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「インターネットってワイワイ楽しむものだったのに」 #MeToo、Hagex事件から考えるネットで発信するリスク【話者:中川淳一郎・ヨッピー・はあちゅう】

はあちゅう、執拗に自身をけなしていたHagex氏を振り返る

中川:
 ただ、そのダメージがいくかどうかって話と関係してくるんだけど、オレはウェブ上のいさかいなどが実生活に影響を及ぼすのか……と考えたときに、Hagexさんっていうはてなの著名なブロガーが、痛ましい事件に遭い6月24日に福岡で亡くなりました。本来、ネット上のいざこざというのは、実生活に影響を及ぼさないと思われていたけど、それが違うんだ、となりました。

ヨッピー:
 (頷く)

はあちゅう:
 あの人は、長年、私の古参のアンチだったんですよね。そのHagexさんが、初めて私に生で会いに来たときがあって。今年の一月に、ヨッピーさんと2人で幻冬舎のイベントに出たんですよね。そこに、彼がいたらしいんですよ。で、イベントのレポートを書いていて。そのレポートまでは、彼、いっつも私のことをめちゃくちゃ叩いていました。私、「この人の親、殺したのかな?」ってくらい、すごい書かれていたんです。

 でも、そのときのイベントレポートは、「はあちゅう、ファンデーションの色が合ってない」以外の悪いことが書いてなかったんですよ。

中川:
 ほうほう。

ヨッピー:
 「声が可愛い」とか書いてあったよね。

はあちゅう:
 大して悪いことが書かれていなくて、「あれ? この人なんなんだろう……すごいモード変わっちゃったな」っていう印象を抱いていました。

中川:
 ちょっと補足をさせてもらうと、オレは過去に、Hagexさんとイベントを何回かやっているんですよね。昨年末、長年阿佐ヶ谷ロフトでやってきた俺と山本一郎さんのイベントが幕を閉じたので、後継イベントとしてオレはHagexさんにやってほしいと打診して、彼も快諾してれたんですよ。で、Hagexさんに頼んだとき、ずっとはあちゅうさんのこと褒めているんですよ。

はあちゅう:
 なんで!? すごいけなしていたのに!

ヨッピー:
 (笑)

中川:
 彼女は強い、と。

はあちゅう:
 強くないのに……。

中川:
 うん、強くない。それはそうなんですよ。でも、「彼女はやっぱり才能がある」みたいな感じで、ずっと褒めているんですね、オレと話していて。じゃあなんでそんなにおちょくるようなことを書くの? って聞くと濁したんだけど……俺と会っているときは褒めているんですよ。

ヨッピー:
 ツンデレなのかもしれない(笑)。

はあちゅう:
 複雑な気持ちですよね……実際に、イベントには来てくれましたけど、あいさつは交わしていなかったから。顔もニュースで初めて知ったくらいでした。

ヨッピー:
 はあちゅうさんがTwitterで、「亡くなる前に会ってみたかった」みたいなことを呟いたとき、僕はちょっとかわいそうやなって思いました。

はあちゅう:
 サブアカウントで呟いたときかな。

ヨッピー:
 「(イベントの際に)名乗ってちゃんとお話もできたらよかったのに」ってことを呟いていて、そのことについては、僕ははあちゅうさんから、Hagexさんが亡くなる前からLINEで、そんなことを言われてたんですよ。「ヨッピーさん、Hagexさんがイベントに来てたみたいですよ。どうせなら一度ちゃんと話してみたかったです」って。ところが、何も知らない人ははあちゅうさんのつぶやきを見て、「人が死んでるのに、今更自分をいい人に見せようとするな」って叩き始めて。

はあちゅう:
 私、嫌われているんですよ……。

中川:
 そんなことまで言われているんですか?

ヨッピー:
 そうなんですよ。それはうがった見方をし過ぎじゃないの? って言いたい。

はあちゅう:
 人の死を利用して好感度上げようとしてるって言われるくらいですから、私、本当に嫌われているんですよ。

中川:
 いやいやいや。

はあちゅう:
 Hagexさんは結構筋金入りだったというか。わざわざお金を払って月額課金制のマガジンの中身まで読んで、ブログに転載するみたいなこともしていたくらい本当に私のことをよく見ていました。

中川:
 そうですね、うん。

はあちゅう:
 だから、わかんないんです。人種が違うなって。

ヨッピー:
 はあちゅうさんは、育ちがいいんじゃないですか?

