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「狂ってると感じて貰いたい」──ポプテピ「星色ガールドロップ」予告コーナー監督・山元隼一が語る”短編アニメ製作の仕掛け”【アニメ『おとなの防具屋さん』監督×プロデューサー対談】

限られたカット数で何を表現するか

──短編アニメだとオープニングとエンディングを抜いたら本編は数分、この時間内で物語を作るときに大事になってくるポイントはどこですか?

山元:
 カット数も必然的に制限されるのですが、この制限されたカット数で何をどう表現するかが重要です。

 状況説明は最低1カット必要で、リリエッタが登場するカットは必須、そのうえで見せ場だったりインパクトがあったり、思わずスクショしたくなるようなキラーカットを作る必要があります。空気になってしまうので。

福留:
 後は笑えるシーンを1話に2~3回は入れたいですね、とも話していました。

山元:
 そうですね。そういう要素を活かすためにもテンポよく見せていくのが大事です。ひとつひとつ丁寧に説明していたら時間に収まらないので、ある程度視聴者は知っている前提で山場をポイントポイントで置いていきます。

福留:
 たとえば、RPGなどのゲーム内では、HP(ヒットポイント)のゲージが尽きたらキャラクターが倒れるとか、灰色の状態はHPが尽きている状態といった表現をよく見ると思うのですが、そういう表現はみんながわかっていることを前提に、見せかたとして取り入れていっています。

RPGならではのHPバー表現。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.

──視聴者と作り手の中で共通の認識があって、それによって説明を省いているということですよね。

山元:
 異世界ものだったら「トラックにひかれて転生する」といったように、その状況においての定番の流れがあるので、それを踏まえてどう応用していくか。メタ的なアプローチになります。

 もしわからないことがあっても、スマホを開けばすぐに調べられて元ネタへアクセスしやすい環境があるので、ある程度投げっぱなしにしても大丈夫かなと。

──なるほど。もしわからない要素があってもそこまで影響がないんですね。

山元:
 いまってコンテンツが溢れていて、普通のアニメはみんな見飽きたところもあると思うので、ちょっとぐらい実験要素があってもいいんじゃないかなって。

福留:
 この『おとなの防具屋さん』のアニメ製作では、トライアンドエラー、そしてトライアンドトライでした。1期から見せかたなどで戦いながら学んできましたよね、いろいろと。

山元:
 やはり最初の1話、2話は探り探りな部分があって。ここは許されるかなとか、ここはダメなんだ、プロデューサーの思惑や考えかたなどきちんと掴んでいかないとディレクションできないので。それが1期のやりとりを通してわかってきて戦いかたがわかってきた感じです。

短編アニメでも物語を通して楽しめる構成に

──作品のストーリー性についてはどうお考えですか? 5分アニメだと本編の時間は約3分、その短い時間の中で物語を作るというのは、そうとう大変な部分だと思うのですが。

山元:
 『おとなの防具屋さん』の魅力として魅惑的なエロ装備があるんですが、それだけを毎回見せていくと飽きられてしまう可能性があるので、物語を通して楽しめるような構成を作るというのが根幹としてありました。

 1期の後半では「魔王が登場してそれ倒す。」というストーリーラインが登場するのですが、いきなり魔王が出てくると唐突すぎるので、そこは予告パートを使って魔王サイドのストーリーを展開していきました。

最初のうちは単なる嘘予告ネタに見えるのだが……。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.

山元:
 以前担当した『ポプテピピック』の「星色ガールドロップ」予告パート【※】では、予告だけで独立したストーリーが進み完結するパターンだったんですが、今回はそこからさらに途中で本編と合流したらおもしろいかなって。

 9話で魔王が登場するまで、恐らくほとんどの視聴者は予告に意味があるとは気づいていなくて、でもじつは2軸でストーリーが進んでいて、それが合流することで「おお!」という感動になるのかなと思いました。

※『ポプテピピック』の予告パートでは、「星色ガールドロップ」という別作品の予告が流されていた。なお、「星色ガールドロップ」の本編パートはほぼない。

9話にて魔王が登場、予告パートでも明確に本編と関係性が明らかになった。
©斐宮ふみ/COMICSMART INC.

福留:
 一見すると意味のないと思えるものたちを最後につないで、視聴者に「おおーっ」と思わせるのが好きですよね。

山元:
 そうですね。『裏面』は5分×3話という構成、しかも新キャラがたくさん登場するかつ、オリジナルストーリーということで、最初は大丈夫かなと不安だったんですが、最終話の3話はけっこういい終わりかたにできていると思います。

福留:
 全体を通して、勢いのままわけのわからないことをやっているように見えるのですが、最後はしっかりいい話になっています。

 いろいろなキャラが登場するのですが、何も知らない人が寝ながら見ても楽しめるアニメになっているので、原作やアニメ1期をご覧になったことない方も気軽に見てみてください。

──では最後に、月並みですが読者のみなさんにメッセージをお願いします。

福留:
 アニメ『おとなの防具屋さん』製作のやりとりの中で、山元さんがどんどんノッてきているなと思っていました。

 1期もおもしろく作っていただいたのですが、今回はそれよりもおもしろくなっているので、ぜひ期待していただければと思います。

山元:
 ディープラーニング【※】ならぬ防具ラーニングできてきたのかなと。

※深層学習。

福留:
 おとなの防具ラーニング。

山元:
 そうそう(笑)。おとなの防具ラーニングされた『おとなの防具屋さん(裏面)』をぜひご覧ください。

──本日はありがとうございました!

『おとなの防具屋さん(裏面)』第1話3月6日12時~配信開始

⇒視聴者はコチラから

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取材・文・編集
竹中プレジデント
フリーライター時代はファミ通Appでゲーム攻略記事を執筆。『ガルフレ(仮)』でスマホゲーム筆下ろし。
現在はニコニコニュースオリジナルの編集として、アニメやVTuber関連の記事を担当。二次元美少女に萌える日々。

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