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黒猫を愛でるためだけにアニメを観てもいいじゃないか! 日本でチケット売切が続出した中国発の劇場アニメ『羅小黒戦記』のことを語らせてほしい

 黒猫のキャラクターが大好きだ。
 黒い体にまるっとした白目。ひっぱりたくなるような耳としっぽ。それに、多くの黒猫キャラに共通する気取った態度。憎たらしくて、かわいい。

 筆者は高校生の頃、『魔女の宅急便』の黒猫、ジジの筆箱をずっと使っていた。野暮ったい男子高校生が持つにはかわいすぎて、周りからからかわれることもあったけれど、気にしなかった。誰にでも黒猫を愛でる権利があるのだ。

 『セーラームーン』のルナ、『日常』の坂本さん、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の黒猫(人間だけど猫っぽいから好きだ)などなど、たくさんの黒猫が登場するアニメを見てきたが、思えば彼らの多くは主人公のパートナー的存在だった。黒猫が主人公になっているアニメ作品って、あんまり無いような気がする。
 そんな筆者の元に、俺得すぎる朗報が訪れた。黒猫のかわいさを全編に渡って堪能できる、黒猫好き待望のアニメが中国からやってきたのだ。

 その名は、劇場アニメ『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ)。この作品、実はいま日本で密かなブームを呼んでいる。

このポスターだけで心を打ち抜かれた。目がウルウルでかわいい。

 『羅小黒戦記』は元々、2011年からWEBで公開されているflashアニメシリーズだ。そしてこの劇場アニメは、本シリーズの主人公、子猫の妖精・シャオヘイの本編より4年前の活躍が描かれる前日譚である。

 アニメシリーズは、2020年8月現在、日本語字幕も吹き替えもなく、WEBアニメも劇場版もオールスタッフ中国人という、100%純中国産アニメだ。

 そんな作品が2019年の日本公開以来、SNSで徐々に話題になり、映画館は軒並み満席。公式グッズは発売されるやいなや、すぐ完売。2020年現在も映画館での上映が続いているという、異例のロングヒットとなっている。
 筆者は、このシャオヘイのビジュアルに一目惚れして映画館のチケット購入を試みたが、人気のあまりなかなか取ることが出来ず、ようやく3週間後のチケットを手に入れて観ることができた。

画像は『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編より引用。

 本作の主人公である子猫の妖精・シャオヘイ、もうなんというか、メチャクチャにかわいい。 
 この記事では、劇場アニメ『羅小黒戦記』、そして主人公の黒猫・シャオヘイの魅力を、筆者なりに紹介したいと思う。

文:いつか猫と暮らしたい金沢俊吾

子猫の妖精・シャオヘイのこと

  本作の舞台は、人間には知られずに妖精が生きる現代の中国。 
 森で暮らしていたシャオヘイは、人類の開拓で森を追われてしまう。やがてシャオヘイが妖怪同士の戦いに巻き込まれ、自分の居場所を見つけるまでの旅が描かれている。

 映画の冒頭、人間による開発で森が破壊され、都会に放り出されてしまう。慣れない都会でひとり、狭い路地に隠れて生きている。
 ここまで台詞もナレーションもないが、もう既に、この弱そうな黒猫の幸せを願わずにはいられない。ここまで寂しげな表情が似合う黒猫がかつて居ただろうか。

画像は『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編より引用。
画像は「映画 羅小黒戦記」公式ウェブサイトより引用。

 ひとりで都会にたたずむシャオヘイの元に、妖怪たちが「一緒に暮らそう」と現れてからストーリーが動き出すのだが、シャオヘイが妖怪たちに心を許し、人間の姿に化けて甘える姿に目と心を奪われてしまう。
 まだ術が未熟なシャオヘイは、うまく人間に化けることができず、猫っぽいフォルムが残ってしまうところもかわいい。

 物語の後半は、ほとんどシャオヘイは人間の姿なのだが、動きはちょこまか動き回る猫そのもので、猫好きもガッカリすることはないから安心してほしい。

画像は『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編より引用。
左は人間の姿のシャオヘイ。右は妖精のフーシー。画像は「映画 羅小黒戦記」公式ウェブサイトより引用。

