『龍が如く2』『無限回廊』を手掛けたゲーム音楽家・坂本英城が下積み時代にプレイしたのは“あのゲーム”「仕事がなくて、ずっと◯◯やってました」
2月10日、11日に開催予定のゲームイベント「闘会議2018」。イベントの音楽ステージとの連動企画として、今回の「ニコニコワークショップ」では、ゲームBGM作曲講座が行われました。
講師に「勇者のくせになまいきだ」シリーズなどのゲーム楽曲を手掛ける、ゲーム楽曲制作会社ノイジークロークの代表取締役の坂本英城さんを招き、配信者のセピアさん、やみんさん、破壊神Dumpさんに坂本さんの略歴が紹介されました。
現在は多くの楽曲を手がけるゲーム音楽クリエイターの坂本さんですが、番組では下積み時代に仕事がなく、ゲーム「信長の野望」にハマっていたという秘話が明かされました。
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15歳で作曲開始、23歳でフリーランスデビュー
セピア:
先生に授業をはじめていただく前に先生の略歴を紹介していただきたいと思います。
坂本:
ノイジークロークというゲームのサウンドばかり作っている会社の社長と作曲家をしています。経歴ですが、中学2年生のときに、ゲーム音楽家になりたいと思いました。ピアノをずっとやっていたんですが、こんなピコピコいう3つしか出てない音でこんな音楽を作れるのはすごいな! と思って。
セピア:
ファミコンだったりコンピューターゲームの音をお聞きになって……。音楽家とかミュージシャンというふうにカテゴライズされる方々がいらっしゃると思いますが、その中でゲーム音楽を作りたいというのは、この頃から思われていたのですか。
坂本:
僕が最初に買ったレコードは松田聖子さん。普通に音楽が好きだったんですけれど、ゲームと出会って、特に最初は「ゲームウォッチ」からファミコンでも初期は『ゴルフ』の“ウー♪”【※】っていうやつですよね(笑)。あの時代から「スーパーマリオ」くらいになってから、急にすばらしい音楽がのりだして、これを作りたいと思いました。
そして15歳から作曲を独学でスタートしました。当時パソコンが結構安くなったというか、それでも20万円くらいしたのですが、手の届く価格帯になったときにBASICというプログラミング言語があるのですが、それを使って曲を作ったりとかしていました。それが打ち込みの一番最初だったんですよ。
※『ゴルフ』の“ウー♪”
1984年に任天堂より発売されたファミリーコンピュータ用スポーツゲーム。“ウー♪”とは、ゲーム内でゴルフボールが飛んでいく音のこと。
セピア:
今から考えると敷居は高いですよね。
坂本:
全然高いです。
セピア:
この頃ってコードをいじらないとだめな時期ですよね。
坂本:
多重録音って、当時はダビング用のカセットデッキがあって、ダビングしながらマイク入力をして、上から重ねて弾くんですよ。その上にさらに重ねる、という方法だったので、最初に録ったやつがどんどん音質が悪くなって。当時はそういう方法しかなかったので、今は夢のような感じです。
そして8年後、大学を出たあとにこの仕事をしたいと思ってフリーランスで無理やりデビューしました。デビューと言うと聞こえはいいのですが、ゲームの会社に全部落ちました(笑)。じゃあ、しょうがないということで、自分でやろうと思って。でも仕事はなかったですね。8年間ゲームを作ったりしていました。
やみん:
ゲームも作られるんですか。
坂本:
はい。一通りやりましたね。もちろんプログラミングはできないので、進行管理やディレクションをしながらシナリオを書いたり企画を作ったりしていました。もちろん音楽も作ったりとかしていて。そういう時代が約8年あったのですが、意を決して31歳のときにサウンドだけやろうと。13歳のころからやりたかった仕事でしたし。そして今の会社ノイジークロークを設立しました。
セピア:
これは何年前ですか。
坂本:
14年前ですね。本当に仕事がなかったので、ずっと家で『信長の野望・覇王伝』をやっていました(笑)。ハマっちゃったんですよ。めちゃくちゃ面白くて。経営の勉強になるとか、勝手に自分に言い聞かせて。実際結構なるんですけれどね。
そして2年後に『龍が如く2』。何人かで作ったのですが、たぶん7割くらいが僕の曲だと思います。34歳のときに『ポケモン不思議のダンジョン 時の探検隊・闇の探検隊』、35歳で『無限回廊』『428 〜封鎖された渋谷で〜』。
こう見ても『龍が如く』シリーズと『ポケモン不思議のダンジョン 時の探検隊・闇の探検隊』と『無限回廊』って全然違う曲調なんですよ。頑張っていたなと思いますね(笑)。フリーランスだと何でも作れないといけないというのを8年間やっていたので。
セピア:
「信長の野望」の経験もここで活きてくるわけですね(笑)。
坂本:
そうですね(笑)。土地を開墾して……まぁ、そんな話はいいんですけど。
セピア:
ゲームのディレクションの経験って作曲にいきてくることが結構あるんですか。
坂本:
音楽理論的なことはあまりないですが、ゲームの中でサウンドがどう働くべきかというのはすごく勉強になります。
セピア:
もしそういう時期がなかったらと考えたときに、やっぱりやっていて良かったなって。
坂本:
絶対に思います。他の人の痛みもわかる。無理なワガママだけではなくて、「ここでサウンドを出したらメモリが足りませんよね」みたいなところで話ができるのは非常に大きいです。技術的な話をしながらサウンドを作っていけたというのは、本当にこの8年という期間に感謝しています。
セピア:
ゲーマーとしてゲームの情景が浮かんで名曲としてインプットされていることが多いので、あのシーンのあの場面、あのセリフがあったから名曲になっているんだということがかなり多くて。
坂本:
記憶と連動しますよね。
やみん:
場面を作る前から音楽も作られるわけじゃないですか。だから本当にすごいなと思っています。
坂本:
みなさん是非目指してください。
下積み生活を経て毎年代表作が出る売れっ子に
坂本:
36歳で『龍が如く3』。37歳で『勇者のくせになまいきだ:3D』。38歳で『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』。39歳で『タイムトラベラーズ』。
セピア:
毎年代表作がありますね!
坂本:
たまたまです(笑)。この頃から『428 〜封鎖された渋谷で〜』のイシイジロウ監督と一緒に仕事をするようになりました。40歳で『討鬼伝』『怪獣が出る金曜日』。41歳で『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』。
セピア:
これはどの曲ですか。
坂本:
ゼルダのメインテーマとカービィの編曲です。42歳で『モンスターストライク』。これはアニメと3DS版です。初期のころとかです。43歳で『文豪とアルケミスト』『討鬼伝2』。44歳でついに『V!勇者のくせになまいきだR』。こんな感じで今まで作品を作ってまいりました。
セピア:
すごいですね。
坂本:
本当にありがたいことです。