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“平成を象徴する漫画”とは?『ONE PIECE』『名探偵コナン』『うしおととら』…歴史に残る名作の魅力に迫る【漫画で振り返る平成】

 「漫画で振り返る平成」【※】と題したニコニコ生放送にて、数々の漫画雑誌に連載された作品から、出演者らが思う平成を象徴するであろう“漫画”について語り合われた。

 ここでは、『うる星やつら』『名探偵コナン』『うしおととら』 『ラブひな』『金田一少年の事件簿』『SLAM DUNK』『るろうに剣心』『ONE PIECE』について語られた部分をピックアップして紹介していく。

※「漫画で振り返る平成」
番組の正式タイトルは「元サンデー編集者も出演【漫画で振り返る平成】~出演:さやわか、大井昌和、武者正昭~」。批評家・漫画原作者のさやわか氏、漫画家の大井昌和氏、元サンデー編集者・comico編集長の武者正昭氏らが出演。2019年3月31日に放送された。


平成のキャラ文化につながる『うる星やつら』文脈

さやわか:
 これ(『うる星やつら』)完全に昭和ですよね。

大井:
 始まったのも終わったのも昭和です。ただ、平成のキャラ文化っていうのは全部これに入っているってことが言いたくて。

さやわか:
 そうですよね。

大井:
 もし、平成生まれの方がいたら、『うる星やつら』だけは読んでほしい。

 『けいおん!』とか『涼宮ハルヒの憂鬱』、あと『AIR』(エアー)とかギャルゲー好きなのであれば、まずこの高橋留美子版の『うる星やつら』を読んでからそういう文化に触れてもらえると、日本のキャラ文化というのが80年代に1回、高橋留美子が“バンッ!”と作って、それを受けて90年代、平成のカルチャーが始まったんだってことをね、ちゃんとわかってほしいということだけを言いたくて。

さやわか:
 “わかってほしい”とか“言いたくて”って、魂でしゃべっている感じが。

大井:
 いや、これもまた押井守が悪くて(笑)。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は確かに超傑作なんだけど。

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』
(画像はAmazon | うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD] | アニメより)

さやわか:
 いや、傑作傑作。もう、あれ人類史に残る傑作ではあるのだけれども。

大井:
 人類史に残る……。むしろ映画史を語るときには『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が絶対に入る。

さやわか:
 出てくるんだけれども、しかし!

大井:
 『うる星やつら』っていうと難しくなってくる。

さやわか:
 難しいんですよ。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』はよくないよって話ではなく。

大井:
 そう、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は超最高であると。

さやわか:
 超最高なんだけれども。一方で、じゃあ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』っていうか、押井守が最高だとしたら、じゃあ高橋留美子はなにをやった人なの? ってことが見えなくなってくる。

大井:
 全部語られなくなるっていうか……だからアニオタが押井守を持ち上げすぎているのが悪いんですよね。

 押井守と高橋留美子、どちらが偉いかと言ったら高橋留美子のほうが偉いに決まっているわけなんですよ。

さやわか:
 それはそうですよ! そして「女性性の問題ですね」ってコメントがありましたけど、その通りだと思いますよ。

大井:
 だから俺は子供のころ、テレビアニメの『うる星やつら』はあまり入り込めなかったんですよ。

 「なんでかな?」って子供のころわからなかったんですよね。絵も綺麗だし、声優の平野文さんの声もすごく好きだったし、OPの歌とかも超最高だったのに。なんでダメだったんだろうって大人になってから見てみたら、あれは男のアニメになっているんですよね。

さやわか:
 うん、そうですね。

大井:
 『うる星やつら』は女性目線で描かれた少年ラブコメだったからよかったのに、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は男性目線の男性ラブコメなわけですよ。むしろ『ラブひな』に近い、そこが俺の中でなんか……。

 アニメがちゃんと出来のいい二次創作とも言えるわけなんだけれども。

さやわか:
 出来のいい二次創作っていうのはいい言いかたですね。

大井:
 だから、その辺でみんなアニメ『うる星やつら』をわかった気になってもらわないで、ぜひ高橋留美子先生の『うる星やつら』を。

武者:
 オリジナルを?

