「東京五輪の経済効果はどれくらいになる?」「仮想通貨の将来はどうなる?」etc…“投資の神”ジム・ロジャーズさんに色々質問してみた
「旅をさせる」「6つの貯金箱を与える」ロジャーズ流教育法とは?
谷中:
マーケットで経験豊かですけれども、投資をはじめた時には知らなくて、今知っている新しい知識は何ですか?
ジム・ロジャーズ:
子供です。子供を育てるなんてずっと反対でした。時間の無駄だと思っていましたから。でも、それは全て誤っていました。もし谷中さんが子供の頃にご両親に会って、ご両親が私に「小さい女の子が生まれた」と言ったならば、かわいそうだなと思っていたと思います……。
これを見ている人でまだ子供のいない人は家に戻って、奥さんとランチでも一緒に食べて子供を作りなさい。あなたのためにそして日本のために子供を作りなさい。
谷中:
これはサチン・チョードリーさんの著作『これからの時代のお金に強い人、弱い人』という本なんですけれども、この本の中であなたのインタビューが掲載されていて、子供の教育についてお金の教育、マネーの教育を語っていました。
ジム・ロジャーズ:
今、マネー教育に挑戦をしているんです。マネー教育は非常に重要です。マネーを知らなくて、あるいはお金を分かっていないから結婚後に壊れた人もいますから。ですから、私の子供には生まれた時に貯金箱をひとりに6つずつあげたんです。円、シンガポールドル、米ドル、中国人民元、ユーロ、英国ポンド。それぞれの貯金箱をあげました。
まず子供たちが学んだことは、お金は銀行に預けるということ。私がNHKのインタビューを受けた時に、娘が貯金箱にお金を入れるシーンを映しましたね。お金というのは、貯金箱とか銀行に入れるんだということを教育したんです。バービー人形買うためなんじゃないんだよ、と(笑)。「買いたいならば貯金せよ」ということです。
そういうことを知って欲しかったんです。貯金箱がいっぱいになると大きい銀行に行って銀行口座に入れること。そして金利について教えるわけです。金利というのがついて、お金が増えるんだということです。
子どもたちはまだ投資について学習するには若すぎますけれども、お金は貯めるものであって使うものではないということを学んでほしい。14歳に長女がなった時に、「仕事に就け」と言ったところ、マクドナルドでアルバイトをすると思ったら、彼女の方が私より頭が良かったですね。彼女は時給8ドルのアルバイトではなく、時給25ドルで中国語の家庭教師をやっていますよ(笑)。
彼女のほうが私よりずっと賢い。そして大人に中国語を教えると時給75ドル稼げるということで、大人向けの中国語家庭教師をしているんです。私は「大人になったら仕事に就くんだ、お金を貯めるんだ」ということを子供に教えています。
谷中:
投資については何歳から教えるつもりですか?
ジム・ロジャーズ:
まだでしょう。「これが株ですよ、これが株式市場ですよ」と、私からそれを教えるのではなくて、向こうから聞かれたら教えます。自分たちの準備ができたなら、娘たちから私に聞いてくると思います。
谷中:
先ほど、お嬢さんたちが貯金箱がいっぱいになると銀行に預けるとおっしゃったんですけれど、日本でそれをすると金利が非常に低いですよね? これから日本の銀行の金利はどうなると思いますか?
ジム・ロジャーズ:
金利は日本でも上昇するでしょう。そして世界の他の地域もそうです。
谷中:
日本ではいつ利上げをするでしょうね?
ジム・ロジャーズ:
市場が無理やり利上げをさせるでしょう。まもなくそういうことになるでしょう。日本はたくさんのお金があって、日本の政府は非常に権力を持っている。市場が無理やり中央銀行に対して利上げを強いるでしょうね。日本の市場が金利を上げて、中央銀行も追随せざるを得ない。
子供たちは貯金箱にお金を入れるかもしれませんけれども、他の通貨も貯金すべきでしょうね。日本でも銀行によっては米ドルの預金をすることもできますよ。あなたはお子さんがいますか?
谷中:
まだ結婚していません。
ジム・ロジャーズ:
私も子供を作ったのは後のほうです(笑)。子供に対して外国通貨で預金をすることを教えるべきでしょうね。
谷中:
娘さんたちは6つの貯金箱を持っているわけですね。子供を育てることについて、他にアドバイスはありますか?
ジム・ロジャーズ:
「仕事に就いて貯蓄をするということ」。投資について知りたかったら私は教えるでしょう。まずは何を知っているかということを聞きます。学校について、エンタテインメントについて、K-POP、韓国ドラマについて知っていると言うならば、あなたたちが知っていることに投資したらどうか? と。ビデオゲームについて知っているなら、そこからスタートしようと。
準備ができたら投資を教えるということです。ファッションについて、スポーツについて、いろいろなことについて知っている人がいますから、そこからはじめるのです。すでに知識があるところからはじめて、そこの分野での投資を探すわけですね。
あとは……学校の成績は良くなきゃいけない、と言います。成績は良くても人生成功するわけじゃありません。学校でいい成績でも、人生でうまくいかない人たちはたくさんいます。
私は有名な大学に行きましたが……同じ大学に入った人でも、自分で賢いと思っていても人生がうまくいかなかった人も多くいるのですよ。あまり賢いというふうに思っても困るので少し恐れて不安があったほうがいいということですね。
私が子供たちのために、ひとつ何かやるとすれば、世界を旅行をすることでしょう。私は妻と世界旅行をしました。その時の妻は若くてブロンドで青い目で米国南部の人で、世界について知らなかった(笑)。世界旅行をしていても非常に恐れていたんですけれどもね。
でも世界旅行をしたことによって、彼女の人生において最も多くを学んだことでしょう。子供に対してひとつ言うとすれば、旅に出ろということでしょう。大学に行きたいならば家から離れて大学を行けと言うでしょう。大学よりも遠くに行くことのほうが学ぶことが多いからです。
谷中:
あなたが旅行して学習をして、それが投資につながったという話をしていただけますか?
