『君の名は。』が”萌え”に支配されたアニメ業界から僕を救った――山本寛・アニメ監督への復帰を語る
2016年のアニメ、見てません
運営:
続いて「2016年一番面白い、注目のアニメは」をお願いします。
岡田:
どうしよう。俺はもう前から推してる『アドベンチャー・タイム』(笑)。『アドベンチャー・タイム』ってさ、本来日本のアニメが拾っていかなければいけなかったことを、全部やられてしまって、もうね、大敗北宣言であると同時に…… っていう風に俺は考えてるから、アメリカのカートゥーン ネットワークでやっているアニメなんだけども。
山本:
いや、僕は見てないんですけど、なんかそういう話は聞きますね。
岡田:
なんだけども、まあそれが日本のアニメ業界に何か影響与えるっていうんではなくて、もう湯浅さんはアメリカに行って…… アメリカに行かなくてかな?アドベンチャー・タイム作っちゃってる。さっき言ったアニメ・イズ・デッドっていうのがあるとしたら、スタッフがバラバラで、ディズニーと日本のアニメとか、アメリカと日本のアニメっていう対立色が無くて、溶けちゃって、スタッフもどんどん混合しちゃって行くという状態の、今の最前線じゃないかなと思っていますけども。
ヤマカン的な2016年注目すべきアニメの前線はどこにあるの?
山本:
それを言うんだったら、さっき言った『シン・ゴジラ』と『君の名は。』がもう最前線ですね。
岡田:
『シン・ゴジラ』をアニメ作品としてみるって考え方だよね。
山本:
みます。みますね。
岡田:
つまり、この場合実写っていう考え方じゃなくて、画面を全てコントロールしようとする意思がアニメであると定義しようとすると、定義すると『シン・ゴジラ』はアニメだよな。それでいくとそこに最前線はある。じゃあ、TVとかで普通に見れるようなアニメってなんか見てる?
山本:
もう意図的に見ないようにしてる……(笑)。
岡田:
俺、去年『おそ松さん』を見てから、何か新しいアニメを見ようという気が全く起こらなくなった。それは、いわゆるもうアニメとか見なくてもいいやっていうんじゃなくて、特別面白いものがセンサーに引っかからないからさ。それで『アドベンチャー・タイム』までボンヤリしてたんだけど。
山本:
僕もそれに近いですね。本当にこう能動的に、もちろん研究のために見なければ、とかいうのはあるのかもしれないけど、本当に休養中にアニメ見ようと思わなかったし……
宮崎、押井、富野のビッグスリーのおこぼれに預かる。そういう状態でもなくなってきた
岡田:
あと宮崎駿引退しちゃったのデカいよね?
山本:
僕にとっては大きいです。
岡田:
宮崎駿見てたらさ、いわゆるフォローであれ、アンチであれ、次のアニメがどこに行くのか判ったからさ。やっぱデカいオヤジだったね。なんで引退するんだろうなー、アイツ。
山本:
まあ、ね。ワガママだっていう…… ワガママっていう言い方じゃないですけど。
岡田:
ワガママだよ!
山本:
見てたらそう思いますけども。
岡田:
死ぬ瞬間までアニメを作るっていう条件で、あんなことやってるんじゃなかったのかよ。手塚治虫なんて、死ぬまでやってたんだから。
山本:
やってました。そのほうがカッコイイはカッコイイんですけど、僕はもう宮崎さんがアニメ制作をしなくなって、5年以内でアニメ業界ガターンと来るって結構予言してたんですよ。本当にその通りになっているから。やっぱり、アニメが砂上の楼閣だったのかもしれないなと思っていて、本当極論言うと、宮崎さん一人でもっていたっていうコトも過言ではないのかなって思ったんですけど。
岡田:
まあ宮崎さんの背中見て、庵野も頑張るみたいなところがあって、富野(由悠季)さんがさ、またなんだろうねあの人、引退したのでもないくせに、もうお坊さん感のある……(笑)髪型以外を含めて、お坊さん感のあるあの存在(笑)。宮崎、押井、富野が業界を、あの歳になって引っ張ってくれっていうのも無茶かもしれないけどさ、あの3人が居てくれたらその下の連中が楽っていう。なんか若手芸人みたい(笑)。本当にたけし、さんま……
山本:
ビッグスリーが居るからこそ、なんかおこぼれに預かるっていう。そういう状態でもなくなってきたんで、この世代の監督は本当に苦しいですよ。
岡田:
そうか、じゃあ2016年のアニメ、ほとんど何も見ずに……
山本:
終わってしまう。
岡田:
見てません、ごめんなさい。まあまあ、文句あれば『アドベンチャー・タイム』だというコトにしましょう。
実家で親と妹に「NO!」と言われ、再び働こうと立ち上がったヤマカン
岡田:
じゃあ、最後。休み期間何してたの?
山本:
寝てました。
岡田:
寝てたの?
山本:
6月までの1ヶ月間は、本当にやばくって家から出れなかったんですよ。家と一番近くにあるコンビニ。歩いて本当100mもないコンビニを往復してたっていうだけ。で、1ヶ月過ごしました。本当に何もできなかったですね。
岡田:
何でそんなに傷ついたの?
山本:
もう心が折れたっていう、それが大きいですね。
岡田:
もう、俺のアニメは終わってしまったと。
山本:
それはちょっと概論的なんですけど、具体的に政治的な人間関係のもつれとか、そういうのがぐちゃぐちゃっとあったんですよ。
岡田:
逆に何がきっかけで、もう一回立ち上がろうと思ったの?
山本:
えーと、この番組親見てないよね?
岡田:
まあ、ニコ生見る親も居ないよ(笑)
山本:
実家に帰って半年間ぐらいじっくりもう、引きこもりになってもイイやって思って、実家帰って親に相談したんですよ。しばらく半年間ぐらい実家に居て良い?って。そしたら「NO!」って言われて。
岡田:
(笑)
山本:
ものっ凄い勢いで、「NO!」って言われて。
岡田:
退路を断たれたわけだ。
山本:
父母妹に至るまで全員に「NO!」って言われて。あ、働かなきゃ……ってそっから考えるようになったっていう。
一番大きかったのは『君の名は。』。俺でも作れそうっていうか、つくる権利をもらえるかもしれない
山本:
それに加えて一番大きかったのは、本当に『君の名は。』ですよ。
岡田:
ああ、わかるわー。
山本:
本当久しぶりに、あー羨ましいっていう。それで言い方がごめんなさい。上から目線かもしれないけど、これなら俺でも出来るっていう。あの、ごめんなさい。
岡田:
わかるわかる。
山本:
能力じゃなくって、フィールドとして出来るっていう。俺でも作れそうっていうのかなぁー。つくる権利をもらえるかもしれないっていう。あれはだから本当に新海さんありがとうございます。ありがたいきっかけでした。
岡田:
それはなんかねー、僕らが大阪でアマチュアアニメ作ってる時に『マクロス』見て思った。コレだったら出来る!って思って(笑)。出来るっていうのは、同時に勝てるであり……
山本:
勝てるとか言ってませんよ。
岡田:
同時にこんなこと、アニメでやって良いんだったら、何かもっともっと楽しいこと出来るなっていうのがあるかな。
山本:
そうですね。面白い現場がまだ在るなっていう、そこですね。
岡田:
最後、良い話にちょっとなったね。ありがとうございました。
※次回の岡田斗司夫ゼミは10月16日(日)放送となります。
シン・ニコ生 岡田斗司夫ゼミ10月16日号
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