「必ず会場で再会しよう」——即売イベント代表5名による座談会レポート。コロナ禍の厳しい現状と未来へのメッセージを語る【コミケ・赤ブー・スタジオYOU・コミティア・例大祭】
3月27日、新型コロナウィルスの流行に伴う自粛要請を受けて、コミックマーケット準備会より「コミックマーケット98」開催中止が発表されました。コミケだけでなく、開催中止を余儀なくされる同人即売会が続出し、業界全体がこれまでにない危機的状況を迎えています。
そんな中、4月17日に同人即売会主催5団体の代表を招いた特別座談会『ネット超会議特番 同人即売会代表座談会@ニコニコネット超会議2020)』がニコニコ生放送にて行われました。
今回、出演されたのは以下5団体の代表です。
・「コミックマーケット準備会(コミックマーケット)」より市川孝一さん。
・「赤ブーブー通信社&青ブーブー通信社(COMIC CITY こみっく★トレジャー)」より赤桐弦さん。
・「スタジオYOU(オンリーライブ コミックライブ おでかけライブ)」より山崎暁さん。
・「コミティア実行委員会(COMITIA)」より中村公彦さん。
・「博麗神社社務所(博麗神社 例大祭)」より北條孝宏さん。
番組では、この5名がリモートで出演し、コロナ禍による様々の苦難や、リアルイベントの大切さを語り合いました。この記事では、その様子をご紹介します。
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各団体のこれまでのコロナ禍の影響
市川さん(コミケ)が「C98中止により、約32,000のサークルと約140社以上の出展企業に被害を出してしまった」と切り出すと、赤桐さん(赤ブー)も開催中止になり、32,000のサークルに影響を出してしまったと続きます。
山崎さん(スタジオYOU)も同様に、全国15地域で予定していた23件のイベント中16件が現在までに延期・中止に追い込まれていることを明かし、北條さん(例大祭)は一旦延期を発表してからの開催断念となったため、被害が大きくなってしまったと語りました。
興味深い報告をしてくれたのは、中村さん(コミティア)。
まだ、コロナ禍が現在ほど大きくなっていなかった2月、感染症対策を施した上で同人即売会を開催したものの、来場者数は3割減、サークルの出席率も普段より3%減という具体例を示しました。
続けて中村さんが、イベント開催を決定した際に「やらないほうがいいんじゃないですか?」といったアドバイスが参加者から寄せられたことを語ると、各団体の代表からも同様の経験があるという共感の声が広がりました。
ホテルのキャンセル、保険が適用されない……中止によるさまざまな被害
一連の騒動で発生した被害について、北條さん(例大祭)が、ボランティアスタッフ100数十人分のホテル手配をキャンセルしなければならなくなったと語ると、市川さん(コミケ)も同様に約900人分というホテルの部屋の用意、キャンセルに追い込まれたと語ると、視聴者から大きな驚きのコメントが上がりました。
全国で同人即売会を展開する山崎さん(スタジオYOU)さんは、自治体毎に状況が大きく異なり、細かい対応が求められる苦悩を語り、北條さん(例大祭)は開催予定イベントに対するクレームが自治体広報に届けられてしまったという苦悩を吐露。
中村さん(コミティア)が、東京以外の各地のコミティアにも行こうと呼びかける「全国コミティアスタンプラリー」を開催したばかりのところに新型コロナウイルス騒動が発生してしまい、身動きがとれない状況になってしまったことを語った際には視聴者から同情の声が届けられました。
そして、「苦境」のテーマで一際大きな盛り上がりとなったのは、赤桐さん(赤ブー)が語ったイベント保険に関する話でした。サークル参加者が払うイベント保険はどれも掛け捨てのうえ、例えば参加費5000円として、別に保険料が3-4000円くらい高額になってしまうそうです。また、仮に保険料を安くできても保険が下りるのは主催者が倒産するような場合のみで、中止になっただけでは保険適用外となってしまうという悩みを吐露すると、他団体主催者も大きく頷きました。
参加サークルの支払った「参加費」はどうなる?
