戦国時代の兵法をガチ研究する武術家に話を聞きに行ったら「セイバー(Fate)の見えない剣が最強」というまさかの展開になった【功朗法総師範:横山雅始インタビュー】
「『Fate』って、すっごい武術的なんですよね」実はアニメ好きな横山先生
――本日は貴重な話をありがとうございました。ところで、この取材をご依頼する電話をしたときに普段からアニメやニコニコ動画を見ておられるとお伺いしたのですが……。
横山:
もともとアニメは好きですよ。仕事で「何日までにあれをやってくれ」と言われていても、「はいはい、今やってますからね」とか言いながらアニメを見ているという。
こんな仕事もういいや、一日でできるわって思いながらアニメ見て遊んでるとか(笑)。
――ちなみに、そういうときにどんなアニメを見たりしているんでしょうか。
横山:
どんなって、割と私、カテゴリで選んでないんですよ。絵が気に入ったとか、音楽が気に入ったとか、まずそこから入りますね。
そういうところから入りつつ……これは絶対に見たいな! って思うのは、例えば軍事的作品ですね。『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』だとか。
――(笑)
横山:
ああいうのは割と見てましたね、面白いから。他には『ガールズ&パンツァー』一生懸命見てたりとか……。
――ガルパンって……武術要素ありますか?
(画像はAmazonより)
横山:
いや、ガルパンに武術っぽさはないですよ。第二次世界大戦の戦車の歴史要素があるから見てたんですね。
――横山先生は、何歳ぐらいからアニメを見始めたか覚えていらっしゃいますか?
横山:
私の時代のアニメというと、最初は『宇宙戦艦ヤマト』の時代ですよね。そこからアニメを見だして、それこそ『ロードス島戦記』あたりまで見てましたね。
(画像はOVA版ロードス島戦記 デジタルリマスターBlu-rayBOX スタンダード エディション Amazonより)
――アニメ好きとして、割と正統派な入り口だったんですね。 『ロードス島戦記』も当然押さえてる、みたいな感じで。
横山:
もう、王道を押さえて見てますからね。
――元々、横山先生はオタク気質だったんですか?
横山:
オタク気質じゃないと、こういうプロデューサーみたいな仕事はしないでしょう。
それから……これ面白い! ってなったのが『ゼロの使い魔』。ヨーロッパに武術指導に行ったときに、フィギュアを売ってましたよ。
(画像はゼロの使い魔 Blu-ray BOX Amazonより)
――ルイズだ……。 『ロードス島戦記』からの『ゼロの使い魔』。その後の流れもすごい気になるんですけど。
横山:
『ロードス島戦記』のあと、アニメにはちょっと興味薄れたかな。その後どれぐらいからアニメ見るのを再開したのかなぁ……『Fate/stay night』あたりだったかな?
――横山先生から発せられる、Fateっていう単語がちょっと受け止めきれないんですけど(笑)。
横山:
劇場版1の『Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』まで見ました。私の個人的意見ですけど、『Fate/stay night』と『Fate/Zero』ぐらいが一番面白いですね。
――たしかに、『Fate/Zero』ってちょっと武術要素がありますよね、言峰綺礼が中国武術を使うんですよね。
横山:
『Fate/Zero』にも武術要素があるといえばありますね。でも、『Fate/stay night』のほうがありますよ。例えばセイバーの武器・見えない剣の“インビジブル・エア”とか、本当にあんなものがあったら嫌ですよね。
(画像はより『TVアニメ「Fate/stay night」PV第3弾』ニコニコ動画より)
セイバーと戦っているランサーが「卑怯者め、みずからの武器を隠すとは何事か!? 貴様の宝具、それは剣か?」って聞くんです。するとセイバーは「さぁ、どうかな? 斧かも知れぬし、槍かも知れぬ。いや、もしや弓ということもあるかも知れんぞ」と答えるんです。
あれ、すっごい武術的なんですよね。間合いが読めないっていうことです。
――そう言われてみると、そうですね。ちょっと鳥肌立っちゃいました。
映画『刀剣乱舞』の戦闘シーンに協力
横山:
先日は『映画刀剣乱舞-継承-』の助監督の方からご連絡がありまして、協力してもらえませんかっていう話だったんですよ。当然、とうらぶだったら私は知ってるし(笑)。
(画像はAmazonより)
――「当然、知ってるし」ですか(笑)。
横山:
協力してほしいシーンをお伺いしたら、「火矢のシーン」や「火攻めのシーン」ということでして。いざ火攻めのシーンになると、最後は「私が入るわ」って言って、周りの人に鎧持ってきてもらって一番前で弓矢のシーンを演じたりしました。
――横山先生ご自身が出演なさったんですね(笑)。
横山:
これが危険が多いし、難しい大変なシーンなんです。登場人物は、背旗を背負ってるでしょう。演じるのが普通のエキストラの方だとか、弓道をやっていた方だったら、前にいる演者の背旗を打ってしまって、大けがになることも考えられます。加えて、演者の間隔はフレームに収めるためにすごく狭いですからね。
監督のスケッチなどを拝見させていただいたときに、作りたい映像がわかったので、現場ではとりあえず弓を持つときには、演者には斜めに構えてもらう戦国式の打ち方をして、前に当たらないようにするとか、いろんなことをやりました。
――とうらぶ・ガルパン・コスプレイヤー……こんな単語が横山先生のような武術家の方から出てくることの違和感のなさの違和感みたいなものをすごく感じます(笑)。最後にお伝えしたいことがあればお話いただければと思います。
横山:
実は、今度、11月10日にガチ甲冑イベントがおこなわれるここ「ともいきの国 伊勢忍者キングダム」の名物に皮ごと食べれるバナナがあるんです。とてもおいしいので、ぜひみなさん食べていただきたいですね。
(画像は公式サイトより)
――バナナ!?
今回の取材、蓋を開けてみれば武術の話だけでなく、アニメや時代劇の分野にも話が及ぶこととなった。しかし、武術は時代のトレンドや、その技を使う人間たちの創意工夫=クリエイティブの積み重ねであり、その意味ではフィクションの世界にも通づるところがあるのかもしれない。
筆者がそれまで抱いていた戦国時代の武将に対するロマンは、横山先生の解説によってガラガラと崩れた……かと言うと、そんなことはまったくない。
むしろ、横山先生が日々の修行とイベントを通した研究で得た数々の発見を聞くたびに、自分の心の中の“少年成分”が刺激され、取材中は終始わくわくした気持ちで質問を重ねていた。
横山先生が演武を実践するときの迫力に筆者は圧倒されてしまったが、取材中の横山先生は笑顔が絶えず、その佇まいからは、ある意味“戦いに身を置いていた者”とは思えない朗らかな空気が漂っていた。
甲冑を着て戦う、と聞くと野蛮で乱暴なイメージを想像する人もいるかもしれないが、これからも開催されるであろう『ガチ甲冑合戦』は、きっと横山先生の朗らかな人柄が現れた楽しいものになるだろうと思いつつ、記事の締めくくりとしたい。
■info
・11月10日(日)11時より、ガチ甲冑合戦「織田軍VS伊賀忍者群 天正伊賀の乱」の模様をniconicoで中継します!
・日本甲冑合戦之会(ガチ甲冑合戦)公式サイトはコチラ