サウンドだけではない、“歌声”でも色彩を描く――てとら「クレイジーホット」が見せるボカロ曲とは違う表情
今回は、てとらさんが8月14日に投稿した「クレイジーホット」を紹介する。
今年3月より、自身の楽曲をセルフカバーする試みもスタートさせたてとらさん。同楽曲は、恋焦がれる思いを熱っぽく描きながら、どこか気だるく瀟洒なムードをまとったラブソングだ。

てとらさん自身が手掛けたジャケットのビジュアルはMVにも使用されており、両目に浮かぶハートの中から次々と新たなハートが生まれていく。
膨らみ続ける恋心を知らせる、トロピカルカラーのビジュアルに仕上がっている。

<ああ 熱っぽい熱っぽい熱っぽいよ クレイジーホット>という心と体が火照る熱帯夜を彷彿とさせる歌詞とは対照的に、サウンドに漂う柔らかな質感。その温度差が、どこかシックで都会的な空気を生み出している。
ハチ(米津玄師)以降、2010年代のボカロシーンを席巻した瀟洒なサウンドの流れを汲みつつ、独自のスタイルへと更新しているように感じられる。
個人的には、80年代ニューウェーブを思わせるレトロなニュアンスが新鮮に響いた。

この世界観を鮮やかに彩っているのが、てとらさん自身のボーカル。気だるげなニュアンスを残した歌声は、サビに突入すると蕾からふわっと花が咲くような広がりを見せる。
恋に焦がれる主人公の高まる体温まで伝わってくるのは、繊細な息遣いや声色の揺らぎを映し出せる人間の声だからこそだろう。
ここはボーカロイドとは異なる表情を持つ、てとらさん自身の歌声ゆえに生まれる妙味だ。

さらには、恋に浮き立つ華やかさと高揚感をいっそう引き立てているのが、音程を駆け上がっていく上昇フレーズに加えて、自身のボーカルを多重録音したコーラスやハモリをはじめとする遊び心にあふれたコーラスワーク。
ここでふと思い起こされたのは、同様に恋焦がれる思いを描き、ポップで開放的なコーラスが楽曲に込められた恋のときめきを急上昇させるワム!の「Wake Me Up Before You Go-Go」だった。
同楽曲を聴いて改めて感じたのは、てとらさんがサウンドのみならず、自身の歌声を通しても多彩な色彩を描き出せるクリエイターであるということ。
「クレイジーホット」は、作り手として、そして歌い手としての才能が花開いた1曲といえる。
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