ジブリの“目玉焼き”はどうしてあんなに美味しそうなの?「ジブリ飯」に込められた苦労と宮崎駿の想いを徹底解説!【話者:岡田斗司夫】
期せずして飯テロを食らうスタジオジブリ作品。「ジブリ飯」なんて呼ばれるようもなって「ジブリで出てくるご飯は美味しそう」という認識はすっかり定着しています。しかし、なぜこんなにおいしそうに見えるのでしょうか?
ニコニコチャンネル『岡田斗司夫ゼミ』の動画にてパーソナリティの岡田斗司夫氏による徹底解説が行われました。
「ジブリ飯」の秘密について、2019年に放送され、アニメーション制作現場を描いたNHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」とあわせて岡田斗司夫氏が解説します。
※本記事はニコニコ動画での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。
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岡田:
『君の名は。』や『天気の子』といった新海誠作品のように、優れたアニメーションは現実以上のものを描いてみせています。現実よりも美しい夜景や、東京や新宿の町並み。それは裏を返せば現実以上のものを描いてしまうからこそ、アニメの世界に依存してしまう人を生んでしまうんです。
アニメーションのこの現実以上の世界を描く力は、実は食べ物にも当てはまります。腕のいいアニメーターが描いた食べ物は、実際の食べ物よりもおいしく見えてしまうんですよね。その代表がジブリの描く食べ物や食事のシーン。
2019年に日本最初期のアニメスタジオ「東映動画」を舞台にしたNHKの朝ドラ『なつぞら』が放送されました。東映動画はかつて宮崎駿や高畑勲が所属していたスタジオ。だから毎回アニメ制作にまつわるマニアックなネタが仕込まれているんですね。
そんな『なつぞら』の中で、目玉焼きをいかに美味しそうに描くかという、ジブリ飯の源流が登場します。ジブリ作品内の目玉焼きのシーンとあわせて語っていきます。
『なつぞら』で苦労したシーンの完成形が『天空の城ラピュタ』
岡田:
『なつぞら』では、主人公のなつと神地がスタジオでいくつも目玉焼きを焼いて実験していました。ちなみに神地のモデルは宮崎駿です。卵がフライパンに落ちる動き、白身の縁が白く固まって、黄身のつやが消えていく様子を表現しようとしている。
そしてこれが外注さんからなつへ渡された作画。
これを見て、なつと一久が「もう少し美味しそうにできないか」と言い出したんですね。
ここに書いてあるのは作画ゲージ。
たまごが1枚目、2枚目、3枚目と加速しながら落ちていって、フライパンに当たって着地するところで減速する。アニメーションの動きの指示です。『なつぞら』の中で苦労したこのシーンの完成形が『天空の城ラピュタ』でパズーがシータに朝ごはんを作るシーンですね。
斜めのフライパンの上に油が流れていて、白身の縁が焦げて黄身が固まりだしています。目玉焼きの一番美味しい状態です。
『ラピュタ』を超えた『ハウル』の目玉焼き
岡田:
『ラピュタ』の目玉焼きを超えた完成形がこちら。『ハウルの動く城』のこのシーンです。
1コマ目。殻が割れて白身が透明なまま落ちていきます。フライパンの上の分厚いベーコンから肉汁がいっぱい流れています。
2コマ目。加熱されて白身に気泡が出ます。
3コマ目。あっという間に透明な部分に火が通って白くなっていく。
しかし実際は、TVアニメでここまで緻密な作画や色指定はできません。『アルプスの少女ハイジ』でも、当時、色数は今よりも少なかったはずなので、本来なら60色ぐらいしか使えない中、特注色をたくさん作っていたのではないかと思います。ここまで緻密に描くと200色は超えてしまいますね。
この解説動画では、目玉焼きの解説の後、いつも宮崎アニメにおいしそうな食べ物が出てくるようになったきっかけが語られます。
それは、ある宮崎アニメで食事シーンが描かれていないことを、高畑勲に「このアニメには生活感がない。なぜかというと、食事シーンがほとんどないからだ」と手厳しく指摘されたためでした。そのアニメ以降、宮崎アニメにはいつもおいしそうな食べ物や食事シーンが登場するようになりました。
そのきっかけになったアニメとは何だったのか。知りたい方は、本編 岡田斗司夫さんの更なる解説をチェック!(12分頃から)
▼岡田斗司夫の「ジブリ飯」解説をノーカットで視聴したい方はコチラ▼
「【UG #300】ジブリ飯はなぜ美味しいの?・4月はジブリ特集⑩ 2019/9/23」
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