『メアリと魔女の花』は何がダメだった? 「スタジオジブリを薄めたような作品」岡田斗司夫氏が語る
8月6日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』では、宮崎駿氏の長編アニメ製作からの引退宣言以降、「ポスト宮崎の登場か」と噂されている劇場公開中の、米林 宏昌監督によるアニメ映画『メアリと魔女の花』について岡田斗司夫氏が語りました。
岡田氏は本作を「スタジオジブリを薄めたような作品」とし、ジブリが持っていた秘伝の技術を単にスクリーンで再現しているだけと評しました。
※この記事はネタバレを含みます
『メアリと魔女の花』はジブリのアニメ技術を単にスクリーンに再現しているだけ
岡田:
見て来ちゃったんですよ、『メアリと魔女の花』。俺がどれくらい、この作品に対して愛がないのかというと、パンフレットを買わなかったくらいだからね(笑)。この作品の駄目だという噂は、みんなも聞いていると思うんですけど、その駄目のレベルが分からないんだよね。
つまり、ジブリの新作として期待しているから駄目なのか、宮崎駿には及ばないから駄目なのか、それとも『ゲド戦記』並みに駄目なのか、世の中には駄目のレベルがいろいろあると思うのだけれども(笑)。
『メアリと魔女の花』は薄めすぎたカルピスなんだよ。ジブリの宮崎駿の作品よりは、薄まっていることは予想していたんだ。だから、あとはカルピスがどれくらい薄くなってもまだ美味しいかというやつで……薄めすぎて、「これだったら水の方が良いわ」という状態になってきているのが、『メアリと魔女の花』でした。
たとえて言えば、よく言われているように見たようなシーンばっかりなんだ。液体の全部に、ねちょねちょ感が出ていて、それがジブリっぽいという人がいるんだけど、涙にしても何にしても、『メアリと魔女の花』に出てくる液体というのは全て、ねちょねちょしています。
液体がねちょねちょしているのは、『千と千尋の神隠し』の、カオナシが風呂に入る辺りから出て来て、『崖の上のポニョ』でほぼ完成して、『風立ちぬ』でその応用までやった。『崖の上のポニョ』では液体表現が頂点に来て、『風立ちぬ』では全てがリアリティレベルで作画されているのに、主人公の二郎の目から溢れ出る、メガネを通して溢れ出る涙だけが、例の『崖の上のポニョ』のねちょねちょの液体になっているんだよね。
つまり、感情表現の部分だけは抽象的な、ねちょねちょ液体になっていて、その他はリアリティレベルで統一されているということだね。宮崎駿の最後の作品で複雑な表現をやってるんだよ。でも『メアリと魔女の花』の中ではそういう使い分けをせずに、ジブリで学んできた秘伝のアニメ技術を、ただ単に再現しているだけなんだよね。
スタジオポノックはスタジオジブリの下位互換か
岡田:
ジブリからスタジオポノックというものを作って……、これが宮崎駿の後継者みたいな流れで紹介されているんだよね。でも、ここがやっていることは、本家の店が潰れたから、秘伝のタレだけ持ってきて、秘伝のタレを別の料理に塗ってみました(笑)、みたいな感じなんです。薄めすぎたカルピスとか秘伝のタレとか、たとえが食べ物になっちゃって申し訳ない(笑)。
僕は『メアリと魔女の花』を見て、奈良ドリームランドを思い出したんだよ。奈良ドリームランドというのが、昔奈良にあったんだけど、カリフォルニアのディズニーランドを、ものすごくパクったテーマパークだったんだ(笑)。
奈良ドリームランドはメインゲートを開けると向こうの方にお城が見えて、そこまでの途中にお店があって……それだけみたら東京ディズニーランドとそっくりの構成なんだけど、でも奈良ドリームランドはその両側の店っていうのが全部屋台なんだよね(笑)、遠くに見えるお城も書割なんだよ。
奈良ドリームランドもディズニーランドとそっくりのデザインをしたモノレールが走っているけれど、モノレールの高さが1.5mくらいだから、手が届いちゃうんだよね。『メアリと魔女の花』って奈良ドリームランド感がはんぱない。