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「同人誌って儲かるんですか?」→「納得いくまでやれば黒字も赤字も関係ないです」COMIC ZIN・同人統括責任者の心意気が熱い

 コミックマーケット(以下、コミケ)等で入手することができる同人誌。

 今回の「ニコニコワークショップ」は、講師に同人誌を扱う書店・COMIC ZINの同人統括責任者の金田明洋さんを招き、MCで漫画家のピクピクン☆さん、生徒役の配信者のサトウキビさんタイチョーさんに、果たして同人誌は儲かるのか、ショップ受けする同人誌の特徴などを明かしました。

左から金田明洋さん、ピクピクン☆さん、サトウキビさん、タイチョーさん。

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同人誌は6割以上が赤字

ピクピクン☆:
 同人誌の作り手、作家さんは何故その本を作るのか、そして読み手である私たちが面白いと感じるのは何故なのか。このコーナーでは核心に迫っていきたいと思います。

 まずは同人誌を作る上でも切っても切れない話題がこちら。同人誌って儲かるの? ということですが、サトウキビちゃん、これから作るんだったらどう?

サトウキビ:
 作るのに結構お金がかかるじゃないですか。原稿用紙とか、フルカラー印刷とかってお金がかかるイメージがあるので、それで「儲かるか?」って言われると、そんな儲かっているイメージはないような気がするんですけどね。

ピクピクン☆:
 そうかい? 俺は見たぞ。大阪のハイアットリージェンシーから続々と出てくる壁サークル【※】の女の子たちを。綺麗な売り子を従えて(笑)。

※壁サークル
会場での配置が、会場建物の壁際になる同人サークルのこと、もしくはそのサークルスペースのこと。

 でも、儲かる儲からないは別として、収支とか同人誌を作るための軍資金というところも気になりますよね。どうしても必要なことですから。ということで、こちらの資料を用意しました。


ピクピクン☆:
 これはなかなかレアな資料でございます。このグラフはコミックマーケット準備会のコンテンツ研究チームの「コミックマーケット35周年記念調査 調査報告書」よりデータを引用し作成したものです。

 2010年8月のコミケに参加したサークルを対象に調査した、サークルの収支についてのグラフとなっております。

 左の項目から順に、「5万円以上の赤字」「5万円未満の赤字」「5万円未満の黒字」「5万円以上の黒字」というふうになっているんですけれども、これを見ても直感的にわかると思うんですが、男女ともに、ほぼほぼ半分以上、60%以上のサークルさんが赤字なんですね。

 金田さん、このグラフを見てどう思いますか。

金田:
 先ほど「儲かっていないんじゃないですか」と仰っておられましたけれど、そのイメージ通りで「すごく儲かっています」っていう人は、やっぱりごく一部しかいないし、大半の人がなんとなく赤字なのは、みんな知ってることなのかなと思います。

 ただ、「どれくらい?」と言われると、6割以上っていうのは多いと思うんですかね。ほとんどそうなんだって思っちゃいますよね。

タイチョー:
 本を作るだけじゃなくて、イベントに参加するのであれはイベント参加費、会場まで行くのにも交通費もかかりますし、ご飯も食べるじゃないですか。そういった細かいところ考えていくと、そういうところでもやっぱり帳尻合わせるのも難しいところもあるんですかね。

ピクピクン☆:
 実際にタイチョーさんは同人誌を作られてどうですか。ちなみにこちらの発行部数は?

タイチョー:
 発行部数は公言していないんですけれども……。

ピクピクン☆:
 即売会では持ち込んだ数に対してどのくらい頒布できたんですか。

タイチョー:
 持ってきたものの、4割、5割ぐらいは。半分くらいは頒布させてもらって、残りを持って帰りました。自分たちが「このぐらいかな?」っていう量以上のものを持っていったんです。

 一般参加者の方全員に頒布したかったんで、ちょっと無茶はしたんですけど、許容量+αの量を持っていった感じです。

ピクピクン☆:
 赤字でしたか? 黒字でしたか?

タイチョー:
 黒字です。そこはしっかりとやらせていただきました。

ピクピクン☆:
 初めて参加されたサークルでも黒字になることができる。これ、原価いくらでした?

タイチョー:
 それはね、調べるとわかっちゃうので(笑)。それを言っちゃうってことは部数もわかるし(笑)。黒字になるように調整はしてあるくらいの原価だとは言っておきます。

一番重要なのは「描きたいものを描くこと」

サトウキビ:
 本を作ろうと思うのは、お金目的じゃないと思うんですけど、それだけみんな作りたいものがあるってことなんですかね。

金田:
 タダで本は作れないじゃないですか。だからお金のことを気にするのは当然だと思うんですよね。

 お金をどれだけ使うのかなっていつも僕は思います。分厚い本を作りますとなった時に、全財産をはたいて作ろうっていうふうに思ったわけじゃないわけじゃないですか。

 イベントで楽しめる量だけとか、いろいろなそれぞれの人の考えがあっていいですよね。タダで作れないから。

 思うのは、トントンにしておかないと続かないよねっていうのはあるわけで、黒字と赤字だって言ってますけど、あまり儲かる儲からないということはいいのですが、やっぱり続けてやっていこうと思ったら、それなりにやっぱりトントンぐらいにしておかないと、減っていくだけですからね。