はあちゅう:
 私は、好きか嫌いかしかないから、好きだったら応援するから、好きだからこういう応援の仕方もありますっていうのは私は良くわかんないんですよ。だから、Hagexさんのことは、よく分からない。

ヨッピー:
 でも、今、流れていたコメントに、「男のコミュニケーションはプロレス」ってあったけど、たしかにそれはあるかもしれない。

中川:
 死んだHagexさんは、もう一回言うけど、はあちゅうさんのことを評価していた。

はあちゅう:
 評価してるんだったらたまには褒めたらいいじゃん!

ヨッピー:
 多分、吉田豪さんもそうだよ(笑)。

中川:
 吉田さん! 褒めて、はあちゅうのこと! 頼むよぉ!

ヨッピー:
 あっはっはっは! ご飯でも食べに行けばいいのに!

はあちゅう:
 いやだーーーッ!

Hagexさん事件から考える、「インターネットって何だ」

中川:
 イケダハヤトさん理論的な話ではあるんですけど、“アンチが10いたら自分のことを好きな人は1くらいはいる”みたいな話があるじゃないですか。

ヨッピー:
 ありますね~。

中川:
 それを“良し”としている風潮があると思うんです、ネット上には。

ヨッピー:
 僕はイヤですけど(笑)。

中川:
 実利が取れる、という意味で。ただ今回みたいにアンチが、(人を)殺すまでになるというのは、すごい時代になったと思ったんですよね。

ヨッピー:
 うんうん。

中川:
 ヨッピーさんもはあちゅうさんも顔が割れているし、イベントなどもやっていますけど、お二人は身を守るかというか、セキュリティへの考え方みたいなものって変わりましたか?

はあちゅう:
 私は、アンチに殺されたっていうよりは、うーん……テロに遭ったような感じというか、あの事件が本当にネット上での発言が直接的な引き金になっているのか、ちょっとわかんないところがあると思っていて。

ヨッピー:
 僕も、なんだろう……どれだけ安全運転をしていても、後ろから突っ込まれるといった事故が起こる。それに近いことなのかなと思います。あの事件って被害者に問題があるとかじゃなくて、交通事故とか、無差別テロに近いものですから、気をつけようって言い出した時点でなんか違うかなって。僕は、あんまり考えないようにしようと思いましたね。

一同:
 うーん……。

ヨッピー:
 まぁ、守りようがないですし。僕、全然知らない人を集めて飲むことが好きだし。

中川:
 そうですよね。そういうこと、やっていますもんね。

ヨッピー:
 Hagexさんだって、別にそんな生き死にの問題になるようなことを書いていたかというとそういうわけじゃない。(さんざん悪口を書かれていた)はあちゅうさんが恨みを持つのは別として。だからもう、考えてもしょうがないなと思いますよ、正直。でも、なんだろう……そんなん考え始めたらキリがないなって。あんま考えないようにしようと。あの事件があってから、僕自身、2日間ぐらい、全然夜寝られへんかったし。

中川:
 6月24日の夜ですかね。

ヨッピー:
 奥さんにもずっと元気ないね、どうしたの? て、聞かれて。熱も出て。ああいうことが起こるなんてショックでしたから。

中川:
 はあちゅうさんは、ウェブ上で躊躇するようなことってありましたか? Hagexさんの事件を受けて。

はあちゅう:
 特にないですね。私、大学2年生のときに、結構な脅迫を受けているんですよ。

中川:
 それってあの世界旅行の?

はあちゅう:
 その前です。当時、ちょっと変わった男性に目をつけられてしまって、毎日朝4時とかに電話で、「お前の家に放火するぞ」とか。

ヨッピー:
 怖っ……。

中川:
 当時は一人暮らしだったんですか?

はあちゅう:
 家族と住んでたんですけど、とにかく「謝れ謝れ」って言ってくるから、人間だから話せばわかると思って電話番号を教えちゃったんですよ。そしたら電話を毎晩かけてくるようになって、「お前の妹がどうなっても知らないぞ」とか、「慶応の学生がネットトラブルを起こしてるって週刊誌に売って就職できないようにするぞ」とか、ずっと脅迫を受けていたことがあった。

ヨッピー:
 う、うん。

はあちゅう:
 その人がそんなに怒る理由も全くなくて、こっちはずっと謝っているのに全然許してくれなくって。どうしたら許してくれますか? って言っても支離滅裂で。「スクール水着を着てパイ投げの的になったら許してやる」とか言われて。

ヨッピー:
 ヒドいね、それ!

はあちゅう:
 その時に、こういう人に当たっちゃうのは、自分が何をしたかとかじゃないんだなって、すごく思ったんですよね。

中川:
 ヨッピーさんのことを、ずっとメールで嫌がらせしてきた人も、「あなたは私を監視してる!」って書いてきたわけでしょ!?