大井:
 オリジナルを! というか原点。

さやわか:
 原点。これホントおもしろいので……しかしこの表紙ヤバいなぁ。

大井:
 ヤバいでしょ!

さやわか:
 この太陽とかね……。

大井:
 カッコよすぎだっていうね。日本の平成キャラ文化はこれで始まっているので。……わかるかなぁ。

さやわか:
 いや、これはおもしろいですよ。でも、中盤とかも結構儚い感じになってきて、それはそれで好きなんですよね。みんな嫌うんですけど、僕、因幡(いなば)君が好き。みんな嫌うんですけど。

大井:
 (笑)。さやわかさん因幡君好きですよね。

さやわか:
 因幡君、というか三宅しのぶが好き。

大井:
 まあ、あれはしのぶのために用意されているキャラですよね。

さやわか:
 僕の中では結局この作品は三宅しのぶの話なので。異星人が登場するような奇想天外な男性向けラブコメが始まってしまい、彼氏がそれにハマってしまったあとに、普通の人間はどう生きていったらいいか? という物語だと僕は思っていますね。

大井:
 確かにサクラ先生も日本の……普通の人間じゃないもんね。いやぁ、女性がエネルギッシュだよね。

さやわか:
 だから、いまや女性性みたいなことが言われるいまこそ、高橋留美子……いや、高橋留美子にフランス人とかが賞をあげてるべきではないでしょう。勲章とかをあげるべき、日本で。

大井:
 いや、そうなんだよ。日本人が評価していない時点で「この国終わっているな」ってわけなんですよ。

 いまでこそジェンダーの問題だって言ってるわけじゃないですか。この中に竜之介ってキャラがいるわけですよ。竜之介ってキャラは、女の子だけれども、男の子に育てられたみたいなやつで、自分は男だと思っているのに、女の体っていう。そんなのを80年代に描いてるわけですよ、しかも、これを重く描くわけでもなく、ギャグで描いているわけですよ。

さやわか:
 実際に高橋留美子先生は、あの竜之介とオヤジみたいなキャラができてから、この漫画もうちょっと続けようと思って楽しくなって描いたって言われてますね。

大井:
 あんなの昭和に描けないよ普通。

さやわか:
 平成のキャラ文化を準備していた。

大井:
 全部用意してくれたのが高橋留美子先生です。

殺人ラブコメ『名探偵コナン』で描かれる女性の強さ

さやわか:
 そして『名探偵コナン』。これも『うる星やつら』から始まっている話ではあるんですけども、完全なラブコメなんですよ!

大井:
 そう! これ、さやわかさんに言われて「確かに」って思った。

さやわか:
 そもそも『名探偵コナン』の映画って女性の視聴者がめちゃくちゃ多いとかって言われてて、それは「BL的な文脈だろう」とか、「夢女子が見てるんだろう」とか思ってる男性もいると思うんですけど、そういうバカにした考えかた自体が間違っている。そもそも映画って、どの作品を見ても観客動員数の6割が女性らしいんですよ。

 そう考えると『名探偵コナン』みたいな女性をメインターゲットとして据える作品、つまりラブコメですよね。それが映画のトップを取っていくというのはもはや当たり前の話で。

 かつ、これはラブコメなんだけれども、男性向けラブコメの起源としてよく言われる『翔んだカップル』と『うる星やつら』、つまりマガジン系列とサンデー系列という風に考えると、明らかにサンデー系列のやつなんですよ。

『翔んだカップル』
(画像は翔んだカップル 第1巻 | 柳沢きみお |本 | 通販 | Amazonより)

大井:
 完全にサンデー系列ですね。

さやわか:
 つまり、基本、「強い女の子」に許され、場合によっては守られるみたいなストーリー。柳沢きみおさんは、『翔んだカップル』の直前にチャンピオンでもラブコメの原型になる漫画を描いていて、それはどちらかというと『男おいどん』のような、ひとり暮らしモノみたいなやつ?

