事故物件の見分け方を大島てるがレクチャー。「一部分だけリフォーム」「登記簿の相続日が“不詳”」など今すぐ役立つノウハウを大公開
ケース3:経営破綻により身売りしたことで名称変更
大島てる:
次の例として説明しようと思っていたものがまさにこちら。
今度は何の遠慮もなく名前を読み上げますけれども、「フ◯◯◯◯◯潮◯」と書いてあります。10年以上前にここで悲惨な事件があったんですけれども、これが「大島てる」サイト上の地図をご覧いただくと、ここに「ス◯◯◯潮◯」と書いてあります。
「ス◯◯◯潮◯」なのに、ここに炎のアイコンがあって「フ◯◯◯◯◯潮◯」と書いてあるじゃないかと。間違いなのではないのかと言われるのですが、これは間違いなく同じマンションです。ですからこれは事件のあと、名前を変えた例でして、しかも先ほどのホテルのようなものではなくて住む物件であると。
これが小力さんの疑問の答えになっているのかとも思うのですが、確かにイメージが悪くてごまかしたくて名前を変えるというパターンがひとつあるんですけれど、他方で気持ち悪がられて住んでいる人がいなくなっちゃった、あるいはお客さんの足が遠のいて商売あがったりになってしまって、身売りをして新しいオーナーが買うと。そうしたら名前が変わっても何も不思議じゃないんですよ。
たとえば松原荘というアパートが小力荘という名前になった。これは何も不思議なじゃないわけですから。オーナーが変わって名前が変わるということはいくらでもあるわけで、なぜオーナーが変わるのかと考えたら経営破綻ということがあります。ですからごまかすために名前を変えたのか、事件のせいで商売あがったりになって人手に渡ってしまって、それに伴って新オーナーの元、心機一転名前を変えたと。両方の可能性があります。
長州:
やっぱり隠したいことになっちゃうのかな。俺はひねくれた考えだから、大々的にそれで商売する人はいないのかなと思っちゃう。事故物件に住みたい物好きっているじゃない?
松原:
すごい少数派ですけれども。
長州:
やっぱり少数派かな。さっきのラブホテルなんて住まないけれど、ちょっと怖いものみたさでの事件現場に行ってみたいとかいうカップルがいて、それで燃え上がっちゃったりしないの? そういう良いほうに変えたらさ。なんかいろいろ変なことばっかり考えちゃう。
マイナス要素のほうが強いのか、悪いことを茶化してはいけないのは分かるんだけれど、やっぱり逆手に取ることで平らになるものってあるじゃないですか? 怖かったりマイナスイメージである心霊とかホラーとかは、今はみなさんの活躍でちょっと面白いものに変わっているわけでしょう?
松原:
東北のほうの座敷童の出る旅館とかは逆に「出るから良いことがありますよ」っていう売り出し方というか、そういうのがありますから。なんかそういうふうにできる世の中になったらいいなというか。
大島てる:
世の中には抵抗があるのだなということを思い知らされる出来事がありました。それは何かと言いますと、当然事故物件サイト「大島てる」では病院や火葬場とかもそうですし、駅とかも載せていないわけですよ。いくら駅で飛び込み自殺がたくさんあっても、そこに住む人はいないということで掲載対象外、削除対象にしているわけです。
病院は人が亡くなってもおかしくないということで、病院も載せていないわけです。ですから今お話しすることは「大島てる」には載っていないんですけれども、横浜の「大口病院」というところで看護師が悪さをして、入院患者を何人も死なせたという事件【※】がありました。
※入院患者を何人も死なせたという事件
