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ミライアカリを手がける25歳の若き経営者、VTuberブームへの“危機感”ーーバーチャルライブ配信アプリ「IRIAM」リリースに込めた想い【インタビュー】

“東京のスタートアップ”とは無縁の創業伝

――塚本さんって、現在「25歳」とかなりお若い経営者ですけれども、もともとスタートアップ企業のようなものに興味があった感じだったのでしょうか?

塚本氏:
 それが全然ないんですよ。
 「起業しよう」とか積極的に思ったことは一度もなくて、大学に行かなくなって、留年をして、就職活動に乗れなくて……と社会からはぐれていった結果、生き延びるための選択肢がなくなっていっただけなんです。一回、大学院に逃げようとも思ったんですが、それも受験を受け忘れちゃって(苦笑)。

ーーなんだかいきなりイメージと違うスタートです(笑)。

塚本氏:
 しかも僕は名古屋の大学にいたんですが、起業といっても、いわゆる「東京のスタートアップ」みたいな空気感なんて、3年前の名古屋には1mmも届いてないんですよ。だからベンチャーとかVC【※】とか資金調達とか事業計画とかって、もはや言葉すら僕は知らない程で。

※VC……ベンチャーキャピタル。ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社のこと。ベンチャー起業などの株式を引き受けることで投資を行い、その株式が公開され他のち売却をすることで利益を得る。また、株式を引き受けた起業の価値向上に貢献するために、経営コンサルティングを合わせて行う場合もある。

 そんな感じなので、まず思ったのが「起業するならお金が必要だ!」と、それだけのことでした。

 しかも、資金調達とかいう言葉を全く知らなかったので「お金はお金持ちからもらうもの」だと思っていて、さらに「お金持ちといえば社長だろう」と思って、とにかく人づてで社長を探していったんです。……ほんと行き当たりばったりですよね(笑)。

ーーいわゆる「イケてる起業」みたいなものとは程遠い世界観ですね(笑)。

塚本氏:
 ところが、わらしべ長者的にお金持ちを紹介してもらうのを繰り返していたら、一ヶ月後に上場企業の関係者の金持ちのおじいちゃんのところに行き着いたんですよ。で、その人に一晩かけてプレゼンをしたんです。

ーーというと、その頃には事業計画があったのでしょうか?

塚本氏:
 いや……そこでは「おじいちゃんそろそろ死ぬんだから、この若者にお金を譲ってくれ! 俺が失敗してもネタになるし、成功したら死ぬほど面白いはずだろ!」って。もうそれだけを言い続けました(笑)。

――そんなプレゼン、聞いたことない(笑)。

塚本氏:
 でもそしたら「確かに、君の言ってることは100%そのとおりだ」と言って、1300万円を貸し付けてくれたんですよ。「君がここまでたどり着けたこと自体に、1300万以上の価値があるよ」って。

――えええ!

塚本氏:
 そもそもそのおじいちゃんって、当時21歳の若造が正規のルートを辿らずに会うなんて考えられない、それくらいのレベルの人だったんですよ。

ーーすごい……ちなみに、どうやって彼にたどり着いたんですか?

塚本氏:
 ある時、そのおじいちゃんの弟子の人に出会ったときに、そのおじいちゃんに会う権利をかけて「フットサル対決」をふっかけたら、奇跡的に受けてたってくれたんです。で、僕は小中高大とサッカー部だったので、その十数年間のすべてをかけて挑んで、勝って、「男なら言ったことは守りますよね?」と言って……(笑)。

 あの時ばかりは、流石に「サッカーやっておいてよかったなあ」と思いましたね。ちなみに、その弟子の人は頑張りすぎて骨折してました。

ーーマンガみたいな話ですね(笑)。それで資金調達(?)が終わった後からは、どうしたんですか?

