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ジャバに囚われたレイアが“ビキニ姿”になっていたのには、ちゃんとした理由があった【スター・ウォーズ EP6/ジェダイの帰還】

ルークが着ている真っ黒な服の意味

岡田:
 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の時には、白い柔道着みたいな服を着ていたルーク・スカイウォーカー。次に、グレーっぽくもあるんですけど、基本的には白っぽいパイロット服を着ていた『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のルーク・スカイウォーカー。

 それらに対して、この『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』では、完全に黒い服を着てるんですね。この黒い服というのは、別にヨーダも着ていなかったし、オビ=ワン・ケノービも着てなかったから、ジェダイの制服というわけではないんです。

 だけど、この服が、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』のルーク・スカイウォーカーには、やたらと似合っていて、この黒い服を着たルークというのが、作品全体の「この物語もいよいよ終わってしまう」という感じを出しているんです

 僕はこの黒い服が、ルーク・スカイウォーカーの孤独感を象徴しているというか。最初は、友達が欲しくて大学に行きたかった青年が、ジェダイに入って、父と戦い、最終的に、たった1人になるという。今回の映画のラストの自分の未来を象徴しているようで、結構、好きなんですよね。

画像はディズニー・スタジオ公式YouTubeより。

岡田:
 真っ黒な服って、やっぱり目立つよね。この、ルーク・スカイウォーカーの未来を暗示するような服というのは、どのシーンで見ても、ちょっとドキッとする仕掛けになっています。

 よくよく考えると、ルークは、お父さんと同じ黒いフードを被って、黒い服を着ていて、その上「自分のことを捨てて、理想のために生きる」という部分についても、まったく、お父さんと同じなんです。

 そんなふうに、お父さんと同じく禁欲の象徴である黒い服を着て、同じ世界に生きているにも関わらず、それでも立場的には対立しているというのが面白いよね。

ヨーダの死によって浮かび上がるルークの孤独

岡田:
 ルークはハン・ソロを救出した後、修行を完成させるために惑星ダコパに向かいます。そこでフランク・オズが操るヨーダが再び出てくるんですけれども。再会したヨーダは、ルークが一瞬、驚いた顔をしてしまうほど衰えているんですね。

 こういった衰えを表現するために、このシーンでのヨーダは、『スター・ウォーズ エピソード6/帝国の逆襲』の時と比べて、1歩ごとの歩幅が小刻みになっていて、かなり姿勢も前かがみ気味になるか、もしくは逆に、反り返り気味になって歩いているんですね。

 あと、以前は、もうちょっとちゃんとしていた襟が立ち気味になって、服の着方がちょっと崩れているというところで、ヨーダの衰えを表現しています。

画像はディズニー・スタジオ公式YouTubeより。

岡田:
 ルークを指導してくれたヨーダは、ここでいなくなってしまい、この先、ルークは「ジェダイとしてどう生きていったらいいのか?」とか、「どうやって父と立ち向かっていいのか?」ということを、すべて自分で考えなければいけなくなります。

 さらに、この後、オビ=ワン・ケノービの幽霊から、恋心をいだいていたレイア姫が、自分の実の妹であることを知らされます。

 第1作目の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』、第2作目の『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の時には、主人公のルーク・スカイウォーカーには、いつも導いてくれる人や味方になってくれる友達がいたけれど、この先は、どんどんいなくなっていく

 こういった、ルーク・スカイウォーカーの孤独というのを頭に入れておくと、今やっているエピソード7~9のお話も、味わい深くなってくるんですよね。

ジェダイにとっての良い最期

岡田:
 ヨーダが死ぬと、死体はフッと消えていく。これは「ジェダイが成仏した」という証拠ですね。第1作目の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でも、オビ=ワン・ケノービは、すべてに納得して死んだので、ダース・ベイダーに切られた時に、スッと消えたわけですね。

 そしてヨーダも、悔いなく自分の使命をまっとうしたので、「次のステージに移った」みたいな形で、消えて死体が残らない。ここからわかる通り、ジェダイにとっての良い最期っていうのは、消えること。これは「死ぬ」んじゃなくて、「幽霊体のようになって別の次元に行く」ということ。

 つまり、「かつてはジェダイの騎士だったダース・ベイダーが、そんな最期を迎えることが出来るかどうか?」というのが、物語後半の見どころになってるわけですね。

岡田:
 その意味では、エピソード1~3に出てきた、他のジェダイ達の死に様はあまり良いものではなかったですよね。サミュエル・ジャクソン演じるメイス・ウインドゥとか、いっぱい出てきたジェダイ達の最期は、やっぱり、こういう死に方にはなっていなかった。

 つまり、あそこで散った多くのジェダイたちは、自分の使命をまっとう出来なかったということなんです。

 こういうことを、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』では、きっちり描いてるは描いてるんです。こういうふうに、『スター・ウォーズ』シリーズについて、すべてのエピソードを関連性のある一繋がりの物語として見ている人は、案外、少ないんですけども。

 それに対して、エピソード4~6での、オビ=ワン・ケノービやヨーダは「いい死に方をしたから、成仏して肉体が消え去る」というふうに、きちんと見せています。

帝国に勝ってもルークには何も残らない

岡田:
 ヨーダの死の辺りから、 『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』の第1幕が終わって、「この映画は基本的に悲しく切ない映画なんだ」というのがわかってくるようになると思います。

 ここを押さえておくと、「結局、ダース・ベイダーと銀河皇帝を倒したからといって、ルーク・スカイウォーカー少年には何も残らない」というのがわかるんですね。

画像は公式サイトより。

岡田:
 ルークには何も残らないということは、この時点から、普通のヒーロー映画みたいに「帰るべきところがある」とか、「待ってくれている仲間がいる」みたいな逃げ場所が、一切、与えられていないということが描かれているんですよ。

 「ここから先も、第2の人生を楽しもうね!」という部分は、ハン・ソロとレイア姫のカップルが全部持ってちゃったし、「永遠の命を与えられて、ひたすら人間社会の傍観者のように生きていく」という生き方も、R2-D2とかC-3POみたいなドロイド達が担ってしまっている。

 ルーク・スカイウォーカーには、このお話の中で、自分の身の落ち着け場所がないということが、このシーンで明らかになっているんです。ヨーダの死は、 ルーク・スカイウォーカーの未来を暗示している。きっと「すべてに納得して死んで、その瞬間に消えてしまう」という彼の未来が待っているんですよね。

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