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1日16時間以上”マイクラ建築”をし続けた結果、『マイクラ』の幻聴が聞こえるようになった男──やりこみゲーマーが見る景色とは【ゲーム実況者・ハヤシさんインタビュー】

 起床、マイクラ、ご飯、マイクラ、お風呂、マイクラ、就寝。

 これはとあるゲーマーの1日である。

 聞くにその日は『Minecraft (マインクラフト)』(『マイクラ』)にて、ブロックを掘ったり盛ったりしてフィールドを平にする”整地”に勤しんでいたという。その時間なんと16時間以上

 1日中ゲームをすることじたいゲーマーにとっては珍しくもない。むしろ毎日ゲーム漬けの生活に憧れるゲーマーも少なくないだろう。

 しかし、実際にそんな生活を毎日送った結果どうなったのか。

「朝起きて『マイクラ』を起動していないのに土を設置するジャッジャッジャッという音が幻聴で聞こえた」

 ゲーム実況者のハヤシさん(@hayashi_lanturn)はそう語る。

 このときの状況をまとめるとこうだ。

「膨大なフィールドを4ヵ月かけて整地し続けていた」
「ときには1日16時間以上に渡って整地をすることも」
「腱鞘炎がひどくて湿布を貼りながらプレイしていた」
「整地し続けた結果、『マイクラ』の幻聴が聞こえるようになった」

 これだけ見ると苦行にしか見えないのだが、どうやらハヤシさんは「ずっと楽しくプレイしていた」という。

 どういうことだ……? わけがわからない。

 また、整地に限らず、ハヤシさんの『マイクラ』動画はひとつの建築物にかけるプレイ時間が多い。顕著な例だと、960時間かかった制作過程が90分の動画に収められている

 なぜそこまで時間と労力を注ぎ込めるのか。なぜその様子をほとんど動画にのせないのか。そこにはハヤシさん自身のゲームに対する愛と熱量と狂気が詰まっていた。

文・取材/竹中プレジデント

4ヵ月かかった整地作業も「楽しく」プレイ

──今回の取材では、膨大な時間と労力をマイクラ建築に注ぎ込んでいるハヤシさんが、どのようなことを考えてプレイしているのか、辛いと感じる瞬間はないのか、大変な作業であったとしてもやりこみ続けるその魅力についてお聞きできればと思っています。よろしくお願いします!

ハヤシ:
 よろしくお願いします! このような企画に呼んでいただいて大変恐縮ではあるんですが、僕自身はそこまでゲームをやりこめている認識はなくて……ここが大変だった、苦労した、という感覚もまったくないんです。

──えっ、そうなんですか? でも「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」では、巨大な熊本城を作っていたじゃないですか。動画を見た感じ、かなりの期間と手間をかけて作っているように見えたのですが。

ハヤシ:
 製作期間で言えば、熊本城は資料集めから建築まで全部あわせるとだいたい8ヵ月くらいでしょうか。

──8ヵ月ですか!?  何にどれくらい時間がかかっている感じなんですか?

ハヤシ:
 作業の内訳としては、資料集めに1ヵ月、素材集めに1ヵ月半、整地に4ヵ月、城の建築に2ヵ月くらいです。

ちょっと理解が追い付かない部分があって、ひとつずつ確認させていただきたいのですが、まず資料集めに1ヵ月というのは?

ハヤシ:
 「御城内御絵図」(1769年ごろ・熊本市 蔵)や「御天守方御間内之図」(1798年ごろ・熊本県立図書館 蔵)、「御城図」(1755年以前・永青文庫 蔵)、「熊本城超絶再現記」(2019年・島充 著 新紀元社 発行)など、まず熊本城に関する文献を探して、それをもとにどう城を作るのか構想をまとめていきました。

 なかには江戸時代の文献もあり、それについては解読しないとどうしようもなくて。記号や昔の文字とにらめっこしながら少しずつ読み進めて、こんな感じで作ろうと城の構想がまとまるまでに1ヵ月くらいはかかりました。

