ネクライトーキー ルーツとなるボカロ愛に迫る!「僕をそんな目でみないで」「サルでもわかる」など推し曲を語る もっさ&朝日インタビュー
多彩なカルチャーやシーンで活躍する著名人の中にも、今やVOCALOIDを愛し続けている人は少なくない。長年そんなボカロを愛し続ける人々に、その魅力や思い出の曲について語ってもらう本企画。今回はバンド・ネクライトーキーのギターボーカル・もっささんとギター・朝日さんの二人に、VOCALOIDカルチャーについてのインタビューを敢行!
石風呂PとしてボカロP活動を行っていたギターの朝日さん。そして実はボーカルのもっささんも、過去にニコニコ動画で歌い手としての活動経験も持っている。
バンドのルーツのひとつに、ニコニコ動画やVOCALOIDの要素も色濃く持つネクライトーキー。その音楽性の要を担う二人へ、ボカロカルチャーに焦点を絞った貴重なエピソードを今回はたっぷり聞かせてもらった。
ボカロP&歌い手!ニコニコカルチャーがバンドルーツのひとつに
──朝日さん=石風呂Pさんは有名なエピソードですが、もっささんの過去の歌い手活動は知らない方も多いかと。元々、どんな経緯でボカロを知ったんでしょう。
もっさ:
中学生の時に、友達に勧められた悪ノシリーズが一番最初に聴いたボカロ曲でした。ニコニコ動画で聴いた時、音楽を映像とあわせて楽しめるのがいいな、と思って。曲のストーリーや歌詞もわかりやすくて、すんなり楽しめたことをよく覚えています。鏡音リン・レンをはじめ、たくさんのキャラがいるのも面白いと思ったポイントでした。
そこからいろいろ聴いた中でも、やっぱりwowakaさんの曲がボカロの代表格だと私は感じていて。衝撃的なイントロや人間が歌えない曲に「こんな音楽があるんだ」って思ってから、よりボカロの面白さにハマりましたね。
──そこから歌い手活動を始めたきっかけは何でしたか。
もっさ:
「歌ってみた」に出会って「こんな動画もあるんだ!」って思ったのと、単純に好きな曲を歌いたい!っていう軽い気持ちでした(笑)歌うのは好きだったんですけど、人前で披露するのは恥ずかしくて。それでもやっぱり、誰かに聴いて欲しい気持ちも少しあったんです。声も顔も分からない匿名で活動できる環境は、私みたいな性格でも一歩を踏み出しやすかったですね。
──当時はどんな曲を歌っていたんでしょう。
もっさ:
一番最初の投稿はじん(自然の敵P)さんの「コノハの世界事情」でした。すごく難しかったですけど挑戦するのが楽しくて、カラオケで友達とも一緒にチャレンジしてました。あとは石風呂Pさんの「夕暮れ先生」。私のこの曲の歌ってみた動画を石風呂Pさん本人が見つけたのが、当時出会ったきっかけにもなりましたね。
──ありがとうございます。続いては朝日さんにも、ボカロとの出会いからお聞かせ頂ければ。
朝日:
僕は今ネクライトーキーでも映像監督を担当している高校の同級生だった小名良平にボカロを教えてもらったのがきっかけです。実は初音ミクではなく、巡音ルカが入口なんですよ。当時バンドサウンドがそもそも好きで、最初に知った曲がアゴアニキの「ダブルラリアット」だったんです。ギターの音がギャンギャンで「かっこいい!ロックだ!」と思って。
それを聴いてロックでもいいんだ、と思ったのと、独りで曲を作って発表まで持っていけるスピード感に惹かれて、そこからボカロ曲を作ろうと思い立ちました。本格的にボカロPを始めたのは大学入ってから、バンドを始めてからでしたけど。
──石風呂P1作目の「幸福ペンギン」も巡音ルカ曲でしたね。独りで曲を作るスピード感という視点は、バンドをしていた朝日さんならではだと思います。
朝日:
バンドだと、曲が出来てから人前で発表するまで2~3日ってことはほとんどないですから。動画も自分で作っていたので、曲を作った翌日には発表できる点は魅力でしたね。
──とはいえ、動画も作るとなるとかなり労力も必要だったのでは。
朝日:
そんなにカロリーの高い絵ではないので、そこまで大変ではなかったですよ。紙に書いた絵を友達にもらったスキャナーでスキャンして、歌詞を書いて、Windowsムービーメーカーで作ってました(笑)ただそうやって絵も曲も自分で作っていた分、ハチさんの存在はすごく大きかったです。当時「マトリョシカ」が出た時、楽曲も動画もクオリティが高すぎて「負けた」と思いましたね。
──石風呂P制作曲の中で、印象深かった作品などはありますか?
