『サザエさん』内で「マスオ」が空気扱いされてる理由が“気のどく”なうえに“マスオは何も悪くなかった”件について
8月27日のアニメ『サザエさん』で、「かわいい愛情表現」といういつもと雰囲気が異なるエピソードが放送されネット上で話題になりました。
放送では、朝、波平が目を覚ますと、枕元に「愛するお父さんへ」と書かれた手紙が置かれているシーンがあり、結局手紙はフネが波平に欲しいものをおねだりするためのものでしたが、この回は他にも出勤するノリスケに、妻のタイコがベランダから投げキッスをしたり、サザエが笑顔でマスオのほっぺにキスしたりと、夫婦がいちゃいちゃするシーンが多くありました。
これを受けて『ニコ論壇時評』では、漫画家・山田玲司氏が『サザエさん』の解説を行いました。山田氏は「『サザエさん』は戦前の封建主義をおてんばな女の人がからかう作品」と語ります。
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「女はおしとやかに」という時代のアンチが『サザエさん』
乙君:
普段お目にかかれない『サザエさん』のそういうシーンなので、視聴者はすっかり動揺してしまって、「なんか生々しい回だった」とか、「『サザエさん』で急に夫婦感を出されるとドキドキしちゃう」と困惑のコメントが多く上がっていたということですね。
山田:
そもそも『サザエさん』というのはね、“おてんばキャラ”なんだよ。財布を忘れて愉快なサザエさんなんだよ。お魚くわえたドラネコを追っかけちゃうんだよ、裸足で。そんなちょっとワイルド&ファンキーな女性なんだよ。しかもあれ、戦前からのキャラですよ。
乙君:
戦前からですね。
山田:
つまり、「女はおしとやかにしていなさい」と言われる時代のアンチの存在が“おてんばなサザエさん”なんだ。しかも、主人公が軍隊に行くような戦前を象徴する『のらくろ』【※1】作者の、田河水泡のところに長谷川町子さんは弟子入りしていた。要するに、戦前の男社会・封建社会【※2】を象徴するような作品の師匠に弟子入りしたんだ。でも、すぐにホームシックになって帰ってきちゃうの。
※1のらくろ
田河水泡の漫画作品。『少年倶楽部』にて1931年から連載された。内務省から「戦時中に漫画などというふざけたものは掲載を許さん」とクレームが入り、編集長がやむなく打ち切りにしたこともあったが、日本の漫画の萌芽期に人気を獲得。当時は、雑誌だけにとどまらず多くの子供向けの商品にはのらくろが登場した。
※2封建社会
主君や目上の存在に対して強い忠誠が求められる社会。