続いて、話題は気になる「お金」についての話に。
市川さん(コミケ)が、「緊急事態宣言が出された後では返金に応じてくれる会場も多い」と明かすと、赤桐さん(赤ブー)が「実は当日にかかる経費はそこまでではない」とし、人員確保や資材の保管、サーバー管理に電話応対スタッフ、事務所の賃料といった“組織の維持管理”に莫大な費用がかかる点を吐露すると、他団体代表もこれに賛同しました。
続いて、北條さん(例大祭)が「おそらくこの中ではうちが一番規模が小さいと思いますが、やはり事務所など結構な維持費が掛かります。それなのに多数のグッズの製作や謎解き企画、そしてカタログを刷ってしまいおり大量の在庫が残っています。その費用は1000万円超えます。」と話すと、視聴者から「カタログ買います」「買いました!」「幻回のカタログは貴重だから買うでしょ!」といった声が次々と寄せられました。
すると、各団体代表も参加費に関する想いと実情を語り始めました。
「全額は難しいが、なるべく返していきたい」「信じてもらえるようなことをやっていかないと復帰の道も遠い」と、それぞれが気持ちを明かし、中村さん(コミティア)は、「参加費を返金しなくていい」という参加者の方に対し、文化庁が「寄附金控除扱い」とする方向での調整に入ってくれていることも明かしました。
苦悩多き同人即売会の状況ですが、それでも各団体代表が「好きでやっているものなので」「参加者からの温かい言葉が大きい」「温かい言葉があれば乗り越えられる」と声を揃え、視聴者からも「頑張ってください!」「参加費返さなくてもいいですよ!」「参加費はお布施だから」といった温かいコメントが、視聴者から続々と届けられます。
コロナが初めてではない!これまでの開催危機エピソード
今回のコロナ禍だけでなく、過去にあった開催危機についてのエピソードについても語られました。まず、2012年、次々と同人イベントや周辺施設・企業に対して脅迫状や不審物が送りつけられた一大騒動「黒子のバスケ脅迫事件」が挙がります。
また、北條さん(例大祭)さんからは2011年の東日本大震災、中村さん(コミティア)からは2018年の台風24号被害が語られるなど自然災害の話も多く出されました。
それでも様々な過去の騒動も「今回の新型コロナウイルス騒動に比べたら、大したことはない」とのことで、改めて今回の新型コロナウイルス騒動の大きさが痛感させられます。
すべての団体が、すべての参加者の大切さを想う
続いて、「リアルイベントの大切さ」について語られました。市川さん(コミケ)からは「目の前でやり取りできる楽しさ」を挙げ、山崎さん(スタジオYOU)からは「地方では中高生が多いので、同じものが好きな仲間と出会える場として大切にしたい」と語りました、また、中村さん(コミティア)からは「リアルイベントは“自分も描いてみたい、描いてみよう”と思える空間」だと熱く語り、各団体代表が、いかにリアルイベントと、そこに集う参加者のことを大切にしているか伝わる場面となりました。
最後に、各団体代表がサークル・一般参加者へのメッセージを伝えて番組は終了となりました。以下、全員のメッセージをご紹介します。
「コミックマーケット準備会(コミックマーケット)」市川孝一さん
作家の方は即売会という締切が無くても手を止めないで欲しい。いま描きたいものを描いてほしい。それが商業誌とは違う、同人誌というものだと思っています。みんなが描きたいものがあるからこそ、同人即売会というものがある。
だからサークルのみなさん、一生懸命原稿を描いて、本を作ってください。描いたり、作ったりしたら、いろんな団体が行うエアイベントに情報をあげてください。「我々は頑張っている」ということを僕らに伝えてください。
一般参加者の人は、本を買って、感想を伝えてあげてください。作家さんも暖かい声があれば描き続けることができると思います。コロナが大変な中、ネットの力を借りて、いろんなことができます。みんなで協力しあって、同人文化を盛り上げていきたいです。
「赤ブーブー通信社&青ブーブー通信社(COMIC CITY こみっく★トレジャー)」赤桐弦さん
作家さんに場所を用意できなくて申し訳ない。色々な調整があってすぐに「こうします」とお伝えできないですが、ひとつひとつできることからご案内していきます。
「エアブー」という新しい形にも挑戦しています。暗中模索でやっていますが、集まれる場所を必ず用意しますので、待っていて頂ければと思います。それまで本を作っていてくれたら、本当にありがたいです。
作家さんを次の創作に繋げる源泉は、読者のみなさんの応援の力です。今後はオンラインが大きな「場」としての役割になると思いますが、オンラインで繋がったその先には変わらず生の作家がいることを感じて欲しいです。「今こそ、買ってエール!贈ってラブ!」
「スタジオYOU(オンリーライブ コミックライブ おでかけライブ)」山崎暁さん
「がんばろう同人」のキャンペーン内でサークル参加に使用できる1,000円分のYOUポイントをプレゼントしています。イベント参加の際は活用してください。
また、「するる」という同人印刷セット検索&入稿サービスを運営しています。ツイッター企画で「#一緒に原稿チャレンジ」を行っており、みんなで原稿を進めているような雰囲気が出来てきています。こちらも活用して頂き、みんなで本を作っていければと思います。
地域、業種問わず皆様大変な時期ですが、我々もイベント再開に向けて、明るく前向きに準備していきます。一般参加者さんは、好きな作家さんを応援したり、感想を送ってあげてください。同じ「萌え」を共有する仲間と励ましあって、少しでも好きなことを進めていきましょう。我々も含めてイベント会場で再会できることを喜べればと思っています。
「コミティア実行委員会(COMITIA)」中村公彦さん
作家さんが、手渡しで発表できる場所がないというのは本当につらい状況です。私たちスタッフもイベントを再開できる日を心待ちにしています。コミティアの参加者に「今、新しい本を作ってほしい」とは言いにくいですが、作品は描き続けて欲しいし、その作品の感想などがやりとりできるような、エアコミティアのような場所を作りたいと考えています。
読者の方は、既刊でもよいので、作家さんに作品の感想を送ってあげてほしい。それが今できる応援だと思います。
コミックマーケットが生まれて40数年、その同人誌即売会の歴史の中で、大きくなるにしたがって同人印刷所、専門書店などを含めて大きな生態系が作られてきました。それが失われてしまうのは悲しく恐ろしいことです。なんとかこの生態系を守れるように、我々にできることをやっていきたい。会場で会えるのを楽しみにしています
「博麗神社社務所(博麗神社 例大祭)」北條孝宏さん
非常に厳しい状況ですが、何もできないというわけではないので、今できることの提案を例大祭からしたいと考えています。
例大祭は東方オンリーというジャンルですが、若年層から老人まで幅広い年齢層の方に普段できない体験をしていただいているリアルイベントを作ってきました。この場はなんとか復活させたいと思っています。そのために我々スタッフ一同頑張ってやっていきます。「明けない夜はない」という言葉がありますが、そのために、まずは実現可能なことからやっていきたいと思います。そしてまた、博麗神社例大祭の会場でお会いできることを楽しみにしています。
各イベントのこれからのスケジュール
※最新の情報は、各団体のSNSやWEBページなどからご確認いただければと思います。
▼番組で使用した資料一覧(クリックで拡大します)▼
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