朝日:
一番聴かれたのは「ゆるふわ樹海ガール」なんですけど、「きらいな人」は大勢のボカロPの方に聴いてもらった点で印象に残っています。ピノキオピーさんや、アゴアニキもこの曲で俺を知ってくれて。wowakaさんもニコ生で楽曲を弾き語りしてくれたことがあったり、多くのボカロPさんと繋がるきっかけになりました。中にはごく少数ですが、今でも交流のある人もいます。じんとは連絡取って一緒に楽器買いに行ったり、アゴアニキとはしばらくやりとり出来てないですけど、バンドやってるのを見てまた家に遊びに行きたいなって思ってます。
──そういった繋がりもあると、最近のボカロ曲に触れる機会もきっとありますよね。
朝日:
昔ほどではないですが、SNSで流れてくる情報もちょくちょくチェックしてますね。最近だと、あめのむらくもPさんの曲はどれも面白いなと思います。言葉とメロディの当て方が独特ですけど、全体を聴くとすごくハマっていて。ずれてるのに気持ちいい、みたいな。曲もポップで、いいソングライターだな、って推してますね。
懐かしの王道曲からツウな隠れた名曲まで…多彩さが光るピックアップ曲
──今回のリストは、お二人にそれぞれ5曲ずつピックアップ頂いています。この中からそれぞれ、印象に残っている曲やイチオシなどはありますか。
もっさ:
特に印象深い曲だと、「僕をそんな目でみないで」でしょうか。きくおさんの曲はなんというか、初めて感じる音楽との出会いでしたね。いろんなボカロ曲を聴いてたんですけど、そのどれとも違うというか…。「ボカロってこういうのもあるんだ」って気持ちになりました。音の多さであったり、生っぽさがありつつもボカロでしかできない音だったり。動画の雰囲気も独特で惹かれました。
──今日のお話から、もっささんは物語性やキャラクター性のある曲を比較的好まれる印象を受けます。
もっさ:
入りはそうだったんですけど、徐々にそういう曲が減ってきてボカロ曲って“音楽”になったじゃないですか。そうなると、今度はやっぱり人間が演奏できなさそうな曲に惹かれましたね。
その点でも「骸骨楽団とリリア」はトーマさんの曲の中でも圧倒的に好きで。オーケストラや管弦楽器というか、「この音をこの曲に使うんだ」っていう意外性を面白いと思うのかな。早いテンポのブラスやピアノはとても生演奏できないだろうな、って。アレンジのすごさや聴いていて飽きないところも好きですね。
──ありがとうございます。朝日さんはいかがでしょう。
朝日:
僕のイチオシは「3年C組14番窪園チヨコの入閣」ですね。曲が派手とか衝撃がすごいとかではないんですけど、2番のサビで「アリガトはムカつく時に」っていう歌詞を見た時「なんていい曲なんだ」と思ったんです。映画でたった5分のシーンが印象に残るみたいに、このたった一行でこの曲を一生忘れないんだろうな、ずっと聴くんだろうな、と思うぐらい好きになってしまって。
人のひねくれた素直になれない部分と優しさみたいな、両立しなさそうな感情が一行に凝縮されてて、「表現者としてすごいな」って感動したんです。ボカロの中でおそらく一番かもしれないってぐらい好きな曲ですね。素晴らしいソングライターだと思います、あの方自身もなかなかひねくれた人でしたけど(笑)
──椎名もたさんの曲はかわいさや優しさもありつつ、それだけではない世界観が未だに愛されていますね。
朝日:
あとは「アイシンクアイシン」でしょうか。この曲、定番のJ-POP的なコードじゃない特殊なメロディなんですけど、それがすごくポップに受け入れられている点に初音ミクのアイコンの強さを感じて。同時にKNOTSさんの曲作りの上手さにも衝撃を受けました。今KNOTSさんはマンガ家になってるんですけど、マンガも全部買ってるぐらいファンなんです。表現方法が変わっても良いものを作る人は良いものを作るんだ、って思いますね。当時からボカロPの間ではファンも多かったですし、この機会にマンガも含めてもっとKNOTSさんの良さが広まると嬉しいです。
──ありがとうございます。今回のリスト曲以外でも、当時のボカロシーンで印象的だったことなどはありますか?
朝日:
まだボイスロイドが出る前の時期って、ボカロを無理やりトークさせる人もいたんですけど、その中でもおとなラPさんの動画をよく見てました。皆がラジオをしたり、居酒屋でルカとメグ(Megpoid=GUMI)とがくぽ(神居がくぽ)が飲みながら喋る、みたいな。ファンの共通認識となる人格が各ボカロにあるというか、それを感じられてすごく好きでしたね。動画内のイラストコーナーに絵を投稿したりもしてましたよ。
──当時本来“歌う”用途で使われるボカロを“喋らせる”ことはかなりクリエイティブな発想でしたよね。もっささんはいかがですか?
