映画『カーズ/クロスロード』の魅力を元F1レーサーの片山右京が語る「子供だましの作品じゃない。心境描写はドライバーとして通じるものがある」
マックィーンにF1現役時代を重ねて
司会:
物語は進みまして、ジャクソン・ストームといったキャラクターに代表される新たな世代が台頭します。それによって、マックィーンは厳しい現実に直面して、人生の“クロスロード”に立つことになります。片山さん、このあたりはどうですか。
片山:
映画では最新のテクノロジーが組み込まれたライバルが出てきましたね。僕自身もF1を6年間やってきて、新しい才能を持った人たちが出てきました。F1っていうものが、どんどんスピードが上がっていって、コーナリング中に心拍数が180以上になるんで、体力が続かなくて。口で息を止めて、直線の時にハァハァって言って、またコーナーでブレーキを止めて……。
そういうことに、「何かまずいな」って思いながら、いつも追い立てられていました。でも、そういう時に「頑張れ」ってアドバイスや、応援してくれた仲間がいました。カーズの中にも、そういった役割のメーターっていうキャラクターが出てきましたね。やっぱり少しずつ、時代の移り変わりっていうのを、映画と同じように僕も感じていましたね。
司会:
貴重なお話をありがとうございます。
片山:
自分の最後の瞬間とか、自分がクロスロードに立ってた場面をせっかく忘れていたのに思い出して、だんだん息苦しくなってきちゃった(笑)。
片山:
憧れてこの世界に入った時に、セナがいて、プロストがいて、マルセルがいて、その後シューマッハが来て。今、どんどん時代が進んでいく中で、違うスピードが加速していくっていうこと、この流れから抗うことができない中で、自分がどう向き合うべきなのか、進んでくべきなのか……。
国沢:
この映画は、子どもは素直に見れると思うんです。人生経験の多い人ほど、だんだんのめり込んじゃって、自分と重ね合わせたりして、考えさせられるんじゃないかな。片山さんはF1の世界でトップの方だけど、どんな方でも、自分の限界や自分が引退の時に、新しい人が出てくるっていうのはあると思うんです。その時に何を考えて、どうしたらいいかと言うと、バトンタッチするっていうのが一番いいのかなって思いますね。