「宇宙でのトイレ事情」ってどうなってるの? “便逆噴射の悲劇”を経てNASAが開発した「最新型宇宙トイレ」の実力を徹底紹介!
今回紹介する、スカイ三平さんが投稿した『【ゆっくり解説】惨劇を繰り返すな!NASAが開発した最新型宇宙トイレの実力とは?』では、音声読み上げソフトを使用して、NASAが2300万ドル(約24億円)を投じて開発している宇宙でのトイレ設備ついて解説していきます。
新型宇宙トイレは飛行士のトイレ問題を救うのか?
霊夢:
今回はNASAが新開発したトイレを紹介しながら、過去の惨劇も一緒に振り返っていこうと思います。NASAはかねてより開発していた新型トイレを2020年10月に国際宇宙ステーションへ届けたわ。
今回NASAが新しく開発したトイレは、Universal Waste Management System、略してUWMSっていうんだけど、なにが新しくなったのかっていうと一番大きな改善点は女性にも配慮した設計になってて、これまでのは女性がトイレを使う際に大をしながら小をするということができなくて、別々にしなくちゃいけなかったんだけど、ホースの先に取り付けるアタッチメント形状を工夫することで女性の大小同時排泄にも対応したわ。
魔理沙:
回収された尿は浄水処理されるんだっけか。霊夢:
まあ地球だってきょう出した尿が巡り巡って飲み水になるわけだしね。ちなみに初期の頃の国際宇宙ステーションでは尿の再生処理機能がなくて、タンクに貯めてプログレス宇宙船に搭載して大気圏再突入で処理していたわ。魔理沙:
そのぶんを地上から補給してやらないといけないのか。霊夢:
水の補給のために0.5リットルで1万ドルの打ち上げ費用がかかっていたわ。その頃の国際宇宙ステーションでは3人暮らしだったわけだけど、アメリカが開発した水再生システムで尿や船内の湿気などを飲水や酵素に利用できるようになったおかげで、6人暮らしができるようになり、水と消耗品を含めて打ち上げ重量を年間6.8トン削減できるようになったわ。
当初は尿の93%を再生できるはずだったんだけど、実際は70%から80%弱程度の再生率になってて、この問題をクリアしないといけないわ。無重力空間では骨に荷重がかからないからカルシウムが溶け出すんだよね。水の再生はフィルターでカルシウムなどの不純物をろ過して、遠心分離で気体と液体をわけ、最後に蒸留処理をしているわけなんだけど、カルシウムなどの不純物が多くて設計値に届かないわ。
魔理沙:
再生されなかったぶんはどうなるんだ?霊夢:
汚水タンクにいれて保管されて補給船と一緒に大気圏で処理されるわ。いまJAXAなどでは、この水再生率を98%以上にする研究を進めていて、将来建設される予定の月軌道プラットフォームゲートウェイや月面基地などを想定しているわ。
国際宇宙ステーションの水再生能力は限られているわけだから、一人が1日で使う水はある程度決められているわ。飲み水として2リットル、濡れタオルや歯磨きフリーズドライ用などで1.5リットルよ。
魔理沙:
合計3.5リットルか、なんだか少ないな。霊夢:
3.5リットルのうち、2.8から3リットル前後を再生水で賄っているから残りの分を地上からの補給に頼っているわ。魔理沙:
半年で550リットルぐらいを補給しないといけないのか。霊夢:
550リットルを打ち上げるためには、およそ1100万ドルかかる計算だから、水の節約は地球の話だけじゃないってことね。UWMSの他の大きな改善点として、電源の投入方法があって、トイレの蓋を開けると電源が入るようにしたわ。
魔理沙:
どういうことだ?霊夢:
その原因をトイレの修理がうまいトイレスペシャリストの大西宇宙飛行士がJAXA広報内で記しているわ。
一応、強力な脱臭装置がついているけど、それでも異臭騒ぎになるからね。まあ臭いが充満するだけならまだマシよね。
魔理沙:
どうしてだ?霊夢:
昔はこんな袋をおケツにあててブリュリュと出したあと、防腐剤をふりかけてモミモミしていたんだし。
そのモミモミが足りないせいで、発酵が進んでしまい、袋が膨張して破裂して中身が飛び出して帰還するまでう○こと臭いが船内に漂っていたこともあったし。当然、無重力だからブリっと出したものは袋の中にとどまらなくて、出した瞬間におケツと袋の隙間から漏れてくるし、防腐剤を入れる間に漏れてくるわ。
