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SF大賞受賞の軍事SF『WOMBS』作者、ミリタリーとの出会いを語る「ファーストガンダムの4話で軍規に惚れてしまった」

 2月25日(土)に都内で行われた選考会の結果、第37回日本SF大賞は漫画家・白井弓子さんによる『WOMBS(ウームズ)』に決定しました。4月21日(金)にはニコニコ生放送にて『第37回日本SF大賞贈賞式』が中継され、受賞者の方へのインタビューなどの様子が放送されました。

 贈賞式で司会進行を務めた声優の池澤春菜さんの、大賞受賞者である白井弓子さんへのインタビューでは、作品を描くうえでの苦労や大賞受賞に寄せられたコメントが紹介されました。白井さんの予想する来年のSF大賞のタイトルにも迫ります。

『WOMBS』Amazonより。

昨年の受賞者が予言していたWOMBSの受賞

左から池澤春菜さん、白井弓子さん。

池澤:
 実はWOMBSの受賞は昨年の受賞者である森岡さんが予言していました。白井さんはその様子を見ていらしたとお伺いしました。

白井:
 そうなんです。実は。Twitterでフォロワーさんが教えてくれたので、「それは見なければ!」と思いましたので。

池澤:
 森岡さんに贈賞式の最後で「来年の日本SF大賞はどなたがお取りになると思いますか?」と聞いたら、「白井さんのWOMBSが取ると思います」と、まさにその予言が当たりましたね。

白井:
 めちゃくちゃ嬉しかったですよ(笑)。でも、その時はまさか本当になるとは思いませんでした。

池澤:
 この日本SF大賞は皆様からのエントリーを受けてそのエントリーの際にコメントを寄せていただくようになっています。いくつかのコメントを読ませていただきたいと思います。「女性が戦場で戦う物語は数多くありますが、それらの中で多数の成人女性の身体性とSFアイディアを直結させたものは少なく、更にこの要素を通して、社会風刺、民族間闘争への風刺、科学技術に対する視線、異質な知性との対話にまで柔らかな感性で切り込む作風と思想性、及び、強靭な物語性は、現代SFにおいて最も評価されるべき点でしょう」

白井:
 めっちゃ嬉しいですね(笑)。

池澤:
 「重厚なミリタリーSF漫画。ある意味王道作品だが、現代的なテーマが盛り込まれている。何しろ主人公は異生物を擬似妊娠することで、その力を借りて戦う兵士なのだ。SF者が未読で済ますには惜しい作品だと思う」実はこの二つ目のコメントを書かれたのは森岡さんです。

白井:
 ありがたいです。そのコメントも読んだんですけど、それぞれ10回くらい読みました。嬉しかったものですから。

ミリタリーを描くのは大変だった

池澤:
 でも先ほども、描かれる上でご苦労もあったし、まだ自分自身の実力が追いついていないところもあった、と。世間がそれをどういう風に受け止めるかという葛藤もあったと思うんですが……。

白井:
 そうですね。まず、ミリタリーを描くというのが大変でした。一から勉強という感じだったので。

池澤:
 確かに、SFの世界なので、ミリタリーも現実の世界に全部則って書かないといけないか、というとそうではないですよね。SF的な飛躍があったりはいいんですが、そこで嘘が入るのは作る側としてはちょっと気持ちが悪いですものね。

白井:
 ミリタリーケイデンス【※】とかおかしな歌だとか、そういうミリタリーのツボみたいなものをどこに置いたらいいのか、そういうのを描くのは一番楽しいけど、難しいですね。

※ミリタリーケイデンス
軍隊で訓練時に唱和される行進曲、労働歌の一種である。警察学校や消防学校の訓練でも唱和される。日本語では訓練歌、歩調、連続歩調と呼ばれる。

池澤:
 元々ミリタリーにはご興味はおありになったんですか?

白井:
 最初にミリタリーに触れたなって思ったのがファーストガンダムだと思うんですね。最初に見たのが第4話だったと思うんですけど、軍規とかせめぎ合いに惚れてしまったというか(笑)。

『機動戦士ガンダム』Amazonより。

池澤:
 現実のミリタリーではなくSFや架空作品におけるミリタリーが入り口だったわけですね。

白井:
 そうですね。

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