ニコニコ動画15周年の日に、ほぼ毎週ずーーっと動画投稿している筋金入りのニコ厨にサービス開始からの思い出を聞いてみた
■ニコランはニコニコ動画の「思い出アルバム」
――週刊ニコニコランキングは15年間ずっと投稿され続けているわけですが、その間に動画制作のスタイルには変化があったのでしょうか? 機械的に再生数の多い動画を切り貼りしている……というようには見えないのですが。
Kossie:
具体的な動画作りの話をすると、ニコニコ動画を使ってランキング動画を作る為に集計を手助けしてくれるツールが公開されているんです。たしか、ニコニコのブログサービスのブロマガに情報がまとめられてて……って一般ユーザー向けのブロマガはサービス終了で消滅しましたね。
2代目:
消えちゃった(笑)。まぁ、特殊過ぎるスキルにはなりますけどニコニコのAPIをまとめてくれてる人もいるんですよ。過去には個人でランキング集計をしていた時代もありますが、チームとして集計をした結果「素敵な奇跡」が起きたときにどうするのかっていうのも話し合いましたね。
――「素敵な奇跡」……?
2代目:
身も蓋もなく言ってしまえばランキング工作です。コメントや再生数の数字の重み付けを利用して、特に意味のないイタズラみたいな動画を上位に表示させるわけです。そうしたランキング工作のことをニコニコ動画では「素敵な奇跡」と呼んでいるんです。
――ちょっと遊び心があって、その呼び方は好きですね(笑)。今ではだいぶ素敵な奇跡は起きにくくなってるのでしょうか?
Kossie:
今ではだいぶ減りましたけどね。昔はキュウリとかナスとかアルパカがどんどんランキングに入ってきてました。そういった素敵な奇跡をどこまで受け入れたランキングを作るか、ということが大事になってくるんですよね。そのために、集計時の計算式は、数字に詳しい人にお願いして作って貰っています。
2代目:
素敵な奇跡を除外するとしたら、じゃあその基準って何ですか? となるので、難しいんですよね。例えばアルパカを応援している人達にとっては、アルパカが上位に入っているのがニコニコなわけですから。それを否定していいのかって言うのは中々難しい話じゃないですか。
Kossie:
特定の動画に対して除外しますみたいな事は、今でもしていませんし今後もするつもりはありません。それに、ランキングって人気投票の結果でもあるんですけど、ニコニコの時事記録の場でもあると思うんですよ。
もしランキング工作があったら、「今週はこんな素敵な奇跡がありました」って発表するのもニコランの役割かなと僕は思っていますね。
2代目:
コメント数に関係することですけど、地震が起きたときに、動画のコメントで「そっちは大丈夫?」とか会話が始まってたりして……。再生数の多い動画や生放送が、完全に井戸端会議所になっちゃうこともありますから、これはコメントが動画の内容と関係ないわけです。
でも、インターネットの居場所だったり、思い出アルバムみたいな側面もニコニコ動画にはあると思うんですよね。
――たしかに、コメント欄が昔のインターネットのチャットルームみたいになってることはたまにありますもんね。
■初期のころはMSN Messengerでやりとりしてました
――具体的にどんな体制でランキング動画を作っているのでしょうか?
Kossie:
ニコランのメンバーは入れ替わりがありつつも、今は動画編集として動けるのが2人くらい。そこにプラスして自分が入っている感じです。それにランキング集計の計算式とかを考えて補正してくれる人がいて……なので現時点でニコランの編集部で実働しているのは僕を除いて5人くらいでしょうか。
――複数人で分担する体制で、みなさんはどのように作業をしておられるのでしょうか?
