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「安楽死」をテーマにした小説が10代に支持される理由――みずから死を選ぶことが合法になった日本を描く『レゾンデートルの祈り』著者インタビュー

 安楽死が合法になった近未来の日本を舞台にした小説『レゾンデートルの祈り』
 本作は楪 一志(ゆずりは いっし)さんによって小説投稿サイト「カクヨム」に投稿された後に書籍化された、いわゆる“ネット発”の作品だ。

著者:楪 一志、装画:ふすい、定価:1,870円(10%税込)発売日:2021年6月25日
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 『レゾンデートルの祈り』の舞台となる安楽死が合法となった近未来の日本では、「死にたい」と願う安楽死希望者は、“人命幇助者(アシスター)”たちと1年間で10回のカウンセリングを経て、それでも安楽死を行うか否かを決断してからでないと安楽死の許可がおりない。
 そんななか、自身も過去に大切な人を亡くしたヒロイン・遠野眞白(とおのましろ)は、安楽死を望む人々に寄り添うことで、少しでも希望を抱いてもらえればという想いを胸に秘め、新人アシスターとして着任するところから物語は始まる……。

 現実の日本では、致死性の薬物の服用または投与により、死に至らせる行為である“積極的安楽死”は法律で明示的に容認はしておらず、また、自身が病気になった際に回復のための治療をおこなわない、いわゆる“消極的安楽死(尊厳死)”を選択する自由についても議論が続けられている。
 安楽死の是非に関する問題は各国の倫理や宗教と密接に関連するため、今日でもその意義について世界中で議論されているのが現状だ。

 20代の楪さんにとってデビュー作となった『レゾンデートルの祈り』は、この安楽死という読者の死生観を問う難しいテーマを扱っているにもかかわらず、10代を中心とした若者たちからも大きな支持を得ている。

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 そのきっかけとなったのが、TikTokでブックレビューをしているけんごさんによる紹介動画だ。動画には多くの若者達が共感し、本作には異例の即重版がかけられることになった。この盛り上がりを受けてニコニコニュースでは、けんごさんを聞き手として『レゾンデートルの祈り』作者である楪さんのインタビューを実施した。

 インタビューでは、イラストレーター・ふすいさんによる表紙の装画を初めて見たときの感想や、書籍化に向けて何度も重ねられた担当編集者との打ち合わせといった、本書の誕生秘話とも言うべきエピソードを収録できただけでなく、執筆の動機となった楪さん自身が抱えていた“生きづらさ”にまで深く掘り下げていく取材となった。

 本記事では、物語の核心となるストーリーは明かさず、いわゆるネタバレに配慮した内容となっている為、ぜひ本作を読んだことがないという方も安心して最後まで読んでいただきたい。

左から、『レゾンデートルの祈り』著者の楪 一志(ゆずりは いっし)さん、ブックレビュアーのけんごさん

聞き手/けんご
写真/金澤正平
取材・編集/田畑光一


SNSでは悩みを打ち明けられるのに、身近な人には話せない

けんご:
 発売から3ヶ月経たずに5刷【※】になったそうで、おめでとうございます。

※インタビュー当時。
11月現在、重版6刷が決定している。

楪 一志(ゆずりは いっし 以下、楪):
 ありがとうございます。けんごさんにご紹介いただけたことが大きいと思っています。最初の重版が発売から10日経たずとかくらいで決まったので、担当の編集者の方からはかなりスピード感のある広まり方だと聞いています。

楪 一志(ゆずりは いっし)さん。

けんご:
 ありがたいことに、今は沢山のご献本をいただくのですが、楪さんの担当の編集者さんからの献本がなければ僕は『レゾンデートルの祈り』に出会うことはなかったと思うので、運命的なものを感じています。
 本作が学生、10代からの反響が多いのは、楪さんはなぜだと思いますか?

