“宝石”が美少女になって闘うアニメ『宝石の国』――ヒロイン・フォス役の黒沢ともよが語る“苦しみも痛みもない宝石”を演じる葛藤
革新的な映像美と斬新なストーリーで話題のアニメ『宝石の国』に出演している声優の黒沢ともよさん、小松未可子さん、中田譲治さんが、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんと声優の中村繪里子さんがホストを務める『吉田尚記dスタジオ』に登場しました。
『宝石の国』の詳しいストーリーや、鉱物に声を吹き込むという苦労や思い、主要キャストのアテレコの様子などを声優陣が語りました。
―人気記事―
『アホガール』でもっともヤバいのは誰? 悠木碧さんと千本木彩花さんに直接聞いてみた
2017年秋アニメの覇権は? 再生数・コメント数などの視聴データから今季の覇権アニメを予想してみた
3DCGを手がけてきたアニメ制作会社・オレンジがゼロから制作した作品
吉田:
僕は本当に漫画が好きなんですけども、市川春子さんという方は本当にすごいなと思いました。
中村:
原作者の方ですね。
吉田:
僕、勝手に大島弓子さんだと思っていましたもん。ものすごくファンタジーの世界の中に生活感と、ものすごく含蓄のある一言一言を入れ込んでくる人って、もう歴史上出てこないだろうと思っていたので、市川春子さんてすごいと思った。
出てくる言葉が、「孤独とは生まれてから無から生まれて無に帰る贅沢品」とか。谷川俊太郎さんだと思ったもん(笑)。
中村:
それが原作でも受け取った衝撃で……。
吉田:
原作でもそうだし、漫画でも120%好きなんですよ。
中村:
それがアニメになって……。
吉田:
原作ファンの人たちはみんなわかっていると思うんですけど、好きな原作のアニメ化は嬉しい反面ドキドキするんです。今回どんなスタジオがアニメ化するんだろうって思っていたらオレンジだったんですよ。「オレンジがきたか!」と思って。
吉田:
意味がわからない方がいると思いますが、最近のアニメってCGと手描きの両方を使ってるじゃないですか。CGのものすごい戦闘シーンだけを、たとえば他のスタジオからオレンジさんに発注するという流れは今まであったんですが、今回はゼロからオレンジさんが全部作ると。
どうなるかと思ったら、宝石が砕けるシーンとか、あんなの手で描けないですよ(笑)。
中田:
吉田さん、素晴らしい(笑)。
主人公・フォスフォフィライト役の声優が持つ意外なキャリア
吉田:
あの、黒沢さんは子役からやられていたという話を聞きましたが。
黒沢:
そうですね。小さい頃からお芝居をさせていただいていて、ずっと舞台とかをやっていたんですけれど、高校生ぐらいの頃からアニメのお仕事をやらせていただくようになりまして、最近はアニメをやらせていただいています。
中村:
歌も歌ってらっしゃいますからね。
吉田:
大河ドラマも出ていたんですか。
黒沢:
私、デビューが3歳なんですけど、それが大河ドラマだったんですよ。
中村:
恐ろしい(笑)。
黒沢:
3歳なので、あまりそこら辺の詳しいことは覚えていないんですけども……(笑)。『葵 徳川三代』ですね。その一回だけ大河に出たことがあります。
鉱物にキャラクターを吹き込むということ
吉田:
『宝石の国』が全員鉱物のキャスティングってできますか?たとえば「水銀に声を当てろ」っていわれたらどうしますか。
中村:
擬人化もそこまできたか、という感じですね(笑)。水銀は水銀だと思っていたから「辰砂」といわれたときに自分の中の知識が水銀にたどり着けなくて。そこにちゃんと人格があって、でも人ならざる部分がたくさんキャラクターに出てくるじゃないですか。
それこそ第一話で死んだと思っていたら、違う命のつなぎ方をこの世界ではしているっていうのが、すごくびっくりしましたね。
中田:
みんな不老不死なんですよ。
中村:
では是非、アニメの内容についてお三方からご紹介いただきたいなと思うんですが。
黒沢:
内容としては、人類がいなくなった地球に石が残っていて、石の中にインクルージョンという微生物がいて、それが結合していくことで人格ができたり、しゃべったりとか動いたりとかができるようになった宝石たちの物語です。
擬人化とか人間がというより、あくまで宝石がインクルージョンっていう、私たちには得体の知れないものたちの力で、光をエネルギーにして動いているっていう状態です。
吉田:
『宝石の国』って口で説明すればするほど、どこまでいっても少女漫画テイストなんですよね。自分たちが鉱物だから、生物のことを説明してくれるシーンがあるんですよね。
黒沢:
ありますね。
吉田:
生き物たちはどんなものかっていうと、「あの人たちはは不完全なものから、どんどん片づけられていく」という説明が出てくるんですよ。
黒沢:
セリフでも「腐るでしょう?」っていうセリフとかもあって、人間の会話とすごく違いを感じますよね。
小松:
概念が全て違うから、会話の節々も人の会話とちょっと違うんです。噛み合い方とかも。
中田:
これをともよちゃんと話をしていて、鉱物だからきっと内蔵はないんじゃないかとか、肺がないからどうやってしゃべるんだろうとか、ぶつかって痛いとかそういう感覚はあるんだろうかとか、すごく深く考えています。
吉田:
そうやって考えるんですか。
黒沢:
考えますね。やっぱり声を当てたりとか、特にこの作品においてはあくまで宝石だっていうところがあるので、親近感を持たせるためにより人間らしくお芝居をしてほしいというオーダーを最初に頂いていたんですよ。
なのですが人間らしい息遣いとか、人間らしい言葉とか人間らしい感情っていうのは、あくまで疲労とか苦しみとか圧迫感があったりとかからくる言葉だったりとか、息遣いだったりとかするんですけれど、宝石たちにはそれがなかったり、痛みとかに対してすごく鈍いので……。
吉田:
砕けても生きてますからね。
黒沢:
その生命体が「めんどくさい」とか「やりたくない」っていうときって、どういう風に気持ちが働くんだろうとか、「よいしょ」ってちょっとめんどくさいと思ってる気持ちを出すときに、私たちは筋肉の関係で仕方なく息が詰まるけど……。
詰まらないってことは筋肉がないから本当は詰まらないけど、感情をお客様に伝えるために詰まるような息遣いにするためには、言葉の文字の中からそこがグッと詰まるようなものを探していかないといけなかった。
そういうものを全部環境とかも含めて、天気とか気温とか、いろんなものとか踏まえてお芝居をしていました。
中村:
昼と夜でまた違うんですか。
黒沢:
そうですね。あとは昼とか夜に対する宝石たちと人間たちの概念の認識の差もあるので、要は私たちにとって夜はもしかしたら凛として空気が澄んで少し神秘的なものっていう印象があったりするかもしれない。
ですが宝石たちにとっては光がなくなって単純に動きにくくになるだけの時間帯でもあるので、言葉を結びつけていくっていう本当に地道な作業でしたね。