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平成のお騒がせ有名人“風船おじさん”はどこへ消えた? 巨大風船でアメリカへ向かったまま消息不明になった「ファンタジー号事件」を解説

 今回紹介する、事故と災害を解説するところさん投稿の『【ゆっくり解説】狂気の風船おじさん|風船でアメリカを目指して行方不明となってしまったファンタジー号事件』という動画では、ピアノ調律師の鈴木嘉和氏が、巨大風船でアメリカへの渡航を試みた「ファンタジー号事件」ついて解説を行っていきます。

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巨大風船で太平洋横断を目指す!?

霊夢:
 「ファンタジー号事件」は、1992年に発生した事件よ。「風船おじさん」、もとい鈴木嘉和氏。鈴木氏は「ファンタジー号事件」がワイドショーを中心にマスコミで大きく取り上げられ、「風船おじさん」という名称で呼ばれるようになったの。

 風船おじさんは1940年8月21日に東京都で誕生したわ。ピアノの調律師一家で、国立音楽大学付属高等学校を卒業後、風船おじさん自身もピアノ調律師になるの。

 その傍らで1984年、風船おじさんが44歳の時に音楽教材販売会社「ミュージック・アンサンブル」を起業。1985年には日比谷公会堂で音楽会を主宰し、その後も定期的に音楽イベントを開催していたんだって。それで音楽会のフィナーレには毎回風船を飛ばすそうよ。

魔理沙:
 このころから既に風船おじさんの傾向があったんだな。

霊夢:
 それから翌年の1986年には銀座で音楽サロン「あんさんぶる」を開店し、麻雀荘やコーヒーサロン、パブレストランなどもあわせて経営していたの。

魔理沙:
 音楽とは関係ない世界にも手を出していたのか。そんなんで経営がうまくいくとは思えないんだが。

霊夢:
 ええ、そのとおりよ。1990年、「ミュージック・アンサンブル」が4億から5億の負債を抱えて倒産。この倒産時には20人以上の債権者がいたようで、風船おじさんは借金苦に陥ってしまうわ。

魔理沙:
 正直、ここまできたら自己破産の道しか見えない。

霊夢:
 それが風船おじさんいわく、「ビニール風船26個をつけたゴンドラ・ファンタジー号で、太平洋を横断して借金を返済する」と、債権者たちに語っていたそうよ。

 では今回の動画の本筋であるファンタジー号事件について解説していくわね。事件が発生したのは1992年11月23日。風船おじさんは当時52歳。

 ヘリウムガス入りの風船を多数個付けたゴンドラ「ファンタジー号」の試験飛行を、琵琶湖畔で行うことにしたわ。

魔理沙:
 ファンタジー号ってどんな作りだったんだ?

霊夢:
 直径6メートルの主力となるビニール風船を4個、直径3メートルの補助風船を若干個、約2メートル四方、深さ約1メートルのゴンドラに装備していたわ。

 風船おじさんが乗ったゴンドラは海上に着水した時の場合を考慮し、浮力の高いヒノキを使用。このゴンドラを制作したのは「桶作りでは東京江戸川区の名人」と呼ばれた職人よ。

 ただ、この職人さんは木風呂の技術者であって、飛行船のゴンドラは専門ではないんだけどね。それでも作ってくれたんだからすごいと思うわ。

 ゴンドラは風船のガスが徐々に抜けて浮力が落ちるため、飛行時に徐々に捨て機体の浮上を安定させる、バラストと呼ばれるをおもりを用意していたわ。

 さらにそのおもりの中身は、厳冬でも凍らない沖縄焼酎の「どなん」を使用するなど、この力の入れようで本気度がうかがえるわね。

 ヘリウムガスは別の会社から調達し、280万円分のヘリウムボンベはトラック3台で運搬されたわ。この時使用された風船について、制作した会社は取材で「もともと人を乗せるものではないし、零下何十度にも達する高空に耐える保証もない」と答えているし、他にも「上空で気圧が下がると、球形の風船では膨らんで弾ける可能性」が指摘されていたんだけどね。

 そういった忠告は聞き入れず、風船おじさんは実行に移すわ。国土交通省は安全性に疑問があることから飛行許可は申請を受理していなくて、あくまで「地上に係留したままの試験飛行」という条件で受理していたの。

 そこでこの日の名目は「200メートルあるいは300メートルの上昇実験」ということで、風船おじさんは説明していたんだけど、「僕がもし太平洋横断を決行したら、マスコミが大騒ぎして家に押しかけてくると思う」と、家族にホテルに宿泊するよう事前に手配していて、風船おじさんは「実験」ではなく、「密かにアメリカまでの飛行を強行」しようと考えていたのね。