楪:
 自分もそうだったんですけど、10代の頃って見えてる世界は結構限定的だと思うんです。
 すると、半径5メートル位のところから飛び越えて新しい世界に触れるには、意識してそのような機会を作り出さないといけない場合が多いのかなって。

 今は、僕が学生の頃と違ってSNSがあるので、自分と同じ悩みを抱えている人と比較的繋がりやすいと思います。でも逆に言えば、SNSでは悩みを打ち明けられるのに、身近な人には打ち明けられない。生きづらさ、息苦しさを抱えていても言い出せない。
 『レゾンデートルの祈り』はまさに、そういう人にとって味方のようなイメージとなって反響をいただけたのかもしれないです。

けんご:
 中高生のうちに『レゾンデートルの祈り』と出会っているっていうのが凄く羨ましいと思ってるんです。
 これから社会に出て頑張る理由が欲しいときや、何か辛い事を乗り越えるときにこの本を思い出してほしいなって。

楪:
 実は、書籍化が決まった時から10代の方に読んで頂けるイメージがゼロに近かったんです。
 僕が想像していた読者層は20~30代だったので、10代の方からの感想が多い事に今もビックリしてます。自分が想像していた以上に年代の線引きは関係なく生きづらい気持ちがあるんだと感じました。

『レゾンデートルの祈り』は遺書のつもりで書いた

けんご:
 そもそも、本作の着想のきっかけは何か出来事があったのでしょうか?

楪:
 2019年の3月にはじめの構想が浮かびました。たしか安楽死についての特集をニュースで見たことがきっかけだったと思います。
 その時に、単に楽をするためではなく、生きることが苦しいからこそ、安らかに眠る為に安楽死を選ぶ権利があってもいいんじゃないか? と思ったんです。もし、日本で安楽死が認められたら、僕が生きているこの世界はどうなるんだろうかって。

 江ノ島を物語の舞台にした理由は、僕は自然が好きなんですが、旅行で色々なところに行ったことがあるなかで、江ノ島の景色だけは現実離れしたような綺麗さを感じたからです。
 特に、夕日が沈んでいく風景。ノスタルジックさを感じつつ穏やかな波を見ていたことを今でも思い出します。

けんご:
 今回の作品では、“安楽死”という非常に難しいテーマが扱われています。書籍化の際は「このテーマで本当に出版することができるのだろうか」といった葛藤はありましたか?

楪:
 それは正直今でもあるくらいです。読者の方からの感想を見ても“安楽死”というテーマは重いものだったと感じています。
 書き始めた時……いや、構想し始めた時から、かなり批判が来るかもしれないと怖かったですから。

 でも、このテーマを書きたいという自分の気持ちに嘘を付きたくなかった。本作のテーマはまさに自分が感じている生きづらさ、息苦しさを元に書いているものなのです。そして、それが本作を読んだ方のなかで、同じ思いを持っている方に届いたとしたら、自分も読者の方もひょっとしたら何かが変わっていくんじゃないかなって。
 あとは、批判を怖れるが故にこの物語を書かないとなると、今後自分はすべてを諦めてしまうかもしれない……そのほうががもっと怖かった、というのもあります。

 『レゾンデートルの祈り』は、僕が主人公の遠野眞白(とおのましろ)であり、いち安楽死希望者であり、一人で何役も演じていたような感覚で執筆していました。

 自分がこれまでに何か残してきたかというと、そんなに残せていないなって思うんです。本作は、ずっと遺書のつもりで書いていたんです。この物語を書き終わったら自分はもういなくなっても大丈夫、そう思えるようなものを書きたかった。
 人っていつ死ぬかわからない、学生時代からずっとそう思っていたので、書くならば自分の想いを全て伝えようっていうこと、それのみでずっと書き続けていました。

誰かの自殺を止めたいと思って書いたわけではない

けんご:
 もともと、本作をカクヨムに投稿する前に同人誌等で小説を執筆されていたとお伺いしましたが、そもそも小説を書こうと思ったのはどういったきっかけがあったのでしょうか?

