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「インターネットってワイワイ楽しむものだったのに」 #MeToo、Hagex事件から考えるネットで発信するリスク【話者:中川淳一郎・ヨッピー・はあちゅう】

 ウェブ編集者である中川淳一郎氏と、人気ウェブライターのヨッピー氏がお届けする、「ネット上の諸問題についてゲストともに考える」好評企画が久しぶりに帰ってきた!

 今回は、上司から受けたパワハラ・セクハラを告白し、日本における#MeTooの議論の引き金となったブロガー・作家のはあちゅう氏をゲストに迎え、ネット炎上やインターネットが実生活にもたらす影響などを考察。

 さらには、今年6月に起きたHagex氏の事件を踏まえ、今の時代にインターネットで発信するリスクについて考えます。

左から、中川淳一郎氏、はあちゅう氏、ヨッピー氏

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はあちゅう、パワハラ告発の理由を語る

中川:
 今回はブロガー・作家のはあちゅうさんをお迎えしていろいろと話していこうと思います。はあちゅうさんにどうしても聞いておきたいのが、今年の初め、ウェブ上を震撼させた、はあちゅうさんが電通時代の上司っぽい方から受けたパワハラ……#MeTooのお話。

はあちゅう:
 はい。

中川:
 日本の先駆け的な話になったと思うんですけど、なんというか、「声をあげる奴が損する」っていう印象が、オレは日本のウェブにあると思うんですよね。

はあちゅう:
 大損ですよ! 私、やりたくなかったですもん……。

中川:
 たしか、最初にBuzzFeedが報じたんですよね?

はあちゅう:
 ですね。ヨッピーさんを介して……。

ヨッピー:
 僕が煽ったんですよ。「やれやれ!」って。

はあちゅう:
 煽ったとかじゃなくて、私の相談に乗ってくれて。そもそも私は、#MeTooをやりたかったわけではなくて、相手の方が本を出すということが決まっていて、「10月に本が出ます」と。しかも、私の知り合いが編集を担当していて。

中川:
 知り合いっていうのは出版社の?

はあちゅう:
 幻冬舎の箕輪さんという方なんですけど、もともと仲が良くて。私、電通時代に岸さんという方からすごいセクハラとパワハラ受けていて……という話も彼にしていたのに、箕輪さんがその方の本を出すと聞いてすっごいショックで。

中川:
 なるほど。

はあちゅう:
 箕輪さんって、ベストセラーを何回も手がけられているので、「この人が手がけたら絶対ベストセラーになっちゃって、岸さんが有名になったら、またああいうことがどこかで起きるんだろうな」って思って、もう眠れなくなっちゃって。

ヨッピー:
 はあちゅうさん、その人の名前を見ると、フラッシュバックになるみたいで。仮にベストセラーになって、世の中に広告とかが溢れまくったら、「歩くたびに体調悪くなるのは困る」みたいな話をしていたんですよ。

はあちゅう:
 はい……。

ヨッピー:
 そんなことも含めて相談に乗っていたので、それは言うべきなんじゃないですか? と、僕は思ったんですよ。はあちゅうさん自体がどうのこうのじゃなくて、そういう風に悩んでる人はたくさんいるだろうから、「あなたみたいな人が声をあげることで救われる人は絶対にいるはず」みたいなことを言ったような気がします。

はあちゅう:
 私自身も、電通時代だけだったら、もう忘れようって思ったんですけど、退社してからもずっと嫌がらせがあったんですよ。

 BuzzFeedの記事にも書いてますけど、コンテストではあちゅうの入ったチームは入賞できないようにしたりとか、あるイベントの登壇のときには妨害されたりとか……悪口を言いふらされたりとか。

 しかも、私は今でも広告業界と接点があるので、広告の審査員として呼ばれることもああります。そのたびに、いつも「あの人いないかな?」って、すごい気になってしまうんです。

ヨッピー:
 あぁ~なるほど。

はあちゅう:
 媒体名は言えないですけど、「元電通同士で対談しませんか?」という依頼があったときも、(その事実を知らない人から)「はあちゅうさんと岸勇希さんでどうでしょう?」と提案されて……私は今後の人生で岸さんに会わないために、きっとものすごい労力を使わないといけないんだろうなって。

 箕輪さんが担当編集だったので、Twitterでも知人を介して、タイムラインに岸さんの本の感想がすごいたくさん流れてきて、もう苦しくって……。私は、箕輪さんのこと好きだから騒ぎとか起こしたくないけど、このままではどんどん嫌いになってしまうなって。

ヨッピー:
 ほうほう。

はあちゅう:
 そういったことを、ヨッピーさんに伝えたら、「僕の知り合いの人が、記事にするかどうかは確約できないけどとりあえず話は聞いてくれる」ってなって。話をしたら、「それは表に出したほうがいい話かもしれない」という流れになったんです。

中川:
 そんな流れがあったんですね。

#MeTooは、中川淳一郎が仲介した陰謀説とのデマまで流れる始末

はあちゅう:
 ただ、BuzzFeedさんもプロフェッショナルなので、相手方から名誉毀損で訴えられた場合に、全て証拠を提出しなければいけないと。

中川:
 そうですね。

はあちゅう:
 でも、7年前の話なのでやっぱり証拠が全部揃っているわけではなくて……。

中川:
 当時の話で言えば……例えば土下座させられたとかいろいろ被害を受けたと思うのですが、それって録音などはしていなかったんですか?

