「一緒に死んであげる」という言葉が心に刺さる。『昭和オトメ御伽話』の互いを想い合う少年少女の恋物語が痛くも切ない
昭和初期の日本・神戸を舞台に志磨仁太郎と黒咲常世という年端もいかない幼馴染2人が織り成す恋物語『昭和オトメ御伽話』。
見ていて痛々しい描写に心が締め付けられる、そんな物語だからこそ2人には幸せになってほしい……そういった想いが募る作品となっています。
幼馴染は互いに寄り添う
帽子をかぶりカメラを手に持つ少年の名は志磨仁太郎。親の電報で誕生日を祝われていますが、見たところ年齢じたいが間違っていた模様。
しかし仁太郎は「子供に興味がない」の一言で済ませてしまいます。どうやら親との関係性は良好とはいえなさそうです。
そんな彼のカメラは亡くなったおじいさんから譲り受けたもの。好きな女性を撮影すると必ず幸せになる“魔法のカメラ”らしいです。
仁太郎はこのカメラを使ってどうしても写真を撮りたい女の子がいるようです。
それが2歳年下の幼馴染の黒咲常世。
実の母親が5年前に亡くなってから継母のところで育てられている彼女は、継母からしつけと言う名の虐待を日々受けていました。
虐待に押しつぶされそうになる彼女はからたちの傍らで神妙な顔つきに。
そんな彼女の傍に寄り添い、話し相手になることで彼女を支えている仁太郎。
2人だけの秘密となる“ご主人様と猫のごっこ遊び”を実施するなど、彼女の心が壊れないように甘えかたを教えています。
この時の猫になりきる常世の仕草、最高に可愛いです! これだけ可愛ければ被写体にしたいのもうなずけます。だけど……。
常世は写真にだけは否定的。というのも、自分を醜い存在だと信じてやまないからです。これも継母のしつけの結果なのでしょうが本当にもったいないかぎりです。
より深い関係への第一歩
ある程度の時が経ち、常世は家族水入らずでお出かけする事に。
この時の常世は洋服を着ており、先に登場した着物姿とのギャップ差が明確で可愛らしいですね。
きっと楽しいお出かけになったことだろうと思っていましたが、雨の中からたちの傍で立ち尽くす常世は明らかに暴力を受けていて、これには仁太郎も堪忍袋の緒が切れてしまった様子。
仁太郎はこれ以上常世を傷つけさせないためにも刀を持って継母のところへ突貫し、彼女を救おうとします。
しかし、仁太郎はなぜ常世のためにここまで動けるのでしょうか? それにはちゃんと理由がありました。
おじいさんを亡くして間もないある日、仁太郎は風邪で倒れてしまいます。そんな体調不慮の彼を看病してくれたのが常世でした。
仁太郎は彼女に看取ってもらえれば死も怖くないからと彼女に傍に居てほしいと頼みますが、常世は彼の言葉を否定します。
先の否定は「傍に居て」の部分ではなく、「死ぬ」ことに対する否定でした。だからこその彼女の覚悟が言葉に現れています。
そんな常世の言葉を聞いてから、仁太郎は常世という1人の女性とずっと一緒に居たいと思うようになりました。
虐待を受けた常世を連れて、雨の中おじいさんが経営していたキネマに避難する2人。
そこで仁太郎は常世への好きだという想いを伝えながら彼女にカメラを向けます。
仁太郎の告白に恥ずかしがり、写真は撮らないでと否定しつつも、口づけと「うちも…スキ」という言葉で答える常世。
見事な両想いでカップルが成立します。しかし、幸せな時間は長くは続きませんでした……。
好き合う2人は引き裂かれ、時は流れる
仁太郎達が居るキネマに2人の白服男性がやって来ます。彼らは警察官で継母の虚偽の通報を信じ、仁太郎を誘拐犯として確保します。
継母が叩いた暴力の一部も仁太郎のせいにされ、成立したばかりのカップルは唐突に引き裂かれてしまうのでした。
2人が引き裂かれてから3年の月日が流れ、常世も綺麗に成長を遂げていました。
学校での生活も順調そうで、少しずつ常世の周りも変化したようにも捉えられます。
なお、仁太郎は先の引き裂かれた事件のことがきっかけで、東京の親戚の養子とされてしまい、神戸からは居なくなっていました。
そんな3年の月日を持ってしても、継母の対応は変化がなく、彼女が育てる子供も常世になら暴力を振るっていい物だと勘違いしたまま成長してしまう羽目に。
その後も継母の執拗なしつけは続き、常世の正当防衛すらただの暴力として捉えられてしまいます。
常世が暮らす家には、彼女の協力者など1人も居なかったのです。
この厳しすぎる生活状況に常世もついに我慢の限界が来てしまい、からたちの傍で大声をあげながら泣き崩れます。彼女の心は壊れる直前まで追いつめられていました。
そこへ「からたち姫」という常世の通称を呼びながら近づいてくる青年が。常世は仁太郎だと確信を持っているようですが、彼は本物の仁太郎なのでしょうか?
1月4日には単行本1巻も発売されるので気になる方はそちらもチェックしてみてください。
(画像はニコニコ漫画『昭和オトメ御伽話』より)
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