楪:
 学生時代に、一人旅で出会った方のお話を聞いていく中で、色んな考え方や価値観と出会いました。その人達との出会いを無駄にせずに、出来ることないかなと思ったんですね。
 元々は音楽が好きだったので、自分で作曲をしてみようと思いました。ところが作曲をしている中で、曲を繋げていってひとつの物語が出来るんじゃないかと。っていうのは、一曲目、二曲目、三曲目の歌詞はバラバラなんですけど、それを一連の物語に出来るんじゃないかなと思ったのが小説を書き始めたきっかけだったんですよね。

けんご:
 元から小説家になりたいとか書こうと思っていたわけじゃなくて、たまたま小説に行き着いたみたいな感じなんですね。
 さきほど、「ひょっとしたら何かが変わるかも知れない」と思って本作を執筆していたとお聞きしましたが、それこそいろんな価値観のなかで、それぞれの生きづらさ、息苦しさがあると思うんですけども小説の執筆がそれらをどのように変えると思っていたのでしょうか?

楪:
 『レゾンデートルの祈り』には僕の気持ちが全部詰まっています。この本を読んだ人で、僕と同じ息苦しさを持った人が、「あぁ、こういう人もいるんだ」って僕のことを自分の味方のように思ってくれるかもしれない。すると、同じように、「あぁ、書いてよかった」と僕も救われる。

 デビュー作の著者の実際の姿を知っている人ってなかなかいないと思うんです。それは自分の中でメリットであって、伝えられないことを自分の姿を隠した状態で伝えることができる。実は「生きづらい、息苦しい」という言葉は身近な人であるほど伝えられないと思うんです。
 僕は本を書くことによって、自分と同じ生きづらさを感じている人に出会いたかったのかもしれません。

けんご:
 誰かの自殺そのものを止めたいという気持ちが原動力になっているところはありますか?  

楪:
 矛盾しているように聞こえるかも知れませんが、単に自殺を止めるという結果だけが全てだとは思っていなくて。生きる事が全て幸せとは限らないという考えが、ずっと自分にはあるので。
 それでも死を選んでしまう人は、他に逃げ道が無かったのかもしれない。自殺以外の逃げ道が見つかって死ななくて済むなら、それが見つかるのに越したことは無いんじゃないかと思うんですよね。

けんご:
 「安楽死を止めたところで、次の日に自殺をしてしまったら意味がない。だから安楽死の意思は否定しない」そういう意味では、作中の主人公と同じスタンスですよね。

楪:
 そうですね。生きるも死ぬも本当に自分の選択次第だと思っています。死ぬ事には勇気がいると思いますし、もちろん生きる事にも勇気がいると思います。だから、その死を止めるからには、その人は相当な責任を持たなきゃいけないと思うんです。
 もし目の前で飛び降り自殺をしようとしてる人がいてそれを止めたとしたら、その後の人生まで責任を負う覚悟はあるかというと、助けると言った人のなかでもそこまで考えられている人はいないのではないでしょうか?
 誰かの死を止めるなら、生きて良かったと思えるような事を一緒に見つけてあげなきゃいけない、そう思ってるんです。 

けんご:
 同人誌を含めると、何回か小説を書かれていますが、カクヨムという誰でも読める場所に掲載したのは今回の『レゾンデートルの祈り』が初めてですよね?

楪:
 同人誌も含めると3作目です。今から7年前に初めての小説を書いて、2作目がその翌年に、それから『レゾンデートルの祈り』までは5年くらい何も書いてませんでした。

 自分にとって初めの頃の執筆は趣味というよりも、日記のような気持ちで書いていました。後で見返した時に、当時の自分の心情がわかるんです。僕にとって小説を書くというのはそういうこと。
 なので、今でも昔書いた小説をたまに読み返すことがあります。『レゾンデートルの祈り』も本にしたい、出版したいという気持ちが先にあって書いたものではなかったんです。

けんご:
 なるほど……現在では本作は沢山の方に読まれて、読者から色んな感想をいただいていると思うんですけど、執筆時にこのような感想が届くというのは予想されましたか?

