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「手描きアニメは廃れていくが残していきたい」庵野秀明・川上量生・西村義明が鼎談『メアリと魔女の花』の背景美術に込めた想いを語る

 『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を手がけた米林宏昌監督の最新作『メアリと魔女の花』が、2017年7月8日(土)より全国にて公開中です。

 本作の背景美術を担当した「でほぎゃらりー」を立ち上げた株式会社ドワンゴの川上量生さん、株式会社カラーの庵野秀明さん、株式会社スタジオポノックの西村義明さんの3人が全国公開に先立ち行われた試写会に登場し、「でほぎゃらりー」を立ち上げた経緯について語りました。

 「アニメーションの画面の7割は背景美術で出来上がっている」と語る庵野さんをはじめ、3人はどのような思いで設立に関わったのでしょうか。

©2017「メアリと魔女の花」製作委員会

「でほぎゃらりー」設立の経緯

左から西村義明さん、川上量生さん、庵野秀明さん。

西村:
 皆さん、『でほぎゃらりー』って分からないですよね。スタジオジブリの制作部門が解散した後に、川上さん、庵野さん、僕で1つのアニメーション美術会社を立ち上げました。遡ると、あれは2年半前くらいですかね。「ジブリの美術部もなくなって、背景美術スタッフが集まらないと、優れたアニメーション映画は出来ない」と川上さんに提案したんです。川上さんから「だったら、庵野さんにも協力してもらいましょう」となって。

川上:
 アニメ業界って、背景美術スタッフはあまり会社に所属していないらしいんです。もちろん他にもあるとは思うのですが、正社員で雇っているのはスタジオジブリぐらいですよね。ジブリの制作部門が解散した後に、通常のアニメの制作費の中で美術の人を抱えられるかというと難しく、そこで美術スタッフが雲散霧消してしまう可能性がありました。そして、ジブリの背景美術スタッフを実際に使う制作スタジオは、日本で言うと他に庵野さんの所くらいしかない。

庵野:
 この話が出る前から、自社で美術チームを作ろうと思っていたんです。でも、そういうスタジオが出来るなら、それでやった方がいいと思った。

川上:
 庵野さん自身も、ジブリのスタッフが四散するのは大きな損失だと仰っておられましたからね。

キャラデザインを誰がやるかと同じくらい、美術監督をだれがやるかというのは大事

西村:
 庵野さんは手描き美術に対する想いという物はあったんですか。

庵野:
 手描きはこれからどんどん状況的に厳しくなっていくと思うんです。デジタルの方が効率が良いし、儲かるので。手描きの美術は伝統工芸のようになるかもしれないが、そういうものはなるべく残していきたい。技術と、手描きだからこその良さがあるので廃れていくかもしれないが抗って欲しい。

西村:
 庵野さんが以前仰って、ハッとした事ですが「アニメーションの画面の7割は背景美術で出来上がっている」と。普段アニメーションを見ていると、キャラクターに感情移入して見ていくわけでしょうから、それこそ背景美術は背景に退いているわけです。庵野さんが背景美術という物に対して、どういうかかわり方をされているのか、どういう考えをお持ちなのかをお話いただけますか。

庵野:
 僕はなるべく実写の感覚も欲しいです。キャラクターがどういう所に居て、どういう事をしているのかを説明するのは、周りの風景だったり、その場所だったり、そういうことを伝えられる美術が大事だと思います。

庵野:
 宮崎駿さんは、凄く美術にこだわりますよね。美術が良いと長回しがききますが、そうでなければカットを切り分けて、キャラクターのアップでもたせるなど、背景を見せない手法になってきます。

西村:
 庵野さんも、最初は絵コンテを作られますよね。美術が良い、悪いのジャッジが出来る前に、映画全体のカットを決めていくわけじゃないですか。

庵野:
 キャラデザインを誰がやるかと同じくらい、美術をどこがやるか、美術監督を誰がやるかというのは大事なんです。美術を良い所がやってくれるなら、長回しを入れる演出にしよう。美術に予算、時間が取れないのであれば、力を入れる背景は10カットくらいで、残りの190カットはどんなあがりの背景でも良いというような、美術にあまり頼らない演出をするようにします。

『メアリと魔女の花』はジブリの背景と比べても違いが分からない

西村:
 今回、美術監督が久保友孝君という31歳の若手で、でほぎゃらりーの所属するジブリ出身のベテラン達が支えながら作り上げましたが、ジブリとの関わりも深い川上さんがジブリ作品を見られてこられた中で、今回の美術ってどうでしたか。

川上:
 僕は良い、悪いと言える程、画は分からないんですけれど(笑)。ジブリって、凄く背景を大事にするんですね。実際にジブリはお金もかけていますよね。アニメ業界って、美術が大事だっていう割に、全くお金をかけていないじゃないですか。全予算の中でも、美術は凄く少ないです。

川上:
 普通、凄くお金をかけて良い所なんですけれど。『メアリ』ではそこの部分をなんとかしたいと思っていましたが、とはいえジブリほど予算があった訳じゃない。でも、今回の作品を見て安心したのは、ジブリの背景と比べても違いが分からないくらいの物になっていたと思います。

西村:
 庵野さんはこの作品の背景美術を、どうご覧になりましたか。

庵野:
 細かく言うと、全体的に描き込みすぎだから、もうちょっと飛ばしても良いよ。特にこういうアニメの場合は、もうちょっとメリハリが付いた方が良いよ。ディティールがありすぎるかな。

川上:
 描き込みというのは、背景も含めて?

庵野:
 そう。ある所と、無い所のメリハリがあれば良い。でも31歳でこれだけ出来たら素晴らしいです。あとは、「ここは白背景のままでいい」って、もっと手を抜く所、光を感じさせるには、影を強くするのではなくどうすればいいかと、そういう技術がどんどん出てくれば、さらにすごく良くなる。

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