塚本氏:
 まずは生き延びないといけなかったので、「とにかく競争に勝てそうな分野をやろう」と決めました。それで安直に市場規模みたいなものを見てみたら、不動産、介護、車みたいなところのなかに、パチンコってあったんです。それを見たときに、「競合の若いベンチャーがいなさそうだ」と思って、この分野にしようと。

※スロパチステーション……パチンコ・スロット実践動画を投稿している、75万人超のサブスクライバーを誇る大規模チャンネル。
(画像は株式会社DUO HPより)

――そうした発想も、東京のイケてるスタートアップみたいなものとは違いますね(笑)。基本的に足を使って直接口説いて、事業を進めているわけですからね。これといった出自の文脈がないというか……。

塚本氏:
 ただ、昔から商売みたいなものにはずっと興味があったんです。

 小学2年生のときにクラス内で、「折り紙」が通貨代わりでいっぱい持ってるやつが強いみたいな時期があって。僕はそこで折り紙を買うのはダサいと思ってたんで、折り紙12枚を使ったかっこいい12面体の作り方をこっそり覚えたんですよ。で、それひとつを15枚の折り紙と引き換えに売っていったんです。

折り紙で作った「正12面体」の作例。制作はなかなかに複雑な工程を含む
(画像はsakusaku858折り紙チャンネルDodecahedron modular origami tutorial 正十二面体を折ってみた 【ユニット折り紙】より引用)

ーーその3枚の差分で、折り紙を増やしていったと。

塚本氏:
 ええ。でもそれだと限度があるので、その後考えたのが「人を使う」ということでした。そこで、作り方を教えた人から授業料として、その売上から1枚ずつをもらうことにしたんですよ。

 そうして量産体制を作ってみると、学校中に12面体がめっちゃ流通して、その分僕のところにめちゃくちゃ折り紙が集まってくる。まあすぐに12面体の市場価値が下がってきたので、長くは続きませんでしたが(苦笑)。

 ちなみに最終的に、学校中に12面体が広まりすぎて折り紙流通禁止になった上、先生に「この子は悪いことをしている」と思われて、親まで呼びだされて怒られましたね……(笑)。とまあ、そういうことを中学、高校になってもずっとやってるような子供だったんです。

ーーなんで怒られているのか分からないですね(笑)。いずれにしても、小学生からだいぶ商売人気質だったのがよくわかります。

ミライアカリで実感したVTuber市場の可能性

――……ちょっと話を戻して、パチンコ事業を手がけたあと、ミライアカリの運営をするまでにどんな経緯があったのでしょう?

塚本氏:
 それはもう運命ですね。2017年3月にキズナアイを見たときに「これだ!」と直感的に思ったんです。「これはそれまでずっと僕が見てきたYouTubeのコンテンツの中でも、本当に伸び代がある」と。

 そもそも僕自身はアニメとかがめちゃくちゃ好きな人間じゃないんですけど、そんな二次元偏差値が50みたいな人間でさえも、面白いと感じたんです。だからこそこれは、ワンチャンスのIPとかじゃなくて、「このキズナアイみたいな概念そのもの」が広く浸透していくんだろうなと思ったんですよ。

 そういうこともあって、ミライアカリのイラストが初音ミクを描いたKEI氏なのって、「10年ぶりにボカロレベルの大きい波がくるんじゃないか」という意味が込められているんです。

(株式会社DUOより提供。引用、転載不可)

ーー今のところ、本当にそうなりつつありますよね。その後、ミライアカリはいわゆる「四天王」入りを果たして人気になっていきます。何がポイントだったのでしょう?

塚本氏:
 僕は今は現場から離れているのですが、基本的には「バランス感覚」だったと思います。キズナアイさんみたいなトップスターや、輝夜月さんみたいな才能にはきっと勝つことはできないかもしれない。その代わりに、ミライアカリは「良き3番手」として、そのポジションでできることをバランスよく全力でやってこれたんだと思います。

ーーでもこれまでの話を聞いていると、むしろそうしたポジションだったからこそ、狂乱のブームの最中でも、市場に対しての正確な問題意識を持つようになったんじゃないかなと思えます。

塚本氏:
 そのことを一番感じたのは、2017年の大晦日にやったミライアカリの生放送でした。そこで、同接と投げ銭が予想の何倍も膨れ上がっていって。

 もちろんそれは今から比べると全然かもしれませんが、まだブームが本格化してないあの時期に、あのクオリティのあのライブ配信に対してこんなに熱量があるのかと驚きました。あれをリアルタイムで見ているときに、「これが市場になっていく」と誰よりも先に実感を持って、今に至るENTUMやIRIAMの事業に賭けることに決めたんです。

※ENTUM……DUO社が運営するVTuber事業の一つで、ミライアカリなどが所属するバーチャルYouTuber事務所。2018年4月にローンチした。

「ユーザーと二人三脚で育っていきたい」

ーーさて、今日は色々と聞いてしまいましたが、最後に今後のIRIAMの展開についてお聞かせください。

塚本氏:
 いずれ世界展開は始めたいですね。今後、今VTuberと呼ばれているものは、日本発で世界が真似しはじめる数少ないコンテンツになっていくと思うんです。
 しかも海外で日本のオタク文化に興味があるって、それはもう相当ディープなので、ちょうどIRIAMのお客さんにあたるはずなんですよ。