楪:
 いえ、そもそも手に取っていただけないんじゃないかという怖い気持ちがずっとありました。

けんご:
 若者の読書離れがあって、そのうえで『レゾンデートルの祈り』が出た時期って、コロナの影響もあるなかで、文庫に比べて手に取りづらい単行本、しかもデビュー作。僕から見るといろいろなものが重なっているように見えるんです。
 にもかかわらず、重版になって多くの方に愛される作品になったわけで、それに対する楪さんのご心境をお聞きしたいです。

楪:
 やっぱり、まだ自分の中で信じ切れてないような部分もあるんです。
 僕もコロナ禍のせいで、なかなか書店に足を運べてないので実感が湧きにくいんですよね。けれど、今はネットとかを通して色んな感想をいただいているので、本当に届いているんだなというのは実感出来る時もあります。

けんご:
 では、そうして自分の作品が一冊の書籍として世に出たことはやっぱり感慨深かったですか?

楪:
 感謝の気持ちしかないですね。実際に見本誌を手に取った時は本当に嬉しくて。ネットで投稿するのとは別の良い味があって、書籍化にあたり担当さん、イラストレーターさん、デザイナーさん……沢山の方々の想いが込められているものですし。それに書籍化していただけると思っていなかったので。

 カクヨムに投稿していたときと、出版された今とで、作品に対する反響に違いが有り過ぎて何からお話しすればいいかわからないくらいなのですが。
 たしかに、ネットで作品を公開していれば誰でも読むことはできます。けれど、出版されたあとのほうが反響はたくさんきています。それは、やっぱり本は読むのにお金もかかりますし……本当に、こうして反響が来ているのも、けんごさんのおかげだと思います。

カクヨム投稿時から変更された点について

けんご:
 本作はカクヨムに投稿されたものが書籍化されたわけですが、たとえば改稿作業のエピソードなど、お話しいただければと思います。
 担当の編集者さんとはどんなやりとりがあったのでしょうか?

楪:
 (取材に同席していた担当編集者の方を見て)ほぼ全てにわたって、担当の編集者さんがいなければ多分、書籍として完成していなかったと思います。

担当編集:
 いやいや! そんなことは無いです! 僕が初めて『レゾンデートル』(※カクヨム投稿時のタイトル)をカクヨムで読んだときには、本当このまま出したいくらいの気持ちでした。
 しかし、やはり安楽死という取り扱うことが難しいテーマを、書籍化を経て色々な人が読むことになるので、万が一にでも、誤解を生んではいけないと思ったので、打ち合わせを細かく重ねました。

楪:
 改稿作業の段階になって、自分以外の誰かが読んだ時に、登場人物の発言の細かい点が気になるのでは? と、そういう本当に細かい気遣いを何度も考える必要が出てきました。
 「アシスターというのは架空の職業であっても、その職業柄でこの発言は失礼にあたるんじゃないか」って。
 『レゾンデートル』として、カクヨムに投稿していた頃にはそういうことはあまり気にならなかったんですが、改稿作業では、そういったしんどさがありました。

けんご:
 例えば、主人公の言葉遣いや描写では、どんな変更が行われたのでしょうか?

楪:
 カクヨムに投稿していた段階では、見方によってはちょっとドライに感じられるような言葉遣いだった気がします。

担当編集:
 相槌とかもなるべくシンプルにならないようにというか。会話だったら単に「はいはい」と相槌を打っているだけでも文字で見た時に冷たく突き放すような印象にならないように相談させていただいたところはありますね。

楪:
 書籍発売後、重版・再販時に変更したところがあります。4章の眞白の、「どうして“男”の方は勇者に憧れるんでしょうね」というセリフが、重版後は「どうして“男性”の方は」と変わりました。ちょっとだけ、より丁寧に変わった感じですね。そこは読み直していて、「眞白だったら、こうは言わないな」と思ったり。

けんご:
 タイトルがカクヨム投稿時の『レゾンデートル』から『レゾンデートルの祈り』へと変わっていますよね? 

楪:
 そうです。『レゾンデートル』は日本語訳すると「存在理由」、なので『レゾンデートルの祈り』をそのまま日本語訳すると、「存在理由の祈り」という日本語としては少しいびつになってしまうかもしれないとは思いつつも変更しました。
 実は、このタイトルの変更はかなり編集さんと話し合いました。

担当編集:
 「レゾンデートル」という言葉は過去の多くの作品でも使われていて、本作のオリジナリティを出すためにも、変更はご検討いただきたいと考えていました。が……そこからは結構話し合いましたね。

けんご:
 それでも『レゾンデートル』という単語はそのまま使用されていますが、そこは動かなかったのでしょうか?

