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丸川社長のお菓子とお茶、感情を丸裸にするサシ飲み…人と人との関係性をつなぐ食事シーンで振り返る『SHIROBAKO』の魅力

 2020年2月29日より、アニメで描かれた4年後が舞台となる劇場版が公開中の『SHIROBAKO』

 P.A.WORKSと水島努(監督)のタッグが生み出した本作は、アニメ会社で制作進行を務める主人公・宮森あおいをはじめアニメ産業に関わる人々の熱い生き様や苦境、そして感動を描写した群像劇である。

(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

 そんな『SHIROBAKO』が劇場版で帰ってきた! 変な話、これは見に行くしかない!

 というわけで、劇場版の復習がてら、久しぶりにアニメ『SHIROBAKO』を見返したのだが、その際に気づいたことがある。それは“食にまつわるシーン”の多さだ。

(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)
(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)
(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)

 ビールを抱えながら走るあおいのアップシーンでは、バックにカレーとラーメン。こちらへ振り返って手をスッと上げる安原絵麻の背景はピザとたこ焼き。サビへ突入して間もなくムサニの屋上でBBQを行うスタッフたち。

 などなど、アニメ1クール目のオープニングを見るだけでも、数多くの“食”が散りばめられている。無論、本編中も同様だ。

 そして、“食”という要素に意識しながら本編を見ていくと、新たな側面に目が向かうようになった。『SHIROBAKO』における食事シーンは、キャラクター同士の関係性をつなぐバトンのような役割を果たしているのではないか、と。

 そこで本稿では、アニメ『SHIROBAKO』全24話の中から、筆者の独断と偏見のもと、キャラクター同士の関係性をつなぐ尊くて心に染みる食事シーンをピックアップ。本作における“食にまつわるシーン”の側面を見ていこうと思う。

文/龍田 優貴
編集/竹中プレジデント

図星をつかれた心情を表すお菓子とお茶

 おそらく本作で最も食事シーンに関わりの深い人物は、武蔵野アニメーション(ムサニ)の社長を務める丸川正人ではないだろうか。

 第1話でOAチェックを心待ちにしていたスタッフにカレーを振る舞ったのをはじめ、お皿にタンマリと盛り付けたたこ焼きを運んだり、14時間にも及ぶ会議で疲れた関係者をねぎらうため、焼き餃子を持ってきたりと、じつに5回以上も手料理をこしらえている。

(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)

 ここでとくに注目したいのは、第20話の丸川社長と平岡大輔の会話シーンだ。この平岡、テキトーな仕事を続けていた結果、「第三飛行少女隊」(以下「三女」)にて演出を手がける円宏則と衝突し、あわや暴力沙汰一歩手前の騒ぎを起こしてしまった。

 そんな彼を一室に迎えた丸川社長は、普段と変わらない態度でお菓子とお茶を差し出す。そして静かに「図星だったんだよね?」と、問いかける。

(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

 円から言われた言葉、「お前なにもないよな」「いつもいつもつまんなそうで」「雑な仕事で手を抜いて」、この言葉に対して図星だから腹を立ててしまったんだよね、と。

 この思いがけない言葉の前に、食べていたお菓子で喉を詰まらせる平岡。はっきり言葉にはしていないが、彼の様子から察するに丸川社長の指摘は間違っていなかったのだろう。

 自身の内に秘めていた感情を見抜かれた平岡。直接のキッカケは先の喧嘩だが、丸川社長と対話したことで彼はここから、アニメ業界に身を置き続ける自分の気持ちを再認識することになる。

互いの感情を丸裸にするサシ飲み

 第22話に描かれたふたつのサシ飲みは、個人的に強く印象に残っている食事シーンだ。

 ひとつは、新川奈緒(色指定)と堂本知恵美(動画検査)ふたりのサシ飲み。制作現場の現状に始まり、制作進行に対する一種の愚痴話が花を咲かせる。ふたりはため息を吐きつつも、卓上に並んだ大根に厚揚げ、牛すじを頬張り、日本酒とビールで喉を潤す。