ソ連はアメリカよりも早くにちゃんとしたトイレを導入したわ。アメリカのトイレに対する考えはソ連より遅れていることも事実で、それはクルードラゴンでも現れているわ。
ソユーズ宇宙船のトイレは軌道線にあって、乗員が座る帰還船とはロアごとに仕切られているんだけど、クルードラゴンの場合はフロアで仕切られているんじゃなく、パネルもしくはカーテンで仕切られているとされているわ。
この件でロシアのロスコスモスが苦言を呈していたわ。
魔理沙:
アメリカのトイレ軽視は何なんだ。霊夢:
スペースXもNASAもクルードラゴンのトイレについて公開してなくて、おそらくここがトイレで、これが汚物タンクだと思うわ。
クルードラゴンは白と黒を中心にデザインされてあるから、トイレもおしゃれにしていると期待しているんだけど、いまのところ公開されてないね。
UWMSの改善点は他にもあって、全体的にサイズと重量が国際宇宙ステーションにあるトイレと比べておよそ半分になったわ。これは尿に酸を混ぜたりフィルターを通したりする前処理機能が付いているからで、国際宇宙ステーションの場合は壁の向こうにあるから見えないだけよ。
魔理沙:
尿に酸を混ぜて何をしているんだ。霊夢:
宇宙では水で流せないから、尿に含まれるカルシウムなどでよく詰まるからよ。さっきも言ったように、無重力では骨からカルシウムが溶け出すから余計よね。この小型軽量化は国際宇宙ステーションに向けたものではなくて、オリオン宇宙船に向けたものなんだよね。
魔理沙:
オリオン宇宙船ってなんだ?霊夢:
オリオン宇宙船はNASAやヨーロッパ宇宙機関を中心に開発が続けられてる有人宇宙船で、1990年代にスペースシャトルの後継機として検討され、2005年から本格的な開発が始まり、国際宇宙ステーションや有人月面着陸に向けて開発が続けられていたんだけど、2010年にサブプライムショックでアメリカ政府の財政が悪化したことで、一旦中止。翌年から月・火星・小惑星・月軌道プラットフォームゲートウェイに向けたものに変更になって、2021年11月に無人試験飛行が予定されてる宇宙船よ。
魔理沙:
その宇宙船にこのトイレが使われるのか?霊夢:
オリオン宇宙船は4人乗りでちょっと狭いのと、国際宇宙ステーションよりも遥か遠いところを目指すものだから、搭載機器の小型軽量化が必要なんだよね。だからこのトイレの開発費はオリオン計画予算から出ているわ。
魔理沙:
ちなみに開発費はいくらしたんだ?霊夢:
まだテスト段階だからあれだけど、およそ2300万ドルよ。オリオン宇宙船関連総予算に比べたらかわいいもんですよ。2005年から2021年までのオリオン関連総予算はいくらだと思う? およそ187億ドルが費やされているわ。2300万ドルかけてもウォシュレットみたいな機能はないし、音姫みたいな機能にもなし、溜まった汚物はテトリス状になるから棒で砕かないといけないね。
魔理沙:
棒で砕くのを何とかしろよ。霊夢:
スペースシャトルの時にやったでしょ。下に溜まった排泄物とトイレットペーパーをどろどろのパルプ状にして、汚物タンクの壁に打ち付けるようにしたら、実際は排泄物が凍っていて、ブレードで砕かれてまるでポップコーンのように穴から噴き出てきたからポップコーン現象と呼ばれていたわ。それ以来、国際宇宙ステーションでは直立状態の排泄物を棒で砕いているわ。このUWMSはまだテスト段階だから、水再生システムに接続されてなくて、これでひり出された排泄物はサンプルとして少量が回収されて地球に帰還して、大半は補給線ごと大気圏再突入で処分されるわ。というわけで、最近の宇宙トイレ事情を解説しました。
宇宙飛行士の生活や業務にまで影響を与える「トイレ問題」。今後どのように進化していくのか、楽しみですね。より詳しい解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
▼動画をノーカットで楽しみたい方は
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