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『けものフレンズ』プロデューサーの夢は大学の設立!? 福原Pが語る日本のアニメ業界に必要なこと

プロデューサーを育成するためにまず、アニメプロデューサーという仕事自体の認知度を上げたい

——これからそうしたプロデューサーを育成しようとするのであれば、どこから始めていこうと思っていらっしゃいますか?

福原:
 教員にはなりたいと思っています。大学の教授になるとか、私塾を始めるとか、元々大学も教育学部なので、今実際にデジタルハリウッド大学の大学院で、学位をとるために勉強していて、研究領域がプロデューサー教育なんです。

 クールジャパンと言われていますが、14〜5年前に経済産業省などが策定したコンテンツプロデューサー育成カリキュラム【※】が立ち上がって、その中にコンテンツプロデューサーが必要とする知識の概要が書いてあって、TV、書籍、音楽、アニメから法務、財務、委員会の構成の仕方とか、全部書いてあるのですが、まだそうしたプロデューサーの育成が具現化されていないんです。

※コンテンツプロデューサー育成カリキュラム
経済産業省が平成15年度の委託事業として策定した、コンテンツ産業の要となる国際的ビジネスプロデューサー養成のために必要とされる知識・ノウハウを体系化したカリキュラム。ここから読むことができる。

 例えば、日本の社会で「『けものフレンズ』のプロデューサーです!」って言ったり、「『エヴァンゲリオン』のプロデューサーです!」って言ったところで、まだ政治家とか偉い人には通じないとおもいます。まだ学位がある人の発言の方が伝わると思います。
 最終的には国に訴えたり、働きかけたりしなければならないのですが、プロデューサーが注目される土台が日本にはまだ無いと思います。

 ハリウッドで一番やり手のプロデューサーというとMBA持っている人と弁護士とかなので、結局は頭良いやつが良いプロデューサーだという結論になってしまいます。
 日本では超エリートがアニメ業界に入ってくるかというと、そういう方は他の業界に就職するパターンが多いと思います。なので、まずはプロデューサー能力の平均値を上げるのが、競争を生んでレベルアップに繋がるので僕は重要だと思っています。
 僕がきっと作るであろう大学とかに入学しそこを卒業すると、新卒にもかかわらずハンパない知識を持つ制作も製作もできる若きプロデューサーの卵達が色んなアニメの会社に入っていき、皆が切磋琢磨してハイレベルな制作をするようになれば、日本のアニメをどんどん海外に輸出して行ってくれるだろうから、凄く良い国になるんじゃないかなと思います。

——そこへと至るには、今まず何が必要でしょうか?

福原:
 アニメのプロデューサーという仕事自体の認知がまだまだ足りていないんですよね。プロデューサーって仕事がある事自体は当然わかっていると思いますが、アニメのプロデューサーってどうやってなるのかも分からなければ、具体的に何をやっているかも分からないじゃないですか?
 知らない職業になりたい人なんていないのでそういう事の認知度を上げることからがまずスタートだし、アニメ人材の育成を担っている専門学校とかでプロデューサーコースを作っても何をするか分かっていないので志望者が少なく学費が集まらないのでビジネスにならないんです。

 基本は現場でしか人って成長しないので、在学中に現場を踏ませることが重要だと思います。
 音楽の例で言うと、企画から発売までのサイクルが短いので、1サイクル3ヶ月とかのCD発売やイベント等であれば短いインターンでも経験値に落とし込むことができるんですけど、アニメの場合、企画から納品まで2年掛かるので、すべてのプロセスに関わるために2年間ではインターンの域を超えてしまうんです。そういう意味でいうとインターンを受け入れてくれる組織との産学連携が非常に重要です。
 アニメを学ぶことに必要な会社が僕の傘下にあれば、僕が何処かでゼミとかをやった時に、とりあえず1年生からウチの会社の何処かでバイトしていてという感じで、学問との連携ができると思うんです。そうしたことを小さくやりながら、僕がお金を貯めて私塾を作ったりどこかと組んだりすると思います。 今、法律が変わったので結構大学院、そして専門職業大学は設立しやすくなっています。
 日本で大学院に行く意味って理系以外あまり無いと思うんですけど、ハリウッドには映画人が通ってMFAという学位を取る事でステップアップするフィルムスクールという学校が500校以上あります。日本は世界のアニメの過半数作っているけど現場で学ぶ事が全て。こう言うと僕は、欧米化を進めているみたいな感じなっちゃうんですけど、そういうわけでもなくて、実践的な人材を現場で育てたいんです。

夢は第2、第3のけもフレを生み出すプロデューサーを育てる大学

——これからプロデューサーになろうという人はまず何をやれば良いでしょうか?

