったように、雑談を通して人となりを見ているのかもしれませんね。

長江:
 今になって振り返ってみると、受かった決め手みたいなのは雑談だったのかなとはちょっと思っています。逆にそこしか心当たりがないです(笑)。

ブースの向こうを見たらスタッフさんたちが大爆笑していて

──生田さんが受けたナターリアのオーディションはどういう形式だったんでしょう?

生田:
 私のときは、佐城雪美ちゃん、遊佐こずえちゃん、夢見りあむちゃん、ナターリアの4人が候補だったと思います。

 どの子も魅力的なアイドルで、どのキャラクターのオーディションを受けるかすごく悩みました。それでみんなのことをたくさん調べてみて、ナターリアの底抜けの明るさや笑顔に特に惹かれました。この子とはずっと一緒にいられる気がするな、と思えたのがナターリアだったんです

──ナターリアといえばブラジル出身の女の子で口調も独特ですよね。

生田:
 ナターリアは語尾のカタカナなど特徴的なセリフが多かったので、どう演じようか、と家でずっと自分の声を録音しては聞き返しながら、いろいろなパターンを試しました。

 些細なニュアンスの違いで“カタコトをやってます”感が出てしまったり、逆にネイティブっぽくなりすぎてしまったり、海外出身の子を演じるって難しいな、と思い知りましたね。

 でも、オーディションでは自分らしく楽しく演じることができたんじゃないかなと思います。あとは、セリフの他に課題曲の歌唱審査もあって。

長江:
 課題曲は「お願い!シンデレラ」だった?

生田:
 そうそう。最初はできる限りかわいく歌ってみたのですが、そこでスタッフさんから「いまの曲を、ナターリアのようにカタコトで歌ってもらえますか?」と言われて

 さらに「生田さんができる最大限の元気な歌いかたで」というオーダーも加わって、「ええっ!?」と困惑しながらも、これはやるしかないと。

長江:
 うわー! そのときの音源聴いてみたい(笑)。どんな感じで歌ったの?

生田:
 いまでも鮮明に覚えているんだけど、歌い出しの「エヴリデイ どんな時も」は無駄にいい発音を意識してみたりして。「Everyday!!」って。サビも「おーねがイィーーー↑↑」って元気にやりすぎて声が裏返っちゃったり(笑)。音程とかリズムとかあったもんじゃないみたいな「おねシン」だった(笑)。

 そうしたらスタッフさんたちが大爆笑しているのが、ブース内からガラス越しに見えて。うーん、ウケてるみたいだしいいか! と思いながら、恥を捨てて全力で歌いました。

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