 それはやっぱりみなさん、気にしながらやってるのかなと感じますね。

ピクピクン☆:
 番組を見てる方がコメントにもありましたけれども、不安がっちゃってるところがあると思うんですよ。お金って大切ですから、やっぱり趣味でやってるものとはいえ、本当に趣味を続けていけば続けていくほど生活が圧迫されていくのでは、同人誌趣味はまず成立しないんですよ。

 同人誌をこれからやろうって思ってる方にも、希望を多少は持ってもらえるように、実際の僕の同人誌制作の状態です。たとえば僕は刷る部数というのは、1冊1000円で頒布させていただいているのですが、だいたい少なくて3000部、多い時で5000部。

 売るために作るんじゃなくて、コツみたいなものは非常に簡単なんですよ。それ一つだけ僕からふつつかながらお伝えさせていただくと、生活するための本、少しでもみんなに共感してもらえる本を作るためには、ジャンルっていうのはあるかもしれませんけども、一番重要なのはめっちゃめっちゃ描きたいものを描く。

 たとえば商業で書いてる時って原稿描くのに時間がかかるんです。どうしたって締め切りというものが発生する以上、1面にかける時間って限られてるんです。

 だから80%ぐらいで描かないといけなかったりとか。でも同人誌は自分の究極の絵が描けるので、究極の話を練りに練って描く。

 自分の情熱を最高に注いだ本っていうのは、意外とみなさん手にとってくれるんですよ。それが結果、同人誌を続けていくための資金にも繋がっていくし、そこがやっていくための最大のコツなんじゃないかなと思います。描きたいものを描く。

サトウキビ:
 確かに先生の描いた断面図は素晴らしいです。

ピクピクン☆:
 でしょう? あんなに子宮を、卵巣を描く人はいないよ?

サトウキビ:
 話を振るんじゃなかった(笑)!

ピクピクン☆:
 気持ちが悪すぎて抜けないって言われる。でもいいよ、そんなの。俺が描きたいんだから。

タイチョー:
 そこの感性とハマる人は、もうそれもたまらなくなる。

ピクピクン☆:
 俺はとにかく同人誌でチンコを描きたいんだよ。めちゃめちゃリアルにチンコを描いたけれど、消さなきゃいけないでしょう。商業誌なので、消されちゃう。

 でも俺は考えた。俺は2年前のある日気づいた。同人誌は何を描いてもいいってことでしょう。多少の修正は必要。じゃあ、こうしよう。

 めちゃめちゃリアルなチンコを描きました。黒く塗りつぶす部分を切り取りました。切り取った部分を一つの紙に集めました。その切り取った部分を「8ページ、4コマ目、2つ目のチンコ」って書くんですよ。

 何のことかわからないけれど、その紙を貰った人はそこをハサミで切って、本の黒く修正されている部分に貼れば、あんなに俺が魂を込めて描いたチンコがまさに君の目に!

タイチョー:
 絵本とかで、シールを貼り合わせて完成する絵本とか売ってるじゃないですか。あれですよね。

ピクピクン☆:
 そう。それができちゃう。

タイチョー:
 あんた天才だな(笑)。

同人誌は才能のすべてを注ぐことが許される世界 

ピクピクン☆:
 何をやってもいいんですから、本当に儲けを考えるのは、あとからついてくるってやつですよね。

金田:
 これだけ熱い人は出会えないなって思ってるんですけれど(笑)。でも、描きたいものを描くものが結局一番売れちゃうっていうのは、なんとなくみんなわかってるかなっていう気はしますけれどね。

 狙って描くとバレちゃうというのはあるのかな。

ピクピクン☆:
 あと絵は描けなくてもいいんだよ。画力がないと同人誌が出せないとか言うでしょう。一般参加して、貰いにいく側からすると、なんで同人誌が最高かって言ったら、話を作るのがすごい天才的な面白いやつがいるんです。

 でも絵は描けない。そんな子が、すごい面白いたとえば『おそ松さん』の同人誌を描いて、絵はめちゃめちゃ下手なんですけど、商業としてはデビューできないんですが、話が超面白いから、同人がなかったらその作品は読めないんですよ。

 そういうのに出会えるから、まさに君の才能のすべてを注ぐことができる。それが同人誌の許される世界。

 だから絵は気にせず、本当に熱量を込めて描いてください。

タイチョー:
 すごいな……。

ピクピクン☆:
 だってさ、こんな表紙見たって商業の観点から見たら、わかりにくいわ! って。でもこれがやりたかったんでしょう?

タイチョー:
 僕はこれがやりたかったんです。だから僕にとっては意味がある本。

ピクピクン☆:
 そう、他人にとっては無意味であってもね(笑)。

タイチョー:
 ぶっちゃけ、でもその熱量を中に入れたほうが、クオリティは上がりますね。

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