ボカロP・ゲームクリエイター・小説家etc…ネットで活躍するクリエイターの“著作権使用料の回収方法”について専門家が解説
NexToneなら、サブパブリッシャーも紹介してもらえる
仁平:
実はJASRACさんの講義の時、最後に実に気になる事を言って頂いて。今の検討課題なんだけど、「海外サブパブリッシャー分だけ出版社に預けて、国内の方はJASRACメンバーに」という様なお話を頂いたんですね。
それを今後、検討していくと。それが出来ると、海外の徴収精度が上がるし、国内は国内でJASRACメンバーで、オートマチックにJASRACさんの演奏権から何から、スッと取って貰うっていう事が出来て面白いなって。素人考えなんですけど、今パッと思ったんですよ。
なので、この『サブパブリッシャー』っていうのが、1つキーワードになるんですが、実は、なぜ伊藤さんにお声掛けをしたかのもう1つの理由として、伊藤さんの所にお願いすると、『サブパブリッシャー』も紹介してくれたりするんですよね?
伊藤:
そうですね。先程もお話した通り、まだNexToneは、管理事業者としては直接、海外徴収が出来ていません。準備は進めていますが、現状、まだその対応が出来ていないという所がありますので、「代わりに……」と言っては何ですが、アジア地域に関しては、『サブパブリッシャー』の関連会社を用意して、権利者の皆様にご提供しています。
仁平:
アジア地域っていうのは、実はボカロPさんにとって、今、とてもターゲットじゃないですか?
かにみそP:
そうですね。
仁平:
なので、そこは僕らとしても是非ボカロPさんが海外で、特に東南アジア、中国、香港、韓国で展開しているボカロPさんや歌い手さんが多いんで、ボカロ楽曲がそういった場所で使われた時の徴収精度を上げるという意味で、「『サブパブリッシャー』を立てた方が良いですよ」と言うのであれば、それを僕らもどんどん推薦して行きたいなと思っていたりする訳ですよ。
伊藤:
じゃ、そこの説明をする前に、もう1ページ、間にありまして。なんで『サブパブリッシャー』が必要なのか、先程もお話しましたが、JASRACさんの相互管理契約で戻って来る演奏使用料については、基本、個人信託者分がメインとなっています。一部、国によって例外はあるという事ですが、個人信託していない作家分については、そもそも分配されないケースが多いという所で、正しく使用料を回収する為には『サブパブリッシャー』と契約して、現地作品と同じ扱いを受ける必要がある。
仁平:
これは先程のJASRACさんの時にも教えて頂いた話ですよね。
伊藤:
では、『サブパブリッシャー』が何をやってくれるんだ? という所を、もう少し細かくお話をしたいと思います。まず、現地の管理団体への作品登録をしてくれます。作品登録をする事によって、現地の内国曲、現地曲と同じ扱いを行って貰えるになり、使用料の受領を『サブパブリッシャー』がきっちりと受けるという事が出来ます。
テクニカルな所で『サブパブリッシャー』がどこまでやるかによりますが、作品登録をする時に、例えば平仮名とか漢字で作られている日本語の曲というのは、そのまま現地には登録出来ないですよね?
仁平:
それはそうですね。
伊藤:
そうすると、それをローマ字形式に変えて登録をするか、または英題を付けてとか、中国語タイトルを付けて、という事をして登録をする必要があります。そうしないと、結局著作権管理団体って、メインはテキストでマッチングを掛けますので、当たらないんですよね。
ですので、仮に中国の投稿サイトで楽曲を配信されている時に、その曲の曲名がどう表示されているか、結構これって知っておく事が重要で、その国では全然違うタイトルで流れていたりする事があるので、その曲名をちゃんと登録しておく必要があります。
仁平:
かにみそさんの曲だったら、『ダンシング☆サムライ』は恐らく英語でも『Dancing ☆Samurai』だろうけど、中国語で何と呼ぶのかが分からないよね。それと『はたらきたくないでござる』は、そもそも英語圏で何て言われているのか、分からないですよね?