ジム・ロジャーズ:
私は84年に中国に行って非常に恐れたんです。アメリカのプロパガンダとして、中国は悪だと危険だと言われたんですけれども、非常に教育があって貯蓄をし、そして勤勉であるということが分かり、中国は偉大な国になると思ったわけです。アメリカに戻って「中国、中国、中国」と言ってきたんですけれども、他の人たちは皆「日本、日本」と言っていました(笑)。
私は日本はさておいて中国に投資をしようと言いました。非常に早い時に中国に行って次の偉大な国になると確信をしたのです。ロシアも同じように学びました。私はロシアに行った時にはマイナスの印象を最初は持っていたんですけれども、何十年現場で見て、いろいろ変わってきたというふうに思ったわけです。それでロシアに投資をしました。
ロシアは1970年代の頃から非常に変わってきたということが分かったからこそ、投資をしました。商品も同じです。中国が好景気であるということが分かったし、オイルリグ【※】あるいは沖合の石油のための船もないということを見て、今に不足するだろうと思いました。
※オイルリグ
海底油田の掘削のために海上に設ける設備。
これは瞬時に思ったわけではなくて、勉強してそういうふうに思ったわけですけれども、旅行をしてそういうことを学びました。オートバイに乗って全世界旅行をした時に、ボツワナを見ました。アフリカの国境では闇市場でお金を払わないと国境を越えられない。
国境に行くとハイウェイに乗って、ショッピングセンターがあって、それから株式市場もあった。株式市場に行ったのも、この国が他の国と違うということを分かるために見に行ったのです。他の国と違うということで、ボツワナの証券取引上に行って上場されている株を全部買いました。
こう言えばリッチのように聞こえるかもしれませんけれども、その時には若かったので7銘柄しか買いませんでしたが、かなりお金を稼ぐことができました。
谷中:
収益はどのくらいでしたか?
ジム・ロジャーズ:
覚えていませんよ(笑)。いい質問だと思いますけれども、私は投資委員会を持っているわけではないですから。誰に責任を持っているわけではないので、どのくらい損をして得をしているかということを測定してるわけではなく、勝手に投資をしているわけです(笑)。
谷中:
状況を見て投資をするかどうかを判断するわけですけれども、日本についてどう思いますか? 今回のご滞在でどんな印象を得られましたか?
ジム・ロジャーズ:
日本はまだ繁栄していると娘たちに手紙を出して、日本はまだ生き生きとしていて熱もあるということを書きました。自信過剰でもないし、バブルでもない。娘たちに日本は良好だと繁栄しているということを言いました。 そして日本の投資を探していると言いました。
谷中:
ご滞在中は楽しまれましたか?
ジム・ロジャーズ:
素晴らしかったですよ。ただディスコに行こうと思ったんですけれども、非常に短い旅だったのであまり時間がありませんでした。次回は行きたいと思います。行きたいディスコがあるんですよ(笑)。
オリンピック効果は中期的な効果でさえない
谷中:
視聴者の多くが日本の経済が東京オリンピックまで良好状態を保つかどうかということを考えていますが、どうでしょうか?
ジム・ロジャーズ:
オリンピックは一時的な、短期的な影響しかありません。一部の企業、一部の業界にしか影響はない。そしてその後はオリンピックが終われば下落してしまう。ホテルはお金を儲けるけども、それもオリンピックが終わればなくなってしまう。
オリンピックは非常にパブリシティで、政治家たちは「見てください」と言いたい、それを宣伝したいわけですけれども、50年前のオリンピックはどこでやったか、25年前のオリンピックどこでやったか分かる人はいますか。10年前のオリンピックどこでやったか、分かる人はいますか。
ごく少ない人しか答えられないでしょう。オリンピックは素晴らしいものですけれども、それっきりの一過性のものなんです。持続的なあるいは中期的な効果でさえない。長期的な効果なんて全くないわけですよ。ワールドカップを8年前どこでやったか分かる人もいないでしょう? 今年はどこでやったか分かる人はいるでしょうけれども。
谷中:
ブラジル?
ジム・ロジャーズ:
今年はブラジルじゃなかったですよ(笑)。これがいい例ですよ(笑)!
谷中:
ロシアですね!
ジム・ロジャーズ:
ロシアですよ(笑)。私が言おうとしているのは、これがいい例だということですね、数ヶ月前ですよ? つまり全然長期的な効果がないということ。オリンピックは50年前はモントリオール、25年前はアトランタ、10年前は北京です。私が言いたいことは、誰も知らないし、どうでもいい。それだけ効果がないということ。
谷中:
では中期的な効果があるものは何ですか。
ジム・ロジャーズ:
政府の政策はあるかもしれません。でもそれよりも重要なのは需給状態。実体経済の需給です。それこそが人が学ぶべきことであります。それこそお金儲けの糧になる。正しい場所で誰が儲けているかっていうことを知り、何が安いか高いかということを知るということ。でも決して簡単なことではありませんよ。
私だって楽だと思ったことはありません。天才だったら違うかもしれないですが……。私は天才ではないのでちゃんと勉強をしなくてはいけませんから、決して楽ではありません。