19名が犠牲になった「品川勝島倉庫爆発火災」とは? 昭和の東京で起きた、ずさんな管理体制で起きた大爆発を解説してみた
今回紹介する、ゆっくり亭さんが投稿した『【ゆっくり解説】放置されていた化学物質が自然発火 大爆発『勝島倉庫大爆発』』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、東京・品川で起きた「品川勝島倉庫爆発火災」について解説していきます。
無許可で貯蔵されていた硬化剤に着火、大爆発
魔理沙:
1964年、東京都品川区勝島にあった「寶組倉庫」で起きた事故だ。この倉庫の敷地内には「ニトロセルロース」を入れたドラム缶が野積みにされていた。ラッカー塗料や接着剤、火薬などに使用される危険物で、自然発火性が強く、製造過程の不具合などで、これまでも世界中で発火事故などが起こっていた大変危険なものだ。
霊夢:
自然発火するの? そんなもの野積みにしてたら危ないんじゃ……。魔理沙:
だから細心の注意を払って扱わなければならないものだった。7月14日21時55分ごろ、この野積みされていたドラム缶が突然爆発した。隣接していた別の倉庫にあったニトロセルロースやシンナー、ラッカーなどにも燃え移り、次々と連鎖的に爆発、炎上していった。 当時はまだ電話の普及率が低かったため、通報などではなく、大森消防署の望楼から火災が発見され、火災発覚に至った。この火災は倉庫がある方向の空が急に明るくなるほどの大炎上だったという。すぐに消防や警察が出動し、消火活動にあたった。火災発生から一時間後、倉庫で無許可貯蔵していた大量のメチルエチルケトンパーオキサイドというポリエステル硬化剤にも引火して、大爆発を起こした。
この時の大爆発は凄まじいもので、きのこ雲まで出て、隣接する倉庫が崩壊し、消防隊、消防団員など計19名が下敷きとなり、殉職してしまった。
この大爆発で現場に設置されていた指揮本部も吹き飛び、指揮をとっていた蒲田消防所長のほか、指揮隊など約100名以上の消防隊員が重軽傷を負う大惨事となってしまった。この火災は3時間半後の翌7月15日1時38分に鎮火したが、倉庫25棟が焼けた。動員された消防関係者は1500人以上、消防車など計173台もが出動した大規模な消火活動だった。
この爆発の原因は、野積みされていたドラム缶が40~100日間に温度の上昇・下降を繰り返すうち、ドラム缶内上下の温度差により蒸留作用が起きて、上部のニトロセルロースが乾燥し内部の温度が急激に上がり、自然分解が促進されて、その分解熱により自然発火したものだと推定されている。
このドラム缶の爆発だけだったらまだ被害が少なかったかもしれない。後に爆発したメチルエチルケトンパーオキサイド、これは無許可で貯蔵していたため、火災発生後の消防隊の聞き取り時にも企業側はこの物質の存在を知らせていなかった。
ニトロセルロースなどの情報は得ていたため、消防隊は適切な消火活動を行い、延焼も食い止められたかにみえたが、メチルエチルケトンパーオキサイドの情報は提供されていなかったため、予想できない大爆発に巻き込まれ多数の殉職者が出てしまった。
事件後の対応
魔理沙:
事故後に行われた現場検証で、メチルエチルケトンパーオキサイドのラベルを発見したことで、企業側が意図的に消防隊に情報を与えていなかったことが判明した。火災の一週間後には関係者を東京地方検察庁に告発。防火管理についての刑事責任が問われ、12年をかけて裁判が行われた。
1976年10 月に刑が確定したが、企業に対しては罰金わずか5万円、責任者など3人に対しては、消防法違反と業務上過失致傷で執行猶予つきの禁固刑が科せられた。また出火原因が確定できないことを理由に、業務上失火罪については無罪となっている。
消防法違反は、被告らが共謀して指定数量以上のニトロセルロースを無許可で危険物貯蔵所でない空地に野積みし、チルエチルケトンパーオキサイドを危険物貯蔵所でない倉庫に貯蔵したことによるものだった。業務上失火は後の調査で自然発火したものだと認定され、この自然発火は予見可能なものであり、未然に防止すべき注意義務を怠ったとしたものだった。
業務上過失致死傷は、チルエチルケトンパーオキサイドの大爆発についても予見可能であり、その存在を知ることが困難だった消防職員に、いち早く通報して人身災害を未然に防ぐ義務を怠ったため、ということだった。
この火災の影響は大きく、危険物の規制強化を図るために、立ち入り検査の対象や範囲の拡大、消防吏員による措置命令権の付与など、消防法の一部が改正されることにもなっていった。昔にくらべて現在にこういった事故が少ないのも技術の進歩もあるが、先人たちの犠牲の上で成り立っていることを忘れてはいけないな。
無許可貯蔵の物質が大爆発を起こしてしまった大火災でした。解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
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