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拷問、処刑、火あぶり…中世魔女狩りの元凶になった教本『魔女に与える鉄槌』の知られざる全貌を解説

 今回紹介するのは、Alt + F4 さんが投稿した『世界の奇書をゆっくり解説 第1回 「魔女に与える鉄槌」』という動画。再生回数は32万回を超え、歴史総合カテゴリで過去最高1位を記録しました。

 音声読み上げソフトを使用して、魔女狩りに関する手引書といえる書籍『魔女に与える鉄槌』という奇書の解説を行います。

『魔女に与える鉄槌』1669年版の題扉
(画像はWikipediaより)

世界の奇書をゆっくり解説 第1回 「魔女に与える鉄槌」


6万人以上の人間を死に追いやった魔女狩りに関する手引書

 ハインリヒ・クラーメル、ヤーコプ・シュプレンガー著『魔女に与える鉄槌』(Malleus Maleficarum)。

 『魔女に与える鉄槌』は3部構成からなる魔女狩りに関する手引書といえる書籍です。最終的に版を重ねた回数は16版、計3万部以上すられたこの本は、最終的に6万人以上の人間を死に追いやったと言われています。

 この本が著されたいきさつは、この本の著者である異端審問官ハインリヒ・クラーメルが、インスブリュックという町において男女数十名が行った「悪魔的儀式」に対する罪でとらえた「異端者」たちに対する処刑を、現地教会によって拒絶されたことに端を発します。

 当時の性風俗はまだまだ開放的で、地方ではいわゆる乱交のような催しが行われていたような時代です。そんな風習に対して容認的な現地教会のゆるさは、敬虔な信徒であるクラーメルにとっては到底看過しがたいものでした。

 彼はその怒りと義心に任せ、かつてインスブリュックで受けた屈辱に対して反発するように、一冊の本を書き上げました。

 のちに『魔女に与える鉄槌』と題されるこの本は、魔女の危険性を訴えるだけでなく、彼が異端審問官として培った、「魔女を見つけ出す技術」、「魔女を自白させるための効果的な拷問法」、「処刑のための教義的に正当な方法」が事細かに記されていました。

 それはまさに魔女狩りのためのマニュアルといって差し支えなく、この本に記された方法にのっとって処刑された人数は6万人にも上ると言われています。

 また、この本の中には次のような一節があります。

 ここからも見て取れるように、クラーメルの女性に対する不信感は並々ならぬものがあったようです。

 女性に不信感があり、怒りに任せて本を書いた、このクラメールの言動に「こじらせてるなぁ」「やみ深すぎだろww」「何があったw」といったコメントが寄せられました。

 (後述しますが、当時の教皇インノケンティウス8世の出した異端審問を奨励する教書においては、「多くの男女が悪魔的なたくらみに手を染めている」と述べられています。)

 実際、「魔女」と訳されてはいるものの、当時魔術を使うとされた人間は女性に限ったものではなかったのですが、本書のおいてはとりわけ女性が「堕落しやすいもの」として扱われています。

魔女狩りを扇動するまでの力を宿した3つの理由は何か?

 これらヒステリックともいえる文章から、一つの疑問が起こります。

 一介の異端審問官に過ぎない一人の男が怒りに任せて書いたこの本に、15,6世紀における魔女狩りを扇動するまでの力を宿したのは一体何だったのでしょうか? 一般に言われる理由は大きく分けて次のようなものです。

 1.権威からのお墨付き
 2.活版印刷技術の出現
 3.この本の内容

 まず第1に、この本の共著者とされている、ヤーコプ・シュプレンガーの存在です。シュプレンガーは当時神学研究にいて最も権威のあった大学の一つである、ケルン大学神学部の教授でした。

 彼は本書をケルン大学に送付し、神学部教授陣8名による「クラーメルの考察は学術的に正当なものである」という同意書を取り付けました。

 共著者であるシュプレンガーも、クラーメルの活動を拒んでいた節があり、著者に関してもあくまでも名義貸しだけであったとも言われています。

 また、さらに大きなものとして、本書の1ページ目には、「限りなき願いをもって求める」(スンミス・デジデランティス・アフェクティバス)と題された教会教書が収録されています。

