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ボカロの演奏不可能曲ってどうやって弾いてるの? 超絶技巧6弦ベーシスト・BOHさんに聞いてみた(仮BAND新作の話も公開)

仮BANDの1st Mini Albumについて

——これまでのライブでは既存の曲をセッションでやるというのが多かったと思うんですけど、それが新作としてCDを出されるというとどんなものになるのでしょうか?

BOH:
 初めてCDを出すので、全部オリジナルの曲で出します。セッションの曲って海外とかでも昔からある有名なジャズの曲だとか、ギタリストが作ったセッション用の曲だとかというのをやる機会が多いので、僕らも別にバンドとしてやるつもりはなかったので、同じような形でセッションをやっていたんです。だけど途中で試しに1曲オリジナルを作ってみて、そこから拡げて、ちゃんとミニアルバムになるように6曲作ろうということになりました。

仮BAND【仮音源-DEMO-】は2017年4月26日に発売予定

——BOHさんやメンバーの皆さんは以前から作曲はされていたんでしょうか?

BOH:
 僕はデビューしてからは完全にベーシストでしたけど、藤岡先生は作曲とかもやっていましたね。

——作り方としては全員がソングライターになる感じでしょうか?

BOH:
 そうです。藤岡先生が作曲した曲を僕らがブラッシュアップしたりだとか、逆に僕が作った曲とかをみんなでアイデア集めて1曲にしたりだとか、各々作った曲はありますけど、CDのクレジットの作曲は全部 仮BANDです。まあセッションなので必ず出来上がってきた曲をそのままやるのではなくて、各々のエッセンスを入れていくことでセッションになります。バンドマンとか軽音楽部の学生や音楽サークルの人とかにもコピーしてもらいたいので、歌のないインストゥルメンタルの音楽でも、一般の人が聴いてもちゃんと音楽として楽しめて、なおかつ弾きたくなるフレーズとかコピーしてもらえるような、そういうふうな作り方をしていますね。なので、楽器を触っている人は一番聴いてて楽しいんじゃないでしょうか。

——新作の6曲の構成を教えてもらえますか?

BOH:
 最初の曲は、CDが始まるよというような感じのあんまり長くない曲ですね。カルメラというバンドからホーンセクションを呼んで、その曲は作りました。桑原あいちゃんが参加してくれている曲もありますし、11月に共演した西脇辰弥さんが参加してくれた曲もあり、ゲストの8弦ギタリストのISAOさんに参加してもらった曲もあります。あとは3人だけでやったセッションのグルーヴに後から打ち込みのデータを入れるというそういう曲もやります。この打ち込みをやったのは藤岡先生ですね。

——曲調も色々あるんでしょうか?

BOH:
 多分、CDを出したら性質上、JAZZ / FUSIONの棚に置かれちゃうと思うんですけど、もちろんJAZZライクな曲もありますし、METALっぽい曲もありますし、とにかく6曲の中のバラエティーは半端ないので、1曲、1曲同じバンドとは思えない感じです。色んなエッセンスを入れつつ、ただやっぱりJAZZじゃなくてFUSIONの持っているFUSIONライクな部分は絶対に最低限残しつつ、各々好きにやっている感じですね。

——BOHさん的に自分の1番影響受けた音楽が出ているみたいな部分ってあったりとかするのでしょうか?

BOH:
 そういうのもありますね。僕は高校の時にMr. Bigがとにかく好きで、ビリー・シーンというベーシストがいるんですけど、もうその人のベースのフレーズを真似て、ベースを弾けるようになったようなものなので、それはもう自分のルーツとして外せない部分があるので、そういうテイストも入っていますね。

——楽器を弾く人はMr. Big好きな人は多いですよね。

BOH:
 そうですね。Mr. Bigの曲ってやっぱり聴いててワクワクするプレイが多いんですね。で、そういうプレイもあったりだとか、バラードはバラードでちゃんとみんなでしっかり歌える良い曲が多いので、当時も日本で一番受けていましたけど、日本人受けするアメリカのバンドって感じですよね。

仮BANDの曲作りとレコーディング

——曲作りとレコーディングはどのように進行していたのでしょうか?

