忘れかけられた「貧困JK騒動」を追う――元ナックルズ編集長・久田将義らが独自取材
この夏、日本を騒がせた「貧困」問題。8月18日に放送された「NHKニュース7」に貧困女子高生として登場したうららさんの炎上に端を発した騒動は、模造報道の話から「貧困とは何か？」という本質的な話へと移行し、ニコニコニュースでも貧困を扱った記事が過去最高のコメント数10,000を突破する等、大きな話題となりました。（参考：「生活苦しい奴声上げろ！」貧困バッシングに怒る名古屋の若者たち）
ニコニコでは、ジャーナリスト渋井哲也氏の協力のもと、「新たな貧困JK」への取材を実施。ニコ論壇に出演した複数の論客の意見も交えて、貧困問題の真実に迫りました。
貧困女子高生ユウコさんへのインタビュー動画
今日の服は全部で700円
渋井：
今着ている服や靴にはどれくらいお金をかけていますか？
ユウコ（仮名）：
靴下は5足で500円くらいなので（1足）100円です。スカートは古着で100円、靴は500円、あとはお下がりなので700円です。
渋井：
服代全部で700円は自分の中では普通ですか？
ユウコ：
普通ですね。
渋井：
このバックは、結構いいバッグのように見えるけど、いくらですか？
ユウコ：
家の近くのGUで買った2,000円弱のバッグです。それくらい出さないとすぐ破けてきちゃったりすぐしちゃうので。
渋井：
差支えなければ、中身を見させてもらってもいいですか？
ユウコ：
化粧ポーチとか入ってます。100円ショップで買ったやつですね。
今までで一番高い買い物は20,000円のキーボード
渋井：
今までで一番高い買い物はどんなものがありますか？
ユウコ：
ピアノのキーボードです。（同級生から）バンドを組もうと言われたときに、やっぱり1年生2年生は友達付き合いとか、あと自分のやりたいことがあったので、バイトしたお金で、20,000円くらいで買いました。
渋井：
それはどうしても必要だった？
ユウコ：
はい。それで文化祭一緒にやろうとか言ってくれる子がいたり、そこから軽音楽部の友達とかできたりしたので、ホントにこれがあったから友達できたかなと思っています。
金とかじゃなくて、ちょっと生きづらさを感じたらもう貧困だと思う
渋井：
貧困ってどういうものだと思います？
ユウコ：
貧困はお金とかじゃなくて、困っていることがあってちょっと生きづらさを感じたら、それはもう貧困なんじゃないかと思ってて・・・
渋井：
今の自分は貧困だと思う？
ユウコ：
今は・・・はい、ちょっと思いますね。
渋井：
ちなみにNHKで貧困の問題を取り上げて、女子高生がネットで色々バッシングに遭ったのはありましたけど知ってます？
ユウコ：
はい。ネットで知りました。私の場合は心に余裕を持てるんです。ただ母としゃべるだけでもずっと寝てるだけでも、心に余裕が持てたりするんですよね。余裕が持てるっていうか楽しめちゃうんです。でも、全員が全員そういうわけじゃないし、そういうアニメとかで心が楽になるんだって人もいるんですよね。
結構バッシングされてますけど、彼女にとってはそれが息抜きっていうか、心を安らげる余裕を持つ時間なので、お金をかけてしまうのはしょうがないことかと思ってます。アニメのグッズとか、1万円もするようなペンをなんで買ってるんだっていうと、その子が心に余裕を持てるからで、それが彼女の楽しみであるなら、それを奪ってはいけないんじゃないですかね（了）
取材協力：渋井哲也（ジャーナリスト）
ユウコさんのインタビューを見た視聴者にアンケートを取ったところ、「ユウコさんを貧困だと思う」が61.1%、「貧困だと思わない」が38.9%という結果でした。
ここからはニコ論壇時評に出演した論客による、貧困問題のいくつかの見方を紹介します。
貧乏というのは状態だけど、それで本人の心の中が地獄になっていれば貧困（岡田斗司夫）