2018年の夏コミにて撮影/取材させていただいた、ロシアのオタクイベント「AniCon」と「Akikon」のディレクターを務めるRen氏(右)。海外のオタクイベント関係者にも、日本のVtuberは確実に浸透してきている
コミケに集結した“海外オタクイベント代表者”たちに、国外オタク事情を聞いてみた! ロシアはコスプレ中心、香港では未だ『アクセル・ワールド』が大人気【C94】より)

 この間、中国も視察してきたんですけど、日本のコンテンツに対する熱量はすごく感じました。実際、日本語がなんとなく喋れるみたいな現地の二次元に詳しい人が結構いて。人口が10倍なので、イメージでいったら、日本で英語喋れるみたいな感じの人が10倍いるようなものかなと(笑)。

――「日本の女子高生がK-POPの影響で韓国語を使えるようになっている」みたいなことの日本版が、オタク文化の影響で世界中で起きているわけですよね。実際、「このムーブメントを本当に必要としている人」の国内人口が激増することはないと思うんですが、海外には同じニッチな属性の人たちが既にたくさんいるわけですしね。

塚本氏:
 だからこそまずは目の前のお客さんを大事にしたいと思っています。

 IRIAMをスタートさせてみて、改めて、コアなファンの皆様の熱量にはびっくりしました。「僕らみたいな大手ではない存在が出すサービスを応援してくれる人がこんなにもいる」ということは本当に励みになったし、なんとしても期待に応えなくちゃいけないと思っています。

 実際、一刻も早くAndroid版のリリースやサービス改善をしなくちゃと思って、現場は日々全力で奔走していますし、人材も猛スピードで募集しています。

※Android版のリリースは、元々年末予定だったものが、二度早まり、本インタビューの公開日である本日11月7日にされることとなった。それと共に、来る11月10日以降に約45名の新たなライバーがデビューする。

ーー公式Twitterなんかを見ていても、運営のアナウンスひとつひとつに、びっくりするほど温かい応援やフィードバックの声が届き続けていますよね。

IRIAM開発担当者:
 Twitterなどの目に見える部分だけでなく、フォームや問い合わせからも本当にたくさんの温かい声援をもらっていて、スタッフ一同励みにしています。中にはシビアな意見も当然ありますが、そうしたものも含め、今寄せられている意見は全部目を通して、ひとつひとつ慎重に吟味して改善の準備を進めています。これは運営としてユーザーの皆さまに一番伝えたいことですね。

 具体的には、まずAndroid版の開発を最優先にしつつ、各Vライバーさんのフォロー機能だったり、NGワードの緩和だったり、通信量をさらに25%削ったりという改善を直近では予定しています。

※インタビュー公開日現在、上記は全て実装済。

塚本氏:
 実際、社内にはスマホゲーム開発をしていた人もいるんですけど、彼らは「この温かい雰囲気は普通だったらありえない」と言うんです。

 お恥ずかしながら、熱心なユーザーの方からTwitterで「ライバーも、運営も、両方育てていくプラットフォームですね」みたいな声もいただいていて……本当にそのとおりだなと思っています。僕らはやっぱり弱小企業で、サービスにもまだまだ改善すべきところがたくさんある。もちろん、そうした点について時にはシビアな意見もいただきます。

 だからこそ、このコミュニティのユーザーと二人三脚で小さく育っていきたいと思っているんです。そして、そうした小さく繊細な運営や、このサービスに対する一年越しの「想い」だけは、大手がどかんと投資して作ったものに絶対に負けない自信があります。

 ……というのも、ぶっちゃけビジネスとか市場の話を抜きにして、僕自身はこのムーブメントをめっちゃくちゃ素晴らしいと思っているひとりなんです。最初にキズナアイを見た一年半前から、「今まで表現できてなかった才能が表現できること」に対して、決してきれいごとではなく可能性を感じているんです。そしてその世界を少しづつ広げていきたいと思っています。

 「二次元でなら表現してみたい」ーーそんな人にとって、もっともっとチャンスがある世界を育てていけたらと思っています。

ーー今日はありがとうございました!(了)

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