ヨッピー:
 そうそう! 毎日毎日、「いい加減見るのをやめてください」ってメールが届いて、「見てねーよ!」と思いながらずっと無視してました。

今の時代は誰もが叩かれる。叩かれない人などいない。

中川:
 ある程度、変な経験というのはしてるよね。オレの場合だと、2013年くらいだと思うんですけど、津田大介さんと山本一郎さんとオレとで、阿佐ヶ谷ロフトでイベントをやったんですよ。

ヨッピー:
 また可燃性の高いメンツですね(笑)。

中川:
 そしたら爆破予告があったわけですよ!

はあちゅう:
 爆破予告……(苦笑)。

中川:
 阿佐ヶ谷ロフトって地下一階だから、爆破したらほぼ全員死ぬ。

ヨッピー:
 そうでしょうね(笑)。

中川:
 一応、山本さんが杉並警察署に届けてくれて、結果的にその男は逮捕される状況になったんですけど、少し公の場に出る人間というのは、こういうリスクを甘んじて受け入れなくちゃいけないところがある。さっきの有名税ってことじゃなくて、もう公に出る人は命さえも危険な状況にあるんだ……っていうのはヒドい時代だなと思いますよ。

ヨッピー:
 リスクは、高いかもしれないですよね。

はあちゅう:
 しかもSNSの有名人って、芸能人より自分の身近にいるって思うじゃないですか。だから、ターゲットにされやすいのかなと思いますね。

ヨッピー:
 こんなん言うたらまた暗い話になっちゃいますけど……。

中川:
 もう暗い話、行っちゃいましょう! とことん暗い感じで行っちゃいましょう!

ヨッピー:
 僕の中学の同級生で、看護師をしてる男性がいて。小中と一緒に学校行ってた奴が働いていた病院に精神科があって、そこの患者さんに刺されて亡くなったんですよね。

中川:
 あぁ……。

ヨッピー:
 どうやって持ち込んだのかわからないんですけど、果物ナイフかなんかを持っていて、いきなり刺されてそのまま亡くなってしまったことがあってニュースにもなったんです。これ見てる皆さんは僕らの話を聞いて「へぇー有名人怖えーな。危険だな」って思うかもしれないですけど、でもこういうことって誰にでも起こりうることだと思うんですよ。道端歩いてて、そういったことに出くわさないとも限らないんで、だから「考えるだけ無駄や!」って僕は思考を止めました。

中川:
 オレも、古巣の博報堂の広報から「気をつけろ」っていうメールが来ているんですよ。「お前は今までにあまりにもウェブ上で敵を作りすぎたから、いつホームに突き落とされるか分からないから、ちょっと電車乗るな!」って。

ヨッピー:
 生活できないじゃないですか!

はあちゅう:
 うーん……。

中川:
 古巣から言われるんですよ!? 4年しかいなかった会社なのに! ホントはさ、インターネットは楽しくみんなでワイワイやるとこだったのに。なんだかなぁ。

ヨッピー:
 “叩かれる有名人と叩かれない有名人の違いってなんだろう?”ってコメントしている人がいますね。

はあちゅう:
 みんな叩かれますよ、みんな。

ヨッピー:
 そう、全員ですよ、本当に。多い少ないはあるにしても。羽生結弦くんですらアンチがいますからね。

はあちゅう:
 そうなんですよー。で、私の悪いところは、たまに食らっちゃうところ。

中川:
 食らっちゃうって?

はあちゅう:
 アンチに反応しちゃったりとか、まともに落ち込んだりとかすると、(アンチに)さらに栄養を与えちゃうところがあって。

ヨッピー:
 たしかに。

はあちゅう:
 「俺ら構ってもらえた!」じゃないですけど、私が「落ち込んでますよ」って見せると、調子に乗ってずっとやっちゃうんだなってことが最近わかってきて。相手しないようにしよって思うんですけど、たまにやっぱちょっと飽和状態になっちゃいますね。

中川:
 なるほどなぁ。でも、Hagexさんの事件はオレたちに衝撃を与えた。インターネットが、リアルに影響を及ぼす可能性がある。インターネットって、何だろうなって、改めて思った。

ヨッピー:
 実際、ネット上で言われたことに腹を立てるわけで、ネットはネット、リアルはリアルって切り離せないですよね。

中川:
 もっと楽しくやろうよ! ウェブメディアとインターネットがどう変化していくのか……これからも考えていきましょう。今日は皆さん、ありがとうございました!

ヨッピー:
 ありがとうございましたー!

はあちゅう:
 ありがとうございましたー。

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