江戸時代の文献も紐解いて”マイクラ建築”の参考に。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-2」より)

──資料を解読……それは時間がかかりそうです。

ハヤシ:
 そこから1ヵ月半くらいかけて素材集めに取り掛かりました。”クォーツ”や”羊毛”など、建築に使うものを集めていく作業です。

 『マイクラ』には無限に素材を使えるクリエイティブモードがあるのですが、自分が遊んでいるサバイバルモードでは素材を集めて建築に必要なブロックを確保する必要があります。

──はぁ……。

ハヤシ:
 つぎに待っているのは、城を建てる敷地を整えるために、木を切ったり土を盛ったり掘ったりしてフィールドを平にする整地という作業です。期間は4ヵ月くらいかかりました

──ここまで半年以上、まだ建築の「け」の字も出てこないんですが(笑)。

ハヤシ:
 この熊本城に限った話ではなく、『マイクラ』のサバイバルモードでの建築になると、実際に建てる時間より素材集めや整地など準備に時間がかかるケースが多いんです。

素材集めは時間がかかる。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」より)

──なるほど。フィールドを平にするだけの作業を4ヵ月も続けるって、かなり過酷な作業に思えるのですが、辛かったり大変だったりしないんですか?

ハヤシ:
 もともと、『ドラクエ』のレベル上げや『ポケモン』の卵孵化など、単純作業を楽しくできるタイプなんです。むしろ好きなくらいで。

 ですので苦労したって感覚は僕自身まったくなくて、ずっと楽しくやっていました。

──楽しくですか……整地をしているときってどんなことを考えているんでしょう。

ハヤシ:
 可能な限り楽して整地できるように掘削や設置の順番やルートを考えていますね

 ただ土を掘り、石を並べると言っても「どうすれば効率よく進められるか」「どうすればミスを減らせるか」と考えながらやるとおもしろいし、結果的に脳のリソースの節約にもなります。

──整地の効率化ですか。

ハヤシ:
 例えば印刷機のように右に進みながら石を設置し、端まで来たら一歩下がって今度は左に進みながら石を設置する。起伏や入り組んだ地形になってると引っ掛かったり埋めきれない部分ができるので、そこだけ集中して先に埋めておく。

 こうすると視点移動の必要がないため、設置や掘削のミスが減り、ちゃんと画面を見ていなくても進められるんです。最終的には左手だけで整地できるようになり、右手で仕事したり『ポケモン』をやったりしていました

──効率化を極めてますね(笑)。疑問が一点あって、無限に素材を使えるクリエイティブモードにすれば、時間や労力を大幅にカットできると思うのですが、なぜあえてサバイバルモードでプレイ続けているんですか?

ハヤシ:
 なんででしょうね……とくに大きな理由はなく、サバイバルモードで始めたので今さら変えてもな……というのが一番大きいと思います。

 あとは、便利すぎてもすぐに飽きてしまうので、サバイバルモードであるがゆえのちょっとした不便さが自分にとってちょうどよくて。

 クリエイティブモードなら素材集めをする必要もなく、手作業だと4ヵ月かかった整地も一瞬でできるのですが、僕はそういう作業も含めて楽しんでいるので、サバイバルモードのほうがあっているのかなと。

1日16時間以上整地した結果、『マイクラ』の幻聴が聞こえるように

──にわかには信じられないところではありますが……つまり、苦行に見える作業でもハヤシさん自身は楽しんでプレイされていると。

ハヤシ:
 そうですね。僕は辛いことは大嫌いなので、もし本当に辛いと思っていたらプレイもしてないですし、動画にもなってないと思います。

──ただ、動画の中でハヤシさんがあえて苦行に向かっているとしか思えないところもあって。例えば、熊本城の整地のときも、見栄えは変わらないのに「土の上に石を置くのはいけすかない」と、普通なら”土の上に石を盛る”作業だけで済むところを、“土を掘ったうえで掘った分も含めて石を盛る”というセルフ賽の河原みたいなことをしていたじゃないですか。