(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

 もうひとつが、作中最高クラスのトラブルメーカー高梨太郎と、上記の丸川社長との対話を経たばかりの平岡とのサシ飲み。女性ふたりが屋台のおでんでお酒を進める一方、男性ふたりはチェーン店のカウンター席で枝豆をつまみながらビールとハイボールで乾杯。

 酒が進むにつれ、過去の制作現場で経験した身の上話を打ち明ける平岡。その話を聞いて思わず涙ぐむ高梨。最後は酔っぱらい、地面に座り込みながらも、お互いの大いなる野望を語らう……。

(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

 アルコールのおかげと言うべきか、両ペアの本音が浮き彫りになっているように感じるのがこれらのシーン。

 堂本と新川は仕事の山場を迎えるにあたり、死地をくぐり抜ける戦友として認め合う。高梨と平岡も距離が縮まったことで関係性が変化。「職場仲間」から高梨の言う通り、「最高のバディ」として互いに歩み寄った。

アニメ人のカタルシスが放たれる打ち上げ

 仕事終わり、深夜に帰宅したあおいは、冷蔵庫の上に載せた電子レンジへ海苔弁当(398円)を放り込む。

 怒涛のようにつぎつぎ生まれてくる業務に、突然のハプニング、華やかに見えても、あおいの携わっているアニメ制作という仕事は過酷で忙しい。時間もないしお弁当を買ってサクッとご飯をすませる、アニメ制作に携わっていなくても、身に覚えのある方は多いのではないだろうか。

(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)

 それくらい人生をかけてアニメを作っている面々。そんなストイックな彼らのちょっと別の姿を見られるのが、作品が完成した後に行われる打ち上げだ。

 ムサニで働く制作スタッフ、作品のプロデュースに勤しむ関係者、キャラクターに命を吹き込む声優陣……と、数え切れないほどの人々が一挙に集う打ち上げ会場。

 彼らが完パケを作り終えて満足げに飲み食いする光景からは、満足感と達成感に加え、ひと言で言い表せない“アニメ人のカタルシス”が放たれている。総菜弁当と打ち上げ、このシーンの対比が心に染みる。

(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

あおいたちの生き様をすぐそばで見ているドーナツ

 今回のテーマとは少しそれるが、『SHIROBAKO』で“食”といえば、あおいの大好きなドーナツは絶対に欠かせない。

 本作のファンなら、メインキャラクター5人による「どんどんドーナツどーんと行こう!」のシーンがまず思い浮かぶだろうが、そんなドーナツは、彼女たちのアニメ制作をひたすらがんばるその姿をすぐそばで見ている存在でもあるのだ。

上山高校アニメーション同好会で活動しているときのあおいの手にはドーナツ。
(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)
原画をすべてリテイクされ落ち込んでいる絵麻とそれを励ますあおいの会話。絵麻が自分の悩みを吐露するシーンでもドーナツの姿が。
(画像は「SHIROBAKO」1話~12話振り返り一挙放送より)
図書館で偶然あおいと出会った今井みどり。ドーナツ片手にかわした何気ない会話を経て、みどりは脚本家への第一歩を踏み出す。
(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)
24話ラストの打ち上げ会場。アニメ同好会のメンバーは第1話と同じ構図でドーナツを掲げる。
(画像は「SHIROBAKO」12話~24話振り返り一挙放送より)

 冒頭でも述べたが、筆者が思うに『SHIROBAKO』の食にまつわるシーンの数々は、“キャラクター同士の関係性をつなぐバトンのような役割”を果たしている側面がある。

 5人の絆をつなぎ続けるドーナツはもちろん、上述したサシ飲みやお弁当、打ち上げだって、本作の魅力を語るうえで重要なファクターだと感じた。

 ちなみに本稿では取り上げられなかった食事シーンは、他にもまだまだある。高梨と円が訪れたラーメン屋。ケチャップでイラストが描かれた絵麻の特製オムライス。飲み屋で酔っ払う大蔵に仕事の提案を申し出るあおいなどなど……。劇場版公開を機にあらためてアニメ『SHIROBAKO』を見る、もしくは初めて見ようとしている方は、ぜひぜひ本編中の“食”にも注目してみてほしい。

▼『SHIROBAKO』一挙放送視聴はこちら▼
「SHIROBAKO」1~12話一挙放送

「SHIROBAKO」13~24話一挙放送

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