“閉経することで開かれた世界”50代女性カメラマンがセルフヌードを撮る理由
女性がエロスを表現した公募作品から一般投票でグランプリを選出するアートコンペ「東京女子エロ画祭」。ニコニコ生放送ではその模様を生中継しました。
審査員と来場者の投票で、グランプリにはカメラマンのマキエマキさんによるセルフポートレート『自撮りカレンダー熟女』が選ばれ、司会で文筆家の神田つばきさん、審査員で現代美術作家の柴田英里さん、映画監督の安藤ボンさんとのトークセッションに登壇しました。
自撮りをはじめたきっかけは自身の閉経で、「まだセックスもしたい」という気持ちと体の老いが、反比例していく悲しみが裏側にあると話すマキエマキさんの作品を、トークとともに紹介していきます。
閉経による体の変化に「寂しくなってしまって、残しておこうと思った」
神田:
マキエマキさんにお話を伺ってみたいと思います。きょうもコスプレを?
マキエマキ:
コスプレですね(笑)。
神田:
ではプレゼンテーションをお願いいたします。
マキエマキ:
すべて自分で撮影しております。本業はカメラマンなのですが、よく本業がモデルだと勘違いされることが多いです。カレンダーにちゃんとしたかったんですけれども、時間がなくてなんとなく月別な雰囲気で並べてみただけという手抜き作品です(笑)。
神田:
それで雪山が(笑)。
マキエマキ:
そうなんです。もう月はほぼこじつけで、4月は4月ってちゃんとわかるようにはなってるんですけれども。
それで、自撮りを始めたきっかけっていうのが閉経なんですね。
20代、30代の頃って、自分の女性性というものにとても嫌悪感があって、電車の中で痴漢にあうことがすごく多かったり、仕事先で出会う人からセクハラを受けたりとか、あと想像もしない人からいらぬ好意を寄せられたりとかいうことがすごく多くて。
もう女として生きていることが嫌で嫌でしょうがなかったんですけれども、閉経というものを意識した時に、自分の女性性がなくなるっていうことに対して、ものすごい喪失感が襲ってきたんですね。
女性ホルモンの分泌が止まっていくと、当然体型が変わっていきます。この先、私はどんどんおばあさんの体になっていくっていうことを考えた時に、本当にものすごく寂しくなってしまって、残しておこうと思ったこと。
それからどんどん女性として求められなくなっていくことの寂しさも感じて、いっぱいまだセックスもしたいし、恋愛もしたいんですよ。夫がいるのにこんなことを言うのも何なんですけれども。それでそういうものを求められなくなっていく寂しさを吹っ切ろうと思って、あえてこういうエロをやっています。
男性目線で「これエロいだろ!」「どうだ!」という撮り方を意識
神田:
なるほど。ご主人も撮影に参加されているという話を、あるところから聞きまして(笑)。そうなんですか?
マキエマキ:
そうなんです(笑)。撮影はほとんど夫が同行しております。
フレーミングを決める時に、夫にまずここに入らせて(笑)。
一同:
(笑)
マキエマキ:
そしてピントを合わせて、露出を合わせて、自分が入れ替わって撮影すると。
神田:
そっか、カメラマンさんだから、そこはご自分で見たほうがいいわけですね。
マキエマキ:
そうですね。
神田:
柴田先生いかがですか。
柴田:
このセルフヌードを含む、セルフポートレート作品がすごく面白いと思って。なんでかって言うと、今までのフェミニズムの文脈で紹介される女性のセルフポートレートって、みんな男性が見ないような体なんですよ。
でもこれって何かすごくみんな全部ピンナップっぽいし、ご自身の欲望というよりは他者の欲望を撮っているんじゃないかなって感じたんですよね。
この人が本当に思ってやっていると言うよりは、誰かその袋とじを開けたい人がいて、その人のためにカメラマンが撮った写真みたいに、でもセルフポートレートっていうので、すごくフェミニズムセルフポートレートの歴史の新しい一幕なんじゃないかと、ドキドキしました。
マキエマキ:
ありがとうございます。
神田:
安藤さん、いかがですか。
安藤:
本当にまさにピンク映画のメインビジュアルのような形で、他の写真とかも拝見させていただいたんですけど、「男のオカズ」として見られている自分っていうところと、自分が閉経されて、その女として失っていくものとの向き合い方って、何かちょっと……。「男のオカズ」になっているような自分というものは意識しているんですか。
マキエマキ:
意識しています。だから、男性目線っていうことをよく言われるんですけれども、「これエロいだろ!」「どうだ!」みたいな、そういう撮り方を意識しています。
安藤:
私はほのぼのとして、元気が出る感じというか、印象を受けました。とてもポジティブな作品だと思います。
マキエマキ:
とても嬉しいです。