はあちゅう:
 当時は、そういう頭がなかったですね……しておけばよかったって、本当に思いました。

ヨッピー:
 渦中にいるときは、なかなかそこまで頭が回らないですよね。

はあちゅう:
 「忘れられない自分が悪い」って思っていたところもあるし、「そういうことってどこにでもあることだろうな」とも思っていました。そういうことを耐え忍んで乗り越えて行くことが社会人なんだって思っていたところがあります。

中川:
 あのとき、ちょっと裏話をすると、実はオレの妻が岸勇希さんの編集担当だったんですよ。

ヨッピー:
 ええぇッ!?

はあちゅう:
 そうなんですか?

中川:
 はい、雑誌の連載の。

はあちゅう:
 それは知らなかった……。

中川:
 はあちゅうさんが声をあげたときに、編集長が状況の推移を見たうえで「これは切るしかねえ」っていう。

ヨッピー:
 そうなんだ!

中川:
 オレの妻も、「これはひどい」と言うんだけど、著者としてずっとお世話になっていたっていう葛藤もあって、どうすべき悩んでいた。で、だったらオレがこの件についてウェブで記事を書いて問題を拡散する! と。そうすれば引導を渡せるだろ!? ってことで、オレはあの時この件についてツイートしたり記事を書いたりした。

 そしたら、わけわかんない展開になりましてですね……はてな匿名ダイアリーのバカ!

ヨッピー:
 あはははははは!

中川:
 なんと! 「ヨッピーとはあちゅうがここまで強気でいられる理由」という、バカ陰謀論をはてなの某増田のバカが書きやがって! こいつが何を書いてるかというと、電通という巨大な権力に対して、はあちゅうとヨッピーが抗った、と。

ヨッピー:
 ほうほう。

中川:
 抗える理由は何か……実はその裏に小物の存在がある! で、その小物とはオレ、中川淳一郎がバックについていると!

一同:
 ハハハハハ!

中川:
 ふざけんなよ!(笑) はあちゅうとヨッピーは、小物の中川淳一郎と知り合いであり、さらにその背後にはサイバーエージェントの藤田晋が付いている、だって!

ヨッピー:
 (笑)

中川:
 中川はサイバーエージェントからいっぱい仕事もらってるから怪しいと睨んで陰謀論を書きやがった。つまり、オールド広告の雄である電通と、新しいネット広告の雄であるサイバーエージェントの代理戦争を、実は岸勇希さんとはあちゅう&ヨッピーをベースに、オレこと小僧が茶坊主のように二人を藤田晋さんにつなげて電通と喧嘩させてるって……もうバカはてな! 増田、おいバカ野郎! となったわけです。

ヨッピー:
 僕めちゃめちゃサイバーエージェントとケンカしてるからそんなわけないのに! いやー、いろんなこと言われましたよね、ホントに!

中川:
 ヒドかった!(笑)

ヨッピー:
 はあちゅうさんなんて、いろいろ言われて一番つらかったっと思いますよ。「はあちゅうとヨッピーはセフレ」とか書かれて!(笑)

中川:
 それって、擁護してるからセフレって発想でしょ!?

ヨッピー:
 そうそうそう。ホント、僕ですら色々言われたので、当人であるはあちゅうさんのところには、いろんな矢が飛んできたと思いますよ。

はあちゅう:
 結構きましたね……。

匿名のネット社会だからこそ可能にする度を越えた誹謗中傷

中川:
 先ほど、お二人からいろいろ聞いたんですけど、はあちゅうさんのお母さんのところにヒドいメールが来てるんですって?

はあちゅう:
 しみけんとの結婚に対して、ですね。

中川:
 あと、ヨッピーさんも変な奴からメールが届くとか……。

ヨッピー:
 まぁ~そうですね。

中川:
 有名税って一体何なんだろう? って思うんですよ。ちょっと名前が出てる人は、「悪口を言われて当たり前じゃん」という考えがウェブ上には蔓延している。このモヤモヤを、ちょっとお二人に求めていけたらと。

ヨッピー:
 僕は、あんまり言われないですけど、何というか表現の自由は当然あるわけですよね。だから、はあちゅうさんが何か言うのも相手の権利を傷つけない限りは自由だし、はあちゅうさんの発言に対して文句言うのも表現の自由だと思うんですよ。だから正直はあちゅうさんの言動に対して批判的な人が多いのもある意味では仕方ないと思ってます。批判する権利は誰にでもあるので。