Kossie:
ニコランはメンバー全員がボランティアでやっているので、作業は土日でやっています。2代目が作ってくれた集計プログラムを使って日時ごとの動画のデータを土日で取得するんです。
――じゃあ平日は仕事をして、土日も仕事している感じなんですね……。
Kossie:
土日に取得したデータを元に曜日ごとの速報値を出しておきます。これが効率化のコツで、ランキングに入りそうな動画をあらかじめ予想してピックアップしておきます。
それから15秒くらいの切り抜き動画を作っておくんです。で、月曜日の午前0時から1時間くらいで本集計をしてランキングに入る動画が確定します。
――ということは、何か突発的な大バズリ動画が速報と本集計のあいだに生まれたら……。
Kossie:
その場合でも、せいぜい数は知れてるのでカバーできると思いますよ。動画のどこを切り出すかは、各人のセンスに任せています。動画の良さが伝わったり、おもしろいポイントを見定めて切り出すんですよね。さすがにそれは自動化することはできないんで。
――ニコランは時代に先駆けてリモート分業が進んでいる組織……とも言えますよね。
Kossie:
ニコランのメンバーはみんなインターネットばっかりやってる人だったから自然とそうなっていったんだと思います。今でこそDiscordでやりとりしてますが、初期のころはMSN Messengerでやりとりしてました。
2代目:
MSN Messenger、懐かしい(笑)。
■面白いことが起きたら絶対に見逃したくない
――ニコランを続けるために、結構な人数の方が動いていて。Kossieさんはその中でも、代表者ということになっていますが……。
Kossie:
僕らは大学のサークル活動みたいな感じなんで、「代表の連絡先」が必要になる場面に備えて一応置いているという感じですね。
2018年にニコニコ大百科さんに週刊ニコニコランキングを表彰していただいたことがあるんですが、一応僕が代表ということで賞状を受け取りました。
遅ればせながら賞状の写真を。
— Kossie/こじー (@kossie89) March 30, 2019
ありがとうございました。
2枚目は丸めていれる筒です。
会場で手渡された時は「卒業式かよ!?」とツッコミの声も。#nico_ran#百ッカデミー賞 pic.twitter.com/EBWPLerRbN
――一応、とおっしゃいますが、今メインで活動している最古参のメンバーなんですよね? 仲間内でリスペクトされていらっしゃるからこそ代表者に選ばれたんではないでしょうか?
Kossie:
リスペクトかぁ……。作業をしていただいているメンバーにはとても感謝していますが、僕らは「誰かが偉い」とかがないんです。会社なら社長や役員がいて……みたいな感じなんでしょうけど、そういう組織ではないんで。
2代目:
「誰が偉い」とかは言ってもしょうが無いもんね。みんなボランティアだから代表になってもその分の手当がつくわけじゃないからお山の大将以外の何者でもない(笑)。
――ここまで色々とお話を伺ってきましたが……率直に言って、ニコニコ全盛期の頃と比べてニコニコ動画以外にも面白いネットコンテンツはたくさんあると思います。お二人がそれでもニコニコ動画を見続けるのはなぜなのでしょう?
Kossie:
まず、いろいろな視点があると思うんですけど、例えばニコニコ動画がプレミアム会員のみを対象にしたサービスになったとしたら、動画投稿をする場所はYouTubeくらいしか残らないかも知れない。
YouTubeはアメリカのサービスなので表現規制はすべてアメリカの基準になってきてしまうんですよね。やっぱりニコニコ動画はクリエイターにとって楽園であって欲しい、そう思いますね。
――たしかに、ニコニコ動画はアニメ『異種族レビュアーズ』の内容が過激すぎて、地上波で放送できなくなったときもしっかり配信してましたからね。
Kossie:
あとは……ぼくはずっと運営でも、クリエイターでもない、ただのいち視聴者なんですけど……だからこそ、この先のニコニコ動画をもっと見ていたいって思うんです。
面白いことが起きたら絶対に見逃したくないし、それを又聞きでしか知らないのは嫌なんです。
2代目:
「楽しいおもちゃ箱ができたぞ!」っていう印象はサービス開始の時から変わってないです。
ニコニコ動画は表現する人にとって楽園であり続けてほしいからなくならないでほしいけど、できたときから「こんなもん3ヶ月でなくなる」って言われてたんだよね。
15年間ずっとオワコン言われてるけどなくなってないから、ニコニコ動画はなくならないんだと思う(笑)。
[了]
ニコランの動画は「思い出アルバム」。
運営でも、クリエイターでもない、いち視聴者として15年という時間をニコニコ動画と共に歩み、動画を投稿し続けた二人は取材でこう語った。
この機会に、ぜひニコランが過去にこれまでに投稿した動画を見てみるのはいかがだろうか?
きっと、そこには自分の「好き」が詰まった思い出アルバムがあるはずだ。
■年代別にまとめられた過去のランキング動画は週刊ニコニコランキング公式サイトで視聴できます。
ニコラン公式サイト「ニコランWEB」