ニコニコニュース

ボカロ絵師インタビュー特集

話題の記事

『こち亀』はSF漫画? 宇宙、海外、時空旅行…両さんが“下町を抜け出すようになった理由”を作者・秋本治さんに聞いてみた

 漫画家・秋本治さんの作品『こちら葛飾区亀有公園前派出所(以下、こち亀)』が、第48回星雲賞のコミック部門を受賞しました。

 この受賞を受け第56回日本SF大会「ドンブラコンLL」にて特別インタビュー企画が行われ、インタビュアーに同じく漫画家の一本木蛮さんをお招きしました。

 インタビューでは、秋本さんに主人公の両津勘吉が宇宙に行けるようになったいきさつや、地元の葛飾に溶け込んでいる様子など、作品の創作秘話をたっぷりと伺いました。

画像は『こちら葛飾区亀有公園前派出所 200 (ジャンプコミックス) 』Amazonより。

『こち亀』はSFなのか――過去に行ったり未来に行ったり、下町にとどまらず宇宙に行ったり……

左から秋本治さん、一本木蛮さん。

一本木:
 改めて受賞おめでとうございます。予測はしていたんですけれども「星雲賞はこち亀」っていうのを、みんな知ってたみたいです。

秋本:
 後々考えると両さんは、過去に行ったり未来に行ったり、下町にとどまらず宇宙に行ったりしているから、ある意味ではSFアドベンチャーかなとも思うんです。

一本木:
 受賞の時、こち亀の掲示がいくつか写されていたんですけど、宇宙の回とかSF回のチョイスをして並んでいて、「やるなぁ」って思いました。

秋本:
 40年間もやると、下町ネタだけだと尽きるんですよ。両さんにできることがどんどん広がって、最初は下町だけだったけれど、外国旅行に行くとかから始まって、外国だけだと飽きちゃうから、みんな行かない北極とか南極とかに行こうか、アマゾンに行こうかと。だんだんひどくなって最終的に宇宙に行ってスペースデブリの会社を作っちゃう。

 ちょうどデブリが結構テレビで話題になっていた頃で、あの広い宇宙で人工衛星同士の衝突があった。そういうことがあり得るのかと思ったら、通信衛星がどんどん増えてきて、NASAの衛星とGPSが増えてきてぶつかったと。それはネタ的に面白いなと思って、「じゃあ両さんを行かせよう」という感じでネタを拾うのが結構多いですね。

時代の変化に対応してきた『こち亀』

秋本:
 せっかくですから、会場のお客さんから質問があれば答えたいと思います。

一本木:
 ではそちらの男性の方。

男性:
 『週刊少年ジャンプ(以下、ジャンプ)』で40年間連載している間、紙面や雑誌の雰囲気も変わってきたと思うのですが、その中でもこち亀は常に違和感なく雑誌に溶け込んでいます。そういう雑誌や時代が変化していく中、常にそれに対応していくという意識はされていたんでしょうか。

秋本:
 僕がデビューした頃は1976年で、それからどんどんジャンプの絵柄も変わってきて、時代も変化していました。意識したものは不変なものではなく、特に少年漫画だから、毎年少年が年齢を重ねて大人になる。だから絶えず作品も進化していかなきゃいけないというのが頭からありました。僕はのんびり描いていそうで、実は「こうしよう、ああしよう」と考えるのが好きなんです。そのおかげで題材が見つかるんです。

 ジャンプで描いていると新人がどんどん入ってくる。安定させてくれないんです(笑)。すごい新人が入ってきたり、すごいギャグの人が入ってきたりして、「こういう人が入ってきちゃうんだ……じゃ、両さんもこうしよう」とか。それが刺激になって、おかげ様で40年間どんどんハードルを跳び越えてきた感じがあるんです。逆にあれがないと、同じ両さんをそのままずっと続けていたような気もします。

秋本:
 例を出すと、バイクのハーレーダビットソンは外観がいまだに変わらないんです。エンジンは変わっているんですが、ただ外見全部を変えちゃうと別のバイクになっちゃうから、それだと「ハーレーダビットソンじゃなくて別のバイクでいいじゃないか」となってしまう。

 だからこち亀も外見は変わらないけれど、中身をどんどん変えたりしてやっていました。ジャンプの競争社会はいい意味で刺激になっています。「落ち着いているとだめだぞ」っていうのが、少年漫画の全部に言えることだと思います。

 青年誌ですと大人が見るのでじっくり読んでくれるんですよ。ジャンプの場合は今週面白くないと「だめだ、この漫画」ってなる。子供は見切りが早いんです。でも確かに自分が子供の頃を思い出すと、そうなんですよね。「これつまんないや、やめた」って。だから自分の子供の頃が読者だと思って描いていました。競争はすごいですよ。

一本木:
 その中でもこち亀は実験の多い作品だったと思うんですが、上と下で違う時間軸で話が進んだりとか、月光刑事が出てくると見開きをどんどん使ったりとか、最後の1ページに100コマ近く入っているとか。あそこまでやっているのは、他の漫画ではなかった気もしますけどね。秋本先生はかなり実験がお好きですよね。

秋本:
 最後までアイデアを絞り出さないと許してもらえないというところがありました(笑)。読んでいる人に「ここまで出さないとだめだ」と言われている感じがあったんです。

一本木:
 オチの決まりも、「これがあると安心する」というパターンは大体が大原部長なのですが、窓の方を向いて「両津は〇〇へ行ったそうだ」というやつと、「両津のバカはどこにいる!」というこのふたつがコンスタントに出てくると、安心するというのがありますね。

秋本:
 部長はお茶飲みながら結構のんびりしていますよね。でも後半は銃を持ったりしています。

一本木:
 装備が激しくなってきましたよね。そのオチを受け継いでいるのは、『Mr.Clice(ミスタークリス)』で、「繰巣(くりす)のバカはどこに行った!?」っていうのが入っていて。

秋本:
 あの伝統はちょっと続けないといけないなと思いました(笑)。

一本木:
 伝統芸になりつつありますね(笑)。

「マンガ」の最新記事

関連記事

新着ニュース一覧

公式Twitterをフォロー

アクセスランキング