「ハンが先に撃った問題」についに公式解答!? 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のラストで描かれたEP4へのアンサー
映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が6月29日から全国公開中です。本作はシリーズ屈指の人気キャラクターであるハン・ソロが、まだ何者でもなかった若き日の大冒険を描いた物語です。
ハン・ソロについては「ハンが先に撃った」というフレーズが示すように、酒場のシーンで賞金稼ぎのグリードをハン・ソロが先に撃ったと描写されているシーンで、1997年に発表された『スター・ウォーズ 特別編』では、ジョージ・ルーカス監督が改変を加えたことで、ファンの間ではさまざまな議論が交わされています。
サブカル評論家のDr.マクガイヤー氏は自身の番組「最近のマクガイヤー 2018年7月号」の中で本作をピックアップし、作中で描かれたハン・ソロの半生に、「こういうような過去があるから、先に撃つようなやつになったという、すごいスッキリする映画だった」と感想を述べました。
また未来を舞台にしているはずの作中に、アメリカンダイナー等が登場する世界観については「銀魂の世界観と同じ」とし、「『スター・ウォーズ』は30年早かった『銀魂』」と独自の解釈を語りました。
※本記事には『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレを一部、含みます。ご了承の上で御覧ください。
「ハンが先に撃った問題」を解決するスッキリした内容
マクガイヤー:
基本的にハン・ソロって、出てきた時にもう完全に人を食ったようなピカレスクロマンダークヒーローみたいな感じで出てきたわけですが、この映画では無名の若者がどうやってそんなハン・ソロになっていったかというのも描こうとしてるわけです。
全然不良じゃない田舎者の童貞が、どういうふうに不良ヒーローになったかみたいなものを描いてるわけですよ。だからそこがすごい上手いなと思いました。というのは、ここ映画に出てくるハン・ソロ以外のキャラクターはみんな屈折してるんです。
それはですねそのドナルド・グローヴァー演じるランド・カルリジアンもそうですし、師匠のベケットもそうだし、最後のラスボスみたいな感じになるポール・ベタニーもそうですし、チューバッカもはじめてハン・ソロと出会った時は、もう完全にチューバッカになっていると。
師匠のほうがハン・ソロっぽいですし、そのハン・ソロっぽい師匠を倒すことでハン・ソロはハン・ソロになるいう、すごく良い脚本。さすが名作『ドリームキャッチャー』を監督したローレンス・カスダンだと思ったんですけれど。
町山智浩さんのポッドキャストも聞いてきたんですけれど、町山さんは「もうちょっとピカレスクロマン溢れる悪いヒーローが見たかった」って言うんですけれど、これはこの田舎者の童貞ハンがどうやってダークヒーローになったかみたいなのを描いているとして、すごく良かったですね。
一番良いのはやっぱりキーラですよね。キーラが最初の映画の冒頭ではハン・ソロに守られる形のキーラが、ハン・ソロと別れることでハン・ソロ以上に成長してしまったという形で、3年後に再会するじゃないですか。良かったですね。ちょっとそこらへんに少し不満もあるんですけれど。
さらにもっと良いなと思うのは、「ハンが先に撃った問題」というのがあるわけです。これは『スター・ウォーズ』史上ベスト3ぐらいに入る問題で、スターウォーズサーガにはいろいろ問題があるわけですよ。「R2-D2全部知っていたんじゃないか問題」。あと、「イウォーク首狩り族問題」。そして3番目が「ハンが先に撃った問題」ですよ。
これは『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』、その時はエピソード4とかついてなかったんですが、つまり『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の時に、タトゥイーンの酒場でグリードと話をしているわけですよね。
なんかちょっと形勢が悪くなると、ハン・ソロが先に撃つというか、グリードが銃を抜いていないのにグリードをゴミのように殺してしまうということで、そんなことを主人公側のキャラがやっていいのかということで、でもアウトローだからやっていいんだと。
でもこれはやっぱりダメなのかなっていうことで、特別編ではジョージ・ルーカス自らグリードが先に撃ったような形で再編集して、でもそんなのダメじゃん! みたいなことで、すごい問題になっているんですが、ダメですよ。アメリカではダメ。
西部劇のヒーローとしてはダメですが、アウトローとしてはいいんじゃないかということで、散々議論になっていて。でも今回、ハンがなぜ先に撃つような人間になったかというのが、一番最後の最後で示されるわけですよ。
つまりハンはこういうような過去があるから、先に撃つようなやつになったという、もうすごいスッキリする映画だったじゃないですか。つまり『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』という映画でベケットを撃つシーンで、田舎者のハン・ソロの中にあった何かが死んで何かが生まれたということで、ハン・ソロはハン・ソロになったというすごいいいシーンだったんです。
『スター・ウォーズ』の世界観は30年早かった『銀魂』
マクガイヤー:
ちょっとまとめると、もう『スター・ウォーズ」って、これは『銀魂』なんじゃないかと思うわけです。
さっき言ったような、アメリカの50年代60年代の不良が、つまり『スター・ウォーズ』って宇宙を舞台にしたスペースオペラにしては、時代劇の侍みたいなやつも出てくるし、なぜか『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』か『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』だったと思うんですけれども、アメリカの50年代にあったよなダイナーみたいなのが出てくると。
宇宙にアメリカングラフィティのダイナーみたいなのがあるわけないじゃないですか。しかし今、この2018年に生きている僕たちは、こういうものに見覚えがあるわけです。なぜ『銀魂』に歌舞伎町なんてあるんだというやつですよ。だって『銀魂』は未来を舞台にしているのに歌舞伎町というところで和服を着ていて、しかもスナックまであると。
完全におかしい。しかしこれは、つまり好きなものを全部入れていると。好きなものを全部入れたスペースオペラ空間がジョージ・ルーカスにとっての『スター・ウォーズ』であるし、『銀魂』であると。
つまり洞爺湖の木刀みたいなのと同じ感じで、モーゼルミリタリーみたいな銃とかこのファジーダイスみたいなものが出てくるということで、『スター・ウォーズ』は30年ぐらい早い『銀魂』だったと思えば、この『スター・ウォーズ』の世界観が納得できる。
納得できませんか、30年ぐらい早い『銀魂』だと。志村新八がルークであると。その通り。というわけで、この宇宙空間に侍とかガンマンとかがいても、全く問題ないですよ。だって『銀魂』に新撰組とかが出てきても全く問題ないじゃないですか。
というわけで、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は面白かったなと思うんですが、ちょっと考えてみると、最初ロン・ハワードじゃなくて、フィル・ロードとクリス・ミラーが監督するという話で、フィル・ロードとクリス・ミラーが最後まで監督してたらどうなったのかなというのが、すごい気になるわけです。
絶対にこんな映画になっていないし、脚本が同じだとしてもこんなテイストの映画にはなっていなかったと思う。この時はものすごくみんな仲良さそうだったらからね。