中川:
 うんうん。

ヨッピー:
 ただ、そこからちょっと逸脱してるよね、っていうことはあるわけでして。

はあちゅう:
 リンチみたいになっていて、目立つやつのことはみんなで叩いていいんだ……みたいなものがあるとは思いますね。謝罪しても許してもらえないというか、活動を停止しろとか、相手がとことん疲弊して自殺を考えるくらいになるまで許さないという論調があります。#MeTooのときもそうでしたし、これまでの大小数々の炎上においても、謝罪したとしても、ずっと掘り起こされて言われ続けます。

ヨッピー:
 はあちゅうさんのお母さんのところに誹謗中傷メールを飛ばすっていうのは、僕は明らかに表現の自由の範疇を越えてると思う。

中川:
 ちょっとそのメールを見せてもらったんですけど、ヒドいですね。

はあちゅう:
 彼との結婚はいろいろと言われるだろうと覚悟はしていたんですけど、そのメールを見て、結構メンタルくらっちゃって……二日くらいドヨーンとしてましたね。

中川:
 今は大丈夫なんですか?

はあちゅう:
 親が大丈夫そうというか、「無視しとくね」みたいな感じで、思ったよりダメージを受けていなかったからいいんですけど……でも、やっぱり家族に行くのは辛いですよ。

ヨッピー:
 嘘の情報やデマを流すことも、表現の自由を越えていると思います。でも憶測で好き放題言う人はたくさんいます。

中川:
 それって流した奴が訴えられてもおかしくない話なんですけど、今の状況から考えると特定するのに、ものすごい手間がかかるわけですよね。

ヨッピー:
 それに、例えば僕がそれを見てメチャメチャ腹が立って、Twitterで僕がその人になんか言うとするじゃないですか。そうすると、「やりすぎ!」って言われるんですよ。「影響力を考えろ」とか怒られる。

中川:
 影響力ねぇ、うんうん。

ヨッピー:
 「お前はフォロワーがたくさんいて、お前が一言、ちょっと言うだけで集団リンチになるんだからそんなんスルーしろ」とかすごい言われるわけですよ。基本、スルーするようにしていますけど、僕だって言いたくなるときはたくさんあるわけで。

中川:
 流れてるコメントを見ると、ヨッピーさんは好かれてるイメージがかなりあるんですけど、アンチというか叩かれることってけっこうあるんですか?

ヨッピー:
 ありますよ、ありますよ! 僕が書いた記事が気に食わんって言う人もいるでしょうし、顔がキモいっていう人もいるでしょうし。それならともかく、事実ではないことで勘違いして僕を叩いてる人もいて、そういう時はやっぱり文句を言いたい。でも、例えばTwitterを引用RTして、「それは違うよ」って言うと、集団リンチだと言われる。ヨッピーはヨッピーのファンに攻撃させている、と。

中川:
 進軍ラッパを吹いて、ヨッピー信者に攻撃させていると。

ヨッピー:
 そうそうそうそう!だから表立ってあーだこーだ言う時は相手を選んでますね。相手もフォロワーがたくさんいるとか、同じ業界の人なら表立って言ってもいいかなって。

フォロワーが多いといじめっ子になる。ウェブ上では殴られ続けるしかない

はあちゅう:
 RTすると卑怯とかは言われますね。

中川:
 卑怯ってどういうこと?

ヨッピー:
 フォロワー10万人の奴が、フォロワー500人の人を相手に文句を言ったら「やりすぎ」「かわいそう」とかね。結局、黙ってるしかなくなって殴られっぱなしになっちゃう。

中川:
 昔、乙武さんが銀座のイタリアンに行って、(店が)2階だったから、店の人が「車椅子は運べません」となって騒動になりました。乙武さんが、そのことで(Twitter上に)店の名前を出しちゃったことがきっかけで、結局、乙武さんの何十万人ものフォロワーがそのいたいけな店を叩いたんですが、それはいじめだといって、逆に乙武さんが大炎上しました。

ヨッピーはあちゅう
 うんうん。

中川:
 それで言うと「フォロワーが多いといじめっ子になる」ってことなんですかね?

ヨッピー:
 それはあると思います。調子乗ってると思われるとアレなんですけど……(笑)。

中川:
 全然大丈夫ですよ。

ヨッピー:
 『ドラゴンボール』って漫画があるじゃないですか。

中川:
 うん。

ヨッピー:
 孫悟空っていう主人公がメチャメチャ鍛えてメチャメチャ強くなって、奥さんのチチを軽く叩いたら、チチがものすごくぶっ飛んでしまった。バーン! と。

中川:
 うんうん。

ヨッピー:
 そんな感じで、ちょっとやるだけで相手にダメージが行き過ぎるみたいなことがあるのかもしれない。だからやりづらい。でも、僕らがちょっと文句言ったところでそんなにダメージを負わないでしょ!? って思ってるんですけどね。

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