 で、どちらかというと「ひとり暮らしって辛いな」とか、男の自立みたいな話にプラスして、女の子との同居っていう要素が入ってくる。

『男おいどん』
(画像は男おいどん(1) (週刊少年マガジンコミックス) | 松本零士 | 少年マンガ | Amazon.co.jpホーム | Amazonより)

大井:
 他の作品(すくらんぶるエッグ)でも、そこに彼女がやってきて、なにかしようとするとお父さんがはしごから見ている……みたいなね。

さやわか:
 そうそう(笑)。だから、どちらかというと男の視点というか、男の強さみたいなテーマをマガジンのラブコメって根本では持っちゃっているのだけれども。

 ところが『うる星やつら』から始まるサンデーのラブコメ、いや正確にいうと『うる星やつら』とあだち充さんなんだけども、つまり『ナイン』や『みゆき』から始まるわけですけれども、もう少し女性性の感覚が強いんですね。男性的なリアリズムの感覚じゃない。だいたい、この女の子は、そもそもキャラクターなんだってところから始まるわけなんですよ。

大井:
 そうなんですよね。宇宙人だからね。宇宙人がトラのビキニを着て、空を飛べるんだからしょうがない。人間っぽさゼロなわけですよ。

さやわか:
 で、一方でおもしろいのが、高橋留美子さんとあだち充さんは、どっちも劇画っぽい絵柄だった人だったんですよ。それが、こういう絵柄を獲得したことによって、アニメ化されたときに爆発的に売れるんですよね。

大井:
 両方ともアニメ化でかなり……。その前から漫画でも売れてたんだけども。

さやわか:
 そのアニメで売れたものを、自分の作品にドンドン取り込んでいったことによって。

大井:
 高橋留美子先生は絵がアニメっぽくなりますからね。

さやわか:
 そうそう。オタクが好きそうなAラインのワンピースとかを女子キャラに着せたりとかね。

大井:
 ランちゃんとかね。

さやわか:
 だからサンデー系はアニメやアニオタとの親和性がすごい高くなっていくんですよ。その路線を引き継いで、青山剛昌さんだとか、椎名高志さんとか、ああいう人が出てくると。

大井:
 椎名高志先生の場合は、高橋留美子ラブコメの男性側の直系みたいな人だけど、青山剛昌先生の場合は少女漫画文法でのラブコメみたいな感じですよね。

さやわか:
 彼の初期作品とか読むと『まじっく快斗』とかは「女の子と大人しか読んでいない」って担当に言われて、「じゃあ男子が読むやつ描くよ」って描いたのが『YAIBA』だと。

『YAIBA』
(画像はYAIBA(1) YAIBA (少年サンデーコミックス) | 青山剛昌 | 少年マンガ | Kindleストア | Amazonより)

 『YAIBA』は男子に大当たりしたんだけれども、じゃあ男子も女子も、どっちもつかもうと思ったのが『名探偵コナン』で、だからこれは完全なラブコメなんです。本人が“殺人ラブコメ”って言うぐらいですから。しかも、90年代というか平成になってからラブコメ文化というのは、漫画に限らずものすごく伸びていて。

 ラブコメってなにか? っていうと、恋愛を「結果」ではなく「経過」で楽しむものなんですね。この時代からそういうものが日本中で、たとえばテレビドラマとかではやり始めるわけですね。なんていうか、王道ですよね。だから『名探偵コナン』は最高って話なんですけど、そして、だからこそ『名探偵コナン』こそ“平成”なわけですよ。

 しかしこれは逆に言うこともできるんです。女性読者にウケてる作品だから現代的だ、みたいな話ですけれども、よく考えるとコミケの参加者だって元々女性のほうが多かったわけじゃないですか。男性でも、24年組【※】の少女漫画とかが好きな人がたくさん来ていた。つまり女性作家とか女性向け作品のほうが、漫画文化とかいわゆるオタク文化では本来メインだった可能性すらあって。

※24年組
昭和24年ころの生まれで、1970年代に少女漫画を描いた日本の女性漫画家たちを指す。萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子、山岸凉子ら。別称「花の24年組」。