もっさ:
今回リストを作る際、本当に久しぶりにニコニコのマイリストを開いたんですよ。とにかく懐かしかったですね。昔好きだったボカロPさんも、今は他の場所で楽曲提供をしたり、顔出しで活躍していたりして。また改めてニコニコ動画でボカロ聴きたいな、って思いました。最近の曲も時間を見つけてチェックしたいです。
ネクライトーキー曲として今も愛され続ける石風呂P時代のバンドサウンド
──重ねて今お二人がネクライトーキーとして活動する中で、石風呂P時代のボカロ曲を演奏することにも最後に少し触れられたらと。これはどういった経緯が発端なのでしょう。
朝日:
そもそも、最初から当時の曲はやりたかったんです。石風呂P時代の曲はバンドサウンドも多かったですし、ライブで演奏したら輝きそうな曲をライブで演奏できるようになりたくて。でも自身がボーカルのバンドでは何か違うな、女性ボーカルがいいしキーボードも欲しい、と思っていたので、ネクライトーキーをやると決めた時点で石風呂P曲を演奏することは心に決めていました。
ただ同時にネクライトーキーに対して、単に曲のカバーバンドではなくきちんとオリジナルバンドだという意味合いも持たせたかったので。最初に自分たちのオリジナル楽曲を出してから、石風呂P曲をやった形でした。実際にライブでやった時もすごくイキイキとした曲になった実感があったので、演奏できてよかったと思いましたね。
──今ではネクライトーキーの活動から、朝日さんの昔のボカロP時代を知る人もきっと多いですよね。
朝日:
逆走してる人も多いですね、朝日廉の歴史を(笑)中には同一人物だと知らずに聴いてた人や、元々石風呂Pが好きで今も聴いているという人もいて。「俺は石風呂Pが、VOCALOIDが好きだからバンドの曲は聴かん!」みたいな人もいて面白いです。そのこだわりもちょっとわかるし。聴き方は人によって全然違っていいと思います。みんな一緒だと絶対どこかで辛くなるでしょうから。
──もっささんは石風呂Pさんの曲を歌うとなった際、どんな心情だったんでしょう。
もっさ:
今回リストからは敢えて外したんですけど、何なら一番聴いていたボカロPは石風呂Pさん、まであるんです(笑)歌い手時代はギターも弾けなくて勝手に妄想してただけだったので、まさか本当に歌う側になるとは思ってなくて。聴く側から聴かせる側になって大変光栄ですね。昔の自分が見たらびっくりすると思います。「お前ギター弾けるようになるんかい!」って(笑)
──(笑)ありがとうございました。最後に現在バンド活動をしているお二人ならではの、VOCALOIDの良さを教えてください。
もっさ:
歌唱力や声の良さ以外の部分、曲の音楽性のみで真っ向勝負できるのがボカロの良さだと今になって思います。一方でVOCALOIDたちの歌声もやっぱり私は好きだし、歌と音楽、どちらにも魅力や良さがあるのがいいところですね。
朝日:
もっさが言ったこと、すごいよくわかります。誰が作った音楽でも、今や国民的スーパーシンガーの初音ミクが歌ってくれるというか。ジャンルの壁を越えた多彩な音楽が、同じ場所で同じシンガーが歌う状況で群雄割拠してるのって、めちゃくちゃ面白いし魅力的ですよね。こんなたくさんの曲、同じ一人の人間が歌ったら壊れちゃうと思うので(笑)最強の機械の歌姫がいるからこその環境だと思います。
Information
「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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【ネクライトーキー ライブ情報】
ネクライトーキー「踊れ!ランバダ」リリースツアー 「ゴーゴートーキーズ! 2023秋」
9/16(土) 千葉 千葉LOOK OPEN 17:30 START 18:00
9/21(木) 静岡 静岡UMBER OPEN 18:30 START 19:00
9/23(土祝) 岡山 YEBISU YA PRO OPEN 17:30 START 18:00
9/24(日) 香川 高松DIME OPEN 17:30 START 18:00
10/1(日) 北海道 札幌 cube garden OPEN 17:30 START 18:00
10/7(土) 京都 京都MOJO OPEN 17:30 START 18:00
10/14(土) 新潟 GOLDENPIGS RED STAGE OPEN 17:30 START 18:00
10/15(日) 石川 金沢AZ OPEN 17:30 START 18:00
10/28(土) 岩手 盛岡 the five Morioka OPEN 17:30 START 18:00
10/29(日) 宮城 仙台 JUNK BOX OPEN 17:30 START 18:00
11/3(金祝) 福岡 DRUM Be-1 OPEN 17:30 START 18:00
11/4(土) 広島 セカンドクラッチ OPEN 17:30 START 18:00
11/18(土) 愛知 THE BOTTOM LINE OPEN 17:00 START 18:00
11/19(日) 大阪 心斎橋BIGCAT OPEN 17:00 START 18:00
11/26(日) 東京 Zepp Shinjuku OPEN 16:30 START 17:30
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