かにみそP:
僕も何て言われているか分からないですね。
仁平:
本当にそのままローマ字読みで『Hatarakitakunaide gozaru』って言われているのか、『I don’t want to work』みたいな……。
伊藤:
ボカロ系って、翻訳された物が、別にアップロードされるじゃないですか? それで、アップロードした人が付けた翻訳タイトルが、メインになっちゃう、というのが多い気がするんですけど。
仁平:
そしたら、もう分かんないですよね。その知識が無ければ、絶対分からないですね。成程、『パブリッシャー』は、それをやってくれるんですね。
伊藤:
そうですね。後、そんな時も『コンテンツID』をやっておくと、紐付くので、海外でもマッチはしますね。
仁平:
『フィンガープリント』は言葉関係ないから! はぁ~、便利だ。
伊藤:
ちょっと話が戻りまして、『サブパブリッシャー』の主な業務、2番目の利用開発、プロモーション、これは国内の音楽出版社と一緒です。当然預かるからには、それをちゃんとプロモーションして、少しでも使われる様にという事を行います。次に3つ目、利用者からの使用料の直接徴収、先程説明しましたが、この『サブパブリッシャー』は、国によっては利用者から直接使用料を徴収をします。
ですので、国によっては徴収率、額の中でも非常に多くを占める所もありますので、直接徴収の制度という物も、『サブパブリッシャー』を選ぶ上では非常に重要な所になって来ると思います。そして次に、権利者不明曲の調査。これも国によって異なっていますが、少なくともアジア地域、台湾とかでは、利用者から報告された利用データの中で、マッチングしないで権利者が不明な物は、管理団体から音楽出版社に「この曲誰の?」ということで、データが回ります。
権利者である音楽出版社が手を挙げると、その中から自分達の管理している作品を見つけて、使用料の分配を受けるという様な事をやっているので、実は単純に使用料の分配を待つだけではなくて、音楽出版社は自らこのマッチングの技術を使ってマッチングの精度を上げるという事が、腕の見せ所という所になっています。後は最後に、『オリジナルパブリッシャー』。これは日本の音楽出版社ですね。ここ対しての分配業務、送金業務。こういったところが『サブパブリッシャー』の主な業務になっています。
仁平:
これはもうサブパブを立てないと駄目だなと思って来ました。特に平仮名の楽曲の、平仮名タイトルの曲とかね。でも、ボカロPさんは海外サブパブとのコネクションは無い。さて、どうしましょう?
伊藤:
NexToneの『サブパブリッシング』のサービスのご紹介になります。一応グループ会社で台湾にワンアジアミュージックという会社を設立しています。日本の代表音楽出版社からの依頼を受けて、アジア地域に於けるサブパブリッシング業務を行っています。
管理地域は、台湾、香港、中国、マレーシア、シンガポール、タイ、韓国、インドネシア、その他地域としては、全世界管理出来る様な体制を整えています。その他全世界となっている所は、更に提携している『サブパブリッシャー』が居ますので、そこでワールドに契約をして、一応全世界管理を出来る様な体制にはなっています。
仁平:
流行っているボカロの楽曲は、とりあえずここ入っていますね?
伊藤:
入っています。一応ワンアジアミュージックですが、メインは台湾、台北に会社があります。香港と中国、中国は深圳にも支社を設けていますので、香港はキャッシュ、中国はNCSCに作品登録をして管理をするという様な事も出来るようになっています。
仁平:
成程。
伊藤:
ですので、日本の音楽出版社さんで、『サブパブリッシャー』が、なかなか見つけ辛い、見つかったとしても、言語の問題で中々進まないという様なケースを良く聞きますが、これは、うちの日本人のスタッフが常駐して業務も直接やっていますので、やりとりは勿論ですし、例えば、「ここの国のこの地域、この利用者がうちの曲を使っているんだ」と、いう様な事を、直接言って頂ければ、そこに対してアプローチをして、使用料徴収を行って行きます。そこに対してアプローチをするという事は間違いなく行えますので、そういった所で、使用料の徴収回収の精度を高めて行くという事のお手伝いを行っています。
仁平:
かにみそさんどうですか? さっきの『JASRACメンバー』という言葉も面白かったし、今回の『サブパブリッシャー』も良い。当然『コンテンツID』も。『コンテンツID』はやり始めたからあれだとしても、『サブパブリッシャー』。
かにみそP:
これ、すごく魅力的ですね。これ日本語で全部やりとりは出来るっていう事ですよね。
伊藤:
そうですね。
かにみそP:
英語が全然出来ないんで凄いですね(笑)
伊藤:
ちょっと億劫になっちゃいますもんね。
かにみそP:
中国語とか、もっと出来ないから(笑)。
仁平:
だから、オートマチックで、その海外の管理団体が集めてくれるのを待っているだけだと、集まらない可能性もあるし、徴収出来ない可能性が高い。特に名前が日本語、平仮名とか漢字の場合には、その国で何と呼ばれているかも分からないから、そもそも取りようが無い可能性もあるよと。
後、不明な楽曲を取りに行くにしても、サブパブが無ければ、それを取りに行くという事も出来ないし、一部の楽曲は、サブパブが直接取りに行けるって言うんであれば、サブパブが無ければ取りに行けない可能性も高いよって事ですよね。やっぱり、海外展開を狙っている楽曲に関しては、サブパブは考える必要がありますね。
かにみそP:
そうですね、真剣に考えます。
仁平:
これも今日こういう中での短い時間なので、また別途この辺りも細かく教えて頂きたいですよね。
伊藤:
そうですね。
JASRACとサブパブリッシングのいいとこ取りがしたい!
