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オタク芸人でラノベ作家の天津向に聞く、大変でも仕事をしながら同人活動を続けるワケ。一人のサークル参加者として語るコミケとは?

企画が1年通らなかったライトノベル

──同人の4コマもラノベもやっぱり創作するのってやっぱり苦しいですか?

向:
 苦しいですね。でも、ここからより年齢重ねればより難しくなることが分かっているなら、今やった方が絶対良いなと思います。僕は承認欲求の塊ですし、放っておいたら5秒に1回エゴサーチするような人間ですから、だから、とにかく認めてほしい気持ちは山ほどあるので、とにかく創作は今の間にやろうと。

──ラノベは昔から書きたいと思っていらっしゃったんですか?

向:
 ラノベは、前から書きたいという感覚はほとんどなかったんです。

 先輩の芸人に「はりけ〜んず」の前田登さんという、本当に師匠みたいな方がおられるんですけど、その方が全部やっているんですね。アニメの原作、漫画、声優もやっている。アニメ・声優系のイベントもやっている。僕が思いつくことを全部やっていらして、その轍を歩いているというのもあったんです。

 でも、この先輩を抜くには何か違うことをしなければならない。自分に何ができて、先輩は何をやっていないかと考えた時に、僕が思ったのはライトノベルとアニソンのイベントはやっていなかったので、この2つはやろうと思ったんです。その時に、運良く友達がガガガ文庫からライトノベルを出していて、その編集の人とご一緒する機会がありまして、お話ししたら「向さん、じゃあ企画書持ってきてください」と。

──では、戦略的にやろうと思ったわけですね。

向:
 ライトノベルはそうですね。でも、やっていくにあたってそんなに優遇されるわけでもないので、企画書自体も何回も持って行って、1年通りませんでした。僕はどっちかというとアホなので、経験して覚えていくしかないと思っているタイプなので、その企画書も、出して、違う、出して、違うの繰り返しで……。結局、通った企画は僕自身の自伝みたいな、芸人で相方だけ売れた、みたいな話でした。

 そのあたりで、カッコつけて「俺は創作をやる」って決めつけているけれど、創作の中に僕自身を入れないと、僕が書く意味って無いんだということを感じたんです。

天津向氏のビジネス書『ただのオタクで売れてない芸人で借金300万円あったボクが、年収800万円になった件について。』(左)と、ライトノベル作品『クズと天使の二周目生活 』(右)
(画像はAmazonより)

──向さんの本を読ませていただいたんですが、ご自身のことを書かれたビジネス書の『ただのオタクで売れてない芸人で借金300万円あったボクが、年収800万円になった件について』(以下、『800万』)とラノベの『クズと天使の二周目生活』(以下、『クズ天』)の2つの作品が意外と似ていると思いました。

向:
 ああ、そうかもしれないです。その、思考が見える感じにはなっているんじゃないかと思います。特に『800万』はそれこそビジネス書としてやり方を書いているだけですけど。そんな色んなジャンルを書けるほど器用じゃないんです。

──『クズ天』は人生の途中からやり直すお話ですが、まるで自己啓発本のようだなと思いました。特に最初の方はキツイ現実のエピソードがありますし。

向:
 キツイですよね。でも、案外あのキツさが良いっていう人もいらっしゃって、あれは経験しているので書けるんです。そういう説得力も多少あるんじゃないかと思います。ベタなラノベではないので、それは僕しか書けないものだろうと思ってやっています。

──ストーリーが進むにつれて、登場人物の意外な一面も明らかになりますよね。

向:
 さっき言ったコミケの話ではないですけど、側面しか見えていなかったものが、違う立場になって立体的に見える、入場で並んだからこそ見えた景色があるから、サークルに来てくれたお客さんに優しくできる。『クズ天』も一緒で、そういう意味ではコミケで得た経験も無意識にちゃんと仕込めているんだろうなと思うんですよ。

僕の笑顔を見に来て欲しい

──次のコミケ、2日目参加されるご自身のサークルで見て欲しいものは何でしょう?

向:
 まあ、色んなことを経て…… 僕の笑顔を見に来て欲しいですね(笑)。

──つまり、買ってくださいということですね。

向:
 「ありがとうございます!」って言っている時の笑顔を見ていただきたい。


 今回、お話を聞いた天津向氏のサークル「天津向とゆかいな仲間達」はコミックマーケット94 2日目東T55aで参加。ライトノベル『クズと天使の二周目生活』の最新第3巻が8月17日(金)発売予定。
 さらに10月7日(日)には、天津向氏プロデュースの「アニソン×お笑い」の融合を目指す、新しい形のアニソンフェス『アニ×ワラ Vol.8』が東京国際フォーラムCにて開催。

『クズと天使の二周目生活』第3巻
(画像はAmazonより)
プロフィール
サイトウタカシ
TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスの編集・ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。ニコニコニュースの他、SENSORS.jpなどで記事を執筆中。
Twitter:@suburbangraphic
Website:suburbangraphics.jp

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