 この教書は、当時の法王、インノケンティウス8世によって、魔女の実在とその脅威を訴える文言とともに、クラーメルに対して魔女狩りの権限を与えるという内容が書かれています。

 彼はこの教書を自身の著書の序文として転用しました。この教書は、『魔女に与える鉄槌』が書かれる3年前に、「クラーメル個人」に対して発行されたものであり、この書籍そのものに対して許可を与えたものではなく、あくまで、クラーメルが自身の著書の権威強化のために教書を悪用したというのが現在の見解であると言われています。

 この時代、教皇による教書というものはほとんど神の言葉に等しい権限を持ちました。教皇からのお墨付きを得たことで、この本の影響力は爆発的なものになりました。

 第2に、活版印刷技術の出現がこの本の流布を後押ししました。

 かの偉大なグーテンベルクによって活版印刷技術が一般のものとなったのは1455年、この本が出版された1486年は活版印刷による書籍の発行のブームともいうべき時代で、それまで紙に手写しして複製していた書物が安価かつ大量に出回り始めた時代でした。

 今でこそ世界で最も刷られた書籍は聖書と呼ばれていますが、ある研究では活版印刷の発明から100年以内で最も印刷されたのは『魔女に与える鉄槌』であるとも言われています。

 第3には何といっても本書の内容です。文化を発展させるのは戦争とポルノだとはよく言う話ですが、この本を後押ししたのは恐怖とエロでした。

 そんな中、「この世の悪は魔女によってもたらされている」、「魔女の増加は終末をもたらす」と語る本書が時代の不安に合致してしまったのです。

 村で不幸は不作があれば、少しでも怪しい人間が魔女として一方的に認定され告発されました。

 この場合の「怪しい」とは、「薬草の知識を持っていた」というものから「村民との交流が薄い」ですとか、果ては「性格が暗い」といったものをまで多岐にわたります。一度告発されてしまえば、度重なる拷問の末の虚偽の自白、そして最終的には火あぶりまでの一本道が待っています。

 「村民との交流が薄い」「性格が暗い」という理由で告発されてしまうことについて、「俺死んだ」「死んだわw」といったコメントが殺到しました。

 また、当時の絵描きにとって、女体を煽情的に描くことは不道徳であるとされていました。

 煽情的であって当然であり、異端審問の様子を描くことは教義に準じることでもありました。

魔女狩りの様子は、協会に認められた状態で堂々と裸婦画を描くことのできる数少ないモチーフだったのです。

 不道徳とされていた裸婦画を堂々と描ける状態に、「結局堕落してるじゃねーか」「正当化するのは草」といったコメントが寄せられました。

 こうして数々の追い風を受け、『魔女に与える鉄槌』は欧州全土へと広まっていき、暗黒時代と呼ばれた12世紀をも上回るかずの犠牲者を出すことになるのです。以上が『魔女に与える鉄槌』に関するご紹介です。

現在「良書」として扱われていても、将来「奇書」や「悪書」になるかも

 この本を奇書と呼ぶか悪書と呼ぶかは判断するのであれば、多くの人は「悪書」と断じるでしょう。しかしそれは、現代の価値観に基づいたものです。かつてこれが、局地的ではあったにせよ、「良書」として扱われた時代があったことは忘れてはなりませんし、我々が現在善としているものが将来においても同一の評価を保っているとも限らないということを、この本は教えてくれています。

 本動画冒頭において、ハインリヒ・ハイネの一説を引用しましたが、自身の総数を超える数の人間を焼いたこの恐るべき書物は、逆説的にそれ自体も焼かれ、歴史から葬られるべき存在なのでしょうか? 皆さんのご想像にお任せいたします。

 この投稿者の問いに「最後の問いかけが深すぎる」「最後の言葉、重いな」といった様々なコメントが寄せられました。

 解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

世界の奇書をゆっくり解説 第1回 「魔女に与える鉄槌」

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