楪:
 「レゾンデートル」だけは使いたいと思っていたので言葉自体は消えなかったんですよね。なので「レゾンデートル」を前にするか、後ろにするかとか……。
 ボツ案をいったい何個作ったんだろう(笑)。

担当編集:
 「祈り」という本作を象徴するワードが入ったことは良かったと思っています。

 タイトルについて楪先生と話し合っていたときが、編集者として一番本気でぶつかりに行っていた気がします。

楪:
 夜中の3時とかにお互いに長文のメールのやり取りしてましたね……(笑)。今となってはいい思い出ですが、あの時はずっと悩んでましたね。

担当編集:
 自分としてはそのメールで説得しようとしていたわけではないんです。ただ、あのときはタイトルを変えるということだけではない熱量でした。ここで本音でぶつけきらないと! と思いまして、お恥ずかしながら「絶対にこの作品を届けなきゃいけない」みたいなことを言った気がします。 

けんご:
 最終的に決定した「祈り」という言葉は、誰が何を祈っているのでしょうか?

楪:
 もし、『レゾンデートルの祈り』を誰かが手に取ってくださって、この本と出会ったことが存在理由、生きる理由の一つになってくれたら……それが本を書いた僕からの“祈り”でもあり、作中での眞白の祈りも重ねられているんです。

イラストレーター・ふすいさんが手掛けたカバーイラストを見て

けんご:
 カバーイラストを描かれたイラストレーターのふすいさんって、一つの作品に対しての熱量がハンパないっていう話を聞いたことがあります。
 絵を描く前の段階から密度が濃ゆいヒアリングをして、どのような絵にしていくのかというイメージの共有や、候補を出す数もすごいとか。そんな、ふすいさんのカバーイラストを初めて見たときの感想をお聞きしたいです。

楪:
 ふすいさんは先に原稿を読んでから作業に入られるとは聞いていましたが……初めてイラストのラフを見た時は、意外だったっていうのが正直なところです。物語の舞台が湘南・江の島なので、僕がイメージしていたのは、綺麗な浜辺とか朝日とか光が目立つようなイラストでした。そんな光と江ノ島の風景と主人公の眞白、その3点が合わさったイラストを勝手に想像していました。

 ところが、出来上がったものは江ノ島の風景でもなく、「浜辺で目を閉じて寝そべっている眞白」でした。それをラフで見た時は本当に意外だったんです。

けんご:
 作中にはこんな描写は1ページもないんですけど、この表紙もありきで『レゾンデートルの祈り』だと思うので。

楪:
 そうなんですよね。
 第一印象は驚きの気持ちが強かったのですが、実際に装画としてあの表紙を見せていただいた時は、自分が作った架空の人物をここまで綺麗に描いていただけるとは! という感動が強くなって……思わず涙ぐんでしまったくらいでした。ふすいさんには細部にもすごくこだわっていただきました。作中の各章で登場する物語のキーになるような小物が表紙には散りばめられています。たとえば、スケッチブックは第4章、ガトーショコラは第1章ですね。

 自分が一番嬉しかったのは、眞白の胸に瑠璃の宝石があったことです。
 作中には瑠璃の宝石は直接出てきません。けれど、第3章に出てくる青年の名前についてのシーンで「瑠璃色の海を浮かべてそういう名前を付けられたのでは」という眞白のセリフから、ふすいさんが想像を広げて瑠璃の宝石を描かれたようなんです。それも心臓に一番近いところに描いていただいたっていうのが凄い。

 これは偶然かもしれないですけども、「眞白がその安楽死希望者のことをずっと忘れないように」という意味があるように感じています。

けんご:
 色々と深読みしてしまいますよね。

楪:
 ただ、ふすいさんがそこまで狙っていたのかは僕にはわからないので、いつか訊いてみたいです。ふすいさんに装画を手掛けていただけて本当に良かったの一言ですね。

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