 風船おじさんを乗せたゴンドラは120メートルまで上昇し、その後いったん地上に戻ったんだけど、「いってきます」と言って、風船おじさんはファンタジー号を係留していたロープを外したのよ。

魔理沙:
 周りの人びっくりだろ。

霊夢:
 直後にフジテレビの取材班が風船おじさんに携帯電話で連絡を入れているわ。その時に風船おじさんは「ヘリウムが少し漏れているが大丈夫だ」と回答していて、ホテルにいる家族には、携帯電話で風船おじさんから連絡がきて、「風船の様子がおかしい」「思ったより高度が上がらない」「海に出た」「タバコを吸った」と言ったことを家族に語ったそうよ。

 翌朝6時に「素晴らしい朝やけだ。きれいだよ」「行けるところまで行くから心配しないでね」と奥様に伝えたそうよ。これを最後に風船おじさんの携帯電話は不通になったわ。

魔理沙:
 まさか海に落ちてしまったんだろうか。

霊夢:
 いえ、同日深夜にSOS信号が発信され、25日の8時半に海上保安庁の捜索機が宮城県金華山沖の東約800キロ海上で、飛行中のファンタジー号を確認したのよ。

魔理沙:
 無事だったのか。

霊夢:
 風船おじさんは捜索機に向かって手を振ったり座り込んだりしてSOS信号を停止。ファンタジー号の高度は2500メートル、高い時には4000メートルに達していたそう。

 海上保安庁は約3時間監視し続け、手を振っていたこと、ゴンドラの中のものを落下させて高度を上げたこと、遭難信号が消えたことから飛行継続の意思があると判断し、25日11時半に捜索機は追跡を打ち切ったわ。

 残された奥様は「ああよかった」と繰り返し、娘たちは「もうとっくにアメリカまで行っていると思ったのに、まだ宮城県沖なの」と笑い合っていたそうよ。

魔理沙:
 もうここまで来たら笑うしかないよな。

霊夢:
 でもここから風船おじさんの消息が一切途絶えてしまい、SOS信号が発信されることもなかったわ。心配した家族が捜索願を出し、12月2日に海上保安庁がファンタジー号が到着する可能性のあるアメリカ、カナダ、ロシアに救難要請を出したわ。

魔理沙:
 計算だとどのくらいでアメリカに到達すると予想していたんだ?

霊夢:
 ファンタジー号は「高度1万メートルに達すれば、ジェット気流に乗って40時間でアメリカに到着するはず」だったそうよ。

魔理沙:
 でも消息不明ってことは何かしらの問題が発生しただろうし、どこに行ってしまったんだろうな。

霊夢:
 このことが大きく報じられてからは、気象大学校、気象庁幹部、航空業論家を巻き込んで議論の的になったわ。

 最後に宮城県の金華山沖で発見されていることから、「ロシアのカムチャツカ半島あたりまでは達したのではないか」と推測されている一方で、風船については「1日10%ずつガスが抜けてしぼんでいく」「高空で外気圧が低くなって風船は膨らむが低気温にさらされ、柔軟性がなくなっているために割れる」といったように、海に着水している可能性が高いとされているわね。

魔理沙:
 無事家族のもとに帰ってくればいいが、未だに消息不明なんだっけ?

霊夢:
 ええ。未だにどこにいるか、生きているかすらわからないわ。こうして一時は話題になっていた風船おじさんとファンタジー号だけど、オーストラリアで新婚旅行中の日本人妻が失踪する事件が発生し、マスメディアの関心が移ったことやファンタジー号自体の話題が尽きたこともあって、すぐにニュースで見ることはなくなってしまったわ。

魔理沙:
 残された家族たちはどうなったんだ?

霊夢:
 風船おじさんの消息不明から7年が経った2000年、奥様が風船おじさんに対する「失踪に関する届出の催促」が官報に公告され、2001年2月1日付で失踪宣告が確定したわ。

魔理沙:
 失踪宣告が出されるとどうなるんだ?

霊夢:
 不在者、生死不明のものを死亡したものとみなし、そのものにかかわる法律関係をいったん確定させるための制度よ。

 「不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告をすることができると」民法第30条で制定されていて、人の生死にかかわる重要な判断が求められるため家庭裁判所が最終的な判断を行うの。

 これが確定すれば失踪人の相続が開始され、婚姻関係の解消なども行われるわ。

魔理沙:
 ご存命なら今80歳か。風船おじさんは今もどこかで生活しているんだろうか。いつか発見されるといいなぁ。

 この事件から30年近くが経過した現在も、その真相は謎に包まれています。解説をノーカットでご覧になりたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【ゆっくり解説】狂気の風船おじさん|風船でアメリカを目指して行方不明となってしまったファンタジー号事件

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