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ファンタジー作品でおなじみの武器『ゲイボルグ』――「敵軍に必ず命中する」「突き刺せば内部からズタズタに」残酷すぎるチート級の性能を解説

敵を内部からズタズタに引き裂く「ゲイボルグ」の性能とは?

パチュリー:
 さて、ここからはゲイボルグ自体に焦点を当てて、より掘り下げて解説していこうと思うわ。

 まず、この「ゲイボルグ」という名前について。表記ゆれが結構あって、ゲイボルガ、ガイブルーガ、ガ・ブルーガ、などなどというように表される場合もあるわ。

 「ゲイ」や「ガイ」は、槍を意味しているとされており、「ボルグ」「ボルガ」「ブールガ」などは、人の名前を表しているとされるわ。

フランドール:
 つまり「ボルグさんの槍」っていう意味なんだね。

パチュリー:
 ある詩によると、ボルグマックベインという戦士が、死んだ海獣の骨から作り上げたのがゲイボルグだと説明しているわ。あるいはこの槍を基に作り直したものだと説明しているものもあるわね。

 またクアルンゲの牛捕りを記した文献の内、レンスターの書という文献では、この槍を授けたのはスカアハではなくアイフェであり、槍の名前も「ゲイアイフェ」だという記載が見受けられるの。

 いずれにせよ名前の前半部分は槍を意味し、後半部分は人の名前を意味するという見解を示している資料が一定数ある事は事実ね。

 しかし近代の傾向では、後半部分が名前だとする説は否定的なようね。現在比較的支持されているのは、ボルグには「袋」という意味があるという説ね。

フランドール:
 うーん……全然意味が解らない……。

パチュリー:
 なんで袋なのかという説明をするためには、ゲイボルグの武器としての性能の解説が必要ね。

 このゲイボルグ、実はファンタジー武器の中でも相手に与えるダメージの表現が結構エグい武器としても知られているの。

 ゲイボルグは銛のような形状をしており、いわゆるポールウエポンとしての通常の使用の他に、投げ槍として使用することも出来たとされているわ。

 一たび放ればゲイボルグは30の鏃(やじり)となって降り注ぎ、必ず命中して敵軍に残らず刺さるとされているの。

レミリア:
 一回の投擲が全体攻撃とは……。

パチュリー:
 んでエグいのがここからで、この槍をもって敵を突けば、その矛先は30の棘となって破裂し、敵を内部からズタズタに引き裂くというのよ。

フランドール:
 ひえ~~~……。痛そう!!

レミリア:
 いや、痛そうじゃ済まないでしょ……。

パチュリー:
 今まで解説してきた武器って、絶対に倒すとか、このぐらい切れ味があるとかそういう表現はあったけど、こうやって敵を倒すというのが明言されてる武器ってなかなか珍しいと思うのよ。しかもエグいし。

 あと資料によっては、刺されて死ななくても槍の毒によって殺す。奇妙な軌道を描いて敵の防御を回避する、この槍で突いた傷は治らないなど、追加効果てんこ盛りの槍になっているわね。

レミリア:
 攻撃力に極振りした感じね。

パチュリー:
 こんな性能だから戦いの描写も結構エグくてね……。ちょっとだけ紹介させてもらうわ。ちょっとグロテスクな表現があるから一応注意してね。

レミリア:
 うぅ……やだなぁ……。

パチュリー:
 さっき少し話した「クアルンゲの牛捕り」というエピソードにて。彼は修業時代の親友でもあるフェル・ディアドという戦士と戦う事になったの。

 フェル・ディアドは、敵の刃を弾き返せるほど皮膚を硬化する能力の持ち主だったの自慢のゲイボルグをもってしても弾き返されてしまう。クー・フーリン絶体絶命のピンチ!!

フランドール:
 一体どうなる!?

パチュリー:
 フェル・ディアドのケツにドーーーン!!

レミリア・フランドール:
 アーーーーーッ!!

パチュリー:
 そしてケツに刺した槍がバーーーン!!

レミリア・フランドール:
 アーーーーーッ!!

パチュリー:
 そしてエモニシュって戦士のケツにもドーーーン!!

レミリア・フランドール:
 アーーーーーッ!!

パチュリー:
 エモニシュのケツでもバーーーン!!

レミリア・フランドール:
 アーーーーーッ!!

パチュリー:
 ゲイボルグは遺体に深く突き刺さってしまい、棘もあって引き抜くことが出来なかった。そこでクー・フーリンは、部下に命じて遺体を分解し、ようやく槍を引き抜くことができたのよ。

レミリア:
 ま、まあ性能については十分すぎるぎらい分かったけど、それとさっき言った「袋」って意味にはどういう繋がりがあるの?