 シャオヘイが妖怪たちの仲間になり、歓迎を受けた翌朝、「最強の執行人」と呼ばれる謎の人間、ムゲンが現れる。ムゲンは妖怪たちを攻撃し、シャオヘイを連れ去ってしまう。
 シャオヘイも、シャオヘイに感情移入してしまっている筆者も「せっかく平和が訪れそうなのに、なんだこの男は……!」と怒らずにはいられない。

 だが、このムゲンこそが、本作に熱烈なファンを生む大きなきっかけとなっている、もうひとりの主人公なのだ。

師匠・ムゲンがシャオヘイの魅力を加速させる

 劇場アニメ『羅小黒戦記』は、師匠と弟子の絆を描く物語でもある。弟子はシャオヘイ、師匠はシャオヘイの平和を乱す存在として現れたムゲンだ。

 ムゲンは多くを語らない。妖怪を襲った理由も、シャオヘイを連れ去った理由も明かされないまま、2人の珍道中が始まる。
 当然、シャオヘイは反発して逃げようとするが、ムゲンは淡々と連れ戻すことを繰り返すのだ。

シャオヘイは何度もムゲンから逃げようとするが、すぐに捕まってしまう。画像は「映画 羅小黒戦記」公式ウェブサイトより引用。

 やがてムゲンは、シャオヘイに術の才能があることを見抜き、術の修業が始まる。
 シャオヘイは反発しながらも、師弟として信頼関係を築いていく展開はアツい。細田守監督の『バケモノの子』のような展開が好きな人には、たまらないはずだ。

画像は「映画 羅小黒戦記」公式ウェブサイトより引用。

 シャオヘイはムゲンに対して、自分を仲間に入れてくれた妖怪たちを攻撃したことに怒りを感じながらも、接する中で「悪い人ではない」と感じ始める。「妖怪たちを攻撃したのも理由があるのかもしれない」と、ムゲンを信頼したい気持ちも芽生えている。

寝たふりをしてムゲンの様子をうかがうシャオヘイ。画像は「映画 羅小黒戦記」公式ウェブサイトより引用。

 ムゲンにしても、シャオヘイに親心が芽生えながらも、それを表に出さないように努めて、クールな態度をなかなか崩さない。シャオヘイとムゲンの、見ていてムズムズするような心の葛藤は、とてもじれったくて、どんどん2人を好きになってしまう。このあたりの表情やちょっとした動作などアニメとしての描かれ方も、とても丁寧で上手いと思う。

画像は『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編より引用。

 そして終盤、素直になれない2人が遂に力を合わせて戦うシーンは、ベタな展開ながらに、もう最高にテンションが上がります! まるでこの2人のことをずっと知っていたような気持ちで2人を応援してしまう。この感覚はもう、実際に体験してほしい!

グッズや同人イラストも盛り上がりを見せている

 「作品の魅力を紹介する」と書いておいて、シャオヘイとムゲンの話に終始してしまったが、筆者はもちろん、この作品に多くの観客を魅了するのは、とにかくキャラクターの魅力が大きいと思う。

画像は『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編より引用。

 前述の通り、公式グッズが日本で発売されると、一部の人気グッズは即完売してしまったようだ。筆者がグッズ発売後に映画館で本作を観た際、シャオヘイやムゲンのぬいぐるみを持っている観客を何人も見た。
  また、同人の世界でもキャラクターたちが存在感を示しつつある。イラスト投稿サイト・pixivでは500を超える本作のイラストが投稿されており、Twitterでは「#ロシャオヘイ描いてみた」という日本独自のハッシュタグも生まれている。

 8月20日現在、日本の映画館で上映は行っていないが、再上映の際には、ぜひ中国からやってきた魅力的なキャラクター達の活躍を見て欲しい。
 猫好きの方々はもちろん、この記事にあるシャオヘイの姿を見てちょっとでも心が動いた方なら、きっと映画館に足を運んでも後悔はしないはずだ。


映画『羅小黒戦記』公式サイトはコチラ

公式Twitterはコチラ

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