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「永井豪は手塚治虫に比べて評価が低いのはなぜ?」← 疑問に答えてみた

 9月3日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』では、「永井豪の評価が低いこと」について岡田斗司夫氏がコメント。

 「永井豪は手塚治虫に比べて評価が見落とされがちになるのはなぜか」といった質問に対して、永井豪の魅力と、評価が低いように見える理由について語りました。

永井豪氏。画像はWikipediaより

手塚治虫と永井豪の違いは「”漫画の形”を作ったか否か」

岡田:
(お便り)「手塚治虫の陰に隠れて見落とされがちですが、永井豪も天才だと思います。私は人々が、永井豪を天才と呼ばないのが不満なのです。そこで、岡田さんの手塚治虫と永井豪の違いと評価をお聞かせください。また永井豪の評価がそれほど無い理由も知りたいです。何か裏話があるのでしょうか。」

岡田:
 永井豪の評価が低いというのは、時系列として漫画を捉えているかどうかっていうのに関係しているんだよね。手塚治虫の凄さは、あの時代の漫画の状況に、あの表現でいきなり出て来たところに凄さがある。だから、今見ても実は凄さがあまり分からない。

手塚治虫氏。画像は手塚治虫公式サイトより

岡田:
 ところが、永井豪の凄さっていうのは、『マジンガーZ』や『デビルマン』というアイデアとか、お話の組み立て方とかも含めて、当時見た感じと今見た感じが、そんなに変わらないんだよね。だから石ノ森章太郎の天才さは、手塚治虫と同じように、ちょっと時代性に関係しているから、たぶん石ノ森章太郎と手塚治虫は、漫画業界の人が「天才だ!」という風に言ってあげないと、後世の人になかなか分かりにくい。

 漫画作品だけで見たら、実は手塚治虫って案外ヒット作が少なくて、後で書き換えとかしているから、結構見苦しい作品も多いんだよね(笑)。『三つ目がとおる』なんてさ、やっと完全版が復刻で出るって告知が出ていて、連載から単行本にされる時でも、手塚治虫がどんどん変えてしまった。

『三つ目がとおる』。画像はAmazonより

岡田:
 それぐらい時代に乗ろうと、ちゃんと今の時代っぽくしようとしていた人だから、それが後になると、もう原版が分からなくなっちゃっているんだよね。だから手塚治虫というのは、ちゃんと時系列で評価しなきゃいけない。

 ところが永井豪は、漫画家というよりは、途中から原作者になってきちゃったところがあるわけでしょ。『激マン!』っていうのを見たら分かるのだけど、『マジンガーZ』は、最初からアニメ化を目指して描いていて、「アニメ化してくれない」という理由で、出版社を変えるというぐらいの荒技をとっているんだよ。

画像は『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』予告編YouTubeより。

岡田:
 つまり永井豪にとって、ある時から”ダイナミックプロ”というプロダクションから作品を作り出していくというような作り方がメインとなって、別に自分がペンにインクをつけて描く”漫画”っていう表現に関しては、一番大事かは分からなくなってしまった。

永井豪は周りの漫画家と大差はない?

岡田:
 漫画作品としての評価は、永井豪の方が高い。手塚治虫と永井豪の漫画のどれかを持って旅に出るかって言ったら、俺は絶対に永井豪を取るよ。『凄ノ王(すさのおう)』でも『バイオレンスジャック』でも『デビルマン』でも『あばしり一家』でも、何でも持って行く。絶対に面白いもん。

『バイオレンスジャック』。画像はAmazonより

岡田:
 でも、手塚治虫の何を持って行くかって言ったら、「いや、別にいいです」っていう作品が正直(笑)。たぶん今見ても、「これは本当に面白いな」っていう手塚治虫の漫画って、『W3(ワンダースリー)』と『どろろ』と『ブラックジャック』の10巻ぐらいまでかな。そこら辺くらいだったら見るのだけど、永井豪の作品の半分ぐらいが、いまだに見て面白い。『どろろ』の面白さは格別なんだけどね。

『どろろ 手塚治虫文庫全集(1)』画像はAmazonより。

岡田:
 でもそれは「面白い」であって、漫画家として天才だったかというと、他にいろんな漫画家がいるところから永井豪が生まれてきたのと、いわゆる漫画といえば一コマ漫画か、横一列のストリップと言われる『スヌーピー』とか、そういう漫画しか無かった時代に、いきなり映画的技法を持って、今の漫画の形をゼロからドンと作っちゃった手塚治虫の天才さっていうのは、格が違う。

 ただ、それを比較対象として手塚治虫と永井豪を比べるから、こういう話になるのであって、そこに江川達也でも、島本和彦でも誰でもいいよ。今の漫画家を持って来たら、「手塚治虫に比べれば、永井豪は……」って言うけども、他の漫画家は全部、もっと下だから(笑)。まあ、そこはあんまり気にしなくていいんじゃないのかな。手塚治虫と比べると、という意味だから。

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