パチュリー:
 ここでいう袋っていうのはそのままの意味の袋ではないと推察するわ。ほら、例えば「胃袋」って言ったりするでしょ? そういう意味での袋だと思われるわ。

 つまり袋とは、人体や内臓組織の事を指しているのよ。それを引き裂く槍、という意味だと思われるわね。

レミリア:
 うーん……グロい……。

 「ゲイボルグ」で敵を突けば、30の鏃となって破裂し、敵を内部からズタズタに引き裂くというエグい武器に、「非人道的兵器に分類されそう」「散弾銃だ…」といったコメントが寄せられました。

サッカーっぽい武器と言われる特殊な投げ方

フランドール:
 そういえばこの槍、足で扱うとか言ってなかったっけ?

レミリア:
 そうだった! もともとサッカーっぽいってとこからこの武器の解説してるんだった!

パチュリー:
 これは複数の資料に共通してみられる記述なんだけど、クー・フーリンはこの槍を足の指に挟んで投げていたらしいのよ。

レミリア:
 えー? なんでそんな面倒くさい事を……。

パチュリー:
 手より足の方が力は入るからね。より威力を高めるためか、あるいはゲイボルグは投げ槍としては重く、足を用いた投法の方が都合が良かったと説明している資料もあるわね。

 またゲイボルグの魔術的力は水辺でしか発揮できないという見解もあって、ある戦いでは水面下をかすめるように飛んでいったという記述があるのよ。

 だとすれば、手で投げる場合、かなりの低姿勢で投げなければいけないから、足を使って蹴り上げる様にして投げた方が良かったという考え方も出来なくはないわね。

 このようにあまりに特殊な投げ方故なのか、実はゲイボルグとは槍の名前ではなく、この投擲フォームの事を指しているなんて説もあるわね。

パチュリー:
 ジャン・マルカルという人物が著わした書籍に「ケルト文化事典」というものがあるわ。この書籍によると、ゲイボルグの意味を「雷の投擲」と記しているの。

レミリア:
 雷の投擲?

パチュリー:
 これは文学的表現を盛り込んだ意訳だとも考えられるけど、著者のマルカルはおそらく違う見解を持っていたんじゃないかと思うの。

 マルカルはゲイボルグの事を「槍」とは言わずに、「戦闘で用いる魔術的な恐るべき技」と表現しているのよ。

 この言葉が示している事、これはつまりゲイボルグとは、槍を用いた技名、もしくは槍ですらなく魔法だったのではないかと考えられるわね。

 そう考えると納得できる部分もあるのよ。さっき武器の性能の話をしたとき、放れば30の鏃となって降り注ぐという話をしたわよね? 魔法の武器とは言え、槍というカテゴリーからあまりに逸脱した性能だとは思わない?

フランドール:
 確かに!

レミリア:
 でもこれは槍ではなく魔法だったと考えれば合点もいくわね。

パチュリー:
 まあそうなんだけど、私はコレは後世の創作かなーとは思うわ。

フランドール:
 どうして?

パチュリー:
 近代の漫画や小説ならともかく、特定の名前が付いた技や魔法は、神話等の伝記上では私の知る限り他に類例がないわ。だからちょっと考えにくいわね。

 ここからは私の見解だけど、ゲイボルグはやはり槍そのものを指す言葉だと思うわ。しかしその槍は誰にでも扱えるものではなく、肉体的にも魔術的にも十分な資質を兼ね備えた者でなければ扱えなかった

 スカアハの下には、クー・フーリン以外にも沢山の弟子がいたの。しかしスカアハはクー・フーリンにだけゲイボルグを授けたわ。

 つまりこれは資質ある者がクー・フーリンだけだったと言う事ね。そうする事によって、クー・フーリンの英雄的資質をより象徴的にする狙いもあったのだと思うわ。

 そしてスカアハはクー・フーリンにゲイボルグを授けるとともに、足を用いた投擲法など、その特殊な使い方も伝授していた。

 時がたち、多くの人々を介して伝承が伝わっていくにつれ様々な解釈が発生。その特殊すぎる使い方や特異な性能がフィーチャーされるようになり、魔法説に代表されるような異説が広まっていったのではないかと思うの。

 というのが私の見解だけど、まあいつも言ってるけどあくまでコレは……。

レミリア:
 諸説あるうちの一つって事ね。

 特殊すぎる使い方や特異な性能を持つ「ゲイボルグ」の事を「戦闘で用いる魔術的な恐るべき技」という魔法説もあるということに、「蹴りによって放たれる槍のごとき魔法とな?」「魔法と戦士のレベルが共に高くないと使えない、とかかね」といったコメントが寄せられました。


 ケルト神話に登場する伝説の武器「ゲイボルグ」についての解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【ファンタジー武器をゆっくり解説】第十四回 ゲイ・ボルグ

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