福原:
 人に興味を持つ、情熱を持つ事じゃないでしょうか? 情熱さえあれば、あとはアニメの会社とか入ればなんとかなると思いますしノウハウは情熱あれば勝手に身につくと思います。
 これは僕の言葉ではないんですけど、情熱だけは教えることができないから、情熱だけ持ってきて欲しいんですよね。努力と目標って常にリンクしていると思うんです。だからやっぱり大きな夢を持たないといけないというのは凄く思います。でも、ぶっちゃけ僕が夢見付かったのって30歳過ぎてぐらいからですけどね。

——そうなんですか!? それがプロデューサーの育成というところでしょうか?

福原:
 「大学作りたい!」ですね。

——その夢が見付かる前も情熱は持ち続けていたんですよね?

福原:
 情熱が乱反射してたんでしょうね。無駄なエネルギーを使って、たくさんの寄り道をしていたんじゃないでしょうか。今はレーザービームのように目的に一直線になっています。

 もし若い人がこのインタビューを読んでいるのなら、基本は夢と情熱は当てずっぽうでも良いから持っていて欲しいなと思います。悩んで悩んで家から一歩も出ないよりも、悩みだらけでも色んな所行っていたら、何かありますよ。とにかく情熱としか言えないですね。夢なんて変わっても良いと思います。

 僕も無限のエネルギーがある訳じゃないです。全然ヘコむし、本当に一日外に出られなかったり、電話に一切出れなかったりという日もあるんです。1本の電話を掛けるのに、数時間電話の前で悩むことも全然ある、人間なんてそんなもんですよね。

——なぜ大学なのでしょうか?

福原:
 論理的に、何で大学か? ということまで説明してしまうと、基本的に僕は人に忘れられたくないとか、寂しいとか、見ていて欲しいという気持ちが物凄く強いんです。末っ子で、家でも皆に注目されてきたから、自分が人にどう思われているか? と凄く気になっているのが行動原理としてあるんです。その承認欲求と自己実現欲求の狭間のところで、最後まで自分を忘れてもらわないための方法の一つで、自分が実現できる可能性があるのが、学校を作ることなんです。学校のismの中で育った生徒たちが作品を作ってくれたら、あたかも自分の子孫のように作品が生まれるのでは、と思っています。

 『けものフレンズ』がこの先どれぐらい続くか分からないですが、こういう作品を一生作り続けるのも一つの方法だと思います。
 ただ、作品という意味では作っているのはたつき君や吉崎先生などクリエイターです。僕は何を生んだんだ? という時に、たつき君みたいな人を引っ張り出して世に出す、ということは一つの僕の幸せなので、「たつき君」を10人世の中から見つけて、10個アニメが出来たら100個作品が残る。 それのもっと上って何だろうと思った時に僕が得意なのは人の良い所を引っ張り出す所で、結局は自分みたいなプロデューサーを育ててその人を通じて自分の記憶を残していくというのが僕らしいと思っています。
 なので、今部下で影近と塩澤というのがいますが彼等の成長を見守るのがとにかく一番楽しいです。

——新たな「たつき監督」を見付ける人を更に見付けて育てるということですね。

福原:
 そうです。でも、自分でやりたい夢を数えたら実現するのに大体100年を越してしまうと思うんです。
 海外に住みたいとか、美人と結婚したいけど、やっぱり別のコともお付き合いしたいなとか、弁護士になりたい、医者にもなりたいと欲望は止まらない、もし叶ったとしても次々新たな欲望が生まれる。となると何を満たした時に人間は死んでも良いと思うか? 結論は「そんな時は来ない」っていうことだと思うんですよ(笑)。人間がいつ幸せになるか? というと、「今が幸せ」ということにしかならない。今をキープし続けているつもりでも、年を取ったり、トラブルという引力に引っ張られて留まる事ができなくなる。だから、ずっと夢を見続けたり、情熱的に動くぐらいでやっとキープしている程度だと思うんです。
 僕が皆に伝えられるものというと、プロデューサーのノウハウ部分ですが、一つだけ教える事が出来ない物が情熱です。やっぱり情熱がある人と仕事しないとなと思っています。

——ヤオヨロズと福原さんの今後が非常に楽しみです! ありがとうございました。

プロフィール
TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスのリサーチャー&ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。ニコニコニュースの他、SENSORS.jpなどで記事を執筆中。
Twitter:@suburbangraphic
Website:suburbangraphics.jp

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