大口病院連続点滴中毒死事件。神奈川県横浜市神奈川区の大口病院で入院患者の点滴に消毒液を注入し殺害した容疑で2018年7月に元看護師が逮捕された。
今はもう逮捕されているんですけれども、もともとその病気でお年寄りの方が亡くなったのか担当の看護師が悪さをしたのか、なかなか区別がつかなくて逮捕に至るのに紆余曲折があったんですけれども、あまりに沢山人が死ぬということで怪しまれてバレたわけです。
この病院は一旦閉鎖されて最近再開されたんですけれども、名前が変わって「横浜はじめ病院」となりました。ですから病院でさえ名前を変えるんですよ。
長州:
人が来る場所だし。やっぱりちょっとイメージも怖いしな。
大島てる:
いくら人が亡くなるのがありふれてると言っても、殺人がありふれてるわけではないですから。死が日常的な病院でさえ名前を変えるんだなと。逆に言うと名前を変えるというのは、何か本当に理由があるのかなと。
ケース4:売買物件は登記事項証明書から孤独死を予測できる
大島てる:
次は字ばかりで分かりづらいのですが、こういう登記事項証明書、昔でいう登記簿謄本というものがあります。
家は誰のものか分かりにくいわけですよ。住んでいたからといって、その人のものじゃないですよね。大家さんが別にいるわけですし、別荘とかもありますし、ひとりで何個も持っていたりすると。
どこか離れたところに自分の持ち物があるけれども、それは私のものだということが分かる仕組みが必要なわけです。名前を書いているわけではないですから。随分端折って説明したんですけれども、誰のものなのかが分かるというのが登記という仕組みです。これを見れば表札は何もないけれども、家は小力さんの持ち物である、とかが分かるようになっていると。
それが分からないと、たとえばその家を売ったり買ったりできないわけですよね。ですから個人情報だとかいろいろ騒がれていても、この家は誰のものかとかいうのが誰にでも分かる仕組みが、個人情報を守ることよりも優先されます。今でもお金さえ払えば、どの家も誰のものかは一応は分かるようになっています。登記事項証明書にはどこどこに住んでる誰それが、いつ買ったとかいうことが書いてあるわけです。
ここをご覧いただきたいんです。
「売買」と書いてあるわけですよね。誰それさんが平成14年11月24日に買ったことによってオーナーになったということがまず書いてあって、そのあと26年3月になって「相続した」と書いてあるわけですよ。相続というのも、人から人に持ち主が変わるというきっかけのひとつなんですけれども、そこに「3月日不詳」と書いてあるんですよ。
これは何を意味するかと言うと、相続した日が分からないと。3月だということは分かっているんだけれども、何日かがよく分からないと。たとえば生まれたり結婚したり病院で亡くなったり離婚したり、全部日にちが正確に分かるじゃないですか? 相続イコール死んじゃったということなんですけれども、でも日にちが分からない。
ただ3月だということは分かっているということが、孤独死を連想させると。たとえばの話ですけれども樹海で富士山の周りで死んじゃったりしても、やっぱりこういうふうになります。部屋の中で死んだということを意味しているわけではないです。この人がいつ死んだか分からないというだけなので、どこで死んだのかというのは別の話なんですよ。
長州:
断定できないから「不詳」と書いてある?
大島てる:
ここの「不詳」というのは、日にちが3月1日かもしれないし、15日かもしれないし、31日かもしれない。つまり上旬か中旬から下旬かさえ分からないと、これは相当幅がある話ですね。
長州:
病死だと亡くなった日も分かるけれど……。
松原:
亡くなった瞬間が、一応相続が変わるということですか?