熊本城建築時の整地。普通ならここから石を盛って平にすればいいと思うのだが……。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」より)
なぜか一度すべての土を掘る。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」より)
それから石を盛る。見栄えだけなら土を掘る作業は必要ない。作業的には掘った穴を埋める行為と同じようなことをしている。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」より)

ハヤシ:
 なんというか……見えないところにもこだわりたくなる質(たち)なんです。

 『マイクラ』はジャンルとしてはサンドボックス型のゲームで、砂場で砂を使って山やお城を自由に作れるように、ブロックを使って自由にものを作れるよと。

 例えば、砂場で城を作るにしても当然それは砂の城であって本物の城ではないわけで、そこに”お城に見立てる”行為が入ってきます。『マイクラ』で使うのはブロックですから、ブロックを組み合わせることで何かに見せる作業が含まれてくるわけです。

 そうなると、どこまで見立てるか、リアルさを追求するかとなってくるのですが、僕はわりとこわだってしまうほうなんだと思います。ですから土の上に石を置かないことも僕的には”見立て”の範囲なんです。

──ただでさえ膨大な作業をさらに増やして……と、視聴者も困惑のコメントを寄せていたのが印象に残っています。

困惑する視聴者たち。
(画像は「【Minecraft】今更ドハマりした男の『MINECRAFT』実況プレイ part60-1」より)

ハヤシ:
 やはり遊びというのは真剣になればなるほど楽しいですから。これくらいでいいやって思うと途端に飽きてしまうこともあるので、遊びでやるからこそ可能な限り突き詰めて、行けるところまで行きたいという思いはあります。

──遊びだからこそトコトン遊ぶと。

ハヤシ:
 はい。ゲームに夢中になってついつい長時間プレイしちゃう……みたいなことあるじゃないですか。それくらい本当に楽しくて。

 ある時期、1週間ほど毎日16時間~20時間くらい、とにかく起きているときはひたすら整地をし続けていたときもありました。

──おお……それはかなり人生捧げていますね。

ハヤシ:
 ただ、さすがにやりすぎたのかそのときは体調を崩して寝込んでしまって(笑)。

 腱鞘炎がすごくて湿布を貼りながらプレイしていましたし、朝起きて『マイクラ』を起動していないのに土を設置するジャッジャッジャッという音が幻聴で聞こえたり。さすがに少し休憩したほうがいいかなと思いました。

──そんなときでも「辛い」「苦しい」などの気持ちにはならないんですか?

ハヤシ:
 まったくなかったです。むしろ「早く治して整地しなきゃ」と思っていたくらいでしたね。

 もちろん、今日は『マイクラ』の気分じゃないな……という日はありますよ。ずっと整地をし続けている男と思われるのはあれですので。そういうときは別のゲームを遊んだり、趣味のお散歩をしたり、息抜きはちゃんとしています。

──散歩が趣味なんですね。

ハヤシ:
 歩きながらどんな動画を作ろうか考えたり、それこそ動画や『マイクラ』とはまったく関係ないことを考えたりしながら2時間くらいお散歩を。いい息抜きになります。

現実の建物が『マイクラ』のブロックに見えてくる

──2014年より『マイクラ』実況を始める以前は、『 マリオストーリー』や『ポケモン』実況などのイメージが強かったハヤシさんですが、『マイクラ』を遊びだすことになったきっかけみたいなものってあるんでしょうか。

ハヤシ: 
 2012~2013年くらいから、ニコニコで『マイクラ』の投稿がすごく盛んになった時期があって、そのブームが少し落ち着いたタイミングくらいでたまたま『マイクラ』の動画を見たんです。

 もともと『マイクラ』がどういうゲームなのかまったく知らなかったのですが、Bellさんの「方向音痴のマインクラフト」という動画を見て、すごくおもしろそうなゲームだと思って購入を決めました。

──動画きっかけで『マイクラ』をプレイしたと。実際に遊んでみてどうでしたか?