大井:
 二次創作的な物は女性的なのがスタートとしては多かったように思いますね。

さやわか:
 多かったわけですよね。キャラクター文化だって女性向け作品とか女性作家とか女性読者のほうがリードしていたところがあった。それの変形として萌え文化とか、男性の好きなエロティックなものだったり、ロリコン漫画とかってものが成立したわけだから。

 それなのに、いまになって『名探偵コナン』の映画とかを見て「まあ女子が騒いでいるだけだろ」みたいな言いかたをするのはおかしいというか、あんたの方がお客さんなんだから男性本位の目線で語るべきではないっていうか、これはむしろ女子目線で楽しむしかない、という風に僕は最終的には思いました。

大井:
 だから、コンテンツに「女子入って来るな」っていうのはよくわからないですよね。

さやわか:
 そうなんですよ。男女の関係については『名探偵コナン』って、原作の第5話ぐらいに本当にいい話があるんですよ。

 かいつまんでいうと、江戸川コナンが犯人から殴られそうになるんです。それを毛利蘭に助けられるわけですね。蘭は強いから、コナンを助けるわけですよ。しかし、そうするとコナンは「女の子に助けられるなんて、これじゃ立場があべこべだぜ、なんとかしなきゃ」って言うんですよ。蘭はそんなことべつに望んでいないのに。これはつまりパターナリズム、父権主義なわけですよ。

 ところが、結局コナンはこのときしかそれを思わないんですね。最終的にサンデー式のラブコメだったからこそ、助けられることをすぐに認めていくんですよ。

大井:
 1巻だからまだそういう“揺らぎ”もあるみたいなことなのかもね。

さやわか:
 1巻はあったんですよ。で、どんどん助けられるっていうか、女の子が強いっていうことを積極的に認めていくのが、サンデーラブコメだったことのよさ。

 だから女性ファンが多いのもうなずけるというか、“蘭ちゃんカッコいい”みたいな読者っていっぱいいるんですね。そして実際、蘭は最強ですからね。いまや劇場版では、至近距離から撃たれた銃弾を避けてますからね。

大井:
 そこまでレベルアップしましたか! さすが空手家(笑)。

さやわか:
 一方で、コナンは戦う力って、阿笠博士のキック力増強シューズぐらいしか持ってないんですね。そこがよかったんだと思います。「女の子のほうが強くたって別にいいじゃん、むしろ助け合ってなんとかしようよ」という漫画なんです。それがいまの時代を捉える理由はあると思う。

大井:
 だからそれを平成でやってたってことですよね。

さやわか:
 そう。多分、青山剛昌さんも気づいてなかったと思うんですよ。なんとなく「これじゃあべこべだぜ」って書いちゃったのもやっぱりそのせいだし。

 あと、もともとこの人は黒澤明監督が好きだったり、モンキー・パンチが好きだったりするんですね。だからやっぱり父権的なハードボイルド的なものがすごい好きなんです。だから唯一この作品の中で昭和的な男性像をもっている人として、毛利小五郎が出てくる。

大井:
 あれはほんとにダメな昭和親父だよね。

さやわか:
 あれは、ダメな昭和親父っていうのをやっているんですよ。

大井:
 だから使い物にならないと(笑)。

武者:
 ヒーローとヒロインの恋はいつも切ないでしょう?

さやわか:
 そうなんですよ。『君の名は。』みたいな感じですよ。

『君の名は。』
(画像はAmazon.co.jp | 【HMV・Loppi限定】「君の名は。」 Blu-ray スタンダード・エディション +ICカード付き DVD・ブルーレイ – 神木隆之介, 上白石萌音, 成田凌, 悠木碧, 島﨑信長, 新海誠より)

大井:
 『君の名は。』をずっとやってるかのようなね。

武者:
 そうそう、ふたりの恋は全然進展しなくて、いつもこう、ずっとすれ違いなんですよね。そこもまたうまい。

大井:
 うまいですよね。それで90何巻行けるってわけですからね。

さやわか:
 この間ようやく付き合い始めましたとかってネットニュースになってましたからね。おせーよって(笑)。

大井:
 (笑)。ようやくですよ。

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