大島てる:
そうです。相続の開始の日付になるんですけれども、それが分からない。もっと幅がある場合があって、何月かさえも分からないというケースもあります。
ここには文字しか書いてないですけれども、想像するだけで部屋の中がかなりひどかっただろうなということが分かります。ちなみに繰り返しになりますけれども、これは他所で亡くなってもこういうふうに書かれますから、ここで死んだということではないです。
単純に人がいつ死んだのかは、戸籍とか住民票の写しを見れば同じことが分かるんですけれども、他人の住民票の写しとかは見られないわけですよ。けれども、登記はオープンになっている。なぜ個人情報が保護されてないのかと言うと、取引の詐欺とかを防止しないといけないわけですよ。「このマンションは私のです。だから売ります、お金下さい」と言った時に、あなたは本当にこのマンションの持ち主なんですか? ということを確認したいわけです。
ちょっと込み入った話なんですけれども、売買の物件の場合はこういったこともあると。賃貸の場合は使えない見分け方です。さっきのように、こうなったら色を塗り変えればいいとか名前を変えればいいということは、これに関してはできないと。地面師【※】なら犯罪上等でいろいろやりますけれども。普通ならこうなっちゃうっていうだけで、特に何かできるわけではないと。
※地面師
土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産をめぐる詐欺を行う者。
長州:
みんなが見られるというものだから、良いも悪いもね。
ケース5:空室なのに「募集なし」。無理やり封鎖された部屋
大島てる:
番外編です。事件が起きて、人が死んで、事故物件になった、どうしようと。家賃を下げればタニシさんみたいな人が住んでくれるはずだというふうによく言われるんですけれども、損はしたくないわけですからオーナーは家賃をそもそも下げたくないんですよ。
それだけではなくて家賃を下げるのは我慢して、たとえば月500円とかにしたら今度は絶対にゴキブリホイホイみたいな感じで変な人が集まってくるんですよ。そうしたらまた事件や事故になるかもしれないということで、私は家賃を下げるというのは非常に安易安直な対策だと思っています。やめたほうがいいと思っているわけですけれども、じゃあどうすればいいかと。
2階の手前側の部屋が写っていますけれども、完全に封鎖して「こんな部屋はない」ということにするんです。
長州:
窓が埋めてあるのね。
大島てる:
ここはもうリフォームではなくて、単純に外側から塗りつぶして「この部屋はない」と。
松原:
封鎖するということですか?
大島てる:
はい。怪談風に言えば「開かずの間」ということになるのですが、実際には募集もしてません。だから変な人が安い家賃に吸い寄せられてくるということもないわけです。ここは私が現地に行ったら、玄関も表札もドアノブまで塗りつぶしていていました。これがなぜ効き目があるかと言いますと、告知義務つまり次に住む人に大家さんは何かあったこと言わなきゃいけない。しかし、それはあくまでもその事件事故があった一部屋だけなんですよ。
だから下のフロアや隣の部屋を借りる人に自殺がありましたとか言う必要はないんですよ。今、下に住んでいる方はおそらく事件事故当時、すでに下に住んでいたでしょうから上の人が亡くなったということはご存知だと思うですけれども、将来下の方が引っ越して、住人を募集しますという時に、上の人が亡くなったということを言わなくてもいい。
長州:
だったら事件があった部屋を貸さないっていうことをしている人も多いということですよね?
大島てる:
おっしゃるとおりで、住んだ後に「あれ、隣の部屋が空室だな」と。でもネットで見ても空室募集をしていないし、不動産屋さんに聞いても自分が住んでいるアパート、マンションも満室だって言われるし、でもどう考えても隣空いてるんだけれど……というようなことがあります。
それはこのパターンのように、隣は事件事故があって正直に告知をしないといけない、でも噂が広まるのも嫌だと。じゃその部屋は募集をやめようということで、いつまでも隣が空いているとことがあります。
長州:
なかなか1、2回部屋を見に行くだけじゃ気づかないですね。夜に行ったら分からない。
松原:
分からないですね。
大島てる:
これはなぜ番外編と言ったかというと、この部屋に間違えて住んじゃうとか、騙されて住むことはないので。
松原:
この部屋の下は嫌やけどな。
大島てる:
あとは大家さんにとっても家賃を失うわけですから。
長州:
俺、ウォーキングをしていて廃墟を見つけることが多いんですよ。でもこういう謎のアパートってあまり見つけないな。
大島てる:
ここまで分かりやすいのはあまりないですね。単純にそのままにして使っていない。ただやはり窓ガラスを割ってホームレスが侵入しちゃうこともあるので。
長州:
空き家だなって思ったら、そういうことする人がいるから……。
大島てる:
これは空き家だということはバレても構わないけれども、悪い使い方をされないようにという意味だと思います。
松原:
コメントに書いてありますけれども、「下に住んでる人が上から音が聞こえたら嫌よね」って。
長州:
それは怖いね。
大島てる:
今住んでいる方はたぶん事件当時も救急車とか警察が来たのもご存知だと思うんですけれども、この方が将来出た時にどうなるかですね。
▼記事化箇所は30:10から始まります▼
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