ハヤシ: 
 動画でゲームの概要じたいは把握していたのですが、実際にやってみるとその自由度の高さにびっくりしました!

 Bellさんの動画を見ていた影響もあって、とくに建築というものに興味を抱いて、ずっと建築ばかりしていましたね。

──ハヤシさんってご自身で「飽き性」だと公言されているじゃないですか。それなのに7年以上遊び続けるくらい飽きない。

ハヤシ: 
 やはり終わりが見えないというか、明確なゴールがないゲームということもあって、ずっと続けています。

 始めた当初、半年くらいで飽きて終わると思っていたんです。それがまさか7年続くことになろうとは……思ってもいませんでした。

──『マイクラ』のなにがハヤシさんをそこまで惹きつけているのでしょう。

ハヤシ: 
 さきほど話した“見立てる”行為と重なる部分ではあるのですが、『マイクラ』というゲームは、いろいろな遊びができるんですが、なんでもできるわけじゃないんです。

 例えば車を作りたいと思っても車のブロックはないので、あるブロックで車っぽく見せる工夫が生まれてくる。自由度は高い、でも何でもあるわけじゃないという制限。そこに生まれる工夫というのが『マイクラ』の楽しいところだと僕は思っています。

 逆に、なんでもかんでもブロックがあったら飽きてしまったかもしれません。不自由さ、不便さを楽しむと言いますか。何でもあるわけじゃないから頭をひねって工夫して表現していく、というところが楽しくてずっと続けられているのかもしれません。

ブロックを組み合わせて作った”大きな古時計”。
(画像は「木の内装をつくる|今クラ+ #2【Minecraft】」より)

──そういう『マイクラ』のゲーム内における”見立て”をはじめとするテクニックや、建築の知識についてはどのように学ばれていったんですか?

ハヤシ: 
 『マイクラ』の技術に関しては、ほかの方の動画で紹介されているテクニックを参考にしつつ、それを自分なり吸収してアレンジしていきました。

建築の知識に関しては、『マイクラ』を始めるまでまったく知識がなかったので、『マイクラ』きっかけで本を読んで勉強したり、実際の建物の構造を参考にしたりして勉強していきました。

──7年も『マイクラ』を続けていると、建物を見る目が変わってくることもあったり?

ハヤシ: 
 『マイクラ』を長年プレイしている方にとっては、あるある現象だと思いますが、現実の建物が『マイクラ』のブロックに見えてくるというのはあります。

 これは”なめらかな砂岩”で作れるかなとか、これは”クォーツ”が必要だろうから作るのには時間がかかるな、みたいに。『マイクラ』を遊んでいる友人同士で街へ出かけると、そういう会話で盛り上がったりもします。

──職業病みたいな感じですね(笑)。動画内で建物を建てるときと、動画外で建物を建てるときってなにか違うところってないんですか?

ハヤシ: 
 動画内も動画外も同じですね。目印をつけて、柱を建てて、壁を作って、屋根を作ってと、基本的に動画で紹介している順番で普段も建てています。

 ただ、『マイクラ』は3Dゲームのため、酔いやすい方はどうしても酔ってしまうんです。ですからゲーム画面を録画する際は視点をぐわんぐわん動かさず、可能な限り酔いにくいカメラワークというのは意識しています。

──素材集め、整地含めてすべての作業を楽しんでいるハヤシさんですが、とくに脳汁が溢れちゃう快感や達成感を抱くタイミングなんでしょう。

ハヤシ: 
 新しい表現方法を思いついたときですね。例えば石のボタン・額縁・旗を組み合わせてトイレットペーパーが表現できたときなどはテンションが上がりました。

 先に言った通りマイクラは自由度は高いですがなんでもあるわけではないゲームです。ゲームが用意していないものを、自分の工夫でなんとか表現する。このゲームならではの爽快感です。

 そういった工夫した点を動画投稿後に視聴者の皆さんから評価してもらえたり、参考にしてもらえるのもとてもうれしいです。

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