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「処女信仰の男はクズ」社会学者・宮台真司が語る”アカデミック童貞論”が快刀乱麻の切れ味

理想の彼氏は“星野源”――脱コントロール、脱支配、脱劣等感、だから寡黙でもいい

宮台:
 星野源とか高橋一生が、女の子が今一番彼氏にしたい、あるいは旦那にしたい男たちなんだけど、これは面白いよね。先ほど申し上げたような「男日照り」の状態なので、女から見て、さもしい損得野郎じゃなく、不安なマザコンでもなく、それゆえに女をコントロールしたり支配することに動機づけられておらず、逆に、女を理解したり女とフュージョンしたりすることに動機づけられている存在。それを望んでいるわけですね。

星野源さん。
(画像は公式Twitterより)

 彼氏にしたい男と、旦那にしたい男が、今は重なっていて、なおかつイケメンじゃない。と言うと「イケメンだ」っていう反論してくる女も多いけど(笑)、30年以上も大学で定点観測してきた者からすると、あのくらいの顔は「作り」として言えばどこにでもいる。むしろ、女から見て、脱コントロール感、脱支配感、脱コンプレックス感、脱自動機械感が、漂っているように感じられるから「イケメン」に見えるわけだ。それが大切ね。

 寡黙な人、喋りが苦手な人でも、アイコンタクトやオーラの交換で「なんかいい感じだな」「いい感じになれそう」って思える男は、とてもモテます。現実に僕の周囲にいる学生たちを見ると、みんなそうなんだよね。今でも、昔みたいなアイドル顔かどうかみたいな意味でイケメンかどうかにこだわる女がいるのは僕も知っているよ。でも、そういうのは便所女なので、男の側からすると恋人やカノジョの候補にならないんだよね。

 僕に言わせると、イケメン厨の女はたいてい「便所女」だよね。自己評価の低い女が「ここが便所」とタテカンを立てる。これ幸いと男が立ち寄って用を済ます。女は選んでくれたとゴキゲン。でも男にとっては用を足せるならどこでもよく、用を足せば文字通り用済み。だから男は立ち去る。立ち去られた女は自己評価がさらに下がって、またタテカン。自分の醜悪さを「見たくない」から、イケメンだからと「見たいもの」だけ見る。

 要は、抑鬱的感覚を埋めたくて、タテカンを立て、便所に立ち寄るイケメン男を探すわけ。すると、自分はイケメンだから女はイチコロ、みたいなコントロール系の糞ナンパクラスタ男だけが寄ってくる。だからクズみたいな体験を繰り返し、自己評価が下がりっぱなし。僕は「クズがクズを呼ぶ連鎖」と呼ぶ。コントロール系の糞ナンパクラスタ男と、イケメン好きの便所女は、いつも対(つい)。みなさん、周りを思い出してほしい。

「精神的童貞」――女の喜びを自分の喜びとして映し出すような営みがない

宮台:
 そういうこともあるので、「精神的童貞」というのがあり得る。コントロール系の男=糞ナンパクラスタ系は、セックスしても、ダイブ(没頭)もフュージョン(融解)もない。あるのは、ダイブならぬフェチへの固執と、フュージョンならぬコントロールだけ。別の言葉で言えば、女の心や体に生じていることを、自分の心や体に生じさせられない。それを生じさせられれば、女の快楽は男の快楽になり、男の快楽は女の快楽になります。

 それがないと、女が、セックスにおいても恋愛においても不全感を抱いてしまいます。それだけじゃなく、この男はクズだなって思うわけだ。だから僕の言う「4回ルール」をクリアできない。幻滅するので「4回以上はセックスできない」ってことになる。ところが昨今は、セックスはできてもセックスを通じて絆を結べない「精神的童貞」が蔓延している。彼らは女を「所有」したがるけど、彼らから女を「寝取る」のは実に簡単です。

 頓馬なクズ男だからね。女を物格化(物扱い)して所有したがるから、逆に簡単に持ち去られちゃうわけ。ざまぁ見ろ(笑)。まぁクズだから、どうしてそうなっちゃうのか分からないというふうにもなりがちですね。そうしたクズを指して「精神的童貞」と呼ぶことができると思う。女を金で買えるけど、素人をその気にさせるのは無理っていう「素人童貞」にも、ある程度は共通して言えることだね。女にも似たようなのがいます。

“絆の関係”はスクールカーストのポジション争いの先にはない

宮台:
 こうしたクズの存在は、それが蔓延しているのを見れば「社会の問題」だけど、相手を幸せにすることで自分も幸せになりたいと思うなら「当人の問題」だという他ない。自分で何とかするしかないよ。どうすりゃいいか。社会も人間関係も「いいとこどり」は無理。損得を越えて絆を結ぶ仲間を作れない男が、性愛でだけ絆を作れるなんてあるわけない。ってことは、損得を越えた人間関係を経験することが全ての処方箋です。

 でも、こうしたクズ男が損得を越える仲間を作れなかったのはどうしてかと言えば、やっぱり「社会の問題」が背景にあると言わざるを得ない。だからそこを何とかしたくて親業講座をやってきたわけです。『ウンコのおじさん』という本もそのために書きました。ちなみに、僕が2000年にやった統計調査によれば、両親が愛し合っていると思う大学生は、そう思わない大学生より、恋人がいる率が高く、性愛経験人数が少ない。

 つまり、現にある絆と愛に満ちた関係をロールモデルにして、羨ましがるだけじゃなく、現実にあると信じて摸倣することで、前に進むしかない。ところが、親族関係や近隣関係や教室関係でも、そうしたロールモデルがなかなか見つからなくてね。若い人からは、スクールカーストのようなポジションゲット競争か、LINEの既読プレッシャーみたくキャラを保ってポジションを維持するゲームしか、ないというふうに見えちゃうんだね。

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