「カリオストロの城」で石川五ェ門が”豆つぶ”程度にしか描かれていない理由が泣ける件
3月11日放送の『岡田斗司夫ゼミ』にて、評論家の岡田斗司夫氏が、宮崎駿長編初監督作品である『ルパン三世 カリオストロの城』と、登場する「ルパン一味」について熱弁。
ルパン三世の一味といえば、華麗な変装の達人・ルパン三世、早撃ちガンマン・次元大介、魅惑のセクシー美女・峰不二子、そして斬鉄剣の使い手・石川五ェ門の4人。
その中で、石川五ェ門だけが、本作での出番が“極端に少ない”ことをご存知だろうか。
岡田氏は、『カリオストロの城』における“石川五ェ門”が、注意して画面を見ていないと登場シーンを見落としてしまう、ということと、彼は何故隠されるかのように描かれたのか、という理由について解説しました。
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映画の冒頭で車を運転していた人物の正体は?
岡田:
『カリオストロの城』の冒頭にて、モナコの国営カジノから50億もの大金を盗み出したルパンと次元は、一目散に逃げ出します。そんな二人の後を追手が走って追いかけてくるんですけども、ルパンと次元は、ここで現れた“フィアット500”というイタリアの車にパッと乗り込んで逃げるんです。
ちょっとわかりにくいんですけども、この時、フィアットの運転席に乗っている人物の影が見えます。実は、これがルパンのもうひとりの相棒である石川五ェ門なんですね。
車の窓から頭の先だけがちょっとだけ見えていますよね? さらに、その横には五ェ門の愛刀である斬鉄剣の柄のようなものも見えます。この斬鉄剣の描き込みについては、絵コンテ上でもハッキリと「棒を描いてください」という指示が書いてあるんですよ。
なぜ、五ェ門は隠されたのか?
これ、どういうことかといったら単純な話で。
最初、宮崎駿としてはこの映画に五ェ門を登場させるつもりがなかったそうなんですよ。『ルパン三世 カリオストロの城』は、あくまでも、ルパンと次元だけで物語を描きたかったんです。
ところが、そのつもりで準備をしている途中で、それを聞きつけた会社から「いい加減にしろ! 『ルパン三世』の映画なんだから、ちゃんと五ェ門を出せ! 不二子も出せ!」と怒られた宮崎駿は、しぶしぶ五ェ門を出すことにしたんです。なので、本来はルパンと次元しかいなかったはずのシナリオに、ところどころに「ちゃんと五ェ門もいたよ」という証拠を入れなければいけなくなったんです。
その結果、フィアットに乗った人物の横にも、五ェ門のトレードマークである斬鉄剣がチラッと見えるように指定したんですね。
不二子の方はなんとか本編シナリオの構造の中に上手く組み込めたんですけど、そういった事情もあって、『カリオストロの城』の劇中で五ェ門だけは最後の最後まで役割がよくわからないキャラクターになっているんですね。
ただ、そのおかげで、この映画では焦点がブレずに、上手くルパンと次元の相棒モノになったという良い結果が生まれたと思うんですけど。
こんなところにも石川五ェ門
さらに、この場に五ェ門がいたという証拠は、次の「2人が逃げる際に、カジノの用心棒の車がスパッと斬られている」というカットにも示されています。よくよく考えてみれば、こんなことが出来るのは五ェ門だけなんですよね。
だけど、あまりにも五ェ門を描きたくない宮崎駿は、あえて、五ェ門がクルマを斬るシーンを描かずに、「こんなことになっていました」という結果しか描いていないんですね。
カジノから逃げ出したルパン一行だったんですけども、途中で、盗み出したお金が偽札であることに気が付いて落胆します。その後、ルパンは「よし、次元、次の仕事が決まったぜ。前祝いにパーっとやるか!」と、車の天井を開けて、いきなり、さっき盗んできたばかりのゴート札を、バーっと捨ててしまうんですけども。
このシーンでも、札束に埋もれた後部座席に、ちゃんと五ェ門の頭が映っているんですよ。その隣には、ちゃんと斬鉄剣を示すような、小さい茶色い棒が描き込まれています。こうやって、よくよく注目してみれば見つけられるんですけども、普通はこんなことには気が付きませんよね。
なので、まあ、みなさんも、次に『カリオストロの城』が金曜ロードショーで放送された時は、ツイッターで「車の中に五ェ門はちゃんといるぞ!」なんてツイートをすると楽しいんじゃないかと思います(笑)。
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