BOH:
 先に曲を作って、家で出来る作業で「こんなフレーズあるよ!」ってレコーディングして、ネットで送って、それを後で重ねて作っていったりだとか。

——皆さんバラバラな場所でフレーズを作ってネット上でまとめるという。

BOH:
 それがほとんどですね。1曲だけ集まってスタジオの中で作った曲とかもありますし、あとは僕と前田くんだけスタジオの中で最初にベースとドラムから作っちゃおうって、そこにギターを何か乗っけてよみたいなものもありますし、本当にバラバラです。

——意外とかなりハイテクな感じですね。

BOH:
 ええ、ハイテクな作り方もしていたりします。結局、なんでそうなるかというと、集まる時間が無いからなんですよ。スケジュールの空きがなくて。

——それでも、今は可能になっているのが面白いですね。

BOH:
 やっぱりLINEとかもありますし、LINEを使って、音楽ソフトを使って、皆で集まって時間を割くことなく、「こう思っている」とかを瞬間的にやり取りできるんです。無駄に集まって、まったりしちゃって酒飲んで帰る(笑)という、そういうのは避けたいなっていう。

仮BAND with Ai Kuwabara

——1曲一発録りをした曲があるそうですが。

BOH:
 ええ、1曲だけ一発録りの曲があります。本当にせーの!で録りました。それは桑原あいちゃんとの曲ですね。彼女はやっぱりJAZZピアニストなので、最初っから最後までの流れだとか、多少、荒くてもその荒さを生かしながらプレイしたいというのが彼女のスタイルだと思うので、それを崩したく無いというか、一番良さが出るのが一発録りかなと思いました。本人もそれを望んでいたので。

——その曲はどのように作られたんでしょうか?

BOH:
 あいちゃんが参加してくれた曲はみんなで集まって作りました。一番最初に作った曲ですね。なので、2016年の2月ぐらいにはもう出来ていた曲なんです。

——その時から1年近く時間が経っているわけですが、今回レコーディングして変化はありましたか?

BOH:
 結局、セッションなので毎回変わるんですが、もちろんテーマとして必ずこう弾きましょうと決めている部分はあるんですけど、あとはほとんど自由に弾いてもらったりしているので、もちろん良くなっていってはいますね。最初にやった頃よりは全然良いなと思いますね。だから録音回数も3テイクぐらいを録って、その中から一番良いやつを選びました。

——編集無しで。

BOH:
 編集は全くしていないですね。なので、各々の粗みたいなものもそのままです。もの凄いライブ感があるものに仕上がっていると思います。

新作をこれから聴く人に

——仮BANDの新作をこれから聴く人に、ココを聴いて欲しいというトコロはありますか?

BOH:
 JAZZ / FUSIONとして聴いてしまうと、なんかちょっと背筋伸びてしまうような人もいると思うのです。ただ、ずーっと集中して聴いていると、曲調的に具合悪くなっちゃうと思うんですけど。でも、そうじゃなくて単純に音楽として、家でのんびりしたい時だとか、何か音楽無いと寂しいなぐらいなイージーリスニング的な感じで聴いてもらえればイイんじゃないかなと思いますね。

 テクニックだけではないそれぞれの良さを全開で出しているので、普段のサポート仕事とかは仕事の性質上、自分はこう弾きたくても、クライアントからの指定部分が物凄く多いじゃないですか。そういうのを取っ払ったら、こんなの出来ました!という感じなので、本当に各々のスタイルが入っているアルバムですね。

——BOHさん的な聴きドコロはどこになりますか?

BOH:
 僕は、1曲1曲スタイルを変えて弾いているので、そのスタイルを変えて弾いているつもりでも、僕が弾くことによるクセみたいなものって絶対出ていると思うんです。なので、それを感じていただけたら、それが一番面白いというか、自分的にはハッピーですね。

——ありがとうございました!


仮BANDの新作アルバム「仮音源 -Demo-」は4月26日発売予定。

プロフィール
TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスのリサーチャー&ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。ニコニコニュースの他、SENSORS.jpなどで記事を執筆中。
Twitter:@suburbangraphic
Website:suburbangraphics.jp

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