貧乏というのは「状態」なんです。一方、貧困というのは「解釈」だと思います。お金がない、これは貧乏ですね、状態ですから。でもお金がなくても平気だっていうこともできるんです。ところが、お金がなくても平気だという人が、自分の子供が「我が家は貧乏だ」という理由で友達にイジメられていると言うことを知ってしまった瞬間に、貧困になるんです。
つまり、状態は変わらないんです。それを気にしなければ貧乏のままだから問題は発生しないんですけれども、我が子がそれでイジメられていてそれに対して何とも出来なかったりする時、貧乏が故に打てる手が何も思いつけなかったり、視野狭窄になって困ってしまったり心が病んでしまう状態が貧困なんです。貧乏は貧しく乏しいと書くのですけれど、貧困は貧しくて困る状態なんです。困らない限り貧乏は別に悪くはないというのが僕の考えなんです。
参考：「貧乏はただの状態だけど、それで本人の心の中が地獄になれば貧困」岡田斗司夫が語る貧困問題の正しい捉え方
今だからできる贅沢が叩かれる哀しさ（山田玲司）
山田：
この問題で一番キツいのは、「いくら持ってたら、なに買いたい？」って話があるんだよ。お金もらったら、好きなもの買うじゃん。
しみちゃん：
はい。
山田：
そうするとだいたい、バイクとかギターとか何十万円ぐらいのもので止まるのね。「さらにその上に欲しいものってなに？」っていうと車になるんで。
乙君：
はいはい。
山田：
いきなり100万円台に飛ぶんだよ。さらにその後は家とかになってくるわけ。だから、その貧困JKが堪能してた贅沢というのは、ものすごい低いところで（笑）。
乙君：
あー。
山田：
で、大学に入るってところは、もっともっと上だから。大学には行けない、車も買えないけど、1000円ランチぐらいは食べるっていう。そういう庶民の贅沢みたいな話ね、実は。学校行けない人たちの問題と、今だからできる贅沢として高いごはんを食べましたって話は違うんだよね。話のレベルが違うっていうか。
参考：山田玲司「ヤバいぞ日本の貧困 こち亀終了 食べログ騒動を斬る!」ニコ論壇時評9月14日
スマホ持ってたら貧困じゃないとかそういうことじゃない。金持ちとか大企業の税金逃れに怒りの矛先を向けるべき（室井佑月）
室井：
スマホを持ってたら貧困じゃないとか、テレビがあるとか、そういうことじゃないのよ。もうホントにおかしいと思うよ。
久田：
どこが？
室井：
例えば、生活保護を受けてても、ステーキ食べても、煙草吸ってもパチンコ行ってもいいと思うのよ。その後3日くらい何も飲み食いしないとか、それ自由じゃない？ VTRに出演してた子もNHKで取り扱った子も、最低賃金の半分以下の世帯で暮らしているわけじゃない。久ちゃん（久田氏）の取材協力って入ってたけど、なんで着るものの値段とか聞かなきゃいけないの？もうそこからしていじめな気がするのよ。
貧困じゃないとか言ってる人がいるけど、こんなところで、スマホを持ってるから貧困じゃないとか叩いてさ、アホかと思うよ。パナマ文書で税金逃れしてる奴とかさ、大企業だって払ってないじゃん。なんで、怒りの矛先がそっちにいかないの？
久田：
弱いものいじめの方が叩きやすいからだと思いますよ。あと、僕らはバブルとかちょっと知っているけど、この子たちって景気がいいときのことを知らないわけじゃないですか。NHKの子もそうなんですけど、それが普通なんだみたいな感じで。
室井：
こんな世の中普通じゃないよ。40歳以下で貯金持ってない人ってめちゃめちゃ多いじゃん。そしたら1つ大きい病気とかしちゃったらみんな貧困に陥っちゃうんだから、なんでその貧困に陥っている人を叩くの？そうじゃなくて、税金ごまかしてる人とか叩かないとしょうがないじゃん。
参考：室井佑月×久田将義のタブーなワイドショー『ドナルドトランプから築地移転問題まで！』
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