仁平:
僕らは、JASRACさんに先程お話して頂いて、今も見て頂いているので、中々言い辛い部分もあるんですけど、“JASRACさんとNexToneさんの良い所取り”って言うのは失礼ですけど、ボカロPさん目線で考えた時に、どちら様と、どういう形でお付き合いすれば、かにみそさんにとって一番ベストなのか。今日来てくれたクリエイターでは、せらみかる君にとっては、どっちがベストなのか、EasyPopさんにとって、どういうベストなのか、というのを考えていきたいので、その為には、僕らももっともっと勉強しなきゃいけないなと思いました。
だから、今日の1日通しての講演会だと、JASRAC様から教えて頂いた、「JASRACメンバーで」、NexTone様の方から教えて頂いた『サブパブリッシング』後は、『コンテンツID』。これは絶対やった方が良いなと。後は「フィンガープリント登録しておこう」とかね。まだまだ勉強しなきゃいけない事が沢山あると思います。ちょっと今日、割と難しい話になっちゃったので、コメントが少なくなっちゃったんですけど、思った事、もし聞いている方が書いて頂ければ、それを僕の方も読んで、今後、クリエイターさんとお話する時、僕自身が考えなきゃいけない事の参考にもしたいので、是非宜しくお願いします。
会場には、今日は実は大人の方しかいらっしゃらないんですが、何かご質問とか何かございます? 特に大丈夫ですか? ネット見ている方でも何か……。大丈夫ですかね? ちょっと難しい話になっちゃったんで、ちょっとこれは、1回また僕らの方で、また考え纏めて、またご質問させて頂いたり、こういう場を作らせて頂いたりしたいと思います。かにみそさん、どうですか、最後ちょっと閉めの纏め頂ければと。
かにみそP:
結構クリエイター側からしても、利用者側からしても、こういう著作権の管理団体って、凄くありがたいですね。最初の方は、僕、アンチJASRACだったりしたことがあって、仁平さんとも結構揉めた記憶があるんですけど(笑)。
仁平:
そんな事、ここで言わなくても(笑)。
かにみそP:
それが今となっては特に、利用している人から然るべき料金、利用料を取って頂けるっていう所は凄く、ありがたかったりしたり、利用する側からしても凄く簡単に使用している楽曲の権利者の方にお金を支払う事が出来るっていうその仕組みがありがたいんですね。
仁平:
日本のこの仕組み凄いですよね。だって先程もJASRACさんの時にもお話があったんですけども、海外は演奏権と録音権の2つ位しかない。でも日本って、11の支分権がある訳ですよ。なのでそこだけでも全然違う。
かにみそP:
すごく細かいですよね。
仁平:
だからこれは、僕らも、もっともっと勉強して、逆にもっともっと、高度な質問をJASRACさんやNexToneさんにどんどん出来るようにしたいなと思いますね。伊藤さん、そんな形でしたが、時間が本当に少ない中で、色々ありがとうございました。
伊藤:
いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。
仁平:
伊藤さんにもう一度大きな拍手を。ネットの方も拍手宜しくお願いします。かにみそさんもありがとうございました。これをもちまして、JNCA、29日の講演会を全て終わりにしたいと思います。来場して頂いた方、スタッフの方々、皆さん、どうもありがとうございました。