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「本来、非正規は高給を取るエキスパート」──正規・非正規の雇用格差はなぜ生まれたのか? 理由を考えてみた

 日本郵政グループが、非正社員との格差是正として、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月に廃止すると発表。ネットでは「削るべきところはそこじゃない」など、物議を醸しました。

 これを受けて、4月23日の『小飼弾の論弾』にて、プログラマーの小飼弾氏山路達也氏のふたりが、「本来、非正規の方が高くなければいけない」と、正規・非正規雇用の格差の在り方について議論を交わしました。

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労働組合は何をやっている?

左から小飼弾氏山路達也氏

山路:
 日本郵政の正社員の方の待遇を下げたというニュースがあります。手当とかなくしたりして、非正規との格差を是正するみたいな話で、それに対して「非正規の方の待遇を上げるんじゃなくて、正規の方の待遇を下げるのかよ!」と、炎上とかしているんですけど。

小飼:
 炎上したのかな? 少なくとも、労働組合の方はその条件を飲んじゃったわけでしょう? これ、どちらかというと「労働組合無能」という話になるんじゃないかと思うんだけれども。

 民営化で、正々堂々とできるにもかかわらず、こんなショボい条件しか出さなかったのかという見方もできますよね。

山路:
 交渉が下手だったということなんですかね?

小飼:
 まあ、そういうことですね。

山路:
 ここのところ、「正社員の待遇を下げるなんて!」みたいな文句をよく言っている人もいたんですけれど、例えば同一労働、同一賃金とか、正社員と非正規の格差というのは、縮まっていかざるをえないじゃないですか?

小飼:
 同一労働、同一賃金どころか、本来、非正規の方が高くなければいけないんですよ。

山路:
 今は言ってしまえば、非正規、派遣労働者だったりとかが、わりと安易な使い捨てとして使われてるみたいな問題があったりするんですよね。

小飼:
 「どうしてこうなった?」なんです。だから一番最初のころは、まさに「White-Collar Exemptions(頭脳労働者脱時間給制度)【※】」に該当するような人が非正規だったはずなんですけれども。

※White-Collar Exemptions
ホワイトカラーエグゼンプション。オフィスで仕事をするような、肉体労働者や製造業従事者以外の労働者の一部に対する、労働法上の規制を緩和・適用免除する制度。

山路:
 言ってみたら、非正規は、高給を取るエキスパートみたいな形だったんですよね? それが、どんどん派遣労働に関する法律とかが改正されて、今みたいな形になっていって。でも、だったら正規と非正規の格差が縮んで、同じになっていくということは必然なのではなかろうかと思うんです。つまり、安定した雇用の代わりに、ちょっと給料が低い正社員みたいな、こういうふうにグループがなっていかざるをえないという気がするんですが。

小飼:
 なんですけれども、これは日本に限った話ではないですけれども、特に日本の場合、ひどいのは、それで社員の身分が2種類できて、身分差別になっちゃったんですよ。

山路: 
 日本に限らず、こういう差別というか、身分制度みたいなものが、至る所にあるような気がしていて。例えば最近だと、ベトナム人実習生が有給休暇を希望したら、いきなり強制帰国させられたみたいな。これって奴隷じゃないですか?

小飼:
 奴隷ですね。

山路:
 安易にクビ切られるみたいなすごく弱い立場におかれて、雇う方の言い値で働かされるというのは、結局の所、奴隷ですよね。

小飼:
 でも、その奴隷を支持したのは誰だ? ということですよね。

日本の身分社会がうまれた原因

小飼:
 日本に「正規非正規分離計画」というのが仮にあったとしたら、その軍師は誰かと言ったら、竹中平蔵【※】に決まっているわけですよね。

※竹中平蔵
経済学者、政治家。小泉政権時代、「金融再生プログラム」や「郵政民営化」などの政策を打ち出した。

山路:
 名指しだ!(笑)

小飼:
 名指しせざるをえないでしょう。その人が今、人材派遣会社パソナグループの会長やってるっていうのは、超ヤバイことのはずなんですけれども。

山路:
 誰もそんなに批判はしていない。

小飼:
 充分な批判の声は上がっていませんよね? この場合は、彼を軍師に据えた小泉純一郎が、将軍ということになるわけなんですけれども、彼を支持した人たちというのが居たわけですよ。

山路:
 小泉政権は圧倒的な人気を得たわけですよね。

小飼:
 そう、今、非正規雇用で、来年はどうなるかわからないって言って、あえいでいる人たちも、かなりの人が彼に投票しちゃった。そこなんですよね。

山路:
 一票選んで、自ら奴隷への道を確立。みんなが、なんとなく自分の利益になると思ってやった投票行動が、奴隷への道に続いていたという。

小飼:
 ただ、何かをしなければいけないというのは、バブル崩壊というよりも、冷戦終結で、ほぼ同じ時期だよ。

山路:
 1989年の辺りですよね。

小飼:
 ソ連がなくなったのも、完全にバブルが崩壊したとみんなが認めたというのは、多分1991年だと思う。その時に何が起きたかっていうと、ソ連が倒れてロシアになって、湾岸戦争も起きました。だからそのころは、今のままじゃいかんという機運は、たしかにあったんですよ。でも、一番選んではいけない方向を選んでしまったのかなと。

山路:
 「じゃあどうやって是正すればいいの?」というのが、コメントにもあったんですが。

小飼:
 出来るのかな? 人類の寿命は伸びないとして、最高120年待てば、この状態は終わります

山路:
 はあ(笑)?

小飼:
 我々が全員いなくなるから(笑)。

山路:
 それって、出来ないってことを言い換えてるだけですよね(笑)。

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